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TVシリーズ第9話『瞬間、心重ねて』はたいへん面白いエピソードでした。
しかし、第6話までのシリアスな展開と比較すると、やや違和感を覚えるほど
に明るい話でもあります。
そこで、私なりに第9話を改造して、第6話までの世界観を維持したシナリオ
を構築してみました。
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第9話『瞬間、心重ねて』改
++ ネルフ本部内 ++
初号機と弍号機がシミュレータと接続され、戦闘訓練をしている。
シンジ「くそっ。見失ったか……うわあっ!」
ビルの影から現れた使徒の一撃を受け、初号機がよろめく。
アスカ「だらしないわね! こうやるのよっ!」
弍号機が華麗に跳躍し、手にした槍で使徒を一刀両断にする。
管制室で、訓練の様子をミサトやリツコたちがモニターしている。
リツコ「さすがね。反応速度でシンジ君を0.2も上回っているわ」
ミサト「ええ。弍号機との性能差を考えても、いい腕だわ」
そう言いながらも、うかぬ顔のミサト。
リツコ「どうしたの? 何か心配ごとでも?」
ミサト「ん。ちょっち……ネ」
その時、警報が鳴り響く。
マコト「哨戒行動中の巡洋艦『ひえい』より入電! 大島の南方40kmの水中で
正体不明の移動物体を発見。使徒と思われます!」
冬月「第7の使徒か。総員、警戒体制に入れ」
エヴァから下りたシンジとアスカ。アスカが得意そうな表情で胸を張る。
アスカ「まったく、ウワサほどあてにならない物もないわね。あなた、本当に使
徒を一人で三体も倒したの? よっぽど弱かったのね、その使徒って」
シンジ「綾波やみんなが、助けてくれたからね」
思ったよりシンジの反応が鈍いので、不満げなアスカ。さらに何か言いつのろ
うとするが、ミサトからの通信に邪魔される。
ミサト『シンジ君。アスカ、聞いてる? 使徒が現れたわ。すぐに出撃よ』
++ 海岸 ++
輸送機に搭載され、使徒の上陸が予想される海岸へと向かうエヴァ。
ミサト「現在、第三東京の防衛システムは再編中。使徒との戦闘ではろくな支援
もできないわ。そこで、今回は国連極東方面軍所属の自衛隊第2師団と共
同して、水際で防衛線をはります」
地上では、国連軍の特科大隊が重砲陣地を構築している。
アスカ「はん。どうせやられるだけなんだから、引っ込んでりゃいいのに」
シンジ「そんなことないよ。そりゃ、使徒のATフィールドを破ることはできな
いけど、誘引や牽制にはなるもの」
アスカ「あたしには必要ないわ」
ミサト「お喋りはそこまでよ。来たわ」
水上に現れた使徒に向かって、ミサイルが発射される。ミサイルが命中する寸
前、使徒の姿が消える。爆発。
ミサト「今のは?」
マヤ「レーダーによると、目標は一瞬で100m近く移動しています」
ミサト「テレポート?……二人とも注意して! この使徒は妙な能力を持ってい
るわ。うかつに踏み込んじゃ──」
マコト「弍号機、突出します!」
海上に沈んだビルを踏み台にして、弍号機が使徒へ迫る。
シンジ「だめだよ、惣流! もっと相手の動きをよく見て!」
アスカ「何言ってんのよ! 戦いは先手必勝よ。そんな事より、ちゃんと援護し
てよね」
初号機がライフルを撃つ。だが、銃弾はなぜか使徒の体をすり抜けて海面に突
き刺さる。
シンジ「?……! いけない!」
アスカ「もらったあ!!」
手にした槍を使徒へ突き立てる弍号機。しかし、手応えはない。唖然とするア
スカの前から使徒の姿が消える。
アスカ「消えた?──-きゃああっ!」
いきなり背後に現れた使徒が弍号機を掴んで海面に叩きつける。
アスカ「いつの間に?! ああっ!」
使徒が弍号機にのしかかる。鋭い爪の一撃が振り下ろされる。思わず目をつぶ
るアスカ。
シンジ「させるかぁっ!」
シンジの初号機が横合いから使徒に体当たりする。飛沫をあげて倒れる使徒と
初号機。二体はそのまま組み合いをはじめる。
ミサト「今よ。アスカ! 初号機が押さえている間に使徒のコアを!」
弍号機は倒れたまま、動かない。エントリー・プラグの中ではアスカが呆然と
した表情のまま、座り込んでいる。
ミサト『アスカ! どうしたの。アスカ!』
アスカ、はっとして操縦桿に手を伸ばす。その手がぶるぶると震えている。
シンジ「うわああっ!」
ミサト「シンジ君!」
シンジの初号機が、使徒に組み伏せられて一方的に殴られている。使徒の爪が
装甲を抉り、肉を引き裂く。初号機の『血』が海面を赤く染める。
リツコ「まずいわ。このままだと初号機よりもパイロットの方が……」
ミサト「アスカ! 援護して! 早く!」
弍号機、普段では考えられないほどゆっくりとした動きで立ち上がる。一歩、
二歩と使徒に近づく。その歩みも、使徒が『顔』を弍号機に向けるとぴたりと止
まってしまう。アスカが弍号機に怒鳴る。
アスカ「う……動きなさいよ!」
使徒、ぐったりとした初号機を置き捨てて、弍号機に接近する。顔を恐怖にひ
きつらせるアスカ。
マヤ「弍号機、シンクロ率18%に低下。ハーモニクスが断絶していきます」
ミサト「ここまでか……第二師団に連絡! 援護射撃を要請して!」
戦車の砲弾が使徒の体に炸裂する。使徒、向きを変えて海岸に布陣した戦車隊
へと向かう。
師団長「こちら第二師団。どうした。そちらの『巨人』は使えんのか?」
ミサト「すみません、師団長。エヴァは行動不能になりました」
師団長「──そうか。なら、こちらで何とか足止めをしてみよう」
海岸に上陸した使徒。第二師団は遅滞戦術で使徒の進行を遅らせながら、整然
と後退していく。
師団長「NN地雷の設置準備はできたか?」
参謀「はい。しかし、このままですと敵を誘引中の部隊の一部が巻き込まれる可
能性が……」
戦況を表示した戦術ディスプレイを見る。師団長がぎりっ、と唇を噛んだ。
師団長「かまわん。爆破しろ」
太陽に匹敵する輝きが、使徒を包み込む。衝撃波が走り、それは波となってエ
ヴァをも揺り動かす。
動かなくなった弍号機の中で、アスカが屈辱に唇を震わせる。
移動指揮車の中の作戦会議室。第二師団の師団長も参加している。
ミサト「使徒の状態は?」
シゲル「構成物質の23%を失い、停止しています。これまでの使徒の再生能力
からシミュレートした結果では、四時間後には再び活動を開始します」
ミサト「現在の状態での攻撃は?」
マコト「航空隊による空爆と、第二師団の重砲による攻撃を繰り返していますが、
かんばしくありません。もう少し時間があれば、太平洋艦隊の戦艦による
艦砲射撃でトドメをさせるんですが」
ミサト「NN地雷は使えませんか?」
師団長「失敗した。設置のために工兵隊が近づいたとたん、あのバケモノのビー
ム攻撃をくらったよ。今は奴の予測進路に仕掛けている」
ミサト「残る手は、やはりエヴァだけか──状態は?」
リツコ「初号機は腕にかなり深い傷を負っているわ。応急で処置しているけど、
格闘戦はムリね。弍号機はほぼ無傷よ。ただ──」
ミサト「パイロット……か。初号機と弍号機のパイロットは?」
マヤ「初号機専属パイロットは医療車で休んでいます。弍号機専属パイロットも
休憩中です」
ミサト「そう……」
大地に跪いた弍号機の膝を、アスカが蹴る。
アスカ「まったく。肝心な時に動かなくなるんだから!」
リツコ「それはちがうわ。エヴァに問題はありません」
アスカ「だって!」
リツコ「エヴァはパイロットの命じた通りに動いただけよ」
アスカ、顔を真っ赤にし、走り去る。
装甲兵員輸送車に手をついて、息を整えるアスカ。その耳に第二師団長と参謀
の声が聞こえる。(二人からはアスカは車両の影で見えない)
参謀「被害集計が出ました。死亡68名。負傷者312名です」
ぎょっとした表情で凍りつくアスカ。
師団長「そうか。戦死した者の名前と、家族への連絡先をまとめておいてくれ」
参謀「言っても詮無いことではありますが。後、10分でもネルフの巨人が時間
を稼いでくれていたら──」
アスカ、耳を塞いでしゃがみこむ。
ベッドの上で、シンジが目を覚ます。脇を見ると、アスカが膝を抱いてうずく
まっている。シンジ、何か声をかけようとして口を開くが、言葉がでない。
アスカ「いい気味だと思ってるんでしょ」
シンジ「惣流──」
アスカ「訓練であれだけ大口叩いたくせに、いざ実戦になると何の役にも立たな
い奴だって」
シンジ「…………」
アスカ「笑いたければ、笑えばいいわよ。殴りたいなら、殴りなさいよ。でも..
..でも、同情だけはごめんだからね。そんな事したら許さないから」
シンジ、沈痛な表情のまま黙っている。
やがて、アスカが顔を伏せたまま、低いすすり泣きをもらしはじめる。
シンジ「あいつ……あの使徒を撃った時、弾丸が体を通り抜けていったんだ」
アスカがわずかに顔を上げ、シンジを見る。シンジは、あえてアスカの方を見
ずに正面を睨んでいる。
シンジ「たぶん、あいつは自分の姿を離れた場所に映すことができるんだ。どう
やるのかは分からないけど」
目を閉じて記憶を手繰るシンジ。
シンジ「でも、自分が攻撃する時にはちゃんと姿を表している。たぶん、幻しを
維持したままだと攻撃できないんだ」
シンジはベッドからおり、アスカに向き直る。アスカは再び顔を伏せる。
シンジ「ボクと初号機が囮になる。あいつが幻を消して姿を表したら、惣流が弍
号機で攻撃するんだ。あんまり接近はしないで、槍で離れたところから攻
撃した方がいいよ。動きはトロイけど、けっこう力があるから」
アスカ顔を伏せたまま、親指をたてた握り拳をシンジに向ける。シンジも同じ
仕種を返し、にっこりと笑う。
ほぼ再生を終えた使徒に向けて、初号機と弍号機が接近する。使徒は再生を中
断して、ビーム攻撃をエヴァに発射する。
ミサト「MLRS、発射!」
ミサイル自走砲から、八発のミサイルが発射される。ミサイルは使徒の上空で
小型の爆弾に分離し、頭上から雨あられと降り注ぐ。
シンジ「よし! 今だ!」
初号機、ダッシュする。弍号機がそれに遅れじと駆けはじめる。指揮車の中で
ミサトとリツコが顔を見合せてうなずく。
爆煙の中から使徒が姿を表す。シンジ、ライフルをフル・オートにセッティン
グして弾丸をばらまきながら接近する。弾丸が使徒の体をすり抜ける。さらに初
号機が肉薄すると、使徒の姿が薄れ、消える。
アスカ「シンジ、伏せて!!」
アスカが叫び、槍を初号機の背後の空間に向けて突き立てる。手応えがあり、
空中に使徒の体が現れる。
アスカ「あんたの手はお見通しよ。敵の背後に現れるなんて馬鹿正直な手が、二
度も三度も通用すると思ったの?」
つきたてた槍を離し、弍号機はプログ・ナイフを抜く。使徒は再び姿を消すが、
槍の一部が空中に浮かんで見える。
シンジ&アスカ「そこっ!」
初号機が使徒のいるであろう空間に足払いをかける。同時に、弍号機が空中に
高々と跳躍する。横転し、姿を表す使徒。起き上がろうとするところへ弍号機が
落下し、プログ・ナイフを深々と突き立てる。コアが真っ二つに割れ、使徒は断
末魔の痙攣を起こす。
撤収の準備をしている第二師団。アスカ、プラグ・スーツのままその中に入っ
ていく。部下に指示を出していた師団長、驚いた表情でアスカを見る。
師団長「君は?……まさか、君があの巨人のパイロットなのか?」
アスカ「エヴァ弍号機のパイロット、惣流・アスカ・ラングレーです。あの、あ
たし……」
思いっきり深く、頭を下げるアスカ。
アスカ「ごめんなさい! あたしが……あたしが臆病だったから……」
周囲の軍人たち、作業の手を止めてアスカを見る。
師団長「顔をあげなさい。謝らなくてはいけないのは私たちの方だ」
アスカ「でもっ! 死んじゃった……人は……」
師団長「私たちは軍人だ。その軍人が、本当なら守らなくてはいけない子供に頼
っている。情けないのは、私たちの方だよ」
師団長、アスカの肩に手をのせる。アスカはもう一度頭を下げて、立ち去る。
両手にマグカップを持ったシンジが、防波堤に立って海を見るアスカに近づく。
シンジ「惣流。──ほら」
アスカ、黙ってマグカップを受け取る。そしてシンジの方を見る。
アスカ「シンジは、なぜエヴァに乗るの?」
シンジ「怖いから……かな」
アスカ「怖い?」
シンジ「僕は臆病だからね。僕がエヴァに乗らないことで……使徒と戦わないこ
とで、僕の好きな誰かが傷ついたりするのがイヤなんだ」
アスカ「ふぅん……」
シンジ「それじゃ。もうすぐ撤収だから──」
立ち去ろうとするシンジの背中に、柔らかくて暖かいものがぶつかる。アスカ
が抱きついたのだ。
アスカ「お願い……ちょっとだけ。ちょっとだけでいいから……」
声をこらえて泣くアスカ。シンジは立ったまま、背中を濡らす涙の重さを感じ
ている。夕陽が、少年と少女を赤く染める。
(第9話:おわり)
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作成者:銅 大(アカガネ ダイ)
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