[状況] シナリオ開始時点でPCが所属する軍は戦に負け、敗走しています。 敗北の原因は、軍師(陰陽師)が自軍を裏切ったためです。PCの中には、 裏切りの場面を目撃した者がいます。 戦場の周辺には敵軍の物見や落ち武者狩りの兵が敗残兵の首を狩ろうと鵜の 目鷹の目で徘徊しています。 また、軍師は自分の裏切りの目撃者であるPCを殺すため、配下の金剛機を 差し向けます。 [目的] このシナリオにおける目的は『生き残ること』です。シナリオ内では随所に PCの生存を危うくする[障害]と[制限]を設け、シナリオ目的をクリアするた めの課題とします。 加えて、各PCにはそれぞれ因縁が設定してあるはずですから、これが個人 目的に影響するでしょう。たとえば、<銃槍使い>ですと「禁忌:裏切り」があ りますので、軍師の裏切りを許さない、という目的を設定することができます。 また、上記2つとは別に、プレイヤー目的が存在します。この3つは、互い に相反する可能性があります。 例1 <ヨロイ乗り&ヨロイ>アーキタイプを選んだPCの場合、PCは「恋 愛:ヨロイへの愛情」を持ち、ヨロイを大事にしようと考えるはずです。 しかし、プレイヤーはヨロイ乗りの精神成長を促すため、ヨロイを破壊 し、その枷から逃れることをプレイヤー目的として設定しました。 例2 <世捨て人>アーキタイプのプレイヤーは、このシナリオ内で『カッコ 良く死ぬこと』をプレイヤー目標としました。ただし、そのままですと シナリオ目標に反しますから『他のPCのシナリオ目標達成を支援でき るような死に方』ができる場面が狙いどころです。たとえば、圧倒的に 強力な敵を足止めする、というのが美味しいでしょう。 [導入] シナリオの導入部分は、各PCの因縁を刺激する方向で入るのが好ましい でしょう。 サムライであれば『負け戦』を強調する描写で「感情:弱さに対する憎しみ」 を煽り、忍であれば伝令の仕事を陰陽師や金剛機に妨害させて「感情:自尊心」 を傷つけることです。 天羅万象のキャラクターは、ほぼ例外なく強力でアクの強い性格をしてい ますから、冒頭から団体行動させるのはお勧めできません。時間と手間はか かりますが、一人一人、個別に対応して「シナリオへの因縁」をプレイヤーに 感じてもらいましょう。プレイヤーのやる気こそが、セッションを成功させ る第一歩です。 また、PCの中には<法師>や<傀儡>、<世捨て人>のように戦場には向かな いアーキタイプもいます。プレイヤーと相談の上、独自の設定を作りましょ う。戦場の近くを旅していて巻き込まれた――とか、裏切り者の陰陽師は自 分の創造主である――とか、かつての主君が武将として軍を指揮しているか ら――などの理由を付け、PCを戦場に向かわせるのです。後は、他のPC と同様に因縁を刺激してあげましょう。 そうはいっても、なかなかシナリオに参加できないPCが出ることも考え られます。マスターはプレイ開始前にシナリオの方向性を明示し、自分の責 任においてアーキタイプを選ぶよう、プレイヤーに指示してください。 [展開] この部分は幾つかのパートに分かれます。 A) 逃走 戦場から逃げるPCは、幾つもの制限と障害に直面します。 #時間制限 背後から敵が迫っています。無駄に時間を過ごすと、敵に捕 らえられてしまいます。 #移動制限 街道は、敵軍によって制圧されています。また、日中の移動 は人目につかないよう、注意が必要です。 #物見の兵 敵軍が派遣した物見の兵(偵察部隊)は、障害物として考えま す。(やり過ごすのに時間がかかる)マスターは、物見の兵同士 の会話を通してPCに情報を伝えたり、因縁を刺激してくださ い。(戦闘はPCが望まないかぎり発生しません) #落ち武者狩り 農民や山の民などの落ち武者狩りも、物見の兵と同様に、 時間をロスする障害物として考えます。情報源や因縁がらみ の演出を行なう点も物見の兵と同様です。 #敗残兵たち PCと同じ軍にいた戦友です。烏合の衆であり、共に行動す るのは無益どころか危険ですらあります。泣き言を言わせたり 居丈高にPCに命令を下したりして、因縁を刺激しましょう。 #空腹/渇き 金剛機を除くPCはご飯を食べなくては生きていけません。 空腹や渇きは、敗残の惨めさを演出するのにぴったりです。飯 をめぐんでもらうために村に入ると、敗残兵がいて略奪をして いた――という場面を出すのも良。 これらの他にも、マスターはPCを精神的に苛める演出を心がけるように してください。たとえば負傷したPCがいれば、傷口が化膿して高熱を出す、 といった具合に。 時たま人情の温かさを味わってもらうのも良いでしょう。優しい村娘に一 晩の宿をもらえる、とか。もちろん、その翌日、PCが立ち去った後で敵軍 の物見の兵がその村を襲い、村娘はunspeakableな目に合うのです。 このパートで重要なのは、すべての恨みつらみを最終的に裏切り者の陰陽 師に向かわせることです。(間違ってもマスターに向かわせてはいけません) B) 追撃 PCの何人かは、軍師であった陰陽師の裏切りを知っています。陰陽師は 戦の後、脱出して自軍の城に戻り、次の戦(ここでも裏切るつもりです)に備 えています。 しかし、どこから自分の裏切りが漏れるかも分かりません。手駒である金 剛機や忍を使って、秘密を知っているPCを殺そうとします。 #金剛機 金剛機は、直接PCを殺そうとします。ただし、任務の中で の優先順位はそれほど高くありませんから、無理はしません。 反撃により手傷を受けたら、すぐに撤退します。 #忍 忍は、間接的な方法でPCを殺そうとします。たとえばPC の間に紛れ込んで、危険な方角にPCを誤誘導したり、敵の物 見の兵にわざと見つかったりします。最後の手段としては毒を 用います。 #濡れ衣 PCが敵の囲みを突破したならば、陰陽師は裏切りの濡れ衣 を、PCたちになすりつけます。これで、安全であったはずの 自軍領内が、いきなり敵地と変わります。 このパートにいたり、PCたちと陰陽師の対立は決定的になります。あ くまで悪いのは陰陽師である事を強調したマスタリングを心がけてくださ い。また、陰陽師が裏切った動機なども、ここで明らかになります。PC がヘタに同情すると困りますので、ここは思いっきり病的で利己的な動機 を持っていることにしましょう。たとえば領主の奥方や息子/娘に横恋慕 し、自分の欲望の家畜/奴隷にしたいと考えているとか。 C) 選択 金剛機や忍の攻撃を躱しても、濡れ衣をかけられている限りPCに安息は 訪れません。 PCは、ここで選択を迫られます。 #逃げる このまま逃げ出すのも、合理的な選択です。どうせほうっ ておいても、軍師が再び裏切ればこの国はおしまいです。 何も危険を冒してまで戦う必要はありません。 #寝返る 難易度は高めですが、陰陽師と接触し、彼の側に寝返ると いうのも野心的な選択です。もちろん、裏切り者が信用され ることは(お互いに)ありませんから、いずれはどちらかの寝 首をかくことになるでしょうが。 #暗殺する 濡れ衣を晴らすことを諦め、陰陽師を殺すことで恨みを晴 らすという選択です。元々、無縁の住人であるPCたちにと っては自然な選択かも知れません。 #対決する 陰陽師と全面対決し、黒白をつけるという選択です。難易 度は一番高くなります。なぜなら、対決のためには、陰陽師 が敵に内通しているという証拠を集め、その上で城に忍び込 むか誰かエライ人を味方に引き込み、領主などの面前で陰陽 師を告発しなくてはいけないからです。 PCの中で、選択が分かれることもあります。その場合、無理に一本化 せず、PCがそれぞれの道を選ぶというのが天羅万象らしくてよろしいか と思います。 中には「寝返るフリをして内通の証拠を探し出すが、そこを金剛機に見 つかってしまい、空中移動型の式に証拠の品を託して仲間のPCに届けさ せ、自分は殺される陰陽師」なおいしいとこ取りのプレイを狙うプレイヤ ーもいるかも知れません。それはそれで認めてあげてください。このシナ リオでは前半にPCとプレイヤーにストレスをかけているので、後半は鬱 憤を晴らして爽快な気分になってもらいましょう。 これでシナリオは終了です。さて、皆さんのPCはどのような選択をし、 どのような終劇を迎えましたか? [補足] 天羅万象におけるパーティー行動について 多くのRPGでは、キャラクターの能力に制限を加えることで役割分担の 必要性を前面に出し、パーティーよる統一行動を促進しています。対して、 天羅万象では能力ではなく人格にいささかの瑕疵を持たせることでキャラク ター相互に感情的な縁を持たせ、パーティーを構成しています。 そのため、パーティーの拘束力は弱く、場合によっては一度も互いに顔を 合せずにセッションが終わることもあります。それどころか、感情の縁によ ってはPC間での戦闘(殺し合い)が発生することも希ではありません。 マスターにせよプレイヤーにせよ、PC間の感情の対立を忌避してはいけ ません。むしろ、まったく縁がないことを怖れるべきです。 そのためにも、自分のキャラクターをあまり「良い奴」にし過ぎるのは控 えましょう。たとえば[ヨロイ乗り]が人生の機微に通じた言動を取ったので は、それだけで人格が完成してしまい、他のPC(たとえば[ヨロイ狩り])が 突っ込む余地がなくなってしまいます。
** 重要 ** 『天羅万象ビジュアルブック』P178-P179には、こうしたアーキタイプ間 の感情を示した「アーキタイプ相関チャート」があります。プレイヤーもマス ターも、ぜひこれを参考にしていただきたいと思います。
『終』
作成者:銅 大(アカガネ ダイ)
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