ホール岡路工房岡路庵-キャンペーンシナリオ作成のスゝメ

キャンペーンシナリオ作成のスゝメ

 EL。のサイトで紹介している「魔法童話の形態学」の諸機能を使いシナリオを作成することは、とても容易にできます。それぞれの機能を決まった形で組み合わせ、肉付けをするだけでよいのですから。
 しかし、無闇矢鱈に肉付けをしても、それが面白いシナリオになる保証はありません。
 単発のシナリオならば、軽い気持ちでシナリオを作成し、時には変った趣向を試してみるのもいいでしょう。しかし、キャンペーンゲームを行う場合は、感動的な結末を迎えたいものです。

 こちらでは、なるべくお手軽に参加者に感銘を残すキャンペーンの組み方を、拙い知識量しか持たない身ではありますが、EL。が考えたものを紹介しています。
 是非、こちらで紹介している手法でキャンペーンシナリオを組み、ゲームを遊んでみてください。

 また、「こういうテクニックもあるよ」と紹介していただけるメール、「使えねぇ」「おめ、それちげーよ」といった厳しいご指摘などもも歓迎しています。そのようなメールはEL。宛までよろしくお願いします。


 まず、キャンペーンをどれほどの長さにするのか、これは結構思案するところだと思います。
 上手な物語が踏襲している筋を表す言葉に「序破急」「起承転結」などがあります。
 「序破急」は、
 まず「序」物語の世界が語られる部分があり、
 「破」序で語られた状況に事件が生じてそれまでの秩序が破られることが語られ、
 「急」目まぐるしい展開を通して事件が収束する様子が語られることを現す言葉です(多分←ぉぃ)。
 「起承転結」は、これはもう義務教育で習うものなので知らない方は居ないでしょうが、
 「起」事件が起こり、
 「承」それがどのように発展するのかが語られ、
 「転」発展した事件が一転して異なる様相を見せ、
 「結」事件が纏められ、結末を迎えることを現しています。
 二者では、「これまでの様相が一転する」ことが共に語られています。読者の意表をつくことで、相手にカタルシスを与え、喜んでもらうことを目的としているのです。この点に注意しプロッドを構成すれば、いくらでも短く、かつ面白いキャンペーンを作成することができます。最小単位のキャンペーン全体の量としては、それぞれ一話に「序」や「結」などの役割を持たせた、全3,4話の構成を考えるのが良いでしょう。


 ドラマやアニメなどのテレビ番組では、13回を一区切り(1クール)とする手法が使用されています。これは、毎回何かの事件の発端が語られ、次の回で前回語られた事件が結末を迎える、ということが6,7回繰り返されながら徐々に大きなうねりとなり、最後には大団円を迎えるという手法で語られているからです。
 わしも勉強不足故、「なんで6,7回繰り返すねん」とか「それだけの理由で13回?」とか問われても答えに窮するのですが、とりあえずこの、13回という回数でキャンペーンを行う際、「魔法童話の形態学」で語られたことをいかに、より効果的に運用するかを、以下でお話いたします。

1〜2話目「導入部〜発端まで」

 魔法童話の形態学では、まず「導入部」があります。この部分では主に、主人公とその環境が語られ、それが非常に平和であるか、逆に不幸であるかが語られます。
 平和な環境は、後に訪れる不幸な事件を強調するために、不幸な環境は終局で訪れる幸せな状況を強調するために描写されます。故に、GMもまずキャンペーンが始まったら、PCにこれらの初期状況にある、という認識を徹底させましょう。その認識が強烈であるほど、崩されたときのショックもまた大きいのですから。
 キャンペーンの最初の一話は、この「初期の状況」の認識をPCに徹底させるのを主目的に作りましょう。またキャンペーンの1話目では、まだPC間の相互理解が行き届いていないので、これを解決するのも重視すべきです。
 この2点を解決するために、シナリオはあまり世界の謎といった深い事情には分け入らず、PCの身近で起きた事件を、顔見せを行う程度の気持ちで、軽いシナリオを用意するのが良いでしょう。

 1話目で自分の置かれている立場に対する認識がしっかり行き届いたところで、GMは次にPCの背景世界が、今どのような状況に見舞われているのか、を説明しましょう。
 これは1話目で同時に行っても構いませんが、2話目で行う方がより良いと思います。
 その理由は、まず1話目はPC間の関係付けを行うのに専念したい、ということ、そして世界の状況について語るときは、PCたちが最終的に達成するべき目標も同時に語るのが伏線を張るという上で良い手法であり、そうなると途端にPCに渡される情報量が多くなり、情報を整理するので手一杯で、1話目で目的とする、PCたちの相互理解を深める事の障害となるからです。
 何故キャンペーンの最終目標をこんなに早い時期で語るのが良いか、というと、それは、キャンペーン終盤でPCが最後の目的を認識したときに、それが以前から自分達に関わりのあるものであった、と思わせ、彼らに「宿命」を感じさせるためです。
 「自分らがやるべきこと(自分らにしかできないこと)」と、「別の人でもできること」では、目標を達成しようという意欲、ひいてはキャンペーンを成功させる確率が大きく異なってきますから。
 異常の理由で、2話目は大きな事件の起きるシナリオを作成しましょう。その事件が大きければ大きい程、1話目とのギャップが生まれ、参加者たちはより楽しむことができます。2話目は1話目とうってかわって、PCが整理しきれない程の情報を放出するくらいで構いません。混乱していた方が、後で納得したときの感動が大きいからです。

3〜7話目「贈与者達、及び第一行程」

 導入が済み、PCが自分の置かれている状況を認識し終えたら、いよいよキャンペーンの本番のスタートです。
 第一行程は、主人公が最初の冒険を行う部分です。
 もし、13話という長いキャンペーン(週1回行うとして、3ヶ月も掛かります)では無くもう少し短いキャンペーン(6〜7話くらい)にしたい場合は、第一行程はすっぱり切って、第二行程に当たる部分から冒険を開始しましょう。

 EL。は第一行程では、導入で伏線を張った、PCたちが達成すべき最終目標とは一見異なる目標を、PCたちに解決するべき目標として与えるのが、もっとも簡単に、面白いキャンペーンを作成する方法であると考えます。
 このことにより、PCの存在している世界に厚みを持たせ、内容の濃いキャンペーンだったとプレイヤーに回顧させることができます。
 日本人のゲーマーにとっては、「ボスの後ろに真のボスがいる」という状況は慣れ親しんでいることと思いますが、「主人公の探してきたアイテムは偽者だった」「祖国に帰ると、そこは荒廃しきっていた」といった描写でこのような手法を取り入れ、第一行程の終わりを表現している有名作品も数多くあります。
 第一行程の目的は、本来PCたちが辿るべき道筋とは異なる道に彼らを導き、キャンペーンで彼らが解決すべき問題を、異なる視点で描写することにあります。(ちなみに第一行程と第二行程の間にまったく関わりが無かった場合、それは2つの違うキャンペーンをやっているだけということになります)
 また、第一行程でPCたちに、キャンペーンの謎を解くべきパターンを体験させ、第二行程の運営をスムーズにするためでもあります。(この点は第一行程の製作をしている段階では、それほど気にすることはないでしょう)
 第一行程をどのように組み立てるかについては、先に挙げた「序破急」「起承転結」を使った、短いキャンペーンを作成する方法を使いましょう。

8話目前後「インターミッション」

 魔法童話の形態学では、第一行程の終了後は、第一行程と同じ状況が繰り返され、その後第二行程に移るという機能の反復パターンが語られていますが、これは一つの物語自体が「3回化」されていることを現しています。
 再生怪人しかり、ラスボス前のボスパレードしかり、一般的に娯楽物では繰り返される行程はおざなりに語られるものですが、これは、2度目を軽く流すことで、3度目の反復への集中力を散らさないためのテクニックです。
 しかしTRPGは、他のメディアに比べて自分とPCの同一性が非常に高いゲームです。そうなると、2度目をおざなりに流してしまうと、3度目の反復にも軽く流そうという態度の影響が出てしまうこともありえます。

 そこでEL。は、第一行程と第二行程の間には息抜きとなるシナリオを一本入れることを勧めます。テレビ番組でも、長いキャンペーンの間に、まったく関係の無い話しが挿入されることがよくありますね。それを行いましょう。

 息抜きシナリオを行う利点には、第一行程を行うこと同様、キャンペーンの背景世界により厚みを加えられることがあります。
 また長く緊張の糸を張っていては、いつ疲労で切れてしまうやも分かりません。そこでここらでひとつ肩の力を抜いて、糸を張り替えましょう、気持ちを後半に向けて切り替えましょう。とPCに提案する意図もあります。

 GMにとっても気持ちを整理する用途でセッションを行うのは同じですが、シナリオ製作となると話しは別です。
 このインターミッションで用意するシナリオは、第二行程の前哨戦となるものです。何故かというと、インターミッションで使用するシナリオは、第二行程全体と同じく、第一行程のパロディであるべきだからです。
 シナリオを作る際、GMはこれまでのキャンペーン中に行ったセッションをまとめ、その大まかな流れがどのようであったかを復習しましょう。そしてその流れを、1本のシナリオにまとめ、インターミッションという衣を着せてセッションを行うのです。
 しかし、そのことをプレイヤーに告げる必要はありません。これはキャンペーンが終了し、後に回顧した際、「あ、これはこんなことだったのか!」とPCに叫ばせる喜びを、GMに提供する試みなのです。

 3,4回、もしくはそれ以上かけて歩んだ行程を一つのシナリオに纏めるのは、困難を伴うでしょう。もしどうしても纏まらなかった場合は、第一行程のパロディ構成にすることを諦めても構いません。インターミッションを行う一番の目的は、息抜きですから。

9〜12話目「第二行程」

 第二行程は、主人公が自分に課せられた本来の使命に気付き、それを達成させることが語られる部分です。
 第一行程で十分な成長を果たしたPCたちに、真に果たすべき目的が提示され、これとの対峙を宿命付けられるのです。

 EL。は、第二行程は、第一行程の精巧なパロディであるべきだと考えます。
 映画で続編が作られた場合、その作品をよく分析してみると、色々な登場人物だけでなく、基礎となる物語のプロッドも1作目を上手く踏襲したつくりになっていることに気がつきます。
 これは、そうすることでシリーズらしさを醸しだすテクニック、ではありますが、むしろ1作目を真似るという方法により、1作目を反省し、より洗練した物語を製作しているテクニックであるともいえます。

 13話構成のキャンペーンでも是非これと同じことを行いましょう。インターミッションを作成できたGMなら、自分が素材を提供し、PCたちと組み上げたキャンペーンの基本構造が既に理解できているでしょうので、根幹を変えずにより面白いプロッドを練ることはそう難しいことではなくなっていると思います。
 あとはプレイヤーたちにも、第二行程が第一行程のパロディであることを気付かせ、そのことを楽しみながら大団円に向かうだけです。
 勿論、ただ第一行程と同じことを繰り返すだけではだれること必至ですから、第二行程では、第一行程を踏まえてGMはPCの行動を予測し、彼らの期待を裏切る良い展開を提供すべきです。

13話目「終局」

 魔法童話の形態学による分類では、第二行程の中にエンディングまでの全ての機能が含まれています。
 しかし、EL。は終局は、第二行程の終了後に1つのシナリオを用意して演出するべきである、と考えます。
 テレビ番組や漫画などでは、最後の事件(「葛藤」)の解決イコール物語の終了、というパターンが定番になっています。しかし、ラスボスを倒したらそれで終わり、プロポーズに良い返事が返ってきたらそこで終わりというのではなく、その先に語られる余裕があってこそ、物語は面白いのではないでしょうか?
 ハッピーエンドを前提に話しをしますが、たまに「こいつら結婚しても、すぐ破局迎えるだろうなぁ」というカップリングのドラマや、「お前ら地の果てまで行ってラスボス倒したはいいけどさ、どうやって元の世界に帰るよ」とツっこみたくなるアニメがあります。そうではなく、できうるものならばエンディングでは「それから彼は、一生幸せに暮らしました」と物語り、その一文が聞き手の心に染み入るものにしたいものです。

 そこでEL。は、すべての葛藤が解決され、終局を迎えたあとに、もうひとつシナリオを作成し、キャンペーン最後のセッションを行うことを推奨します。
 語る事はもはや無い、ということは無いと思います。大きなキャンペーンの主題となるような大事件が起きたのなら、世界のどこかに、その事件によって影響を受けた歪みが残っているはずです。また、1話目のセッションを踏襲したインターミッション的なセッションを行い、物語の円環を閉じることもできます。
 全てに決着がつき、以後PCたちがお蔵入りすることになっても、彼らがキャンペーンを通して体験してきた世界で今も生きている、という余韻をプレイヤーたちの心に残して終了できたら、素晴らしいことだと思いませんか?
 「蛇足」ではなく、「有終の美」を飾りたいものです。


 上に挙げた1クールのキャンペーン案は、インターミッションや終局、第一行程などを削ることで、6,7話程度の中規模の長さのキャンペーンとして行うこともできます。
 決まった面子が確実に集まってTRPGを行える機会のことを考えると、それくらいの長さのキャンペーンを行う方が、1クールのキャンペーンを組むよりは楽しく遊べるかもしれません。

 環境によっては、より長いキャンペーンを遊ぶこともできます。社会人になっても続いている幼馴染同士の付き合いとか、少々の面子の入れ替わりがあっても士気に影響の少ない、サークル活動でのゲームなどです。
 そういった長いキャンペーンを遊ぶ人には、今更助言など不要かと思われますが、あえて口を出させていただくなら、終わりの見えない長大なキャンペーンを遊ぶよりは、主役を変え細部を変え、第一行程を延々繰り返す手法でキャンペーンを行いましょう。「偉大なるマンネリズム」という奴です。
 こういったキャンペーンの場合、「興奮する事件を解決する」楽しみではなく、「別の人生を模擬体験する」楽しみを、むしろ主眼に置くのがよいかと思います。

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