スーパーロボット大戦0.8X外伝
破壊天使の翼〜サイコドライバー・ユウジ〜
『第四章:イングラム=プリスケン』
ゼ=バルマリィ帝国ラオデキア艦隊旗艦ヘルモーズ
「……………」
「何か聞きたいことがあるようだな」
「ああ」
その奥底……実験器具が並ぶ研究室で、ユウジとイングラムは対峙していた。
イングラムは、ゼ=バルマリィ帝国の士官礼服の格好で。
ユウジは……全身を妙な機械で拘束されつつ、ごてごてとパイプを接続されたりなんかして
「その様子では、思い出したようだな……」
ニヤリ。
数年来親代わりだった男が、口元を歪めて冷酷とも思える皮肉そうな笑顔を浮かべる。
「喜んでんじゃねーよ……ったく、自分を浚った相手の言うことホイホイ聞いてたなんて、俺も情けねぇよなぁ……」
そう。
ユウジ=イクスは全て思い出したのだ、自分の過去を。
「水瀬勇司。日本国籍で現在は……もう16になったな。本来なら今頃高校行って彼女なんと平和に暮らしてるものをっ……!」
くくぅっ! と悔恨の涙を流したりするユウジ君。
彼女、のところで幼馴染な女の子のことを思い出したがそれはそれ。
「ったく……何で俺なんだ?」
「お前が、俺が求めるサイコドライバーの一人だったからだ」
「……うわ、やっぱり」
「あの歳でアヤを超える素質を持つ、お前を見つけられたのは……幸運だったな」
だからといって誘拐ですかおっさん。
ユウジの……いや、勇司の白い視線を受けて、ふん、と鼻を鳴らすイングラム。
「お前を完璧なサイコドライバーにするには、早々に訓練と研究を重ねる必要があった。それだけだ」
「幼児誘拐……」
ぼそり
呟いた言葉を聞いたか聞かずか。
「で、あんたは……俺を使って何をするつもりだい? イングラムの旦那よ」
キッと睨みつける勇司に、男は薄ら笑いを浮かべて。
「簡単なことだ……」
「くっ……」
その態度に、罵声を浴びせようとした勇司だったが……
「ユーゼス=ゴッツォを倒すためだ」
「…………は?」
意外すぎる言葉に、勇司は目を点にしてアングリと口をあけた。
それから幾らかが過ぎ。
「気分はどうだ?」
「……最悪だ」
場所はかわらず……勇司は今、全身を縛る機械によって「再調整」を受けようとしていた。
「脳改造を受けようとしている人間が、喜ぶもんかよ」
「ククク……だが、お前は私のために、私の武器として、道具として生きることに喜びを見出すことになるだろう……」
「それは変態の台詞じゃーっっ!」
がしがしがしがし
機械をぶち壊そうと暴れるが、体は微動だにしない。
「てめぇ! イングラムの旦那だけにあきたらず、俺まで操り人形にしようってか!? ふざけんじゃねぇっ!」
「ほぉ……」
目の前の人物……ユーゼス=ゴッツォは、仮面の中で目を細めた。
「やはりあの男、制御が浅くなっていたか」
「てめぇは……ふん、聞いたぜ、イングラムの旦那が裏切ったのも、スパイ活動していたのも、全部てめーの差金だってな、この黒幕野郎っ!」
「ククク、あの男、不必要なことは喋らぬはずだろうに、随分とお前に情が移ったようだな」
「っせぇっ! 洗脳しねーと人を動かせねぇ、最低野郎が! 死んじまえぇえーっ!」
ばちばちばちぃっ!
ユーゼスの眼前がスパークする。
「……っ……!」
仮面を抑えてうずくまるユーゼス。
その仮面の下から、つつ……と血が滴りおちた。
「これは驚いた……攻撃敵に志向性を持たせた思念を収束して、ぶつけてきたとは……素晴らしい」
邪悪な薄笑いを浮かべて、ユーゼスはうめいた。
「サイコドライバー、ユウジ=イクスよ……我が剣となれ。そして、全てのしがらみを砕き、全ての愚物を屠りさるのだ……ククク、私だけのためにな……ふははははははは!」
がこん
再洗脳のために、ユーゼスは機械のスイッチを入れる。
全身を拘束されている勇司に出来ることといえば……ただ一つ
「やめろおおおおおおおおおーっ! ジョッカぁぁぁぁぁぁぁ! ぶぅっとばすぞおおおおおおおっ!」
ノリダーの真似だった。
今日もロンド=ベル隊は辛くも戦闘を潜りぬけ、戦域から撤収しようとしていた。
「ふぅ……」
鋼鉄のコックピットの中で、一息つくリュウセイ=ダテ。
『お疲れ様、リュウセイ』
『今回も命辛々生き延びたが……今のままでは、次の戦いに敗北するかもしれんぞ?』
苦労をねぎらうアヤと、口五月蝿いライ。
これもいつものことである。
そして……
『リュウ……調子はどうだ?』
「ああ、なんともねぇよ。ピンピンだぜ」
『そうか……ならいいが、無茶はするな』
ぶっきらぼうだが、何処となく心配しているのが丸わかりな口調で、もう一つ別の通信が入ってくる。
レビ=トーラー……かつてエアロゲイダーでユーゼスに操られていた少女だ。
彼は様々な事情を経て、今R−GUNにのっている。
そう、彼等のSRXはようやくR−GUNを含めた4体合体を果たしていたのだ。
「さてと、それじゃ帰るか、ライ、あとは通常飛行だけだろ、操縦たの……」
ピシッ!
「!」
『!!』
『!!!』
「……どうした? リュウ、アヤ大尉?」
リュウセイとアヤ、そしてレビまでもが緊張に息を呑む。
SRXチームで唯一念動力をもたないライは、この反応にいぶかしんだ。
「こいつは……」
リュウセイが呟きかけた直後。
……ヴン……
「重力反応だと!? 何かが出現する!」
ライも状況を把握する。
撤退するロンド=ベルの進行を妨げるかのように……
前方の宙域に、目映く輝く光の柱が降り立った。
そこには……
「な……」
「これは……!」
「紅い…………アストラナガンだと!?」
真紅の翼を広げ、そして佇む巨大な真紅の天使……
それはまさしく、イングラムのアストラナガンと同じものだった。
『俺は…………』
キィィィィィィィィィィィィィィィン!
『俺は……ユウジ。ユウジ=イクス……』
「ユウジ!?」
思念の『声』と共に……
「なっ!」
「機体が!?」
周囲の宙域のほぼ全てのロボットが作動不能となる。
「どうなってやがる!?」
『リュウ……Tリンクシステムをもつ機体意外は、全て動作をおさえられているわ!』
「なにぃっ!?」
つまり、この戦場で戦えるのは……念動力者のみ
『戦え……念動力者達よ……。最強のサイコドライバーを生み出すために』
ばさっ
目の前の……紅い堕天使が翼を広げる。
『この破壊天使、アストラルの糧となるのだ……!』
ユウジの声で……
今、サイコドライバー達の戦いの開始を告げる言葉が宣言された……!
とぅー・びー・こんてにゅー