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 エヴァンゲリオンの最終話を見ることができました。
 第26話では主人公であるシンジ君の「補完」に焦点が絞られていたため、
それ以外の部分----背景となる世界がどうなったか、シンジ以外の登場人物
はどうしているのか----については語られていませんでした。
 私としては、それが残念でなりません。
 エヴァンゲリオンの世界設定や、さまざまな謎はそのまま捨て去るにはあ
まりに魅力的なのです。
 そこで、世界設定と謎の二つに重点を置いた、私なりの最終回(25話と
26話)を作ってみました。
 なお、話の都合上、本編のいくつかの設定とストーリー展開は省略させて
いただいております。

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最終回補完シナリオ「神々自身」

 電脳空間の中:委員会の面々と碇が相対している。
キール「すべての使徒は倒された。これまでの働き、ご苦労だった、碇君」
ゲンドウ「恐縮です」
委員A「さて、いよいよこれからが本番だ」
委員B「使徒なき今。われわれの計画を妨げるものはいない」
委員C「残るは『人類補完計画』のみ」
委員D「各国で建造中のエヴァがそろったとき、すべては終わる」
委員A「長かった....本当に」(ホログラフがぼやけ、崩れる)
委員B「何十万周期もの間、我々はただこの時だけを待ち続けた」
 委員たちのホログラフが崩れ、石板が立ち並ぶ。ゲンドウ、皮肉そうに唇
を歪める。
キール「知っての通り、スケジュールはギリギリの状態だ。碇、いざとなっ
   たらネルフのエヴァも使わなくてはならん。いいな」
ゲンドウ「わかっております。それでは私はこれで」
 ゲンドウが電脳会議室よりジャック・アウトする。
委員A「やつの叛意はもはや疑いもないな」
委員B「人間の肉体にひきづられ、魂まで人間と化したか」
委員C「だが、我々には彼が必要だったのだ。肉体を持つ碇ゲンドウという
   存在が....」
委員D「それも終わりだ。やつは知るまい。すでに我々が12体のエヴァを完
   成させたことを」
 背景となる闇の中、幾体もの異形の『鬼』の姿が浮かびあがる。
キール「諸君。これより人類の補完を行う」
 12体の『鬼』の目が光る。

       *** 第**話 神々自身 ***

[ジオ・フロント内に作られた病院]
 学校の制服を着たシンジとアスカが並んで廊下を歩いている。
ケンスケ「よっ、おふたりさん。こんなところでデートかい?」
アスカ「あんた、バカぁ? なんであたしがこんな奴と----」
シンジ「トウジのお見舞いだよ。ケンスケはどうしたのさ」
ケンスケ「ん。まぁ、俺も見舞いだったんだけどね....お邪魔みたいだから」
シンジ「??」
ケンスケ「(声をひそめて)委員長が来てるんだよ」
 扉をわずかに開け、ケンスケ、シンジ、アスカが病室をのぞく。
 ベッドの上で上体を起こしたトウジの隣で、ヒカリがリンゴの皮をむいてい
る。
シンジ「さっきからずーっと黙ったまんまだね」
ケンスケ「二人とも、何が楽しいんだろ」
アスカ「あんたたち、バカぁ? 心が通えば言葉なんて不要なの。まったく女
    心ってもんを理解してないんだから」
ケンスケ「そんなモンですかね----おっ」
 リンゴを手渡そうとするヒカリの手と、リンゴをつかもうとするトウジの手
が触れあう。赤くなって見つめあう二人。
 身を乗り出すケンスケ、シンジ、アスカ。
レイ「なにしてるの?」
三人「「 うわあっ!! 」」
 後ろから突然声をかけられ、バランスを崩して病室の中に倒れ込む三人。
トウジ「わあっ! なんや、なんや」
三人「「 い、いや....これは....」」
レイ「お見舞いに来たの」
 レイの言葉に、いっせいにコクコクとうなずくシンジたち。
ヒカリ「じゃあ、あたしこれで。鈴原、プリントはちゃんと渡したからね」
トウジ「あ、イインチョ----」
 立ち去るヒカリ。トウジ、ジト目でシンジたちをにらむ。
 レイ、平然と誰も手を出さないリンゴを食べる。
 警報が鳴り響く。
『非常事態宣言発令 非常事態宣言発令 市民の皆さんはただちにシェルター
に避難してください』

[ネルフ本部 発令所]
日向「目標がまた一体増えました! パターン....赤! 使徒ではありません!」
青葉「これで12体、第三新東京を囲む形で展開しています!」
冬月「ゼーレの連中に先手を打たれたか....どうする碇」
ゲンドウ「エヴァを発進させる。今は少しでも時間を稼いでおきたい」
ミサト「エヴァンゲリオン、発進準備!」
兵士「その命令、すみませんが取り消してもらいましょう」
ミサト「あなたたち-----!」
 サブマシンガンを構えた白い軍服姿の男たちが発令所内に乱入。制圧する。
冬月「貴様たちはゼーレの----保安部は何をしていた!」
 男たちの後ろから銃を持ったリツコが歩み出る。
リツコ「保安システムはあたしがマギに命じてカットさせていただきました。
   あなたの負けです、碇司令」
ミサト「リツコ!」
ゲンドウ「何のつもりだ」
リツコ「復讐....ですわ」

[エヴァンゲリオン 格納庫]
アスカ「あんたたち、いったい何のつもりよ!」
シンジ「やめなよ、アスカ」
レイ「.......」
 三人のチルドレンを、白い軍服姿の男たちが取り囲んでいる。

[ネルフ本部 発令所]
 スクリーンに、チルドレンの様子が映し出されている。
リツコ「さぁ、碇司令。チルドレンを死なせたくなかったら、ダミー・プラ
   グで零号機と弐号機を起動させてください」
ゲンドウ「断る」
リツコ「そう言うと思ってました。(画面の兵士に向かって)かまいません、
   三人を撃ちなさい」
ミサト「!!----やめて!!」

[エヴァンゲリオン 格納庫]
 ゼーレの兵士たち、ためらうことなく銃を構え、撃つ。シンジが二人をか
ばおうと、前におどり出る。それを押しのけるようにレイが手を伸ばす。
 レイのATフィールドが銃弾を、そして兵士たちを弾き飛ばす。
 びっくりした表情のシンジとアスカに、レイが微笑みかける。
レイ「いきましょ。発進よ」

[ネルフ本部 発令所]
リツコ「そんな! なぜ今になってレイが---- 」
 動揺するリツコ。ゼーレの兵士たちの視線も映像に向けられている。青葉と
日向、視線を交わしてうなずいた後、ゼーレの兵士に飛びかかる。銃をかまえ
ようとする兵士の頭に、マヤが携帯パソコンを叩きつける。冬月が兵士の腕を
つかみ、きれいな背負い投げを決める。ミサトも銃を抜き、皆を援護する。
 乱戦の中、ゼーレの兵士の一人が横合いからミサトに銃を向ける。日向、
それに気がついて叫ぶ。
日向「葛城さん!」
 銃声。ミサト、思わず目を閉じて身をすくめる。その耳に----
加持「大丈夫か」
 ミサト、大きく目を見開く。口を開くが、言葉が出てこない。
加持「遅れてすまない。いろいろあってね」
 ミサト、きっ、と唇を引き結んで銃を構える。
 発砲。加持を狙っていたゼーレの兵士が腕を押さえる。ゼーレの兵士たち、
退却していく。

 呆然と立ったままのリツコにゲンドウが近づき、銃を奪う。
ゲンドウ「そんなに憎いか、私が----この世のすべてと引き換えに殺したいほど」
リツコ「私がいくら愛しても、憎んでも、あなたの心の中に私の居場所はない。
   ならばいっそ----」
 泣き崩れるリツコ。ゲンドウ、奪った銃をリツコの手に置く。
ゲンドウ「私には生きてある限り、やらねばならぬことがある。だが、それが済ん
    だのであれば----」
 ゲンドウ、銃とともにリツコの手を握る
ゲンドウ「君と一緒に死んでやろう」
 リツコ、肩を震わせて低く鳴咽をもらす。

 日向がミサトに話かける。
日向「保安部と連絡がとれました。まだあちこちで小競り合いが続いているよ
  うです」
ミサト「そう、エヴァとマギの確保、急いで」
日向「はい」
 日向、加持のかたわらを通り過ぎながら小声で話かける。
日向「加持さん、どこに消えてたんです。葛城さんにも黙ったままで」
加持「世界中、あちこちさ。一回死んでおいた方が動きやすかったんでね」
日向「よかった。あなたに一つだけ言っておくことがあったんです」
 日向、ちらりとミサトの方を見る。
日向「ぜったいに、奪ってみせます」
加持「そいつは、負けられないな」

[第三新東京郊外]
 国連軍が迫りくるエヴァンゲリオンに攻撃をかける。しかし、ATフィール
ドにはばまれ、ダメージを与えることができない。

[ネルフ本部 発令所]
ミサト「エヴァの発進は!」
マヤ「あと500秒です!」
青葉「南平地区の砲台、沈黙! 持ちこたえられません!」
日向「敵の一部が市街へと侵入をはじめました!」
ミサト「ダミー・プラグのくせに連携の取れた動きをしてるじゃない」
青葉「上空に国連軍の大型輸送機----降下兵だと?」

[第三新東京郊外]
 ゼーレのエヴァが、上空を振り仰ぐ。大型輸送機から、巨大な人影が分離し
て降下してくる。パレット・ガンを上に向けるエヴァの頭部を、落下した足が
蹴飛ばす。モスグリーンに塗装した人型兵器----ジェット・アローンである。

[ネルフ本部 発令所]
ミサト「ジ..ジェット・アローン!? あんなもン、まだ作ってたの!?」
青葉「全部で27体、第三東京市の外縁部に降下しました」
加持「いよぉ、どうやら間に合ったようだな。やっぱ中華民国に発注すると早
  いわ」
 通信画面が開き、第7話で登場したJAの開発主任が顔をだす。
主任「久しぶりだな。これであの時の借りは返したぞ」
ミサト「それは、ちゃんと仕事してからいいなさいよ! もう3機もやられちゃ
   ったじゃない!」

[第三新東京郊外]
 不意を打たれたゼーレのエヴァだが、格闘戦となるとその強さはジェット・ア
ローンなど比較にはならない。ずたずたに切り裂かれるジェット・アローン。
 突然、ゼーレ=エヴァの一体が頭部を撃ち抜かれる。

[ネルフ本部 発令所]
日向「敵、一体沈黙! 遠方からの狙撃です! 狙撃地点は双子山の山頂付近!」
ミサト「双子山って....ああっ!」

[双子山 山頂部]
 双眼鏡を構えていた太り気味の砲兵士官が後方の部下に怒鳴る。
砲兵士官「反撃がくるぞ! ただちに撤収!」
 つくばの戦自研の技術者が頭をポリポリとかきながら呟く。
技術者「ウーン、やっぱ連射がきくようにするべきだよなぁ....衛星軌道の発電
   システムを利用するようにするか」

[ネルフ本部 発令所]
ミサト「一発だけじゃ、意味がないじゃない!」
加持「まぁ、見てなって。あれは囮なんだから」

[双子山]
 陽電子砲を制圧すべく山を登っていくゼーレ=エヴァ。そこにヒュルヒュルと
いう高い音が頭上から聞こえてくる。
 轟音とともに山がえぐられ、大地が鳴動する。直撃を受けたゼーレ=エヴァが
横倒しに倒れる。

[海上]
 16インチ砲を昂然とかかげた戦艦の一文字に並んで進んでいる。第8話で登場
した「オーバー・ザ・レインボウ」の艦長が口をヘの字に曲げている。
副官「ライオンのグライムズ提督から通信! 『タダ今ノ射撃、見事ナリ』以上!」
艦長「当たり前だ。こっちはああいう化け物とやるのは二度目だからな。なんのた
  めに南部連合に頭を下げてまでメリマックを借りたと思ってる」
 他の艦から少し遅れて、優美なラインの戦艦と幅のある四連砲塔の戦艦が主砲を
放つ。
副官「リシュリューとローマ。ようやく第1射です....おおっと、フリードリッヒ・
  デア・グロッセ、第2射です」
艦長「よおし。こっちも負けるな! 撃って撃って撃ちまくれ!!」

[ネルフ本部 発令所]
ミサト「まさか、ヨーロッパくんだりから戦艦を引きずり出してくるとは思わなか
   ったわ。これもあなたが仕組んだことなの?」
加持「俺はただのメッセンジャーさ----あの人のね(視線で碇をさし示す)」
碇「戦況はどうなっている」
日向「狙撃と艦砲射撃で敵エヴァを4体、行動不能にしました。しかし敵の動きが
  早くなってきています。これ以上は....」
碇「かまわん。十分な時間稼ぎになった」
マヤ「エヴァンゲリオン、発進準備完了!」
ミサト「よろしいですね?」
 ミサトの問いにうなずいて答えるゲンドウ。
ミサト「エヴァンゲリオン、発進!」

[第三東京市]
 ゼーレ=エヴァがビルを破壊する。それを止めようとしたジェット・アロー
ンに別のゼーレ=エヴァが近づき、足をたたき折る。
 崩れるビル。その煙の中から、初号機の腕が伸び、ゼーレ=エヴァの頭をつ
かむ。
 プログレッシブ・ナイフが一閃し、ゼーレ=エヴァの首を刈り取る。
 ジェット・アローンを倒したゼーレ=エヴァが、跳躍して初号機におどりか
かる。空中高く舞い上がったところで、飛来した槍がゼーレ=エヴァの腹部を
貫く。
シンジ「助かったよ、アスカ。ありがとう」
アスカ「少し突出しすぎよ」
シンジ「アスカがいてくれるからね。安心して前に出られるんだ」
 屈託のない笑顔をみせるシンジ。アスカ、顔を赤らめてそっぽをむく。

[電脳空間内]
 中央に第三東京での戦いの様子が映し出されている。
委員A「どういうことだ! なぜこうもたやすく我らのエヴァが倒される!」
委員B「ダミー・プラグは完璧のはず。その事は、エヴァ参号機との戦いで証
   明されたではないか」
 映像が途切れ、ゲンドウのホログラフが現れる。
キール「碇!」
ゲンドウ「おめでたいものですな。私が作ったダミー・プラグを信用するとは」
キール「裏切り者が今さら何の用だ」
ゲンドウ「手を結びたい」
委員C「何を世迷言を!」
ゲンドウ「ゼーレの計画は破綻した。12体のエヴァが破壊された以上、造物主
    の再臨までに人類を補完する術はない」
キール「....何が望みだ、ゲンドウ」
ゲンドウ「『箱船』を浮上させる」
キール「そして月に行くのか?」
 ゲンドウ、ニヤリと笑う。
委員D「不可能だ! 碇、それよりも我々に手を貸せ。君の優秀なエヴァさえあ
   れば、人類補完計画は完遂できる!」
ゲンドウ「人類に補完は必要ない。彼らには彼らの道を歩ませるべきだ」
 ゲンドウの脳裏に、懐かしい声が響く。
(ユイ「そんな物が補完だというの? いいえ、それはちがうわ。私たちにはも
   っと別の道があるはずよ」)

[セントラル・ドグマ]
 壁に打ち付けられた第一使徒(アダム?)が暴れ始める。吠え、身体をよじらせ
る。

[ネルフ本部 発令所]
マヤ「セントラル・ドグマに異常発生!」
ミサト「地上が収まったと思ったら! 今度は何よ?」
ゲンドウ「慌てるな。すぐにエヴァを回収しろ....ついでに、ゼーレ・エヴァも使
    えそうな奴は回収しろ」
冬月「はじまったというのか? 碇?」
ゲンドウ「そうだ、空腹に耐えかねた駄々っ子が目覚めたのだ」

[月面]
 月震が地表にわずかに埃をたてる。続いて空間が裂け、中から無数の光輝く球体
が現れる。球体は脈動しながら互いにぐるぐると回りあっている。

[ネルフ本部 発令所]
 スクリーンに、月の様子が浮かぶ。
青葉「いったい、こいつは何だ?」
マヤ「パターンの判別、できません。ATフィールドに似た物を展開しているのは
  間違いないのですが....」
冬月「あれが、神か....」
ゲンドウ「我々の造物主という意味ではその通りだ。だが、決して敬う対象ではな
    い。あれにあるのは純粋な飢えと、それを満たさんとする欲望だけだ」
ミサト「エヴァの回収、完了しました!」
ゲンドウ「日本政府と各国に通達。これよりTOKYO−3は月へ向かう」
 発令所内に、どよめきが起こる。
ゲンドウ「セントラル・ドグマの安全装置をすべて解除。スピンディジー、最大出力
    (フル・ポテンシャル)! 急げ!」
ミサト「はっ、はいっ!」

 第三東京へとつながっていたJR各線と道路とがすべて閉鎖される。ジオ・フロン
トに設置されていた無慣性駆動装置が唸りをあげ、力場で都市を包む。力場の境界線
を境に大地が割れ、山が崩れていく。

[セントラル・ドグマ]
 第一使徒(アダム?)の拘束具が弾け、隠されていたコアがむき出しになる。コア
はからは光が奔流となって流れ出し、周囲に設置された受容器(レセプター)に吸収される。

[ネルフ本部 発令所]
冬月「なんというパワーだ。制御に失敗すると、この都市ごと吹き飛ぶぞ」
ゲンドウ「心配ない。ゼーレの連中に任せておけばいい。奴らとてここで滅ぼされた
    くはあるまい。我々は一蓮托生なのだ」
ミサト「TOKYO−3、浮上開始!」

 第三東京市がTOKYO−3となって空中に浮かび、轟音をあげながら天高く消えて
いく。海上や周辺に展開していた国連軍が、それを見送る。

[トウジが入院していた病院]
ケンスケ「すっげぇ! 本当に宇宙へ飛んでるよ!」
トウジ「わしも、もうたいがいの事には驚かんようになったつもりやったが、こいつは
   もうむちゃくちゃやで」
ヒカリ「どこに行くのかしら、私たち?」
トウジ「安心せぇ! どこに行こうがわしがついとる!」
ヒカリ「うん!」
 ケンスケ、げんなりとした表情で肩をすくめる。

[エヴァの格納庫]
シンジ「いったい何が起こってるんだろ?」
レイ「感じる....とても強く、とても異質な何かを」
アスカ「どういうことよ?」
 ゲンドウが、近づいてくる。
シンジ「父さん」
ゲンドウ「シンジ、お前に話しておくことがある」
 シンジだけを連れて、初号機の前に向かうゲンドウ。
シンジ「何?」
ゲンドウ「私は人間ではない」

[ゲンドウが語る過去]
ゲンドウ(私が六分儀ゲンドウという肉体をまとうことになったのは、30年ほど
    前のことだ。その目的はただ一つ。人類補完計画の完遂にある)

 光輝く『造物主』と『天使』が、300万年前の地球に降臨する。

ゲンドウ(人間の宗教の中には面白い言葉がある。『神は人を作りたもう』----
    そのとおりだ。だが、なぜ神が人を作り出したのか、その神の側の理由
    について正しく答えているものはいない。
     神は、人を『食う』ために作り出したのだ)

 過去の映像。異星文明が、使徒の放つ光の中に消えていく。その後、使徒のコア
が分離し、光輝く『造物主』に取り込まれていく。

ゲンドウ(そして我々は、神の羊飼いであり、農夫である。人とその文明を導き、
    終末の晩餐へと誘う存在だ。だが、我々にも心があり、それはやがて野望
    へと変わっていった。
     なぜ我々自身が神への道を歩んではならないのか?
     神と、その下僕である我々に本質的な差はない。人の精神を統合させ、
    それに我々の意識を融合してやれば力の上でも神と同等になれるはずだ。
    そう、人類補完計画とは人類「を」補完するものではない。人類「によっ
    て」我々を補完する計画なのだ
     この計画に、神とその使徒は邪魔でしかない)

 過去の映像。南極に顕現した第二使徒(羽根の使徒)を、ゼーレの操る第一使徒
(アダム?)がロンギヌスの槍で封印する。

ゲンドウ(残るは、神が目覚める前に人類の精神を我々自身の使徒----エヴァによ
    って取り込み、ロンギヌスの槍をインタフェースとして我々の意識と融合
    するだけだ。こうして我々は神となる)
 葛城(父)、赤木(母)、冬月たちの若い頃の映像。
ゲンドウ(私はゼーレの命ずるまま、人間を操り、人類補完計画を推進していった。
    計画の本当の目的は隠したまま----しょせん人間など、道具にすぎないの
    だから。だが----)

 ユイの映像。いたずらっぽい表情でゲンドウをからかう仕種をする。

ゲンドウ(いつの頃からか、私はゼーレの計画に疑問を持つようになった。それは
    道具であるはずのユイに、私が持つはずのない感情を覚えてからだった)

 赤ん坊のシンジを抱いたユイ。

ゲンドウ(そしてユイがエヴァに取り込まれた時、私はゼーレを裏切ることを決意
    した。人間がどうなろうが、正直なところ私にはどうでも良いことだ。だ
    が、ユイは人間とその未来を信じた。ならば----)

[エヴァの格納庫]
ゲンドウ「----これが真実だ」
シンジ「.....いきなり、そんな事をいわれても....わかんないよ....」
ゲンドウ「そうだろうな。ただ、お前に知っておいてもらいたかったのだ。神が目
    覚めた今、我々に残された道はかの存在を滅ぼす以外にないのだから」
シンジ「父さん、ひとつ聞いていい?」
ゲンドウ「言ってみろ」
シンジ「なぜ父さんはボクを呼んだの?」
ゲンドウ「お前でなくては初号機は動かせなかった。私にはお前が必要だった」
シンジ「じゃあ....なぜボクを先生のところなんかに預けたんだよ!」
ゲンドウ「私は常にゼーレにより監視されていた。ゼーレの目をごまかすためにも、
    私はお前を道具として扱わなくてはいけなかった。情愛など持たぬ、ゼーレ
    の駒であることを証明するために」
シンジ「わかった。でも----」
 シンジ、顔を上げてゲンドウをにらむ。そして固く握った拳をゲンドウの顔に叩き
つける。ゲンドウの眼鏡が飛び、床に落ちてヒビが入る。
シンジ「ボクのことはいい。でも父さんがトウジにした事だけは許せない」
 ゲンドウが眼鏡を拾い、かけ直す。
ゲンドウ「謝るつもりはない。ダミー・プラグの有効性をゼーレに見せるために必要
    なことだった」
 立ち去ろうとするゲンドウに、シンジが声をかける。
シンジ「父さん。ボクはあなたがキライです」
 外で様子をうかがっていたレイとアスカ、ゲンドウとすれちがう。
アスカ「頬がはれてたわ----シンジがやったのかしら?」
レイ「司令、すごくうれしそう....」
アスカ「はぁ? あの仏頂面のどこがぁ?」

[月面]
 TOKYO−3が月面に着陸する。『神』がTOKYO−3に近づいてくる。
 TOKYO−3からミサイルや陽電子砲が『神』に向けて発射されるが、強力
なATフィールドに阻まれる。

[ネルフ本部 発令所]
ミサト「目標は強力なATフィールドを持っているわ。零号機と弐号機はAT
   フィールド全開で初号機をバックアップ。初号機はATフィールドを中
   和しつつ目標に肉薄して近接攻撃。いいわね」
シンジ&アスカ&レイ「「 了解! 」」

[月面]
 零号機と弐号機が左右から『神』に接近する。
レイ「ATフィールド展開!」
 二機のエヴァのフィールドが『神』のフィールドを侵蝕していく。
アスカ「なんだ。ちっともたいした事ないじゃない」

[ネルフ本部 発令所]
日向「フィールドの中和、30%。順調です」
マヤ「あれ? エヴァのシンクロ率が....」
ミサト「----まずい!」

[月面]
アスカ「な....何よ、これ! エヴァが----勝手に!!」
レイ「----!!」
 我が身の拘束具を引き千切りながら、零号機と弐号機が暴走を始める。

[ネルフ本部 発令所]
ゲンドウ「『神』に乗っ取られたか」
ミサト「初号機は?」
青葉「大丈夫です! ですが、零号機と弐号機が初号機を!」

[月面]
 初号機に襲い掛かる赤と青のエヴァ二体。初号機は必死に避けるが反撃がで
きず、追いつめられていく。
アスカ「とまりなさいよ! このっ!」
レイ「(無言のまま、操縦棹を握りしめる)」

[ネルフ本部 発令所]
ゲンドウ「なぜ初号機は反撃しない」
ミサト「シンジ君ですから」
ゲンドウ「そうか....冬月、後を頼む」
冬月「どうするつもりだ?」
ゲンドウ「セントラル・ドグマだ。ゼーレの老人に、最後の借りを返してもらう」
冬月「碇....」

[セントラル・ドグマ]
 セントラル・ドグマの中に入ろうとするゲンドウの前に、リツコが立っている。
ゲンドウ「ここで何をしている」
リツコ「あなたが考えている事が分からないとでも思ったのですか?」
ゲンドウ「何が望みだ」
リツコ「あなたの死に様を、見せてもらいにきたの」
ゲンドウ「----」
 セントラル・ドグマの中に入ったゲンドウを、声が迎える。その声はキールの、
そしてゼーレのすべてのメンバーの特徴を合わせ持っていた。
ゼーレ「「 どうやらすべては無駄だったようだな 」」
ゲンドウ「そうとは限らん。もう一度、手を貸してもらおう」
ゼーレ「「 ムダだ。我々に残された力は、すべてこの都市を月に運ぶために費
   やされた 」」
ゲンドウ「ロンギヌスの槍を呼ぶ」
ゼーレ「「 正気か! あれが破壊されれば、我らはこの世界から消え去るのだ
     ぞ! 」」
ゲンドウ「なら、このまま造物主に滅ぼされるか?」
 答えはない。ゲンドウの背中に光の羽根が広がる。

[月面]
 苦戦する初号機の前に、地球光のきらめきを受けながら一本の槍が突き刺さる。
シンジ「これは....ロンギヌスの槍!」
槍「「 我ヲ使エ 」」
 初号機、槍を握る。そこへ零号機が襲い掛かってくる。槍で攻撃を受ける初号機。
レイ「碇君! その槍であたしを! 早く!」
シンジ「そんな! できないよ!」
 もみあう二体に弐号機が突進する。
アスカ「いいから早くしなさいよ! まったくグズなんだから!」
槍「「 ドウシタ、しんじ。ココデ二人ト共ニ死ヌツモリカ? 」」
シンジ「その声は....父さん?」
槍「「 死ニタクナケレバ、我ヲ使イ、二人ヲ殺セ。ソシテ『神』ヲ殺セ 」」
シンジ「どちらかを選べっていうの? 自分か----それともアスカと綾波を----」
 シンジの脳裏に、エヴァ参号機との戦いがよみがえる。
シンジ「ボクは....死にたくない....けど!」
 シンジの雄叫びとともに、初号機が吠える。胸のS2機関が輝きを増す。
シンジ「二人だって、死なせやしない!!」
 零号機のエントリー・プラグと弐号機のエントリー・プラグの中が輝きにあふれ、
レイとアスカの姿が消える。同時に、二人は初号機のエントリー・プラグに転送され
る。アスカが背もたれの部分にしがみつく。
アスカ「な、何よ?」
 レイが、シンジの上に投げ出される。
シンジ「うおおぉぉっ!!」
 ロンギヌスの槍の一振りで、二体のエヴァを両断する初号機。
 その勢いのまま、『神』に向かって突進する。ATフィールドを切り裂き、光
る球体に穂先を突き立てる。
 だが、穂先の先端が刺さったところで、ぴたりと止まる。

[セントラル・ドグマ]
 ゲンドウの背中の光の羽根が弱々しく明滅する。がっくりと膝をつくゲンドウに
リツコが駆け寄る。
ゲンドウ「ここ--までか----」

[月面]
シンジ「くそっ! 動かない!」
 エントリー・プラグのスクリーンを通し、三人のチルドレンの視界いっぱい
に光の球体が広がる。
 暗転。

[仮想世界]
 シンジ、ベッドで目を覚ます。幼なじみのアスカ。優しい両親。活発な転校生
のレイ。学校の担任のミサト....平和で幸せな夢が続く。

女性の声(起きなさい、シンジ)
男性の声(シンジ、逃げてはいかん)

[月面]
シンジ「!....今のは?」
レイ「夢?」
アスカ「何よ! 何があったの?!」
声「 我ト一ツニナレ。ソシテ永遠ニ楽シキ夢ノ世界ヘト遊バン」
アスカ「この声....こいつが呼びかけているの?」
レイ「幸せな....夢....」
シンジ「お母さん....」
 三人の瞼が、ゆっくりと下がっていく。初号機の手から力がぬけ、ロンギヌス
の槍が月面に落下する。初号機が『神』の身体の中に溶けていく。

大勢の声「「 待ったぁ!! 」」

 駆け寄ってきたゼーレ=エヴァが、初号機をつかみ、『神』の中から引きずり
出す。
アスカ「その声は---ヒカリ?」
シンジ「トウジ! ケンスケも?!」

大勢の声 「よう分からんけど、いきなりなぁ」「これってどうなってんだ?」
     「ネルフの人が、クラスの皆を集めて」「うぉおおっ 俺は今エヴァに
     乗っているんだぁ! 感動!」「なんか、頭の中にみんなが混じって」
     「新井素子って知ってる?」「みんな! 静かにしてよ!」「イインチ
     ョーの言う通りやで」「あっ、トウジやっぱりお前委員長のこと」.....

ミサト『聞こえる、シンジ君? クラスのみんなを集めてゼーレ=エヴァを動か
   してるの! でも時間がないわ! 早く奴を!』

 シンジ、力強くうなずく。そして膝の上のレイと、後ろのアスカを見る。
シンジ「さっきのって、ボクたちの夢だったのかな?」
アスカ「あたしがあんたの幼なじみですって? 冗談!」
レイ「あたし、アレでいいわ」
 レイ、シンジの首に腕を回して身体を密着させる。アスカの眉間にシワが寄る。
アスカ「ちょっと、馬鹿シンジ! あんたもあんなベタベタな展開がイイわけ?」
 アスカ、シンジの耳を引っ張って怒鳴る。
シンジ「まぁ、ちょっとはイイかなって----痛たた! でも----」
 シンジ、両手でアスカとレイの二人を抱き寄せる。
シンジ「夢の中なんかより、やっぱり、こっちの方がいいよ」

大勢の声 「センセ、よう言うた!」「この女殺し!」「だめだぁ! アスカちゃん
     は俺ンだぁ!」「男の敵!」「二人ともしっかり!」....

 やっかみ混じりの声援を受け、三人は互いに顔を見合わせて笑う。
シンジ「行くよ」
 操縦棹を握るシンジの腕に、レイの手が、そしてアスカの手が重ねられる。
 初号機がロンギヌスの槍を再び握る。
シンジ(行くよ、父さん)

[セントラル・ドグマ]
ゲンドウ「ゼーレの老人どもめ、口ほどにもない....消滅したか....」
 リツコが、ふらつくゲンドウの身体を支える。
 ゲンドウ、優しい微笑みをリツコに向ける。
 ゲンドウの身体から広がった光の翼が、セントラル・ドグマの中のすべてを包む。

[月面]
 汎用人型決戦兵器エヴァンゲリオンは、
 背中から12枚の光の羽根を伸ばした天使の姿で、
 輝きを増すロンギヌスの槍をその手に構えると、
 『神』に----
 挑んだ。

 そして少年は、神話になった。

                [[ 終劇 ]]

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 作成者:銅 大(アカガネ ダイ)


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