満月の下で捕り物があった。
二階建ての屋敷をぐるりと、赤い制服に身を包んだ捜査官が囲んでいる。手に手に、棍や、槍や、なぜか梯子を持っている。蟻が出る隙間もない布陣だ。
男だらけの捜査官輪の中に、女性が一人だけいた。治療役のティナだ。
で、裏庭で戦っている二人がいた。
一人はリルリィーア。赤毛の女性で法衣の上にエプロン。刃を潰した剣をもってぶんぶん振り回している。
もう一人は黒ずくめの男。顔まですっぽりと黒い布で包んでいるが、口元の部分が赤く染まっている。右手には短剣、左手には大きなダイヤを持っている。それはペンダント状に加工されて長い鎖が付いている。ペンダントと言うよりも大きすぎてメダルといった感じだが。
そのダイヤがこの黒ずくめの狙いだったらしい。
「いい加減投降したら? いまなら刑期三割引でどう?」
リルリィーアが剣を担ぎ、とんとんと肩を叩く。
男は覆面の隙間から、目をぎらりとさせた。
「断るっ。この捜査局の犬がっ」
男は吐き捨てた。
「犬? 犬なんて言わないでよ」
リルリィーアは眉を寄せた。
「どっちかというと、猫?」
彼女がそう告げたとたん。
「それはないな」
「犬に間違いない」
「どっから見ても犬よね」
「お姉ちゃん、もうちょっと現実見ようよぅ」
リルリィーアは後ろを振り向いて怒鳴った。
「あなた達っ。声そろえてまで言うことはないじゃないのっ」
あからさまな隙を狙い、男が背中側からナイフを振るってきた。
リルリィーアは剣を放すと、ちらりとも見ずに男の腕をつかみ、手首を極めた。
男の手からナイフが落ちる。
そしてそのまま担ぎ上げてぽいっとぶん投げた。
男の身体が石畳に叩きつけられる。
「ぐえっ」
つぶれた蛙のような悲鳴を上げて男は動かなくなった。
「まったくもって、失礼な人ばっかりなんだから」
リルリィーアは部下たちをジト目で睨んでぼやいた。
さて、なんでこれを狙ったのかしら。そう思いリルリィーアは地面に転がったダイヤを持ち上げたが。目を細める。
「……やられた。偽物だ」
ダイヤが割れていた。
お題もの書き:イヌ参加作品