■RPG今昔物語:魔法使いの戦い方

 ファンタジーに必須の要素を一つあげろと言われれば、私は

 「そこに魔法(使い)があるか否か」

 をあげるだろう。超能力ではいかんのである。魔法でなくては。
 理屈に合わない演出があった?
 おおいに結構。杖持って呪文を詠唱したりするとなおの事よろしい。

 多くのファンタジーRPGにおいて、魔法使いはその魔法という超常的なパワー
でもって、戦場の覇者として君臨する。特に攻撃力という側面において、魔法使い
を上回るキャラクター・クラスはほとんど存在しない。

 だが、その一方で魔法使いには幾つかの制約を課せられる事が多い。たとえば金
属製の鎧を装着する事ができないとか、ヒットポイントが雀の涙であるとか、成長
が著しく他のクラスに比べて遅いとかである。

 これらの制約をつらつらとながめてみると、防御力を弱める、という傾向がある
ように思える。つまり魔法使いは攻撃力はあるが、防御力がない、というものであ
る。

 極言すれば、魔法使いとは砲兵に他ならない。

 19世紀より此の方、戦場における砲兵の火力支援は攻撃にも防御にも必須であ
る。戦略爆撃機から戦術爆撃機までそろえた航空支援は確かにスマート爆弾と合わ
せて戦争の形態を大きく変えたが、やはりそれでも、必要なだけの火力を一定区域
に畳みかけるように投入できる砲兵の価値は少しも減じていない。そしてそれは魔
法使いにおいても言える事なのだ。さらに言えば魔法使いは、飛行の魔法を使う事
で自らを爆撃機(しかもステルスだったりする)にして己がValueをぐんと上げる
事も可能である。

 だが砲兵は敵の攻撃に弱い。だから砲兵は味方の背後に位置し、さらに頻繁に己
の位置を変えるという念の入れようである。可能であれば敵に位置を覚られないの
がベストだ。このあたりも魔法使いと同じである。

 そしてもう一つ。魔法使いと砲兵に共通する点。それは呪文=弾薬が尽きたらそ
れでおしまいという点である。そのため魔法使いは予備の弾薬ともいうべきスクロ
ールやワンド、スタッフを手に入れるために大枚を払う事になる。

 しかしながら、こうした事はいずれも功成り名遂いだ魔法使いに言える事である。

 昔の魔法使いはなかなかこの域にまで達する事はなかった。

 それまでに貧弱な防御力という弱点をつかれ、コボルド・アーチャーの集中射撃
をくらってダンジョンに死体をさらす羽目になった魔法使いのなんと多かった事か。
 これは裏を返せば、それだけ魔法使いが恐れられていた証拠である。

 私は考えた。果たして、こんな危険なルールに縛られた世界における高レベル魔
法使いとはどんなものだろうかと。

 まず、必要なのは知力よりも体力である。つまり、魔法使いは筋骨隆々としてい
なくてはいけない。

 おそらく、魔法学校で行われているのは筋力・持久力を上げるための肉体の鍛錬
に違いない。柔道とか空手とか、武器に制約のある魔法使いには素手の格闘戦能力
も必要だろう。

 しかし、いかに肉体を鍛え、素手で熊と戦える技を身につけたとしても、ルール
による制約を乗り越える事はできない。かといって低レベルでは使える魔法といっ
てもたかが知れている。使い切ってしまえばただの人だ。
 そんなパーティーのお荷物の状態を何とかする方法はないか?

 ある。

 投げナイフなどの投擲武器である。弓矢は使えなくとも投擲武器は使用可能とい
うRPGはしばしば存在する。ならば、それを究めれば良い。

 私が自分のワールドで考えた魔法学校はこうだ。まず、広い敷地があり、そこで
は海兵隊訓練キャンプのような設備が置かれている。いかに戦場で素早く移動し、
遮蔽を取り、亀裂や罠を飛び越えるかに命がかかっているからである。ひよっこの
魔法使い達を、軍曹魔法使いが罵詈雑言を浴びせながら鍛え上げる。
 もちろんひよっこ達の回答は常に、

“Sir! Yes,sir!!”

 である。

 そして砂袋を背負ってのランニング。広い校庭を黙々と走り続ける。魔法使いだ
からといって荷物を持たなくてすむ場合ばかりとは限らない。宝物が手に入った時、
仲間に死人が出た時、魔法使いは重い鎧を着ていない分、よけいに担ぐ必要がある
のだ。

 さらに、紐でぐるぐる巻きにした丸太に、投げナイフ(あるいは手斧)を投擲す
る訓練がある。魔法使いが身につけるローブの下には、これらの投擲武器が無数に
ぶら下がっているのだ。

 最後に、校舎を見てみよう。そこには魔法学校を卒業した歴代の著名な魔法使い
の肖像画や銅像がある。そしてそれらのどれを見ても、ボディビルダーの大会の優
勝者かと見まがうばかりの肉体美を誇っているのである。

 そんな魔法使いに憧れて、今日もまた、新たな魔法使い志願者がやって来る。
 果たして彼の運命やいかに。


 今は昔の物語である。

【おしまい】

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