『神殿の孤児院におられるティナ嬢を我が息子の嫁としていただきたいのです』
リルリィーアは広間で手紙を見てぶすっとしていた。
三通きれいに並んでいる。
もてもて。三通も。姉貴分である自分を差し置いて。
「どーしたの? お姉ちゃん」
ティナが背後からひょこっと首を突っ込む。
「あんたが。あんたって娘はぁっ」
とりあえずぎゅーっと締めた。
「あんたまだ十歳だろうがぁ」
「うーーーーーーーーー。もごもご」
じたじたしているティナを見てリルリィーアはため息をついた。手を離す。
「うー。ひどいよ。何したっていうのよ」
「婚約の申し込みだってよ」
「ふぇ? お姉ちゃんが? わーい。ようやく春が」
この天然娘がぁ。
ぺちっ。
「おばかなことばっかりいうと、ぶつわよ」
「もうぶってるよぅ……じゃぁ、誰?」
「ティナ。あたなによ」
「ほえ?」
ティナは首をひねっている。
自分が結婚式でお祈りを上げるのはまいどのことでも自分がそこで結婚するのはさすがに想像外なんだろう。
想像外よね?
「とりあえず全部断っておいたけど」
「えへっ。もてもてで困っちゃうんだよ」
「……あんた自分でなに言っているかわかってる?」
「うーん。あんまり」
とりあえず子供はキャベツ畑から拾ってくるわけじゃないということを教えてから嫁がせたいものだ。
「なんだかティナに先越されそう」
「大丈夫だよ。お姉ちゃんが嫁ぐまで待ってるから」
「うー。それは嫌」
ぽむ。ひとつ思いついた。
「いつもティナたちの面倒見てヒマがなくて出会いもないし」
「えーと。こっちよりそっちのほう優先してほしいんだけど」
「うるさいっ」
リルリィーアはティナの肩を掴んで引き寄せて耳元に囁いた。
「ティナ。責任とってよ」
「なな、なんでよーーーーーーーーーーーー」
ティナの絶叫が広間に響いた。ほら、ほかの子がびっくりしてるんじゃないの。