リルリィーアが捜査局で書類を片付けていると、部下のアルドが入ってきた。
「あ、失礼します。支部長」
「ん? なんだ?」
リルリィーアは手を止めた。
アルドはうれしそうだった。
「今度、結婚するんです」
「そうか、それはめでたい」
「また支部長より先を越して大変申し訳ないとは思いますが」
「やかましい」
「そういうわけで、今度結婚式をするんでぜひ来てください」
「ありがとう。ところで、お相手はどんな人だ?」
「すごくかわいくて綺麗なんですよ」
全力でのろけられてリルリィーアはちょっと引いた。
「……どこのひとだ?」
「エルミリア王女のメイドさんですよ。このあいだの一件で知り合って」
そういえば仕事そっちのけでメイドに粉かけてたな。こいつ。
「……仕事中に探すぐらいじゃないと見つかんないものなのかねぇ」
「支部長だと無理ですよ。どっちにしろ」
「黙れ」
結婚式当日。
リルリィーアが裏の孤児院から表の聖堂に回ってみると、白い被り物をしたメイドさんがアルドの隣にいた。
間違いなくメイドだった。
「……で、なんでメイド服なんだ?」
つかつかとアルドの前に早足で来て、リルリィーアはたずねた。
「えーと、アリアが、『あなたに一生仕えます』ってことでこれがいいって」
「いいからとっとと着替えさせろ! 一生言われ続けるぞ。『結婚式にメイド服着せられたって』」
とりあえずティナを呼んで捜査局裏の貸衣装屋にひとっ走りさせた。
「『メイド服を着ている君が好き』とかおろかなことを言ったんだろうこのバカタレが」
「アルドさんを責めないでください!」
花嫁が叫んだ。
「私から言い出したんです。だから」
リルリィーアは脱力した。
「……ちょっと休んでくる」
なんかこう疲れたので、リルリィーアはふらふら歩き、式が始まるまで引きこもってしまった。
「天にまします神様に誓って。夫婦仲良く暮らすことを誓いますか?」
ティナの声が聖堂に響く。
少女は、聖女の法衣の白ではなく、今日は普通の青い法衣を身につけていた。
台に隠れて見えないが、踏み台に乗って朗々と聖典を読み上げる。
結局、花嫁は紺色のドレス(と呼ぼう。あえて)のままだった。
「……当人たちが幸せそうならいいか」
かなり釈然としない思いを抱えながら、リルリィーアは端っこで新郎新婦を見ていた。
二人は声を合わせて結婚の誓いを述べている。
「……でもいーのか。本当に?」