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 昨日。第10話『マグマダイバー』を見る機会がありました。使徒の生態や、
リョウジの怪しげな行動、ラストでのアスカとミサトの会話など、伏線は網の目
の如く張りめぐらされており、そういった点では楽しませていただきました。

 しかし、残念な事もあります。マグマの中での羽化した使徒との戦闘です。私
の目には、あまりに淡々と進み過ぎるような気がしないでもありません。
 そこで、もうちょっと『濃い』戦闘シーンを考えてみました。

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第10話『マグマダイバー』改

 ケージの中で羽化を始める使徒。繭から出た頭部が弍号機に向けて伸ばされる。
 だが、その寸前で電磁的なオリに衝突し、力場を歪める。
マコト「だめです! ケージが持ちません」
ミサト「アスカ! ケージを切り離して!」
 弍号機がケージを離す。使徒、一気に体を膨張させ己を包んだ繭とケージとを
弾き飛ばす。
ミサト「捕獲作業は中止。作戦目標を使徒の撃滅に切り替えます。いいわね、ア
   スカ」
アスカ「まっかせて!」
 高温高圧の溶岩の中を、悠然と泳ぐ使徒。リツコが弍号機から転送されたデー
タを食い入るように見つめる。
ミサト「どう?」
リツコ「はっきりとは分からない。でも、危険を犯すべきではないわ」
 ミサト、小さくうなずくとマイクを握りなおす。
ミサト「国連軍司令官に連絡。使徒捕獲作業は失敗。後片付けの準備をお願いし
   ます」
 初号機の中でシンジが顔を強張らせる。
シンジ「後片付けって……まさか!」
 浅間山の上空を旋回する全翼型の大型爆撃機。機体の腹にエヴァほどもある巨
大な円筒形の物体を抱えている。
シンジ「NN爆雷を使うんですか?」
アスカ「心配ご無用。あたしがコイツを片づければいいんでしょ」
 プログナイフを構える弍号機。使徒は弍号機の周囲をぐるぐると旋回しはじめ
る。
アスカ「さぁ、来なさい。すっぱりと三枚におろしてあげるから」
 弍号機の戦意が伝わったのか、使徒は輪を狭めてくる。時折、触手を伸ばして
弍号機の体を打つが、アスカは反応しない。
アスカ「ほらほら。こっちは身動きの取れないデク人形なのよ。もっと寄ってき
   なさいな」
 反撃がないことに安心したのか、使徒は一気に間合いを詰めて弍号機に躍り掛
かる。
アスカ「もらったぁ!」
 弍号機は腕を伸ばし、使徒の頭部(その中にコアが入っている)にプログナイ
フを突き立てる。しかし、ナイフは表面をわずかに抉るだけで内部へと貫くこと
はできない。
アスカ「ちっ、硬い!」
リツコ「この高温高圧の環境に適応するように自己進化した使徒の装甲。プログ
   ナイフ程度では貫通できないわ」
マコト「じゃ、どうするんですか!」
 弍号機をぎりぎりと締めつける使徒。弍号機は必死にプログナイフを突き立て
るが、有効なダメージを与えられない。
 シンジ、焦燥した表情で上空の大型爆撃機を見る。これまで単に弧を描いて旋
回していたのだが、機首を転じて火口への爆撃コースに乗る。
アスカ『きゃあああっ!』
 通信を通してシンジの耳にアスカの悲鳴が聞こえる。弍号機の左足の防護スー
ツが破られていく。
 シンジ、足元の火口と煮えたぎる溶岩の海を見下ろす。目を閉じ、そして開く。
 ぎゅっと口元を引き締める。
シンジ「初号機、これより弍号機の援護に向かいます!」
リツコ「ダメよ、シンジ君! B型装備の初号機じゃ、熱に耐えられないわ!」
ミサト「──初号機のアンビリカブル・ケーブル切断。シンジ君。ATフィール
   ド全開だから1分少々しか時間はないわよ。いいわね」
シンジ「はいっ!」
 シンジの決意を示すかのように、きれいなフォームで溶岩に飛び込む初号機。
 初号機のATフィールドが溶岩と触れて輝きを放つ。エントリー・プラグの中
もぐんぐんと温度が上昇していく。
シンジ「くっ!」
 歯を食いしばるシンジを乗せ、初号機はぐんぐん沈降する。
リツコ「いくらATフィールドといっても、マクスウェルの悪魔じゃないのよ。
   どれだけ熱に耐えられるか……」
ミサト「パイロットの意志しだいね。大丈夫よ、シンジ君なら」

 国連軍の大型爆撃機。緩降下しながら浅間山に接近する。

 ミサト、マイクを握る。
ミサト「アスカ、聞こえる? シンジ君が潜ったところよ。もうちっとだけ粘っ
   てね」
アスカ「シンジが?!」
 アスカ、一瞬だけうれしそうな顔になる。しかし、すぐに唇を尖らせて文句を
言う。
アスカ「あいつが来ても、役になんか立たないわよ。とにかく、こいつの装甲と
   きたら──きゃあっ!」
 防護服の脇腹が切り裂かれ、冷却液が噴出する。それが使徒の身体に振りかか
ると、なぜか使徒が身体をよじらせて逃れようとする。
アスカ「そうか! 冷やせば──」
 弍号機が自ら冷却液の循環パイプを切り裂く。
アスカ「たっぷりと冷やしてあげるわよ!」
 使徒の口の中に冷却液の循環パイプを突っ込む。暴れる使徒をもう片方の手で
押さえつける。

 国連軍の大型爆撃機内。爆撃手が照準器をにらみながら投下ボタンに手をかけ
る。

アスカ「シンジ、早く来てっ! もぅっ! グズなんだからっ!」
シンジ「そんな言い方……ないだろ……」
 アスカが上を見上げると、表面の装甲が半ば焼け、手足の皮膚がただれて内部
の組織がのぞいている初号機が降下してくる。モニターで初号機のエントリー・
プラグ内が50度近いことを知り、アスカは思わず息を呑む。
アスカ「──頭部の根元! 私が傷をつけているところを狙って! もうだいぶ
   脆くなってるはずよ!」
シンジ「了解..」
 シンジは半ば朦朧とした意識のすべてを振り絞ってプログ・ナイフを引き抜き、
振りかぶる。
シンジ「……うぉおおおおおおおっっっ!!!」
 シンジの雄叫びと共に、初号機が吠える。両目が輝き、その背中に一瞬ではあ
るが12本の光の羽が伸びる。初号機のプログ・ナイフが装甲を貫き、使徒のコ
アを砕く。ATフィールドが止めると、使徒はたちまち溶岩の中に呑まれていく。

マヤ「使徒の消滅を確認しました」
ミサト「ふうっ。すぐに弍号機と初号機を引き上げて。それと国連軍に連絡。後
   片付けは自分でしたからお引き取りくださって結構です、ってね」

 国連軍の大型爆撃機。浅間山の火口を通りすぎ、基地への帰還コースに乗る。

 引き上げられる弍号機に、内部電源が切れた初号機がすがりついている。間近
で見ると、その惨状は目を覆わんばかりである。
アスカ「(小声で)もう……ムリしちゃって……」
 弍号機が、初号機の機体を抱きしめる。

 浅間山の麓にある温泉旅館。使徒を退治したネルフの面々は、英気を養うべく
ここに宿をとった。が、しかし──
「あれ? リツコとマヤちゃん、帰っちゃうの?」
 リツコのチームは全員、第三新東京に戻ることになった。
「ええそうよ。初号機と弍号機の修理があるから。ミサト、あなただって報告書
があるんじゃないの?」
「あ、それなら日向クンにお願いしたから」
 リツコが眉をあげた。
「あきれた。あなたがA17を申請したおかげで、経済界は大パニックよ。軌道
企業群が仮面をかなぐり捨てて探りを入れてきたって話もあるんだから」
 ミサトの目がわずかに細くなる。これまで、ネルフと世界最大の経済組織であ
る軌道企業群との間には、暗黙の紳士協定のような物があり、『汚い』活動は互
いに控えてきた。リツコは、その協定が今回の事件で破られたと示唆しているの
だ。
「あっちのワイアードなカンパニー・マンやソロが相手じゃ、ウチの連中も苦労
しそうね。それにしてもリツコ。そんな話、どっから仕入れてきたの」
「加持君よ……彼、この件であちこち飛び回ってるわ」
 視線が互いにからみつく。先に目をそらしたのはミサトの方。
「ま。あのバカにもたまには仕事をさせないとね」

 その夜。アルコールによる酩酊は一向にミサトを訪れようとはしなかった。い
たずらに杯を重ねるミサトの視界の隅に、何やら落ちつかない風情のアスカが映
った。
「どうしたの、アスカ?」
「ん……」
 やや躊躇った後、アスカは声のトーンを落として答えた。
「シンジの奴、いったいどこに行ったか知ってる?」
 努めて何気ない様子を装っているが、揺れる視線が本心を表していた。
「シンジ君なら、リツコが連れて帰ったわ。けっこう無茶したからね。精密検査
を受けさせるんだって」
「どこか悪いの?」
 アスカの声に懸念の響きが混じる。ミサトは何となくイジワルをしたくなり、
机に頬杖をついてアスカの顔をのぞきこんだ。
「気になる?」
「だ、誰があんな奴っ!」
 アスカの返事はミサトの予想通りだった。さらに言葉を継ごうとするミサトの
元へ、浴衣を着たネルフ職員がメモを渡した。本部に帰ったリツコからだ。
[リョウジの乗ったヘリが連絡を絶つ。生死不明。連絡されたし。 リツコ]

 シンジは軽い脱水症状と診断され、ネルフ本部の医療室で点滴を受けることに
なった。精神的な疲労もあったのだろう。点滴の途中で睡魔に身を委ねたシンジ
が目を覚ますと、すでに点滴は終わっていた。
「気がついたようね」
「……綾波。どうしてここに?」
 レイはスカートのポケットからメモ帳を取り出した。
「医務官から伝言があります。『検査の結果、問題はなかったから帰宅して構わ
ない』」
 シンジは壁の時計を見た。22時過ぎ。4時間ほど眠っていたことになる。
「その伝言って、何時頃にあったの?」
「18時33分」
 メモ帳に記載した数字をレイが読み上げる。
「そんな……起こしてくれたら良かったのに」
「医務官からの指示は『疲れているだろうから、眠らせておきなさい』でした。
それと──」
 レイは口ごもった。医務官の『彼はストレスを内に溜め込みやすい性格だから、
リラックスさせてあげるのが一番の療法なんだけどね』という指示を思い出した
のだ。小さく深呼吸して精神を統一すると、レイは紅い瞳をシンジへと向けた。
「ネコが……」
「??」
「寝込んだ」
 医務室の壁にかけられた秒針が、ゆっくりと一回りした。
 さらに二周目に入る頃、ようやくシンジは随意筋を動かせるようになった。
「綾波……今のって……冗談..だよ..ね?」
 ぎこちないシンジの反応を見て、レイは自分が失敗したらしいと気がついた。
「ごめんなさい。面白くなかったのね」
「い……いや……ぷっ……くくく……あはははっ」
 口をおさえて背中を震わせる少年に、レイがぶっきらぼうな言葉をかける。
「おかしくないのに、わざと笑うことなんかないわ」
「そんな……あははっ……真面目な顔で……くっくっ……ジョーク……」
 後は笑いすぎで言葉にならない。レイはどう反応していいか分からず、シンジ
の笑いの発作が終わるまで黙って待ちつづけた。
「ありがとう、綾波」
 笑いすぎでこぼれた涙を拭い、シンジは礼を言った。
「お礼を言うことなんか、ないわ」
「そうじゃない。綾波の気持ちが、うれしいんだ」
「……..それじゃ。あたし、もう帰るから」
 医務室を出たレイは、自分の頬に手をやった。熱い。
(空調が効いてないのかしら?)
 己の変調にとまどう少女の髪を、エア・ダクトから流れだした冷たい空気が、
そっと撫でた。

「よっ。どーした、葛城作戦部長?」
 ヘリ・ポートで顔に絆創膏を貼ったリョウジの顔を見た時、ミサトは心の中で
相反する感情が同時に爆発するのを感じた。
 歓喜と。
 殺意が。
「今日は温泉につかってるんじゃなかったのか? そーいやお前、浴衣じゃない
か。なんでそんな恰好で……」
 リョウジの横顔に、ミサトは渾身の力を込めた平手打ちを叩きつけた。リョウ
ジがよろけて尻餅をつく。
「痛てててて……おいおい、ミサト。どーしたって──」
 ミサトは泣いていた。拳をきつく握りしめたまま、ぼろぼろと大粒の涙をこぼ
していた。まばたきはしない。一瞬でも目を閉じたら、その場から男が消えてし
まうかのように。
 リョウジは、立ち上がると服のすそをはたいた。
「向こう(と言って、リョウジは軌道を顎で示した)の連中に凄腕のネットラン
ナーがいてな。ヘリの航法システムを乗っ取られたんだ。緊急着陸したところへ
ブーストした連中がお出迎えってわけだ。いやもう、生きた心地が……」
 リョウジの言葉は三たび途切れた。ミサトが胸元に飛び込んできたのだ。
「リョウジ……」
「ん?」
「勝手に……死んだら……許さないからね……」
 リョウジはミサトの肩を抱いた。薄い布地を通して、震えが伝わってくる。
「お願い。約束して……」
 リョウジは黙ったまま、ミサトの唇を自分の唇で塞いだ。
 発着するVTOLの巻き上げる気流が、固く抱き合った男女の周りで渦を作っ
た。

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 作成者:銅 大(アカガネ ダイ)


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