いつか花咲く日のために


「よっこらせっと」
 ティナは踏み台に乗って手を伸ばす。
 まだ子供で背が小さいので、高いところには手が届きにくい。
 台の上でさらに背伸びをする。ぷるぷると身体が震えるのに合わせて紺色のスカートが揺れた。
 ティナが取り出したのは大きなジョッキだ。このあいだリルリィーアお姉ちゃんが貰ってきたが、ここの個人では誰も酒は飲まないので死蔵状態だ。
 ここでは一番でかいグラスだ。
 とりあえず水で洗った。
 ティナはそれに牛乳をなみなみとつぐと、じろりとそれを睨み付けた。
「うんっ」
 気合いとともに手を伸ばす。腰に手を当てて一気飲み。
 ごくごくと喉が鳴る。
 全部飲み干すと、ティナは大きく息を吐いた。
「ぷはーっ」
 口の端から牛乳が垂れた。
 それをハンカチで拭きふきしていると、いつのまにかリルリィーアお姉ちゃんが台所に入っていたのに気がついた。
「ティナ。無駄よ」
 悲壮な表情でいきなりそう告げた。
 例によって目元まで赤毛が伸びていて目がさっぱり見えないが。
「ほえ?」
「昔、あんまり大きくなるから飲むのやめたんだけど……無駄だったのよ」
 リルリィーアは自分の胸に手を当てた。
 エプロン越しにもその大きさがよくわかる。よくわかんないんだけどお姉ちゃんとこの捜査官のみんなは大きいお姉ちゃんの胸が大好きらしい。
 ティナは自分の胸をさすった。
 平たい。
「だからね。たぶん飲んでも無駄よ。どうせティナはまだ若いんだから今ライクらでも大きくなるから」
「えーと、こっちじゃなくて、こっちなんだよ」
 ティナは胸から自分の頭の上に手を動かして、うにょーんと高く上げた。
「背のほう」
「……そう、そりゃすまなかったわね」
 リルリィーアはそういうとぷいと台所から出て行ってしまった。
「……なんか悪いことしたかなぁ」
 ティナは首をひねった。
 とりあえずジョッキは洗って戻しておこう。ティナは洗い場に向かった。


お題もの書き:開花参加作品

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