朝は眠い。
「ゆーう、起きなさい」
セーラー服を着た真理が、例のごとく優介の部屋に入ってきていた。
「うう、うるさいぞ真理」
布団をかぶって防御。
「うー、そういうことするとこうなんだから」
あっさり引っぺがされた。
薄く目を開けると、真理の顔が近くに。
唇が軽く振れあう。
心拍数が急に上がって頭が急にくっきりした。
「目、覚めた?」
「お前なぁ、こっちにも心の準備ってもんが」
優介は眉をしかめながら身体を起こした。
真理が勝ち誇った表情で優介を見ている。
不意打ちなんてずるい。
優介は真理の腕をいきなり掴むとそのまま引っ張り込んだ。
そしてベッドの上に押し倒す。
制服に包まれた意外に豊かな胸が振動で揺れた。
「あぁんっ。駄目よ。制服がしわになっちゃう」
唇を重ねて黙らせる。
……制服姿の男女が駆けていく。詰め襟にセーラー服だ。
「ああっ、せっかく起こしてあげたのになんで遅刻になるのよっ」
「お前が制服にアイロンかけ直しているから」
「当たり前でしょっ! しわしわのまま行ったらみんなに何を言われるかわかったもんじゃないわよ!」
優介のほっぺたには紅葉色の手形があった。
というのが数日前までの日常だった。
やっぱり朝は眠い。
最近無駄に疲れてるし。
「ゆーう、起きなさいよ」
真理の声が冷たい。
布団にしがみつこうと腕を動かそうとしたが、金縛りにあったように動かなかった。
動けない。
真理が容赦なく布団を引っぺがした。
「ん? あ、もう朝? マリ?」
「うー。ねむねむなの」
優介の左右から声がした。大人の女性と少女。
「……最近節操なさ過ぎよね」
真理が冷たく優介を見下ろす。
「鍵はちゃんと掛けたぞ」
優介は反論したが、枕を引っ張り抜かれてそれ打頭を連打された。
「いたいいたいいたい」
「なぁ、昔の女の嫉妬は醜いぞ」
大人の女性が言った。
赤毛で巨乳の美女だ。もうばっちり細い腰も見える。素っ裸だ。なぜか太股から下はニーソのままだが。
「誰がっ!」
「えへへ。パパおはよう」
少女のほうがすりすりとほっぺたを優介にすりつけている。
ボタンがはずれた優介のシャツを着て、ふくらみかけの胸元がちらりと見えている。
なでなでしてやったら枕が顔面にたたき込まれた。マジ痛いぞ真理。
「何鼻の下伸ばしているのよ!」
のばしてない。見た目中学生以下は射程範囲外だ。
優介は身体を起こした。しがみつく形になって少女も起きあがる。
少女からシャツがずりおちて、小麦色の肌があらわになった。
「不潔です……」
別の声がした。
優介は嫌々そっちを見た。
入り口のところに白い法衣を着た金髪の女性が立っていた。
こめかみをぴりぴりさせ、拳を握りしめて優介を睨んでいる。
「せっかく人が封印駆けたのになんであなた達がいるんですかっ!」
女性の背後のドアには綺麗に丸い穴が開いていた。端は焦げている。
「その程度じゃこのエリスには効かないわ」
上半身素っ裸で言う台詞でもないような気もするが、赤毛の女性はそう答えた。
優介はシーツをエリスに渡してやった。
「ありがとう、あなた」
軽くキスされた。
「なっ」
「ななっ!」
真理と金髪の女性が声を上げた。
「……ユリア様を堕落させようとは。今度という今度は許せません。魔女よ」
「そう? 自分たちが唯一の正義って思いこんでいるあなた達に言われる筋合いはないわよ」
「ならば受けるがいい神の鉄槌を。来たれ白き稲妻よ」
エリスはベッドの下から自分の杖を引き出した。
銀色で先端に黄金の宝玉がはめ込んである。
「黒き炎よ。輪が杖に集いて敵を打ち払え」
白と黒がぶつかり合った。
まずガラスが割れてカーテンが全力ではためいた。本棚のエロ本が外へ飛び出していく。
「きゃっ」
香澄が伏せた。
頭が痛い。世界が歪んで丸く……
優介は手を高く掲げた。
銀の剣が現れる。
それをぽいと白と黒がぶつかり合う空間にぶん投げた。
乾いた破裂音がして、二つの魔法をまとめて切り裂いた。
「止めるがよい、シェールにエリス」
優介とは違った声だ。それは年老いた老賢者のようでもあり、壮年の剣士のものでもあった。
「悪ふざけもほどほどにしろ、ここはそなたらのいた世界と……ぐわっ」
クリスは頭を抱えてベッドの上に転がった。
銀剣も消えた。
「大丈夫、パパ?」
少女は優介をひっくり返してキスをした。
青い顔が次第に赤みを取り戻してくる。
「うう、大丈夫だよ……タリア」
「すまぬユーリス。ちと遊びがすぎた」
エリスは左手で優介の頬をなでた。