コンベンションで失敗せずに「GM紹介」を行うためにどうすればよいか。そのためには、まず聞き手がいかなる目的を持っているかについて理解し、押さえるべき内容を知る必要がある。
基礎となる理論部分を習得したら、次は実例を踏まえて組み立てと工夫を習得し、回避すべき事態にどのようなものがあるかについて学習する。
当日に卓決めを行うコンベンションでGMをやる場合、しばしば開会式の後に「GM紹介」を行うことになる。これについて整理を行う。
GM紹介は、プレイヤー参加者が以下の3点を見極めるのを補助するために実施されていると考える。
GM紹介の第一の目的は、GMのマスタリングスタイルと自分のプレイングスタイルとの相性の好悪を推察することにある。
第二の目的は、GMがコンベンションでのGMをするに足る視野の広さ、誠実さ、公平さ、聡明さ、忍耐強さなどの資質を持っているかを推察することにある。
最後の一つは、その日のコンディションを観察することにある。
GM紹介の第一の目的は、GMのマスタリングスタイルと自分のプレイングスタイルとの相性の好悪を推察することにある。
TRPGは多様なプレイスタイルを受容する反面、プレイスタイルの組み合わせによっては、すりあわせるよう努力しても極端な結果をもたらす危険性を持つ。
コンベンションへの参加は多大な時間を要する以上、プレイヤーは充実した時間をすごそうと、相性の良いスタイルかどうかを可能な限り知りたがっていると考える。
第二の目的は、GMがコンベンションでのGMをするに足る視野の広さ、誠実さ、公平さ、聡明さ、忍耐強さなどの資質を持っているかを推察することにある。
これは「コンベンションに不向きなGM」や「いい加減なGM」を排除するためである。
この点は、GM紹介だけでなくプレイヤーとの質疑応答での振舞いなども重要な検討材料となると考える。
最後の一つは、その日のコンディションを観察することにある。
ここでのコンディションは肉体と精神、双方での充実度合を指す。この点についてのみ見れば、GM紹介は競馬における「パドック」に相当すると言える。
(1)にてGM紹介の目的を整理した。今度は、GM紹介に盛り込まれる要素についてまとめを行う。
以下の内容は『TRPGがもっとやりたい!!』のp22にある囲い記事「GM紹介について」を参考にして作成した。
GM紹介で伝えるべき内容として、重要なものは以下の6点に整理できる。箇条書きの後に順次解説を加える。
「GM名」はコンベンションの日、一日を通じて用いられる呼称である。卓内では「マスター」「GM(ジーエム)」で通じるが、主催者側からのアナウンスなどは「GM名」が使われる。呼ぶ側・呼ばれる側の双方が恥ずかしくない名を用いるのが望ましい。
「システム紹介」は、立卓を予定しているシステムを紹介することを指す。システムの正式名称、出版された時期、使用する用具などに加え、システムの要点を説明する。
「想定プレイ人数」はセッションが円滑にプレイ可能な人数(幅)のことを指す。
「シナリオ傾向」は、事前準備でどういった展開を想定しているかについて「ダンジョン攻略」「事件捜査」というように端的に説明を加える。
「GMスタイル」は、ルール運用をどれぐらい厳格に行うか、ロールプレイの盛り上がりに力を割くか、単独行動を認めるか、PC間での敵対行動を許容するか、などについての説明。
「初心者対応」は、TRPG初心者およびシステム初心者に対応する余裕があるかどれだけあるかについて。
卓内では「マスター」「GM(ジーエム)」で通じるが、主催者側からのアナウンスなどは「GM名」が使われる。
本名である必要性はないが、読みにくい/呼びにくい名前は避けるべきである。
呼ぶ側・呼ばれる側の双方が恥ずかしくない名を用いるのが望ましい。
会場の外でも使うことを想定しつつ、適切な呼称を選ぶこと。もし検討せずに不適当な名前を使えば「視野が狭い」と評価される可能性がある点に注意。
システムの正式名称、出版された時期、使用する用具などに加え、システムの要点を説明する。
システムの要点を説明することには、以下の2つの効果がある。
「シナリオ傾向」は、事前準備でどういった展開を想定しているかについて「ダンジョン攻略」「事件捜査」というように端的に説明を加える。
これはシステムにあった傾向のシナリオを用意できているか、そもそも事前準備を行っているか、などの判断材料となる。
「GMスタイル」は、ルール運用をどれぐらい厳格に行うか、ロールプレイの盛り上がりに力を割くか、単独行動を認めるか、PC間での敵対行動を許容するか、などについての説明。
この点を考えるにあたってはM・あろっく プレイスタイル傾向表が参考になる。また、卓上RPG六つの道やプレイスタイルの違いを踏まえて求める先などを参考にして、自分がGMする際に最も強く想定しているプレイスタイルを整理しておくのも有益である。
「初心者対応」は、TRPG初心者およびシステム初心者に対応する余裕があるかどれだけあるかについて。
以下の2点を押さえておく。
『TRPGがもっとやりたい!!』 (TRPG:サプリ編集部,アトリエサード,2003.8.29,B5p144,4-88375-046-9)
(2)に引き続き、『TRPGがもっとやりたい!!』を参考にしつつ、追加項目を整理する。
「ルール・レギュレーション」は、基本システムやサプリメント、ハウスルールなどのルール群の中からどのルールを採用するかについて。また、キャラクター作成の方式についての説明もここに入る。
「世界観を理解するのに参考となる作品群」は、ゲームと雰囲気の近い映像作品やゲームや書籍コミックなどについての説明。
「その他の選考にあたって参考になる情報」は、予想されるシナリオの展開上で倫理的に不適当な状況があるかなど。また、GMとしてシナリオに参加して欲しくない人についての言及もここに含む。
また、キャラクター作成の方式についての説明もここに入る。
プレイヤーがルールに則り、自作する場合もあるが、時間的制約などから部分的にGM側で用意していることも多い。
「その他の選考にあたって参考になる情報」は、予想されるシナリオの展開上で倫理的に不適当な状況があるかなど。
端的には、シナリオ上で必要となる暴力的描写と性的描写の有無など。
また、GMとしてシナリオに参加して欲しくない人についての言及もここに含む。
公式シナリオや別のコンベンションで既に使用したシナリオである場合、内容を知っているプレイヤーに参加を自粛してもらうなど。
これまでGM紹介の目的については(1)で、内容については(2)および(2.5)で言及した。具体的なGM紹介の手法について整理を行うため、今回は「GM紹介」の例文を提示する。
以下の文章は実際にコンベンションで行ったGM紹介を元に作成したものである。
おはようございます。「へろへろファンタジー」のマスターで立候補させていただいたアキトと申します。
「へろへろファンタジー」というのは2002年の夏に発売された『TRPG大饗宴』という本(手に持った本を見せる)に収録されたライトファンタジーもののシステムです。
このシステムはキャラクターの能力をすべてカード形式で表現してまして、カードゲームやコンピューターRPGのようにサクサクと戦闘を楽しめるのが特徴です。本来はルールブックを見ながら遊ぶんですが、今回はラミネート加工したカードを用意し(カードを見せる)、初心者の方でもお手軽に遊べるようにしてあります。
世界観は魔法があって竜とお姫様がいるファンタジー世界です。PCたちにはその世界の駆け出し英雄として数多くの冒険に乗り出してもらうことになります。
短めの依頼を数十本用意してありますんで、その中からプレイヤーのみなさんのお好みで12,3本ぐらいを遊ぶことになるかと思います。おそらく成長は3〜4回でしょう。
あと、軽快な戦闘がウリなシステムですから、二十回ほど戦闘がはいるかと思います。なのでサイコロを転がすのが楽しい方はこちらの卓に来ると幸せかもしれません。
……ライトでほのぼの風なファンタジー世界で、殺伐とお手軽キャンペーンを遊びたいという方は、どうぞウチの卓に来て下さい。
『TRPG大饗宴』山北篤/山本弘/高平鳴海/和栗朗/鈴木銀一郎/設楽英一,エンターブレイン,4-7577-0868-8,B5判p176
以下の文章は実際にコンベンションで行ったGM紹介を元に作成したものである。
およそ600文字。この程度であれば1分で読むことができる。
10.15追記にて「600文字」とあるが実際に数えてみると500字弱であった(かっこ書きの部分などは除いて計算)。
600字を1分で読むことはかなり容易にできますが、聞いている側からするとちょっと早いので聞き取りにくいです。
アナウンサー学校などで習うと、「300字で1分が、聞いている人間が確認しながら理解できるスピード。画像などの補助ツールを使う場合、理解が促進されるので、400字で1分」とのことです。
以下の点で「GM紹介は一般のアナウンスより早口でも理解が損なわれ難い」と考える。が、それでも一分間で500文字は多い。
「制限時間1分」というように厳密に時間設定がされている場合は、以下の2点を押さえるのが妥当と考える。
具体的なGM紹介の手法について整理を行うため、今回は「GM紹介」の例文を提示する。
これが理想的なGM紹介であるというわけではない。
(3)の例文を元にした、GM紹介の整理を行う。
まずは全体を段落ごとの7つに分割する。
おはようございます。「へろへろファンタジー」のマスターで立候補させていただいたアキトと申します。
まずは挨拶と自己紹介からはじめる。挨拶は元気良く丁寧に行い、自己紹介の際には軽く会場内を見まわすようにする。
「へろへろファンタジー」というのは2002年の夏に発売された『TRPG大饗宴』という本(手に持った本を見せる)に収録されたライトファンタジーもののシステムです。
次いで立卓予定システムの概要を述べる。刊行された次期やどういったジャンルの作品かについて触れる。この際にルールブックを手に持つことで以下の効果が見込める。
このシステムはキャラクターの能力をすべてカード形式で表現してまして、カードゲームやコンピューターRPGのようにサクサクと戦闘を楽しめるのが特徴です。本来はルールブックを見ながら遊ぶんですが、今回はラミネート加工したカードを用意し(カードを見せる)、初心者の方でもお手軽に遊べるようにしてあります。
ルール面からのシステム紹介を行う。ここでの紹介は「GMがそのシステムをどのようにイメージしているか」を伝えることが主眼となる。また特に使用する道具がある場合はそれについても触れる。
世界観は魔法があって竜とお姫様がいるファンタジー世界です。PCたちにはその世界の駆け出し英雄として数多くの冒険に乗り出してもらうことになります。
世界面からのシステム紹介。世界全体のイメージとその世界でPCたちに与えられる役どころ(立場および課題)について簡単に触れる。
短めの依頼を数十本用意してありますんで、その中からプレイヤーのみなさんのお好みで12,3本ぐらいを遊ぶことになるかと思います。おそらく成長は3〜4回でしょう。
シナリオ傾向。ここでシナリオのイメージや重点的に楽しんで欲しい部分(交渉や謎かけ,戦闘など)について言及する。
あと、軽快な戦闘がウリなシステムですから、二十回ほど戦闘がはいるかと思います。なのでサイコロを転がすのが楽しい方はこちらの卓に来ると幸せかもしれません。
マスタリングの方向性およびそれと相性の良いプレイヤー像について。裏返せば、セッションを楽しむ上でプレイヤーに要求する事項であり、慎重な発言を要する。
……ライトでほのぼの風なファンタジー世界で、殺伐とお手軽キャンペーンを遊びたいという方は、どうぞウチの卓に来て下さい。
最後に「誰にどうして欲しい」かをきちんと明言する。メッセージ性が強くなるように視線を使い、軽い会釈を加える。
今回は「GM紹介で言ってはいけない一言(禁句)」について理由を添えて列挙していく。今回とりあげた禁句は以下の3点である。
「一昨日に買ってきた……というシステムをやります」
GMが担う重要な役割として「ゲームの進行」がある。ルールはゲームの進行手順について記述したものなのだから、GMにはルールについてある程度の理解と知識が要求される。上記の発言はこの点で問題がある。
発言は以下のような二通りの理解が成立する。
聞き手にとって重要な情報は2.である。しかし、発言は示唆に留まっており、肝心の情報を提供しておらず、問題がある。
「英語ができる人、来てください」
日本人は英語ができる。なぜなら、アルファベットが当然のように読めて、単語についてもある程度の知識を持っているからである。しかし、普通はそれだけで「英語ができる人」とは自認しない。
というのも、言語は文字や単語の他に、文法や慣用表現、思考様式など、非常に多くの要素を含んでおり、「英語ができる人」であるにはそれらを一定の水準で習得してなければならないからである。
そしてどの程度で「英語ができる」とするかについては往々にして食い違いが生じる。
ところが、上記の発言では要求される英語レベルについてまるで言及が無く、結果として「要求されるレベルが自分の水準より高かった場合は、一日を棒に振ってしまう」という危惧を参加者に与えてしまう。
「今日は寝ていません」
セッションに支障をきたすようなコンディションでGMに立候補するのは問題である。が、重要なのはGMを遂行できるだけのコンディションであるかであって、寝不足であれば即座にGMとして失格となるわけではない。
上記の発言は以下の3通りの理解が可能である。
(1)で言及したように、参加者は「GMの調子」に大きな関心を持っていると考えられる。よって、1.であれば有益な情報を提供していると言える。
しかし、この発言は2.や3.のような問題発言として理解をされうる点は注意を要する。
今回とりあげた禁句は以下の3点である。
文章量の関係で数を絞った。これ以外にも適当な禁句を追加でとりあげる予定である。
発言は以下のような二通りの理解が成立する。
これ以外にも以下の理解が成立する。
もちろん、新しいシステムを試すためにコンベンションなどでGMをすること自体が問題なわけではない。ただ、その場合はきちんとその意図を明示した上で立卓を図るのが適当と考える。
ところが、上記の発言では要求される英語レベルについてまるで言及が無く、結果として「要求されるレベルが自分の水準より高かった場合は、一日を棒に振ってしまう」という危惧を参加者に与えてしまう。
未訳ゲームでは以下の点をきちんと明言した上での立卓が好ましい。
「英語を理解する」ことはTRPGを楽しむこととは直接関係しない行為、つまりは無駄であり、それを強いられることは苦痛である。その苦痛よりも「新しいゲームを知る」ことの歓喜が強いのは一部の人間に限られる。
重要なのはGMを遂行できるだけのコンディションであるかであって、寝不足であれば即座にGMとして失格となるわけではない。
睡眠が十分でも別の理由でコンディションが悪い場合も存在する。
(1)で言及したように、参加者は「GMの調子」に大きな関心を持っていると考えられる。よって、1.であれば有益な情報を提供していると言える。
自分にとって不利な情報を開示するという点は評価できる。が、情報は提供するのであれば、誤解を減らすためにもより具体的に述べる方が良い。
例えば「普段8時間睡眠だがシナリオ作るのに手間取って6時間しか寝てない」と「二日間まるで眠っていない」はいずれも「寝不足」ではあるが、明言された際に明らかに違う結果をもたらす。
しかし、この発言は2.や3.のような問題発言として理解をされうる点は注意を要する。
寝不足についての言及は、失敗すると大きなデメリットを生じる。言及をするのであれば、リスクを自覚した上で慎重に発言を行う。
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