「狂気と凶器は………」



 後ろ向きな感覚があるとするならば。
 そのものに支配されて。

 内臓の中から吐き出しそうな激情と。
 奇妙に冷たく汗ばんでいる皮膚と。
 作ることのできない表情と。

 沈み込む。
 ただ沈み込む。
 音を聞きながら。
 自分の鼓動を聞きながら。

 身体が動かない。
 それは。
 心が動いていないから。
 恐怖に心が竦み上がっているから。
 何への?
 自分への。

 腕を振るえば。何かを砕くこともできてしまう。
 言葉を振るえば。心を砕くこともできてしまう。

 柔らかい自制の粘土の中に包まれた。
 激情。
 激情。
 激情。
 他人を愚か者と呼び。
 他者を傷つけ。
 全てを破壊せずにはおかない。
 激情。

 腕を食む。
 右の腕。上腕二頭筋に。歯型をつける。

 自分の中で荒れ狂う生命の暴力衝動を。
 制御しつつ。
 恐怖する。

 そして気がつくと。
 酒量が。増える。

 狂気と凶器だけは。他人に見せずに。
 生きる。


mailto:不観樹 露生
不観樹露生的短詩