はじめに
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- *1)別に「ジャンル論」を論じないというスタンスを採るのを非難するつもりはかけらもない。そんなのはデザイナーじゃなくて批評家の仕事だと思うし。
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- *2)ウォー・シュミレーションゲームの略。将棋など。
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- *3)もちろん何事も例外はあるだろう。ただ、本文では話の都合上、WSG と混同されやすいような RPG のみを取り扱う。
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- (さてさて、どうやってはじめようかな...うん、こうしよう♪)
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- ...えーと、ちょっといいかな。 いきなりの質問でわるいんだけど、ともだちに「RPG ってなぁに?」 ときかれたとしてさ、キミならどう答えるかな?
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- どうだい、きっとこたえられなかったんじゃないかな。じゃなけりゃ、「RPG というのはジャンルを意味するものだから、うまく説明できないんだ。でも、そのかわり個々のゲームのことなら説明できるよ。たとえば、『*&*』 なら...」(*1)とか、「役割を演じる遊びさ。え、それだけじゃあよく分かんない。そいつは困ったな...」とか言ってお茶を濁すんじゃないかな。
- もしその通りなら、それはつまり、キミが RPG のことをうまくコトバで表せないということになるよね。
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- え、ならオマエが説明して見せろだって ?
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- うーん、それはもっともな意見なんだけど...実はボクもよくわからないんだよねー。これでも RPG はずいぶんたくさんやった方だと思うんだけど、なかなかうまい説明の仕方がうかばないんだわ。
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- でも、ものごとをとらえる方法は、「○○とは△△だ!」 なんて風に定義する他にもやり方はあるはずさ。たとえば、「○○は◇◇とは□□というところがちがう」 といった風に比較するとかね。
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- そりゃたしかに、定義するのと比べたら比較するのはちょっとあいまいにならざるをえないよ。けれど、それでも何もしないよりは、はっきりしてくると思うんだ (ふう、やっと話がつながりそうだぞ)。
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- そこで、今回は RPG の 『戦闘(に関する)ルール』 と WSG (*2)を比べてみようと思う。
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- ...なんで WSG と比べるのかって? やれやれ、キミも相当細かいことを気にするタチだねぇ。理由ははっきりしてるじゃないか。ほとんどの RPG では『戦闘(に関する)ルール』がルールの中心に位置している(*3)だろう? だからそれだけ比べるところが多いからさ。
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- じゃ、そろそろ話を先にすすめるとしよう。段取りとしては、まず両者の似ているところについて簡単に話をして、次にちがっているとことについて話をしていくことにするよ。
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似ているとこ
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- *4)平成元年に富士見書房から発売。文庫サイズ。現在はハードカバーの『完全版』が出ている。以下SWと略記。
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- <サンプル>
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- [5.1] 武器戦闘技能
- [5.2] 武器、防具の制限
- [5.2.1] 武器、防具表
- [5.3] 武器戦闘の手順
- [5.3.1] 飛び道具の扱いについて
- [5.3.2] 武器戦闘の選択ルール
- [5.4] ダメージ判定
- [5.4.1] ダメージ・ポイント
- [5.4.2] レーティング表
- [5.4.3] 冒険者が与えるダメージ
- [5.4.3.1] 基本ダメージ・ポイント
- [5.4.3.2] クリティカル
- [5.4.3.3] 追加ダメージ・ポイント
- [5.4.4] モンスターが与えるダメージ
- [5.5] 防御ポイント
- [5.5.1] 冒険者が防ぐダメージ
- [5.5.1.1] 基本防御ポイント
- [5.5.1.2] 追加防御ポイント
- [5.5.2] モンスターが防ぐダメージ
- [5.6] 生命力(点)に受けるダメージ
- [5.7] 気絶と生死判定
- [5.7.1] 冒険者の生死判定
- [5.7.2] モンスターの生死判定
- [5.7.3] 手加減
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- それじゃ、さっそく RPG の 『戦闘ルール』 を WSG と比べてみようか。
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- まずは左下の表をざっと見てほしい。
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- これは『ソード・ワールド RPG 』(*4)の目次から 『戦闘ルール』 部分を抜き出して、すこし整理したものなんだけど、今回はこれを材料にして話を進めてみることにしようと思う。
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- ...サンプルをざっと見てくれたね。それじゃまた質問をさせてもらうよ。いいね?
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- (コホン)えー、それでは質問です。キミはこれがなんに見えたかな?
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- え、もちろん「SWの戦闘に関する部分の目次」だって?
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- そりゃあ、その通りだよ。たしかにこれは「SWの戦闘に関する部分の目次」だよ。でもいいかい、ボクがキミに聞きたいのはこれがなんなのかではなく、どう見えたかなんだ。
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- 本当にこれが RPG のルールに見えたのか。
- 本当に WSG ルールかと疑わなかったのか。
- ボクがあらかじめSWだと言わなかったらどうだったか。
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- ボクが知りたいのはそこらへんなんだよ。
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- ボクの見解では これだけじゃ、言えるのはせいぜい「RPG の(戦闘)ルールの目次、または WSG のルールの目次」ぐらいというものなんだ。
- ...そう言われてみるとそんな気がしてくるだろ?
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- いや、ここで気がしてきてくれないと困るんで、ゼヒその気になってほしい。別に一時の気の迷いとしてでもいーからさ。
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- ...さて、そうなると RPG と WSG を比べてみると、どちらも具体的なルールはとてもよく似ていることがわかったと言えるんじゃないかな。
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- じゃあ、一体どこがちがうのか?
- 次の項ではそのことについて考えてみよう。
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ちがうとこ
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- *5)ルールブックに明記されている普通のルールを法律にたとえるとしたら、これはいわば憲法みたいなものといえる。
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- 具体的な個々のルールは、 RPG も WSG も見分けが付かないぐらい良く似ている、ということについてはわかってもらえたと思う)。そこで、こんどは両者の違うとこはどこか考えてみるとしよう。
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- え、ちょっとまて、ルール自体でもちがう点はあるって?
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- ふんふん、たとえば RPG の戦闘ルールでは 「個人」 を単位としているのに対して、WSG は 「個人」 よりも 「集団」 を単位にしている点、ね。
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- うーん...たしかに RPG の方が全体的に個人に注目する傾向があるかもしれないね。でも、今はあくまでも 「同じものを表現する時」 のことを比べているんだ。だから、表現しやすい範囲については後日はなすことにして、ふたつのちがいに話をもどすよ。
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- 実は、この二つはもっと根っこの部分に大きな『ちがい』を抱えているんだ。
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- そして、その『ちがい』は、ルールをしばるルール(*5)として非常に大きな力をもっていて、それがあるだけで何の変哲も無い WSG ルールをたちまち RPG のルールに変身してしまうほどの力を持っている。
- だからある意味、この『ちがい』の存在が RPG ルールの最大の特徴ということもできるわけですよ。
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- じゃあ、その『ちがい』とは一体どんなものなのか。それを次の話題にしていこう。
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- なに、すぐに知りたいって?
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- それが残念なことにスグには話してあげられないんだ。といっても別にもったいぶっているわけじゃないよ。ただ、これを説明するためには、もうすこし寄り道をしなくちゃいけないというだけなんだから。
- そういうわけで、次の項では RPG の戦闘について話をしよう。
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RPG のおもしろいとこ
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- *6)ゲームによっては情報収集がルール的に役に立つ、といったことはある。だけど、情報収集がルール的に処理されていないため、ルールでフォローされた戦闘には含まれない。
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- さて、ここでちょっと話題を戦闘ルールから外れて、 RPG 全般での戦闘の位置づけについて考えてみよう。
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- まず最初に確認するけど、 WSG とちがって、 RPG は戦闘だけをしているわけじゃないよね。ほとんど必ずといっていいほど、戦闘以外の部分が含まれている。
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- たとえば、「町の近くに住みついて、いろいろと悪さをする怪物を、困った住人に頼まれて退治する」というおきまりのシナリオなら、怪物やそのねぐらについての情報収集にはじまって、必要な物資の補給、ねぐらまでの移動、怪物への接敵といったいくつもの戦闘以外の部分があるだろう。
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- ところが、これらはしばしばルールでフォローされた戦闘には含まれていない(*6)。
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- そして、ほかの系統のシナリオも、ずっと戦闘というものはまずなくて、まず普通は戦闘以外の部分が含まれている。
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- つまり、 RPG において戦闘は、戦闘以外の部分と戦闘ルールでフォローされた部分が連続しているということになってくるわけだ。
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- そして、この戦闘以外の部分があるということ──より正確に言えば、ゲームとして連続した戦闘以外の部分があるということ──は、実は非常に大きな意味をもってくるんだ。
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- え、「つまりそれが RPGと WSG の『ちがい』の原因なんだろう」だって?
- なかなかイイ勘してるね。そう、まさにその通りなんだ。
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- それじゃ、いよいよ『ちがい』について話すとしよう。
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ふたたびちがうとこ
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- *7)とはいえ、これはあくまで机上の話であって、諸々の制限が課せられた実際の将棋では、やはり「かけひき」などのゲーム外の要素が勝敗というゲーム内のことに影響力を持っていますけど、ね。
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- *8)これを理由に、ボクは勝手に WSG を「閉鎖系ルール」、RPG を「開放系ルール」なんて呼んだりする(あるいは「閉じたルール」と「開かれたルール」)。
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- **)ちなみに開放系システムというのは「ある与えられた環境の下にあり、その環境から影響を受けるシステム」のこと。(出典:『数学は世界を解明できるか』中公新書1475、丹羽敏雄著)。RPG が開放系ルールだというのは、ルールがプレイ現場という環境から影響を受けて変容するから。
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- ***)作成:1999.?/更新:2000.11
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- さて、これまでの話を確認しておこう。
- まず、 RPG と WSG の間には根本的な『ちがい』があるということ。
- そして、その理由は RPG には「ゲームとして連続した戦闘以外の部分」があるからだということ。
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- そこで、ここからはいよいよ『ちがい』とは何なのかについて話をしましょ。
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- 最初にズバリ結論を言っちゃうと、『ちがい』の正体というのは、 RPG では戦闘ルール外の部分がルールに影響力をもちうるのに、 WSG ではその影響が排除されているということなんです。
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- RPG なら、PCが崖の上から馬で駆け下りて敵に突っ込んだとき、ルールになくたってダメージにボーナスを出したりする、といったことはよくある話だよね。これが、ルール外の部分がルールに影響力をもった、ということ。
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- でも、 WSG ならこういった影響は、排除される。なぜなら、ルール外の要素を導入すればゲームのバランスが崩れてしまうからなんだ。
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- つまり、将棋では最初にコマをならべるときに、いくらきれいにならべたからといって、決して最初に続けて二回コマを動かせることはない、というわけなんだ(*7)。
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- バランスが崩れてしまうんなら、なんで RPG ではそれを排除しないのか。
- その理由こそがゲームとして連続した、戦闘以外の部分があるからなんだ。
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- 考えてもみなよ、キミがGMをやっていて「ここから戦闘に入る。これは厳密なバランスが組まれているので、これまでのプレイのなりゆきとは一切関係なしにすすめる」なんて言えるかい ?
- それって 「いままでの君たちのプレイは(こと戦闘に関しては)無意味だ」といってるも同然じゃないか。そうそう言えるもんじゃないよ(*8)。
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- でも、戦闘ルール外の部分によるルールへの影響を排除するというのは、そういうことを意味するんだ。WSG ではゲームとして連続した、戦闘以外の部分がないから排除がうまくいっているけれど、RPG ではそれがあるから排除するのはほぼ不可能になるんだ。
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- そんなわけで、 RPG と WSG の間には、 RPG では戦闘ルール外の部分がルールに影響力をもちうるのに、 WSG ではその影響が排除されている(*3)という『ちがい』がある。納得してくれたかな ?
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- じゃあ、これで「RPG とはどんなものか」と聞かれた時に、少し応えることができるよね ?
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