舞台設定3:宇宙船
『新星界スターロード』は、広大無辺な宇宙を舞台としたRPGです。
そして広大無辺であるからには、宇宙港だのスペースコロニーだの、小惑星
だのといった、他のRPGにはない舞台装置があります。
本コラムではそうしたSF−RPGならではの舞台装置とゲームでの使い方
について解説します。なお、ここでの設定は銅大個人の案によるものであり、
FEARオフィシャルではありません。また、皆さんがプレイされる場合には
そのセッションを管理しているマスターの設定が最優先されます。
本コラムの進行は、「元偵察局員」ダン・ブルワーと「大富豪の娘」ローラ・
チェスの二人が行います。
第3話)宇宙船 (フライング・キャタピラ号)
ローラ「(大アクビ)ふあああ。ねぇ、まだ貨物の積み込み終わらないの?」
ダン 「(船外カメラを確認して)あと2時間といったところかな」
ローラ「どうでもいいけど、どうしてこう、田舎の惑星の仕事ばかりくるわけ?
たまには、黒龍星系とかに行ってみたいなぁ」
ダン 「利益と輸送量の大きい航路は、おおむね大手船会社の独占だ。大熊座
運輸とか、ムカベ・ライナーズとか。ウチのように小型船一隻の、零細
船会社に回ってくるのは不定期航路の小口の仕事だけだ」
ローラ「ダメダメ。その発想が、すでに負け犬なのよ。自分から仕事を限定し
て、他と同じコトをやってたら──」
ダン 「(苦笑しつつ計器を監視)おや?」
ローラ「どうしたの?」
ダン 「波動センサーにノイズがはいってる」
ローラ「この船、オンボロだものねぇ。故障したんじゃない?」
ダン 「いや、故障とはちょっと違うようだ....」
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スターロードのPCスコード(チーム)であれば、必ず所有している〔スペ
ース・シップ〕が今回のテーマです。
本コラムでは、例としてダン・ブルワーが〔スペース・シップ〕1レベルで
所有している“120m級旧型貨物船”フライング・キャタピラ号を用います。
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フライング・キャタピラ号の概念図
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□A□ □□□□□ □ □
□ □ □ □ □ □
□ □□□□□ □□ □
□B C D F □
□ □□□□□ □□ □
□ □ □ □ □ □
□□□ □□E□□ □ □
□□□□□
←制御or居住区画→ ←倉庫区画→ ←エンジン区画→
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プレイ中にPCが「いる」可能性がある宇宙船内外の場所は、おおむね次の
6箇所でしょう。
A:エアロック
B:操縦席(ブリッジ)
C:居住区画
D:倉庫区画
E:格納庫
F:エンジン区画
このそれぞれについて、そこがどんな「舞台」なのか考察を加えていきます。
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A:エアロック
ローラ「どこに行くの?」
ダン 「波動センサーを調べてくる。背中のスラスター動作確認を頼む」
ローラ「? なんで宇宙服を、それもアステロイドスーツを着るの? この惑
星の空気は呼吸可能でしょ? ──ん、ノズル動作、ガス噴射、確認」
ダン 「波動センサー用の整備ハッチは船首の上側にあるんだ。普通は宇宙港
の整備用クレーンを使わせてもらうんだが」
ローラ「ああ、なるほど」
窓の外に広がるのは、単に整地しただけの平坦な滑走路のみ。
ローラ「なーんもなさそうね」
ダン 「アステロイドスーツなら、標準重力下でも短時間の機動が可能だから
な。じゃ、行ってくる。ブリッジからサポートを頼む」
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宇宙船の出入りは通常、エアロックから行います。エアロックは扉が二重に
なっており、真空の宇宙空間で出入りする場合には、間にある小部屋で宇宙服
に着替えます。PCの宇宙服も、通常はエアロックのハンガーにかけてあるこ
とでしょう。
エアロックには監視カメラやセキュリティ・チェック(パスコード入力やI
Dカードなど)がついており、侵入を防ぐようになっています。
ただし、緊急時(救助活動や避難など)には自由に出入りができるよう、ブ
リッジからセキュリティ・チェックを停止させることもあります。
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B:操縦席(ブリッジ)
ローラ「どう、ダン?」
ダン 《整備ハッチについた。これから中を確認する》
暫時経過。
ローラ「んー、やっぱし変わらない。なんかノイズ入ってるっぽい」
ダン 《そうか。一通りチェックしてみたんだが》
ローラ「どうする? この程度なら、動作に問題ないと思うけど」
ダン 《いや。本体でないならアンテナが原因かも知れない。もうちょっと調
べてみよう》
ローラ「40本以上あるわよ?」
ダン 《43本だ。まずは1本ずつ回路を閉じてみてくれ》
ローラ「はい、はい」
(なんていうか、アストロノーツってパラノイアなところあるわよね)
さらに時間経過。
ローラ「MC3、カット。あ! ノイズが消えた」
ダン 《MC3。船首下側の対空レーザーのあるところだな。カメラで出して
みてくれ》
ローラ「はーい。よっ。違う。こっちね。あれれ?」
カメラに写ったのは、長い尻尾を持った黒い猫だった。
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ブリッジは、宇宙船の頭脳部分です。ここから、宇宙船の全ての機能を制御
することができます。ゲームでの主な行動と使用する技能について以下にまと
めます。
・宇宙船の操縦 ※〈宇宙船〉
・砲台の射撃 ※〈砲門〉
・船外との通信 ※技能不要
・作業用アームの制御 ※技能不要(作業内容によっては〈メカトロニクス〉)
・コンバット・アームの制御 ※〈格闘〉
・センサーによる探知 ※〈メカトロニクス〉
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C:居住区画
黒猫 「ニャア」
ローラ「ふぅん。パネルを開けるとボタンがあったので、つい押してみたわけ
ね。ダメよ、そんなコトしちゃ」
黒猫 「ニィ」
ダン 「こいつの言っていることが分かるのか?」
ローラ「んー。わかんない。たぶん、そうじゃないかなぁって。違うの?」
ダン 「いや、そのとおりなんだが」
ローラ「ところで、このコどうするの?」
ダン 「きまってる。外に逃がしてやるんだ」
ローラ「えー。連れて行こうよ。このコ、人間に馴れてるみたいだし」
ダン 「ダメだ。どんな危険があるかわかったもんじゃない」
ローラ「このコが? 危険?」
黒猫 「ニャッ?」
ダン 「いいか。宇宙ではイレギュラーな要素一つが、大惨事を起こすことが
あるんだ。これは豪華客船タイタニック2号での事件なんだが──」
ダンが二人に背中を向けて、大型のホロ・ディスプレイを起動する。
大型の豪華客船の映像がその中に浮かび上がる。
ローラ「長くなりそうだね」
黒猫 「ニャァァ」
ダン 「すべてはライザ伯爵夫人が保安規定を破って──何しろ伯爵夫人は、
体重350kgもあったからな。船の警備員の装備ではこの質量を押し
とどめる術はなかった──ペットのアンキモサウルスを持ち込んだ事に
起因する」
黒猫 「ウニャ」
ローラ「お腹すいたの? じゃ、ついてきて」
ダン 「きわめて運が悪いことに、タイタニック2号の主任調理員は、辰帝国
出身のコックだった。知っての通り、アンキモサウルスは宮廷料理には
かかせない──」
こっそりと部屋を抜け出すローラと黒猫。
ローラ「(大型の業務用冷蔵庫を開けて)お肉がいい? やっぱ、フレーク状
でないと食べにくいよね」
黒猫 「ニャッ!」
ローラ「イヤなの? あ? どこ行くの! だめよ!」
廊下を駆けていく黒猫。
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乗り物の居住区の大きさと装備は、一回の航行にかかる期間から推測するこ
とができます。極端な話、移動が数時間〜半日で済むようなら現代の旅客機の
ほとんどがそうであるように、椅子だけならべておけばよろしいわけです。一
方で、最低でも数百年はかかるという亜光速宇宙船であれば、代謝を低く抑え
て寿命を伸ばすための冷凍睡眠装置のような設備か、世代交代を前提として、
巨大な町を丸ごと移動させる仕組みが必要になります。
さて、それではスターロードにおける宇宙旅行にかかる日数ですが──ルー
ルブックには明記されておりませんので、GM側が適時設定することになりま
す。本コラムでは、次のように設定したいと思います。
◆惑星〜衛星軌道 :2時間
◆惑星〜惑星 :1日
◆惑星〜ジャンプポイント:3日
◆恒星間ジャンプ :一瞬(主要幹線航路)
この設定だと、1回の宇宙旅行で約1週間かかる計算になります。ただし、
これは航路がきちんと整備してあり、波動嵐などの影響を受けなかったと仮定
してあります。未整備の航路などでは、宙脈を探りつつ小刻みな(たとえば、
0.1光年単位とかで)ジャンプを繰り返すため、航行に時間がかかります。
そのあたりを加味して、星系間航行の日数を設定してみます。
◆主要幹線航路で目的の星系まで:1週間
◆未整備航路で目的の星系まで :2週間(以上)
この設定の場合、宇宙船には外洋船に相当する居住設備があれば良いと、こう
考えることができます。寝起きできる船室や、共同で利用する娯楽室、厨房、医
務室などです。
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ローラ「もぉ。どこに行ったのよ? ええい、もう。なんで通路が途中で上が
ったり下がったりしてるのよ。邪魔だし、見通しは悪いし」
フライング・キャタピラ号は『不死人』動乱の際に星間連合が量産した戦時
標準型の高速輸送船が原型である。そのため、後から乗客を運べるように改装
された居住区は元の設備との関係で複雑な構造になっている。
ローラ「んーと。いないなぁ。あ、ダンの部屋のドアが開いてる........どれ
どれ。猫ちゃん、いませんかぁ? あら。思ったより整頓されてるわね。
というか、なんとも殺風景な部屋よねぇ。男の部屋なんだから、壁にヌ
ード・ホロの一枚でもかけてあるのかと思ったんだけど。あら?」
机の上にホロ・フィルムが一枚置いてあった。ローラはためらいながら、縁
に指を滑らせる。フィルムが燐光を放ち、空中に映像を結んだ。
映像の中に、8人の男女の姿が浮かび上がった。全員、揃いのジャケットを
着ている。肩のワッペンは連合偵察局のものだ。背景はどこかの宇宙港の滑走
路のようだ。その中に、ダンの姿もあった。
ローラ「偵察局時代のチームかしら? んー、ダンってば相変わらず(?)無
愛想ね」
(でも、何となく楽しそう。リラックスした感じがするし。考えてみる
とあたし、ダンのむかしのコト、何も知らないんだなぁ)
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乗組員(PC)が寝起きする部屋については、ビジネスホテルをそのまま当
てはめてもそれほど間違いではないでしょう。狭い部屋にベッドと机、そして
ユニットバスが入っているわけです。長期間の生活を考えると、ちょっとした
小物入れや着替えを入れるハンガーもあるかと思います。あとは、机か壁に通
信兼コンピュータ端末を載せればそれっぽくなります。
スターロードの宇宙船は人工重力を発生させているので、物は惑星上の生活
と同様に、ただ単に「置く」ことで安定させることができます。もっとも、人
工重力が切れたり船の加速の影響を受けることもあるので、棚や机のような大
きめの家具は固定されていたり収納式になっています。
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D:倉庫区画
ローラ「こっちに来たと思ったんだけどなぁ」
仲仕A「お? どしたんや、譲ちゃん?」
仲仕B「ヒンデンブルクの旦那ぁ! この箱はこっちでええかいの?」
仲仕A「(首からかけたスレート型端末を見て)もう一段、右の列おけぇや!
ほぅじゃ。それで加速ン時にも荷重のバランスが崩れんですむじゃろ」
ローラ「そろそろ積荷の固定か。早く見つけないと」
仲仕A「ジーク! おまえんところは積みあがったほうから、アンカー打って、
ネットかけとけや!」
仲仕C「へい、旦那!」
仲仕A「ちゃんと最後はおまえが確認せえよ! お前んとこの若いのは、無重
力での荷出しの経験がないけぇ、重ねるところが甘いんじゃ」
仲仕C「へい!」
ローラ「ねぇ、おじさん」
仲氏A「なんや?」
ローラ「猫、みませんでした?」
仲氏A「いや、知らんのぉ。おーい! だれか猫見とらんかいの?!」
仲氏B「そういや、奥の辺で白い影が走ってくんをみたが、あれかいの?」
仲氏A「エッケナーはああゆうとるが、どうかいの?」
ローラ「白? うぅん。どーだろ?」
(どゆこと? もう一匹いるのかな?)
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機械化が進んでいるとはいえ、大型船舶に匹敵する恒星間宇宙船の積荷の出
し入れには大勢の人手が必要です。いわゆる仲氏(なかし)とか権蔵(権三)
と呼ばれる、港にいる人が積み込みの作業を担当します。重いもの、大きいも
のはフォークリフトや作業用パワードスーツなどを使います。
宇宙船の倉庫区画には、荷物を運んだり固定するための装備品が整っていま
す。運搬用クレーンや、ネット、ワイヤーなどです。
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E:格納庫
ローラ「ああん、もう。出発の時間なのにぃ。こっちにもいない」
ダン 《おーい、ローラ。出発だぞ》
ローラ「あ。(ポケットからコミュニケーターを取り出す)ごめん。今、格納
庫」
ダン 「猫はどうした?」
ローラ「んー、それがね。見つからないの。船内のセンサーか何かでわからな
いかなぁ? ほら、たとえば炭酸ガスや熱を検出するとか」
ダン 《ダメだ。だいたい、宇宙船の中はそうでなくてもネズミだのゴキブリ
だの、小動物や虫が多いからな。そりゃ、船内隔壁を全部閉じて、動き
を封じることはできるが、それで困るのはむしろこっちだ》
ローラ「ままならないものねぇ」
ダン 《ついでに、格納庫の最終点検をしておいてくれ。おれは倉庫の点検つ
いでに、猫も捜しておく》
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ヒーローの宇宙船には格納庫があります。ここには、小型戦闘機や、車両が
登載されています。何しろ、ヒーローの宇宙船は我々の感覚でいうと、巨大な
ビルのようなシロモノですから、人が住む町中に乗り入れたりすると大騒ぎに
なってしまいます。ちょっとした移動には、やはり車両。それもATV(All
Terrain Vehicle=全地形対応装甲車)が一番です。これは密閉型で大型トラ
ックと同じくらいの大きさを持ちます。さすがに都会化された背景ではごつす
ぎる印象を否めませんが、ジャングルだろうが砂漠だろうが真空中だろうが、
どこでも走る頼もしい車です。
しかしながら、フライング・キャタピラ号では、元々登載していたキャタピ
ラ型ATVがとある冒険で廃車になってしまい、ローラが自分の好みで戦闘エ
アカーに買い替え(〔資産家〕6レベル)てしまいました。
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F:エンジン区画
フライング・キャタピラ号は尾部から推進剤を噴射しつつ、惑星の軌道を離
脱した。そのまま、宙脈を捜しながら星系の外へと加速していく。
3日後。
ローラ「猫ちゃん。結局見つからなかったね」
ダン 「まぁ、しかたないな」
ローラ「お腹すかせてないとイイけど」
ダン 「最近、ネズミが増えているからな。取ってくれるとちょうどイイんだ
が───よし、宙脈をつかまえた。けっこう太い。これなら、ラクに跳
べそうだな」
ローラ「! 波動エンジンでアラート! エネルギー漏れ?!」
ダン 「波長をずらせ! 砲塔へ回路接続! 余剰エネルギーを砲塔のコンデ
ンサに吸収させる!」
ローラ「放出エネルギー0! 宙脈からエネルギー引き出してるはずなのに!」
ダン 「くそっ! 制御不能か! しかたない、機関室へ行く! ローラは、
脱出ポットへ!」
ローラ「あたしも──」
ダン 「邪魔だっ!」
ローラ「!」
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波動エンジンは、銀河を流れる宙脈からエネルギーを引き出す、宇宙船の主
動力源です。星系外縁部に行き、目的の星へとつながる宙脈と波長を合わせる
ことで、光速の壁を越えるFTL(Faster Than Light=超光速)航法を実現
することができます。
波動エンジンを始動させたり、波動嵐などで宙脈が乱れている場合のために、
宇宙船には補助エンジンが備えられています。補助エンジンは通常核融合炉が
使われています。
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ダン 「ハァ、ハァ、ハァ」
(おかしい。エンジンの音も、振動も、ヘンなところはまったくない。
ただ、エネルギーだけがどこかへ消えている)
ダンは手動で重い扉を開けた。巨大なサナダ重工業製V型波動エンジンが、
うなりをあげているのが見える。祈祷文で化粧された太い伝導ケーブルが注連
縄のようにエンジンにまとわりついている。
物心がついてからずっと、宇宙で生活してきたダンにはごくごく見慣れた風
景であった。
その傍らであふれる波動の力を啜る、白いクリーチャーの姿をのぞいては。
ダン 「グレムリン!」
クリーチャーがダンを見やり、目を細めた。
笑ったのだ。
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宇宙船の船内での戦闘には注意が必要です。特に機関室など、危険物がある
場合は。
強力なエネルギー火器や銃器は、基本的に禁じ手となります。特に戦艦の砲
塔並みの破壊力を持つ〔戦士の銃〕や〔サイブラスター〕をうかつに使うと、
宇宙船そのものが破壊されてしまう危険があります。
格闘戦能力を持ったドラゴン・タイプのヒーローの出番ですね。
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ダンは身を低くしてグレムリンの鋭い爪をかわした。だが、すぐさまグレム
リンは尾であたりの空間をなぎ払う。太い尾がムチのようにしなってダンをと
らえた。
ダン 「! うぐっ!」
吹き飛ばされたダンは、背中を強打して呻いた。手にしたソニックライフル
を取り落とす。もっとも、当たってもほとんど効いてはいなかったのだが。
グレムリンがとどめとばかりに、爪を振り下ろした。
ダン 「ゴホッ! ゴフッ!」
呼吸できず、動けないダンの前にローラが駆けこんできた。
ローラ「疾!」
ローラが指で空間に線をひく。グレムリンの爪が、その線を越えようとした
瞬間、眩しい閃光が放たれ、爪を弾いた。
ダン 「どうして、ゴホッ、逃げ」
ローラ「それより! どうすればいいの?」
ダン 「ヤツは、波動エネルギーを、吸収している。だから、波動エンジンを、
緊急停止させれば」
ローラ「わかった!」
ローラが駆け出す。身をかがめ、遮蔽物を利用するようにして。だが、グレ
ムリンは巨体に似合わぬ敏捷な動きでローラを追い、背後から鋭い爪を突き出
した。
ダン 「ローラ!」
“恐怖”がダンの心臓を絞った。
またか?
また失うのか?
鋭い爪がずぶり、と刺さる。鮮血が飛び散って波動エンジンを斑に染めた。
ローラ「?! あなたは?」
黒い豹に似た大型の獣が、ローラとグレムリンの間に立ちふさがっていた。
グレムリンが、傷ついた前肢を振り回して威嚇の叫びをあげる。
黒い獣が、それに答えるかのように吼えた。ビリビリと部屋が振動する。
ダン 「急げ!」
ローラ「うんっ! 波動機関、緊急停止! キングストン弁、開放!」
グレムリンが悲鳴をあげた。5mを越える巨体が、みるみるうちに小さく、
薄汚れていく。そして同時に、黒い獣もまた、ぐんぐん小さくなる。
グレムリンは、恨みと怒りの混じった視線をローラに向けた。体内に残った
宙脈の力を爪に集中させ、ローラにおどりかかる。
ローラ「疾!」
ローラの作り上げた障壁に、グレムリンの速度が落ちる。だが、爪は止まら
ない。空間を軋ませながらローラへにじりよる。
グレムリンは勝利を確信した。そして自分の邪魔をしたこの女の、恐怖に歪
んだ顔をみるべく視線を動かした。
だが、ローラの青い瞳に浮かぶのは。恐怖ではなく。
銃を構えた男の姿。
そして、銃口から放たれる白い光弾。
ローラ「また小さくなっちゃったねぇ」
黒猫 「ニャア」
ダン 「(端末をいじりながら)黒猫を宇宙船の守護天使とする民間伝承は幾
つかあるが──正体は不明」
ローラ「で、このコはどうするの?」
ダン 「こいつの好きにさせるさ」
ローラ「良かったね。ココにいていいんだってさ」
黒猫 「ニャ」
猫とたわむれる少女を見ながら、ダンはため息をついた。
ダン 「ローラ」
ローラ「なに?」
ダン 「さっきのコトだが......ありがとう。助かった」
ローラ「当たり前のことをしただけよ。だって、相棒じゃない!」
ローラのとびっきりの笑顔にダンが小さく苦笑した。
それを見て、黒猫が、ニャア、と鳴いた。
(第3話:終わり)
作成者:銅 大(アカガネ ダイ)