舞台設定1:辺境の惑星
『新星界スターロード』は、広大無辺な宇宙を舞台としたRPGです。
そして広大無辺であるからには、宇宙港だのスペースコロニーだの、小惑星
だのといった、他のRPGにはない舞台装置があります。
本コラムではそうしたSF−RPGならではの舞台装置とゲームでの使い方
について解説します。なお、ここでの設定は銅大個人の案によるものであり、
FEARオフィシャルではありません。また、皆さんがプレイされる場合には
そのセッションを管理しているマスターの設定が最優先されます。
本コラムの進行は、「元偵察局員」ダン・ブルワーと「大富豪の娘」ローラ・
チェスの二人が行います。
第1話)辺境の惑星 (惑星ルグィン)
ローラ「ローラです。あたしは今、惑星ルグィンに来ています。回りは一面、
緑の大草原で、すっごい見晴らしがいいです」
ダン 「悠長に紹介などしている場合じゃないぞ。手伝え」
ローラ「ダメよ。こーゆーのは最初が肝心なんだから----って、何してるの?」
ダン 「見てわからないのか。滑走路から障害物を押し出しているんだ」
ローラ「ねぇ、質問していい?」
ダン 「だめだ。まず手伝え」
ローラ「はいはい。う、暖かい。まさか、これ、生物?」
ダン 「正解。この星の家畜でプロンという。毛が長いのでよく分からないが
毛を刈ると豚に似ている、らしい」
ローラ「あ、イイ匂いがする(クンクン)」
ダン 「匂いと肌触りがいいので、この星の主な輸出品となっている、そうだ」
ローラ「輸出品。なるほど(クンクン)」
ダン 「今日は毛を刈る予定だったが、逃げ出して。滑走路の上で丸まって、
昼寝をはじめた。目を覚まさせるには思い切りムチでしばく必要がある
が、それだと毛が痛むので、人力で押し出している、わけだ」
ローラ「そっかー(クンクン)ありゃ? なんだか、身体がホワホワしてきた」
ダン 「あ、しまった。匂いに酔ったな?」
ローラ「ふにゃあ。世界が回るぅぅ(ポテ)」
ゲーム内での「現在」。人類の築き上げた文明は、頂点から転落しています。
高度な文明を築いていたSSTO(太陽系条約機構)は、「大崩壊」と呼ば
れる巨大な波動嵐によって滅びました。各星系を緊密に結び付けていた通信・
交通網が遮断され、それぞれの星の人はその星の中でのみ生きていくことを余
儀なくされたのです。
文明の崩壊は様々な形を取りました。
ある星では、すべての人が死滅し、機械だけが生き残りました。
ある星では、技術文明を維持することができ、大崩壊の後に星間連合や辰帝
国に加盟しました。
ある星では工業基盤を失い、古代や中世レベルの技術文明にまで後戻りをし
てしまいました。
ある星では人類は滅亡してしまったものの、知性化された生物(ネオ・チン
プやネオ・ドルフィン、ねこめーわくなネコなど)が人類の遺産を守って奇妙
な社会を築きあげました。
ある星では人々は自ら科学技術を捨て去り、超能力や命力を解放する道を選
びました。
ある星では科学技術が失われるまでの間に自分たちの身体を遺伝子レベルで
改造し、その星の環境に適応する道を選びました。
ローラ「うにゅにゅう」
少女 「気がついたか?」
ローラ「ん? ここは?」
少女 「私の家だ。馬鹿なヤツだ。発情期の匂い腺に鼻先をつっこむヤツがあ
るか」
ローラ「なによ! 知らなかったんだからしょうがないでしょ! アタタ....」
少女 「匂い酔いだな。しかたない。これで少しは楽になるだろう」
(そばにある囲炉裏に、丸い塊を入れる。薄紫の煙が炎の中から立ち昇る)
ローラ「さっきの匂い、よりちょっと弱い。迎え酒のよーなモンか。ね、それ
何を燃やしてるの?」
少女 「プロンの糞だ。当たり前のコトを聞くな(軽蔑の眼差し)」
ローラ「だから、あたしはこの星の住人じゃないから、そんなことを知らない
の。で、なんで糞を燃やすとあの匂いがするわけ?」
少女 「そりゃ、匂い腺が尻についているからだ」
ローラ「うっ。じゃあ、あたしが鼻をつっこんだのってお尻? やだ、鼻にな
んかついてないでしょーね」
少女 「安心しろ。そんな低い鼻には何もつきはしない」
ローラ「うるさーい!」
惑星ルグィンは、SSTOに開拓された植民惑星です。『なぜか』この宇宙
に大量に存在する地球化された惑星の一つで、表面の90%が海洋で占められ
ています。人が住んでいるのは、北極大陸という極点を中心にした三角形の大
地です。北極大陸は、一年のうち春と秋の二回、巨大な低気圧による暴風に見
まわれます。風速100m/秒を越える大暴風は、地上のあらゆるものを吹き
飛ばし、地形すら変えることもあります。
そのため、ルグィンの地表には森林と呼べるようなものがありません。植物
は大地(それも岩肌など)にへばりつくような形で生えています。他の生物も、
地下に穴を掘ったり、植物と共生したり、嵐の時期だけ海洋に潜ったりと、嵐
に適応する形で進化していきました。
そしてそれは人間も同じです。
ローラ「思ったんだけど、ここって地下の岩室なわけ?」
少女 「何を当たり前のことを」
ローラ(どうしてそう、かんにさわる物言いをするのよ、アンタは)
ダン 「飛翔人(ひしょうびと)が降りてきたぞ。西風が出ている」
少女 「そうか。では私は抑えの儀式に入る。女はもう大丈夫だ」
ダン 「この忙しいときに、すまないな」
少女 「別に。お前の頼みなら....」
ローラ(ん? 何よ、そのしおらしい表情と仕種は?)
「大崩壊」によってこの星に縛り付けられることを余儀なくされたとき、人
々に選択肢はほとんどありませんでした。軌道上の宇宙コロニーを維持するだ
けの工業力は元よりなく、人々は年2回の嵐を除けばまずまず住みやすいと言
える北極大陸へと降下しました。そして、軌道上の宇宙建築物を解体して得ら
れた資材を使って、地下の居住区を作り上げていったのです。
こうして、ルグィンの人々は20世紀初等レベルの技術社会であれば維持で
きる目処がたちました。しかし、それだけでは生存を万全のものにすることは
できなかったのです。
ローラ「うひゃあ! おっきぃ飛行船!」
ダン 「うう。いつ見てもたまらんなぁ。本来は、高々度用の飛行船で、こん
な地上近くで運用していいタイプじゃないんだがな。肝が冷えるぜ」
ローラ「あのエンジン....熱核エンジンじゃない!」
ダン 「この星の工業生産ってのは、再接触前はほとんど手作りに近いからな」
ローラ「事故が起こったらどうすんのよ!」
ダン 「だからだよ。アクヤが“抑えの儀式”をするのは」
ローラ「アクヤって、さっきの女の子? “抑えの儀式”って?」
ダン 「あれさ」
ローラ「あのやたらとたくさん幟をたてたお祭り? 二重に並んだ石柱の中で、
えらいヒラヒラがたくさんついた服で踊ってるけど」
ダン 「アクヤが運気を呼んでいるんだ。無事に飛行船が着陸(実際にはワイ
ヤーで係留するだけで地面に接触するわけじゃないが)できるように」
ローラ「周囲の空気の流れすべてを命力で抑える? ムチャよ!」
ダン 「だから、むかしは人間を生け贄に捧げてその生命力を使っていた」
ローラ「!! そこまでして、飛行船を飛ばさないといけないの?」
ダン 「ああ。この星の嵐は、それほどのモノなんだよ」
ローラ「そっか。気象観測用プラットフォームなわけね、あれが」
年2回の嵐と、時折発生する竜巻。ルグィンの気候は理不尽なまでの暴力を
地表に叩き付けてきます。人間にこれを抑える術はありません。被害を最小限
にとどめるためには、精度の高い気象予報が必要不可欠でした。そのために、
ルグィンの人々は空を飛ぶ技術と技能を文明が崩壊した後にも維持するための
社会的な仕組み作りを行ったのです。
ローラ「それが飛翔人(ひしょうびと)ってわけね」
ダン 「ああ。飛行船を扱い、気象を予報する仕事を行う人々は、祭事を取り
行なう神官として位置づけられている」
ローラ「古代地球でも、天気予報と暦は神官の仕事じゃなかったっけ?」
ダン 「おそらく、それに習ったんだろう」
ローラ「それにしても、ヒヤヒヤするわねぇ。ねぇ、この星って、連合の保護
星系に指定されてるんでしょ? 地上と空中の往来ぐらい、動力グライ
ダー貸してあげたら? それか、いっそ気象衛星を貸すとか」
ダン 「そうもいかない。だいたい、気象衛星で高精度の情報収集ができても、
そこから未来の気象を解釈するには、この星の包括的なデータか経験の
蓄積が必要だ。それに----」
ローラ「それに?」
ダン 「グライダーが降りてくるのと、恒星間宇宙船よりもデカイ飛行船が降
りてくるのと、どっちがインパクトがあると思う?」
ローラ「え? そりゃ----ああ、なるほど」
ダン 「静的な社会への過度な介入は、その社会に住む人々の心を歪めかねな
い。効率を求めるだけが最善手じゃないのさ」
ローラ「でも、いくらなんでも生け贄はダメだよ」
ダン 「そのとおり。そこで、あの飛行船の中には補助用の慣性制御エンジン
や非常時の緊急離脱用システムなどを組み込んである。むかしに比べる
と、ぐんと安全性は増している」
ローラ「得意そうね」
ダン 「おれが担当した事件だったからな。もう、5年にもなる」
大崩壊から数百年が過ぎ、外の世界が惑星ルグィンを見つける日がやってき
ました。運のいいことに、最初に遭遇した帝国系資本の鉱山会社は、小惑星帯
の資源にのみ興味を持ち、市場としても生産拠点としても魅力に乏しいルグィ
ンには手出しをせず、情報を公開(売却)しました。
続いて、情報を購入した帝国星図編纂局および連合偵察局が、大学など学術
団体と組んでこの星を訪れるようになりました。
その結果、外の世界の情報に触れた人々の中から、急進的な一派が社会の変
革を求めるようになります。帝国はこれを後押ししてルグィン星を自国の領土
にしようと試み、連合は保守的な派閥に組みしました。
争いはエスカレートしていき、ついには飛翔人の次の長である青年を旗頭と
する武力闘争へと突き進んでいきます。
ダン 「その改革派の青年リーダーっていうのが、アクヤの兄さんだった。彼
の恋人が、生け贄に選ばれたのが、最大の動機だったようだな」
ローラ「どうなったの?」
ダン 「あやうく飛行船が地上にぶつかって、大惨事になるところだった」
ローラ「もぅ! 間をはしょらないでよ!」
ダン 「ま、その話は後で。ほら、ワイヤーの係留が終ったぞ。こっちの仕事
はこれからだからな」
ローラ「肝心なところはすーぐ、ボカすんだから。あ、舞の方も終ったみたい
ね。(飛行船を見上げるアクヤを見て)へぇ、いい顔するじゃない」
ダン 「おおぃ、こっちだ。早くしろ」
ローラ「はい、はい」
ダン 「飛翔人の長、つまり飛行船の船長のタルジさんだ」
タルジ「ようこそ、“闇の次に来たりし者”よ」
ローラ「闇の次....だれのこと?」
タルジ「勇者のことだ」
ダン 「やめてくださいよ、長。こそばゆい」
タルジ「いやいや。君の調停があったればこそ、われわれの今がある」
ダン 「あー。手紙は、まとめて奥さんの方に渡しておきました。みんな、元
気にやってるようですよ」
タルジ「20年。いや10年先には彼らが必要になってくる」
ダン 「そうですね」
ローラ(なんとなく想像ついちゃったな。つまり、急進派の連中を国外追放の
形で留学させて、外の世界の知識や経験を積ませているわけね。連合も
彼らがルグィンに戻った後の好意を期待できるし)
タルジ「ところで、君がここに来たのは旧交を温めるためではあるまい?」
ダン 「ええ。実はお願いしたいことがありまして。おれは今、ある宇宙船を
捜しているんですが、この星に潜伏しているんじゃないかと----」
ルグィンのように文明崩壊に伴って特異な社会を築き上げた惑星での冒険は、
そのエキゾチックさを活かす形で組み上げていきましょう。
たとえば、連合や帝国によって保護されているので、持ち込める装備に制限
があるとか(〔治安上昇〕ダークパワー)、人々とのコミュニケーションがう
まくいかないとか(「宇宙船? なんですそれ?」「あのね、ボクね。おっき
な鳥がね、飛んでいるのをみたんだよ」)、場合によっては自分たちが外の世
界から来たという事実を秘匿しなくてはいけないとか、いろいろなシナリオ上
の制約が、雰囲気を盛り上げてくれることでしょう。
タルジ「ふむん。そいつの話を総合すると、君の探している宇宙船は、ヌバ台
地に隠れているようだな」
ダン 「ヌバ台地ですか。よし、ローラ。エアカーの準備はいいか?」
ローラ「修理はOKだよ。でも、もーミサイルの在庫ないよ」
タルジ「ふむん。弩でよければ貸せるぞ」
ローラ「弩....あたしは使えないよ」
アクヤ「父様。あたしが行く。弩ならスナーク狩りで慣れてる」
ダン 「危険だぞ」
アクヤ「この星なら、あの女よりは役に立つ」
ローラ(カチン!)
タルジ「うむ。しっかり勇者殿に恩返しをしてくるのだぞ」
ダン 「........やれやれ」
(第1話:終わり)
作成者:銅 大(アカガネ ダイ)