青空に太陽が高く昇っている。
ティナはお小遣いを握りしめて神殿の裏から飛び出した。
「行ってきます〜」
「こら、あんぱんばっかり食ってると身体壊すわよ」
リルリィーアお姉ちゃんの声を無視して駆けていく。
石畳の上を走ると足音が左右の家に反射してぺちぺち聞こえる。
角を曲がって通りに出るとすごい人だらけだった。
パン屋の前には行列ができていた。
「うわっ。すごい。こんなの初めてだよ」
こんな大人気だったなんて知らなかったよ。
銀貨を握りしめる手のひらが汗ばむ。
しかし、変なことに気がついた。
「あれ? 隣の店?」
行列はパン屋さんの前を通過して、その先に伸びていた。
とりあえずティナはパン屋さんに向かった。
行列をかき分け、むぎゅーっと無い胸をつぶされながらもなんとかパン屋さんの前まですり抜けた。
パン屋さんの店頭には黄金のあんぱんが置いてあった。先日ティナがプレゼントしたものだ。
もっとも本物の黄金ではない。と思うが。
「おじさん、こんにちは」
パン屋のおじさんは浮かない顔をしていた。
「ああ、ティナちゃんか。こんにちは」
そしてため息を一つ。
「どうしたの? 元気ないけど」
「こんなんじゃ仕事にならないよ」
人の列で店の前が埋まっている。これではさすがに邪魔だ。
「うーん。隣って何屋さんなの?」
「隣もパン屋なんだよ……」
おじさんはうなだれてしまった。
「おじさんにはあんぱんという武器があるじゃないの」
「うう、それが。倉庫が何者に爆破されて小豆が手に入らなくなってしまったんだよ」
「ほえ?」
ティナは目を大きく見開いた。
「だから、次に小豆ができる秋まであんぱんはないんだ」
「えーっ!」
ティナが珍しく悲鳴を上げた。