Last Episode〜帰還〜



 「スペオペヒーローズ」を題材にしたこのコラムも、「宇宙の裏街道」で無事終
了いたしました。
 これも一重に皆様のおかげ──

ユン「ちょっと、待ったぁ!」
エド「大マゼラン星雲まで跳ばされた僕たちは、どーなっちゃうんですか?」

 ……….むぅ。
 せっかくだから、イスカンダル星かガミラス星でも表敬訪問して、コスモクリー
ナーDでも、もらって帰る?

ユン「それは『宇宙戦艦ヤマト』(原作:松本零次)でしょ」

 では、そこには十肢生物ナーと不死人類の住むコロニーがあって……

エド「ドナルド・モフィットの『第二創世記』(ハヤカワ文庫)ですね」

 じゃ、大マゼラン雲の彼方、際涯圏の近くで神仙化した人工知能と出会い──

ユン「V.ヴィンジの『遠き神々の炎』(創元推理文庫)!」

 ……うぅむ。

エド「オリジナルな話はないんですか?」

 よし、それでは雑誌掲載時やパソコン通信時にはできなかった、とってお
きのネタを披露しましょう。

***********************************
*         この後に続く内容は成人専用です          *
*  18才未満の方は、ご家族のいないところでこっそり読みましょう  *
***********************************

 人類が宇宙で生活する場合、避けては通れない試練の一つ。
 重力の枷から解放された男女が生み出す新たなる48の組み手とは?
 ダークサイド版『ヒーローの履歴書』、第1回。

       『宇宙のセック──

ユン「すなっ!!!!!!!!!!!」

 ごきゅ。

 あいたたた……衣食住と並ぶ、たいへん大事な話だと思うんですけどねぇ……

エド「だからって、ネットでやる話でもないような」

 しかたない。この話はいつかその内ということにしておきましょう。
 その代わり──

Last Episode〜帰還〜


 宇宙服に包まれた指が、『非常用』と書かれたコックをひねる。
 そして、待つ。
 反応は、ない。

「ここも……死んでるか……」

 朽ちかけた軌道宇宙港の中で見つかったのは、一枚のプラスティール板だけ
だった。長の年月を太陽風に焼かれ、放射線に曝され続けたために、電子化さ
れた情報も、紙に打ち出された文字も消えてしまったのだ。

[光破艦:亦双 烙奉23年建造]

「光破艦……烙奉23年……聞いたこともないわ」
 彫り込まれた表意文字の上を指でなぞりながら、ユンはプレートの材質を分
析しているエドに語りかけた。
「艦首に貼り付ける、船名プレートね。そっちは何か分かった?」
 エドは首を左右に振った。
「見たこともない物質です。比重は水の1万分の1ぐらいなんですが、単位面
積あたりの強度はセンチュリー・ファルコン号の外部装甲の1000倍もあります。
どうやって文字なんか彫り込んだんでしょうね」
「オーバー・テクノロジー、って事か。あれから何年たったのかなぁ」
 それは、どこにも答えのない疑問だった。

 大マゼラン雲での奇妙で危険な冒険をくぐり抜け、ユンとエドは母なる銀河系
に戻ってきた。
 16万光年の空間を越える旅。だが、それは同時に時の流れをも越える旅であっ
た。体感時間的には3年しか経過していないものの、外の宇宙では数千年の時間
が過ぎ去っていた。

「たぶん、今の僕たちは太陽系から5000光年ほど離れたところにいるんだと思い
ます」
 センチュリー・ファルコン号の船内。エドとユンは得られたわずかな情報を元
に、状況を分析した。
「これまで、人類の建造物が残っている星を3つほど訪れましたが、そのどれも
が戦闘によって完全に破壊されていました」
「それも、400年は前の戦いね。宇宙港の軌道のふらつき具合からすると」
 二人の表情は暗かった。だが、それは戦闘の跡を見たせいだけではなかった。
数千年程度で、人類が殺劫から解放されるはずもない。戦争があったとしても、
それはしかたのない事だった。
 だが──
「問題は、どの破壊の跡も再建される様子がない、ってことです」
「考えられるのは二つね。今なお戦乱が続いているのか、それとも──」
「戦争は終わったが、誰にも再建する余裕がない」
 言葉が途切れた。
 どれほどの規模の戦いがあったのだろう。幾つの星が、そして幾億の魂が、消
えていったのだろう。
「いるのかな?」
 沈黙の後、ユンが呟くように言った。
「あたし達以外に……どこかに……人が……」
 エドは黙ったまま、ユンの肩を抱き寄せた。
「大丈夫です。人間って、いざとなったらゴキブリやネズミなんかよりもよっぽ
どしぶとい生き物です。だからきっとどこかに──」
 その時、超空間センサーの警告音が船内に鳴り響いた。
 何かが、この近くでジャンプ・アウトしたのだ。
「!!」
「まさか……宇宙船?」

 2光秒離れた空間に現れた宇宙船は、美的感覚から言うと実に不細工な出来だ
った。流線形の基本フレームに、おそらくは違う船から取り外したロケットや燃
料タンクがごちゃごちゃとくくりつけられている。
「不格好ねぇ」
「廃品利用みたいですね。あ、通信が入ってます」
 プロトコルを解析し、音声と画像を表示するまでに3分の時間がかかった。
 画像モニターに、ボサボサの髪をひっつめ、髭をぼうぼうにはやした男の顔が
写った。男は茶色い歯をむきだしにして唸った。
『おう、そこのペカペカの宇宙船よぉ。ここは俺っチの縄張りだぜぇ。ここを通
りてぇってんなら、出すもの出してもらおうか』
 ユンとエドは顔を見合わせた。どちらの顔にも鳩が豆鉄砲をくらったかのよう
な表情が浮かんでいる。
「16万光年と、数千年の時を越えてはるばる戻ってきて──」
「最初に出会ったのが、宇宙海賊ですか」
 二人の顔に、笑みが浮かんだ。
 エドとユン、そしてセンチュリー・ファルコン号は故郷へと帰還したのだ。

「Last Episode〜帰還〜」:おしまい


 作成者:銅 大(アカガネ ダイ)

  HomePageに戻る