宇宙の裏街道



 さて、ユンとエドの物語もそろそろおしまいが近づいてきました。
 今回のテーマは、スペオペの演出技法についてです。ゲームのみならず、小
説などでもよく使われている技法ですので、ちょっとご紹介してみましょう。

1.悪事のススメ

 悪いことは、楽しい。
 これは、あらゆる人類社会に共通の真実です。
 禁止されていること、道徳に反することをする時、人は罪悪感と共に、湧き
上がる高揚感に包まれます。
 子供がおやつをつまみ食いするのも、学生が隠れてタバコや酒をのむのも、
お父さんが会社の経費で宴会をするのも──
 すべては後ろめたさと表裏一体の喜びを得んがために他なりません。

エド「でも、スペオペのヒーローが悪事を働いていいんですか?」

 かまいません。スター・ウォーズのハン・ソロ。宇宙海賊のコブラ。『高飛
び』レイク。『ステンレス・スチール・ラット』ジェイムズ・ボリバー・ディ
グリッツ。
 彼らは全員、犯罪者でありながら、スペオペのヒーローでもあります。
 また、本来は正義の味方であるはずのヒーローが犯罪者になる/されること
もあります。
 キャプテン・フューチャーは太陽系政府主席暗殺の罪(濡れ衣)で官憲に追わ
れたことがありますし、『レンズマン』キムボール・キニスンは、たびたび悪
の組織に潜入工作をかけています。

ユン「でも、それがゲームと何か関係があるわけ?」

 実は、ヒーローに裏街道を歩ませることは、ゲーム的にみても良い効果を期
待できるのです。
 そのことについては後述するとしまして、まずは『悪事』をスペオペの世界
に組み込む方法について考えてみましょう。


2.ヒーローが悪事に手を染める時

ユン「いいかげんにしなさいよ! 人の命がかかってんのよ!!」
役人「いや、しかし……私の一存ではなんとも……今、上の方に問い合わせて
おりますので……」
ユン「それじゃ、間に合わないでしょ!」
エド「ユンさん、時間がありません。気圏プラントが爆発します!」
ユン「──センチュリー・ファルコン号、発進します!」

 正義感あふれるスペオペのヒーローを悪の道に引きずり込むには、その正義
感を逆手にとることです。
 たとえば、こんなシチュエーションを考えてみてください。

 ガス惑星の大気圏に浮かぶ気球型の工場で事故が発生し、作業員がそこに取
り残される。救助用の気圏ロケットは事故で使えず、たまたま居合わせたヒー
ローの船しかガス惑星に降下することはできない。
 しかし、星系政府は二次遭難の危険を理由に、ヒーローの船の発進を認めよ
うとしない──

エド「うーん、マスターの陰謀が感じられるシチュエーションですね」
ユン「でも、ちょっとヒネたヒーローで『金にならない仕事はしない』ってタ
イプだったらどうするの?」

 その時は、貯金箱の出番でしょう。

ユン「ほぇ?」

 事故が発生するちょっと前に、ガス惑星の遠軌道上のステーションで、ヒー
ローたちは迷子の子供と出会います。
 子供は、気圏プラントで仕事をしている両親に会うために、お小遣いを貯め
てはるばるここまで宇宙を旅して来たのです。
 事故のことを知った子供は、ステーションの中の唯一の知り合いであるヒー
ローに助けを求めてやって来ます。小さな手に、ブタさんの貯金箱を握りしめ
て。

ユン「あうぅ……」

 まぁ、しょせんは子供の貯金ですから。燃料代にもなりませんけどね。

エド「これで断ったら、ヒーローポイント使えなくなっちゃいそうですね」

 こういった演出が逆効果な方に対しては、ステーションの役人や、本来なら
率先して救助活動を行うべき星系軍の軍人をすごくイヤな奴にして、反感をあ
おりましょう。『あいつの鼻を明かしてやる』目的でヒーローが行動できるよ
うに。

 続いて救助活動ですが、これが一筋縄ではいきません。

エド「大気圏、上層部に突入しました」
ユン「乱気流がすごいわね。注意しないと」
エド「レーダーに反応あり。観測ブイかな?」
ユン「──違う! 機動爆雷!」

 いきなり、星系軍の物と思しき爆雷攻撃が、ヒーローの船を襲います。普段
なら当たるはずのない攻撃なのですが──

エド「第三ロケットエンジンに被弾しました!」
ユン「気流さえ安定してれば!」

 乱気流のせいで回避できず、ヒーローの船は直撃を受けます。NHPをあげ
ましょう。
 攻撃を撃退し、気圏プラントに接舷したヒーローは中に移乗します。しかし、
中の作業員はすでに──

ユン「全滅のようね」
エド「エアロックが外から爆破してあります。これは事故なんかじゃありませ
ん。誰かが、故意にやったんです」
ユン「……あれは? 救命ボール?」
エド「この人はまだ息があります!」
作業員「う…うぅ……」
ユン「しっかりして」
作業員「こ…これを……うぐっ」

 ヒーローにメモリー・カードを渡し、作業員は事切れます。もはや時間が迫
ってきています。
 脱出しなくてはいけません。

エド「結局、誰も助けられなかった……」

 それだけではありません。ガス惑星から離脱したヒーローを、星系軍が取り
囲みます。

ユン「なんで?」

 気圏プラントを爆破した犯人として、です。

エド「そんな!」
ユン「濡れ衣よ!」

 もちろん、その通りです。

ユン「戦闘準備!──は、まずいか」
エド「こっちから攻撃したら、これ幸いと反撃してきそうですね」
ユン「ジャンプして脱出──」
エド「──しようにも、ジャンプ可能エリア(星の直径の10倍以上)との間に星
系軍が立ちふさがってます」
ユン「八方ふさがり、か」

 こうしてヒーローたちは捕らえられ、宇宙船は星系軍に没収されます。星系
内のニュースは、ヒーローの宇宙船が気圏プラントを攻撃し、破壊したと伝え
ています。

エド「だから、あれは機動爆雷の攻撃に反撃しただけですってば!」
取調官「ほほぅ? ウソをつくならもっとましなウソをつくんだな」
ユン「嘘じゃないわ。船内のレコーダーを調べればすぐに分かることよ」
取調官「(自分の画面にファイルを転送)……そのような記録は残っていない」

 どうやら、ヒーローは星系政府の、それも軍が絡んでいる陰謀に巻き込まれ、
犯人に仕立て上げられたようです。
 ここで、NHPをプレゼントします。

エド「サイコロ、振ってませんけど?」

 ヒーローが犯罪者になり、宇宙船や装備を没収されたのは、自律的な行動の
結果ではなく、シナリオによる強制です。
 いわば、サイコロを振らせない形で、むりやり『失敗』の行動結果を出させ
たわけですから、NHPを取得する十分な資格があると思いますよ。


3.怒りとストレス

 さて、ここまでのところで感想を聞かせてください。

エド「うーん、ストレスがたまりますね」
ユン「星系軍の奴ら、許すまじ!」

 エド君の感想ですが、むりやり犯罪者にされたわけですから、ストレスはた
まって当然です。
 陰謀を企てた連中に対して、ユンのように怒りを感じるのも、これまた当た
り前ですね。
 まさに、マスターの思惑どおりの反応です。

エド「ストレスをためることが、ですか?」

 そうです。ゲームの中でストレスを発散させ、カタルシスを得るには、まず
最初に発散させるべきストレスをためる必要があるのです。
 演じるキャラクターにストレスが発生しない物語は、起伏の乏しい単調な物
になってしまいます。考えてみてください。高倉健さん演じるヤクザは、最初
に耐えて耐えて耐え抜くからこそ、クライマックスの立ち回りが映えるのだと
いうことを。

エド「たとえが古いですけど、まぁ、確かに。ハリウッド映画のアクションも
のなんかは、ほとんどこのタイプですね」
ユン「あたしの怒りも、演出に役に立ってるわけ?」

 はい。怒りはヒーロー自身ではなく、演じるプレイヤーに対する誘導になり
ます。
 人間誰しも、他人にふりかかった不幸にはたいして心を動かされませんが、
自分にふりかかった災厄に対しては過敏に反応するからです。
 それが人災であればなおのこと。プレイヤーは、己の(ヒーローの)復讐の
ためにも、プレイに集中してくれることでしょう。

ユン「このままじゃ、すませないからね!」


4.脱走

 囚われの身のヒーローがまず試みること。それが脱走です。マスターもいろ
いろと状況を整えてヒーローの脱走を積極的にサポートしましょう。

状況A)護送─────────────────────────────
 ヒーローは、どこか別の場所に移送されることになりました。敵は油断して
おり、護送中は警備が薄くなります。

状況B)事故─────────────────────────────
 ヒーローが捕らえられている場所(またはその近く)で事故が発生しました。
どさくさに紛れて逃げ出すチャンスです。

状況C)支援─────────────────────────────
 敵の敵は味方──第三の勢力がヒーローの脱出を支援してくれます。彼らを
どこまで信用すればいいかは分かりませんが、まずは逃げることが優先です。

エド「でも、ヒーローが脱走しようとしなかったらどうするんです?」

 それも一つの選択肢です。たとえば敵を欺き、協力するフリをして自由を手
に入れれば脱走したのと同じか、それ以上の効果を得ることができます。
 しかし、この手法はヒーローの協力が敵にとって価値のある場合しか用いる
ことができません。

ユン「今回は無理っぽいわね。んじゃ、脱走の用意でもしましょうか」

 おっと、その前に──

大佐「ウル中尉。取調べ中に悪いが、犯人を急いで本星まで護送することにな
った。作業を中止してくれ」
調査官「は? いや、しかし幾つか確認しておきたい点が……」
大佐「これは命令だ、中尉」
ユン「──誰よ、今のタコ入道は?」
調査官「軍令部のハイマン大佐だ。(ボソリと)大佐がなぜこんな所に?」

 せっかく敵のテリトリー内にいるのですから、ここでシナリオの『ボスキャ
ラ』を登場させておきましょう。敵に顔があるかないかで、プレイヤーの感情
移入の度合いは違ってきます。

 いよいよヒーローが脱走する段になったら、マスターはそれを後押しする演
出を心がけてください。

(本星へと向かう軍のシャトルの中で)
ユン「こいつはヤバいわね」
エド「非武装のシャトル、護衛はなし、船の状態からすると乗員の質も低そう
です。間違いありません」
調査官「何の話をしているんだ?」
ユン「生真面目な軍人は早死にするって話。なんでわざわざ同乗したのよ?」
調査官「お前たちの船のログ情報と、プラント破壊の状況が食い違うからだ」
エド「どれどれ──ははぁ、時間がなかったんでしょうね。間違いだらけです。
だいたいセンチュリー・ファルコン号には機動爆雷なんか搭載してません」
調査官「なんだと? む、確かに──これはいったいどういうことだ?」
エド「後で書き換えるつもりで、適当な仮装巡洋艦のデータを流用したんでし
ょう、きっと」
調査官「??」
ユン「つまりね、この船は絶対に本星に到着しないことになってるの。死体は
口をきけないから」

== 幕間劇1 ============================
「大佐、本星へ向かわせたシャトルF227から連絡が入っております」
 通信士官の言葉に、ハイマンは時計を確認した。予定よりやや早い。
「どうしたのだ?」
 連絡の内容は分かっている。正体不明の戦闘機の攻撃を受ける。救援を請う、
といったものだろう。
 だが、通信士官の言葉はハイマンの予想とはかけ離れたものだった。
「『船内のガス交換機に故障発生。修理のため中継ステーションW3に向かう』
以上です」
「なんだと?!」
 ハイマンはぎょっとして己の端末に星系内の軌道情報を表示させた。
「いかん! そのまま本星へ向かうように命令しろ!」
 大佐の強い口調に驚きながらも、通信士官は首を左右に振って答えた。
「それはできません、大佐。この通信はレーザーで送られてきたものです。シ
ャトルF227とは約30分の時間差があります。今ごろシャトルはW3に──」

===================================


5.潜伏

 脱走したからといって、一足飛びに自由の身になったわけではありません。
ヒーローは手配中の犯罪者として官憲に追われる身なのです。
 官憲の追跡をかわすには、幾つかの方法があります。

ユン「やれやれ、やっとまくことができた。あの調査官、けっこうしつこいわ
ね」
エド「これからどうします?」
ユン「そうね……」

方法A:変装─────────────────────────────
 <変装>技能か<演技>技能を有していれば、他人に扮することで追手の目
をごまかすことができます。
 このパターンの亜流として、<礼儀作法>を用いるやり方があります。一般
に、礼儀正しい『上品な』人は悪党だと思われにくいからです。

方法B:偽造─────────────────────────────
 いくら別人になりすましたとしても、たとえば税関通過の際に身分証明書の
提示を求められればおしまいです。
 その場合、あらかじめ<偽造>技能を用いて書類を整えておいたり、<偽
造>+<電子工学>技能でICカードを変造しておくと逃走がスムーズにいく
でしょう。

方法C:情報の改竄──────────────────────────
 電子化が進んだ社会であれば、犯罪や犯人に関する情報はすべてコンピュー
タの中に存在します。<コンピュータ>技能を用いてコンピュータの情報を書
き換えることができれば、犯罪をなかったことにしたり、犯人を自分以外の誰
かに押し付けることもできます。

エド「どれも技能がないと難しいですね」
ユン「それに時間や道具が必要よ。追われているときに、そんな悠長な真似が
できるの?」

 その星の治安状態によります。内戦状態にある星や、ハイテク機器が使えな
い星、汚職や賄賂がまかりとおっている星であれば準備不足の偽装工作でもそ
れなりに効果があります。
 しかし、平和で高い技術レベルを持ち、治安も良い星ですと無理でしょう。

エド「そんなぁ」

 大丈夫ですよ、エド君。
 どんな治安の良い社会においても、法の網をかいくぐって生きている連中と
いうものはいるものです。むしろ規制の厳しい社会の方がそういった裏社会は
発達するものです。

方法D:裏社会を頼る─────────────────────────
 コネか金を使い、裏社会の住人の助力を得るという方法です。その社会につ
いてよく知っている彼らは、ヒーローよりもうまく前述の方法A〜Cの工作を
行うことができます。その代わり、騙されたり裏切られたりする危険がありま
す。

エド「ユンさん、向こうから警官が来ます!」
男「お二人さん、こっちへ来な」
ユン「あなたは──誰だっけ?」
男「ほら、1年前にパーマー・エルドリッチ星であんたらに助けられた『雑魚
A』だよ」※「宇宙の食卓編」参照※

エド「どうしてここに?」
男「いや、ちょっと仕事でね」
ユン「本当? なんかタイミング良すぎるなぁ」
男「とにかく早く逃げようぜ。実のところ、おれもあんまり警官の世話にはな
りたくないんだ」

 コネも金もない場合は、マスターが救いの手を差し伸べることになります。
しかし、決して無料(タダ)にしてはいけません。それなりの代償を要求しま
しょう。ヒーローが『主人公効果』に安易に頼るようになっては、緊張感のな
い、盛り上がりに欠ける展開になってしまいます。

== 幕間劇2 ============================
 エドとユンを連れて自分の宇宙船に戻ってきた男は、二人に気づかれないよ うこっそりと通信機に向かった。
「あんたの指示通り、二人を保護した」
『よくやった。』
 合成された音声が男をねぎらった。性別も、年令も、そして感情すらも読み 取れない平板な声で。
「で、次はどうすればいい?」
『そうだな──』

===================================


6.反撃!

 潜伏に成功した時点で、物語は一つの山場を迎えます。これまではヒーロー
側が守りに入っていましたが、いよいよ反撃開始です。

エド「やれやれ、やっとですか」
ユン「とはいっても何から手をつければいいのやら」

 反撃が成功するか否かのポイントは、情報収集にかかっています。特に今回
のように陰謀を企んでいる敵が相手の場合、情報が最大の武器となります。

ユン「なぜ?」
エド「敵が陰謀を企てているのは、世間に知られるとまずいことがあるからで
すよ」
ユン「つまり、陰謀を暴くことができたらこちらの勝ちってこと?」

 政府や軍、大企業などが持つ力は、法律で定められた公的な物です。それは
たいへん強力な物ではありますが、ひとたび法律の枠を外れた瞬間、自分自身
をも傷つける双刃の剣となるのです。

エド「まずは、破壊された気圏プラントの人から渡された情報ディスクを分析
してみましょう。(男に)コンピュータ、借りますね」
ユン「ガス惑星内部を探査する無人偵察機のカメラで撮影した映像記録のよう
ね」
エド「再生してみましょう。──深度500km……700km……」
ユン「局所的な低気圧の中を飛んでいるみたいね。機体がぶれているわ」
エド「ガス惑星の『局所』ですから、地球サイズの低気圧ですけど──ええっ?!」
ユン「機体からの信号途絶。一瞬だったけど、今のを再生してみるね──星空?」
エド「深度1500km。こんな分厚い大気ごしに星空なんか見えるはずないのに」

 SFの基本は『びっくり』(センス・オブ・ワンダー)です。月に30万年前
の人間の死体が転がっていたり(『星を継ぐもの』J.P.ホーガン著)、ラムスク
ープ型宇宙戦艦の中で黒魔術の儀式をやってみたりする(『キャッチワールド』
クリス・ボイス著)シーンに、SFファンは心をときめかせるのです。

ユン「深度1500kmの星空。どうやらここに事件の鍵があるみたいね」
エド「ユンさん、気圏プラントで死亡した人のリストです。宇宙考古学者が2
人もいます」
ユン「星系軍の動きを調べてみたんだけど、半年前くらいからガス惑星近辺で
動いているわ。惑星開発公社の気圏プラントが破壊されたせいで、軍が有人型
の深々度偵察計画を引き継いだようね」
エド「計画全体を管理しているのは軍令部のハイマン大佐です」
ユン「あのタコ入道か。う〜ん、ツジツマはだいたいあってきたんだけど……」
エド「星系軍とハイマン大佐の目的が不明ですね。これだけ乱暴に事を進めて
まで独占したいものってなんなんでしょう?」
ユン「直接行って、調べるしかないわね」
エド「ええ。でもその前にちょっと準備しておきたいことがあるんですが」

 スペオペヒーローズのシステムは、どちらかというとアクションを中心とし
た行動の判定とサポートに向いています。ですからコンピュータや書物などか
ら分かる情報については、簡単な行為判定だけでどんどん分かるようにしまし
ょう。ここで情報の出し惜しみをすると、展開が遅くなって中だるみの原因に
なります。

『警戒! 警戒! 本基地に侵入者あり! 保安要員はただちに所定の配置につ
け!』
エド「さっそく見つかっちゃいましたね」
ユン「それよりあの気圏偵察機よ。なんで大気圏の底に潜る偵察機に大型の超
空間通信機を搭載するわけ?」
警備兵たち「「いたぞ、あっちだ!」」
エド「しまった! これじゃあ──」
ユン「あたしが時間を稼ぐ! エドはアレの準備をしといて!」
エド「でもユンさん!……分かりました。無茶しちゃだめですよ」
ユン「さてと。殺さないよう、死なないよう、頑張るとしますか」

 政府や軍を相手にするとき、ヒーローの直接の障害となるのは警察官や兵士
です。彼らはヒーローが憎くて戦っているのではなく、命令に従って行動して
いるわけです。プレイ後の後味を考えますと、負傷レベルは[軽傷][気絶]
の2段階に設定するのが良いでしょう。

== 幕間劇3 ============================
 その部屋に入るなり、エドは男に銃を向けて言った。
「手伝ってください」
「なんのことだ?」
 男は迷惑そうに答えた。
「あなたが本当は誰のために仕事をしているかは知りませんが、ハイマン大佐 の行動を掣肘したいという点では、利害が一致しているはずです」
 男は肩をすくめた。隠してもしかたがない。
 それに時間が惜しい。女──ユンの方は、大佐に捕らえられている。この少 年が捕まるのも時間の問題だ。
「いいだろう。だが一つ聞かせてくれないか。何時、おれがそうだと分かった んだ?」
「ステーションW3です。ちょっと早すぎましたね。あのタイミングで助けを 出せるのは、あらかじめボクたちがあそこにいる事を知っていた人だけです」

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7.深度1500kmの星空

警備兵「少年の方の侵入者を捕らえました!」
大佐「ご苦労。下がってよろしい」
エド「(周囲を見て)ユンさんはどこです?」
大佐「(ニヤリ)あの中だよ」
エド「気圏偵察機! まさかユンさんを?!」
大佐「いいところに来てくれたよ。さすがに帰って来れない偵察任務に部下の
パイロットを使うのは気がひけたんでね」
エド「大佐、交換といきませんか? ユンさんと、ぼくが持つ情報を」
大佐「ほう? どんな情報かね」
エド「これを再生してみてください。破壊された気圏プラントで手に入れた情
報ディスクです」
大佐「(画面に映される星空の映像を眺めながら)なるほど、これが出口という
ことか」
エド「ぼくたちがここから帰らなければ、このディスクのコピーがマスコミや
銀河連合に渡されることになっています」
大佐「ふむ。君はこれが何だか分かっているのかね?」
エド「ここに来るまでに星空を分析しました。70%の確率で、あの星空は銀河
系の外──16万光年離れた大マゼラン星雲から見た星空です」
大佐「………では、中心部からガスを吹き上げている渦状銀河は──」
エド「ぼくたちの住む、銀河系です。あのガス惑星の中に、大マゼラン星雲へ
とつながる超空間ゲートがあるんです」

 スペオペヒーローズ世界で人類の住む既知宙域の大きさが直径300光年、一
度のジャンプで跳躍できる距離が最大で20光年ですから、これはケタ違いの距
離です。

大佐「すばらしい。まさか16万光年の距離を結ぶゲートが存在するとは」
エド「この技術を独占するつもりですか、大佐?」
大佐「もちろんだとも。宇宙船を使うことなく、瞬時に大量の物資を転送する
ゲートの技術があれば、わが星系が連合を──いや、全銀河系宇宙を支配する
ことも可能だ」
エド「そのために、ゲートの存在を知った人の命を奪ったというのですか? 
あの気圏プラントには、ただの技術者で何も知らない人が大勢いたのに」
大佐「くっくっくっ。君たちには感謝しているよ。ちょうどいいタイミングで
現れてすべての罪を背負ってくれたからな。本当はただの事故で済ませる予定
だったのだから」
エド「分かりました。そこまで聞けば十分です」
大佐「何?」
調査官「すみませんね、大佐。今の会話はすべてマスコミと銀河連合に流させ
ていただきました」
大佐「貴様はウル中尉?! 裏切ったのか?」
調査官「いやいや。実を言いますと、こっちが本職でしてね。あなたはちょっ
と派手に動きすぎたんですよ、大佐」
大佐「星系軍監査部?──いや、連合宇宙軍情報部か!」
調査官「ご明察。情報部2課、本郷義昭。大佐、あなたの野望もこれで終わり
だ。連合宇宙軍のグレイテスト級重巡3隻がこちらに急行している」
大佐「くそっ! ならばいっそのこと!」
本郷「待て、何を──?!」
エド「気圏偵察機が発進する!」
大佐「ふははははっ。ちょうどゲートをくぐり抜ける時に反物質燃料の磁場タ
ンクが消滅するようセットしておいた。これでゲートも終わりだ。うわははは
──ぐはぁっ!」
エド「この野郎! あの中にはユンさんが!」
本郷「おい、どこに行く?」
エド「ユンさんを助けます!」

===================================
「こりゃあ、もうダメかな?」
 まったく手動での制御を受け付けないコンソールをいじりながら、ユンはひ とり呟いた。渦の中心へと向かうにつれ、機体の振動が激しくなる。不思議と 恐怖は感じなかった。ただ、寂しさだけが、胸を締めつけてくる。
「これで終わりなら、あいつに言っておくことがあったんだけどな」
 通信機からノイズ混じりの声が飛び込んできた。『あいつ』の声だ。
『ユンさん! 大丈夫ですか?』
「エド?」
『すぐに助けます! 宇宙服を着てエアロックで待機していてください!』
 ドッキングしたセンチュリー・ファルコン号に移乗したユンは、ブリッジへ 駆け上がった。
 目の前に渦の中心──超空間ゲートがある。ゲートのリングの中が灰色に波 打っていた。
「どう? 逃げられそう?」
 操縦棹を握るエドの肩に手を置く。
「だめです。偵察機が爆発するまで62秒。宇宙空間なら助かるんですが、これ だけ濃密な大気の中で対消滅が発生すると爆風で──」
 その時、超空間ゲートが開いた。リングの中心が星空につながる。大気が唸 りをあげてゲートの中へと流れて行く。
「しめた! ゲートをくぐれば!」
「ちょっと、正気なのエド? あの向こうは16万光年のかなたなのよ? いくら センチュリー・ファルコン号でも帰ってこれないわよ!」
「大丈夫、何とかなりますよ。それに、たとえ帰ってこれないとしても──」
 エドはユンの方をふりかえり、笑った。
「ユンさんが、一緒ですから」
「──ばかっ」
 ユンは泣き笑いの表情になりながら、エドの肩を抱きしめた。
 二人の唇がそっと触れ合う瞬間──
 センチュリー・ファルコン号はゲートを抜け、はるかな星空へと飛び立った。

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宇宙の裏街道編:おしまい


 作成者:銅 大(アカガネ ダイ)

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