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 前回があまりにアレでしたので、今回はミサトさんとシンジ君のペアでショー
ト・ストーリーを作ってみました。ご笑覧くださいませ。

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短編小説「父きたる」

 葛城ミサト。29才。
 国連直属の非公開組織であるネルフの作戦部長であり、その有能さ──わけて
も危機管理能力の高さはつとに有名である。
 そして同時に、アル中一歩手前の酒飲みであり、日常生活における怠惰さと─
─わけても家事における無能ぶりもまた、広く知られている。
 親は泣いているぞ、きっと。

 前触れもなく玄関のチャイムが鳴ったのは、うららかな陽気の日曜の午後であ
った。非番であったミサトが、こんな日も高い時間に布団から這い出るはずもな
く、来客を迎えたのはシンジだった。
 来客は、短躯ながらがっしりとした体格の壮年の男だった。きゅうくつそうに
背広を着、手には『もみじまんじゅう』の入った紙袋を下げている。男は、無遠
慮な視線を出迎えた少年に向け、詰問するかのような強い口調で問いかけた。
「君は、誰かね?」
 無礼な物言いに少しむっとしながらも、根が正直なシンジは素直に答えた。
「ここの家の者ですけど……」
「なんだと?」
 男の太い眉がきりきりと中央に寄せられた。口がへの字に曲がる。
「ミサトはいるんだろうな。どういう事か、説明してもらおう」
 男はそういって、ずかずかと家の中に入ってきた。
「ちょ、ちょっと。あなたは誰なんですか?」
 慌てて止めようとするシンジを一睨みで黙らせ、男は低い声で名乗りをあげた。
「わしは葛城ハヤト。ミサトの父親だ」

「ミサトさん! たいへんです! 起きてください!」
「んん〜。もうちょっと寝かせてぇ〜」
 布団の中で丸まったミサトはATフィールドを張った使徒のような物で、通常
兵器でそこから追い出すことはできない。しかし場合が場合である。シンジは布
団をひっぺがしにかかった。
「ダメです! とにかく起きてください!」
「あンもう……強引なんだからァ……だめよ、女の子にはもっとヤ・サ・シ・ク
してくれなきゃ……」
 布団の中から伸びたミサトの腕がシンジの首すじに絡みつく。
「だ、だめですってばミサトさん!」
 少年の抵抗を、いつものように照れているのだと勘違いしたミサトは、さらに
きつく少年の身体を抱きしめる。
「お父さんが、来てるんですっ!!」
 シンジの言葉が寝ぼけた脳細胞に届くまで0.3秒あまり。だが、ミサトが何ら
かのリアクションを行う前に、野太い声が部屋の入口より聞こえてきた。
「ミサト、話がある。5分で支度をしろ」

 父親の前に出されたお茶は、手をつけられることもなく冷たくなっていた。
「……と、いうわけで。私がシンジ君の面倒をみているわけ」
 ミサトが汗だくになって説明している間、ハヤトは腕組みをしたまま彫像のよ
うに動かなかった。その間、シンジは逃げるわけにもいかずテーブルの側で立ち
尽くしていた。
 ミサトが語り終わってたっぷり30秒が経過した後、ハヤトはようやく口を開
いた。
「やはり、お前をネルフに送ったのは間違いだったな。次の人事で自衛隊に戻る
よう、手配しておこう」
「ちょっと。それ、どういうことよ!」
 柳眉を逆立てるミサトに、ハヤトはかみつくような口調で答えた。
「どういうこと、だと? それはわしのセリフだ。嫁入り前の娘が、中学生の少
年を自分の家に引き取って一緒に生活するなど、非常識にもほどがある!!」
「だからそれは、仕事で──」
「なら、なぜわしに話さなかった。お前にやましいつもりがないなら、わしへ一
言ぐらいは連絡があってもいいはずだ」
 正論である。それゆえにミサトは何も言い返せなかった。
「追って異動の通知が来るだろう。今の内に仕事の引き継ぎをしておけ」
 唇を噛みしめてうつむくミサト。用は済んだとばかりに帰ろうとするハヤト。
 対照的な親子の姿を見るシンジの心に、熱い感情が湧き上がった。
「そんなの一方的過ぎます! ひどすぎますよ!」
「シ...シンジ君?」
 頬を上気させて怒鳴るシンジに、ミサトは驚きの表情を浮かべた。
「ミサトさんはネルフで立派に仕事をしています! 誰にもミサトさんの代わり
なんかできません! そりゃ、家の中ではズボラでガサツでお酒ばっかり飲んで
て、どーしよーもない人ですけど、それだけで判断するなんてひどすぎます!」
 興奮するシンジに、ハヤトは冷静な口調で問いかけた。
「なら、どうしろというのだね。君は?」
「ミサトさんの仕事ぶりも見てあげてください。その上で、自衛隊に戻すかどう
かを決めても遅くはないでしょう? それに──それに、ボクがここから出て行
けば、何も問題はないはずです」
 『ボクがここから出ていく』……その言葉を聞いたミサトの胸に、鈍い痛みが
走った。
 ハヤトは娘の表情の変化を面白くなさげに観察した後、じっとシンジを見た。
そして部屋の中を見回した。
「ここを片づけているのは君かね?」
 唐突な質問に意表をつかれたシンジは、首を縦に動かして答えた。
「だろうな。ミサトが一人で生活していたのでは、三日で人の住める環境ではな
くなるからな」
 ハヤトはそう言うと、ミサトの抗議の言葉に耳も貸さず、帰り支度をはじめた。
「シンジ君……だったね。わしは今でもミサトがネルフにいる事は反対だ。だが、
娘がそこで必要とされているのであれば……」
 シンジは躊躇うことなく答えた。
「ミサトさんは必要な人です。ネルフにとっても。ボクにとっても」
 ハヤトは大きく鼻を鳴らした。そして何も言わずシンジに右手を差し出した。
 ごつく、そして暖かい手だった。

「やれやれ、大変な休日でしたね」
「まぁーったく。あのガンコ親父ときたら……」
 いつもよりハイペースでエビス・ビールを胃袋に流し込んでいたミサトが毒づ
く。
「でも、すごく威厳のある人ですね。自衛隊の人なんですか?」
「第五師団の師団長よ。陸将補。4年前の第2次ベトナム戦争で海外派兵された
時には『ゴジラ部隊』を率いて大暴れしたわ……それより、シンジ君」
「なんですか?」
 ミサトは、アルコールの影響による物よりも、ほんのわずか赤くなった顔をビ
ールの缶で隠した。
「昼間は……ありがとう」
 シンジはテーブルに頬杖をついて、にっこりと笑った。
「どういたしまして。でも、お父さんが心配するのももっともですよ。やっぱり、
ボクがここから出て行った方がいいんじゃないですか?」
「そんな──!」
 思わずビールの缶を口から離したミサトに、シンジが真面目な顔を向けた。
「それじゃ、聞きますよ。ミサトさんにとって、ボクは必要な男ですか?」
 真摯な瞳で見つめられ、ミサトの胸の鼓動が早くなる。
「ず……ずるいわよ、こんな……時に……」
「ボクはもう言いました。今度はミサトさんの番です」
 自分の気持ちを正直にぶつけてくるシンジ。ミサトは、自分の心の中にある本
当の思いが、偽りの殻を破ってあふれだすのを感じた。もう、止められない。
「必要……なの。シンジ君、私にも……あなたが……」
「ミサトさん……」
 シンジの腕がミサトの肩を抱きしめた。ミサトはそっと目を閉じ、年下の少年
の熱い抱擁に、その身をゆだねた。

               [[ 完 ]]

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 作成者:銅 大(アカガネ ダイ)


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