「嗅覚」



 消えないのは………血の匂い。
 鼻の奥をつんと衝く金臭い匂い。

 ヘモグロビンを酸素担体に選んだ日からの原始的な記憶。
 自分を傷付けたときも。
 他者を傷付けたときも。
 いつも嗅いでいるのはこの匂い。

 いつしか脳裏に刻み込まれていて。だから。
 いつしか嗅ぎ慣れてしまっていて。

 最後の台詞を告げたとき。
 確かにわたしが嗅いでいたのは血の匂い。


mailto:不観樹 露生
不観樹露生的短詩