■恒星間宇宙船「ラークV」号 艦橋

 星空が、歪んだ。
 歪みは螺旋を描き、しだいに早く、早く、回転していく。
 回転が頂点に達した時。
 空間を割って、宇宙船が出現した。
 全長四〇〇メートルをこえる巨大な宇宙船は、銀色に輝く船体をぎしぎしときしませながら空間の割れ目を通り抜けた。縦に長い優美な船体のそこかしこに、まるで生き物のような緑色の瘤が三つ、はりついていた。瘤からは触手ともケーブルともつかぬ物が、宇宙船の表面を這いずりまわり、内部へと潜り込む。
 空間の割れ目が閉じた。
 宇宙船の中心部。もっとも頑丈に保護された艦橋では、一〇人近い男女が悍馬のように暴れる宇宙船を制御しようと、必死に制御卓にとりついていた。狭い艦橋の中では、大小無数の積層画面が開き、赤い文字を点灯させてオペレータの注意を引こうとしている。
 半円形をした環境の中央の座席には、顔の下半分が髭もじゃで大男の船長が座り、腕組みをしたまま報告を受けていた。
「ゲートアウト成功!」
「ゲートアウトのストレスで船体各所に亀裂! 第一七隔壁を閉じます!」
「現在位置を確認しろ! どこに出た?」
「第五惑星軌道と第六惑星軌道の間に出ました。第五惑星までは……一億キロメートル……です」
「このままの慣性速度ですと最接近まで八〇時間です」
「縮退物質炉は、やはり再起動できません。繭(コア)からのクラックをブロックするのが精一杯です。副(サブ)の核融合ロケットでしたら、三基が稼動可能です。ただし、推進剤の残りは三基合計で四四時間ですが」
 ショートカットで、年齢不詳の美しさをもった機関長が落ち着いた声で言う。いかつい船長は髭の下でわずかに笑みをもらす。
「それだけあれば、充分だ。それにしても、君の言う通りになったな」
「あら。繭が狙うのはまず主電脳と主ロケットだと、士官候補生だった私に教えてくれた鬼軍曹は誰だったかしら?」
「鬼というほど怖くはなかったつもりだが」
「どうかしら」
 空中に積層画面の一つが開き、がりがりに痩せた老人が顔を見せた。通信長だ。
《いかんぞ、船長。アンテナは第五惑星に指向できたが、出力がやはり上昇せんわい》
「老カザン。無理は承知だ。一発でいい、救難信号を打てないか?」
《船長、わしを誰じゃと思っとる。すでに一発目の救難信号は打ったわ。じゃが、妨害されて圧縮メッセージの半分はゴミにされたぞ。まぁ、後は受信側が居眠りしとらんことを祈るだけじゃの。かっかっかっ》
「なら、それでいい。老カザン、すぐに退避してくれ」
《若いのはもう退避させたよ。わしは何とか二発目を打てんかやってみるわい》
 老通信長の言葉に、何か重い物体が扉に激突する音がかぶさった。
《ほ。もう来おったか。これは急がんとな》
「老カザン!」
《わしは忙しい。切るぞ》
 消えた積層画面に向かって船長は敬礼した。
 新たな積層画面が開いた。戦闘用強化服を装着した男が、レーザー・ライフルを撃ちながら淡々と、感情の枯れた声で報告してくる。
《こちら保安部長、ノックスです。現在第七倉庫で“ケモノ”と交戦中。中型の戦闘種はあらかた退治しましたが、こちらも負傷九名、死亡一二名。現在、私をいれて八名が戦闘可能です》
「後、どれくらい持ちこたえられる?」
《それは、ケースによります。“ケモノ”が再編成のために一時後退するようでしたら、負傷者のうち四名、いや六名は戦闘復帰が可能です。強化服の修理と補給もできますから。それだけあれば、後半日は持ちこたえて見せます》
「このまま戦闘が続くようなら?」
《1時間で全滅します》
 他人事のような口調で、ノックス保安部長は答えた。その間もレーザー・ライフルによる射撃は続けている。
「つまり、こちらから一度は逆撃する必要があるわけだな。ノックス、いかにも楽しい状況になってきたじゃないか」
《何、いつものことです》
「増援を送る。それまで頑張ってくれ」
《了解です》
 通信を切った船長は、帽子をあみだにかぶりなおした。灰色の瞳に、いたずらっ子のような色が浮かぶ。
「甲板長、作業用強化服は何着使える?」
 この世のすべての苦難と災禍に耐えている哲人のような顔をした甲板長が、ため息と共に答えた。
「はぁ。二二着、使えますです。いつでも稼動可能です。はぁ」
「なんだ、全員に行き渡るじゃないか」
「はぁ。そう言われると思ってましたです。はぁ」
「よし。対クラック用の電脳士と副ロケット制御の機関士をのぞく全員で、ちょいと遠足に行くぞ」
「はぁ。危険な遠足になりそうですな。レーザー・ライフルとリニア・ガンは倉庫から持ち出しておきましたです。はぁ」
 ため息をつきながらも、甲板長はてきぱきと部下に指示を出していく。
「それじゃ、おれも行って来る。こっちは君に任せた」
「あら、副ロケット制御だけならレイマン君がいれば充分よ。あたしも行くわ」
「君は電脳士でもあるだろう。ここに残れ」
「エミリにやらせるわ。あの子の方がこういう事の腕前は上なの」
「やれやれ、さすがは君の子供だな。料理よりもハッキングの方が得意か」
「あら。あなたの子供でもあるのよ。意固地な所なんかそっくり」
 船長は苦笑して、端末を副電脳室につなげた。
「義父さん! あ、いや船長!」
 黒髪の青年が画面に出た。
「フローラの状態は?」
 黒髪の青年が浅黒い顔に悲しそうな表情を浮かべた。画面を引くと、黒髪の娘と金髪の少女が映る。
《何とか持ちこたえています。でも──》
 黒髪の青年がいたましそうに、ソファに横たわる金髪の少女を見つめた。まだ一〇代前半に見える少女は、額から汗を出して苦しそうに呻いている。それより少し年上に見える黒髪の少女が、心配そうな表情でその汗を拭う。
「これ以上は無理だな。フローラを起こしてやれ、デビット」
《はい、船長》
「それとエミリ。そこの副電脳をお前に預ける。“ケモノ”のクラックを防いでくれ。特に、縮退物質炉の制御だけは死守しろ」
 エミリと呼ばれた黒髪の少女が顔を上げた。理知的な瞳に憂慮の色が濃い。
《義父さん、それじゃ義母さんは?》
「ちょっと別の用事があるのよ。さっきからこっそり手伝ってくれてたでしょ? あれをどんどんおやりなさいな」
《気づいてたの?》
「当然でしょ。それと、あたしが戻ってくるまでちゃんとクラックを防いだら、この前お小遣いと勉強の成績を書き換えたのは大目に見てあげる」
《う……》
 黒髪の少女がばつの悪そうな顔をして黙る。船長は、ひとしきり笑った後、真面目な顔に戻って言った。
「それから今のうちに礼を言っておくぞ、デビット。エミリ。おまえたち二人の“鍵”の力で、星系内部のかなりの場所にまで跳躍できた」
《そんな、船長。当たり前のことをしただけです》
「いや。本当なら子供を守るべき親の私たちが不甲斐ないばかりに、お前達に苦労をかけた。すまないと思っている」
《義父さん!》
 新たな画面が開いた。ノックスだ。
《船長。“ケモノ”の活動が活性化しています。増援を送られるのでしたら、早めがよろしいかと》
「よし、分かった。それじゃあな。私たちはできるだけ時間を稼ぐ。その間に救援が来る。きっとだ」
《義父さんと義母さんは?》
「これまで親らしい事を一度もしてやれなかったからな。デビット、エミリとフローラを頼むぞ」
 何か叫ぶ黒髪の青年と少女の画像が切れる。船長は傍らにいた妻に話しかけた。
「すまんな。私ばかりが話して」
「かまいませんわ。私はまだあの子たちをもう一度この手で抱くつもりですから」
「そうか……そうだな。まだ、諦めるのは早いな」
 肩に置かれた妻の手に、船長は自分の手を重ねた。そして大声で部下を鼓舞する。
「行くぞ、諸君! “ケモノ”に人間のしぶとさを教えてやれ!」

■外宇宙港「ワーラマンス」港湾ブロック

 彼は黙々とロケットの整備をしていた。この辺境の星では、縮退物質ロケットエンジンはこれ一基しかない。その中心部たる縮退物質を封じる力場の発生は現在の人類の技術がなしえる物ではない。はるか何千年も前に建造された宇宙船からサルベージしてくるか、“ケモノ”を殺しその腑(はらわた)から取り出すか、どちらしかない。そして彼の宇宙船、ゼファー・ファルコン号のロケットは後者だった。マルガの“狩人”が駆る戦船としては当然の事である。
 そのロケットももう寿命が近い。彼の祖父の代から七〇年余り。思うがままに宇宙を飛ぶ代償として、ロケットの縮退物質は少しずつその質量を増やしていった。やがて、それを封じている正体不明の力場でも支えきれなくなる時が来る。そうなる前に宇宙に永久に投棄しないといけない。彼は若干の寂しさと共にその日が遠からぬ事を認めた。
 ここで、代わりのロケットが手に入るだろうか。つまり狩りの日は来るだろうか。
 彼の灰色の瞳に暗い光がさした。
 狩りではない。
 殺戮だ。
 殺す。
 すべて殺す。
 “ケモノ”はことごとく鏖殺する。
 それは四年前の復讐。既知宙域最強と呼ばれた己が部族を滅ぼされた恨みを彼は忘れてはいなかった。
 だが、それよりも優先すべき目標が彼にはあった。
 四年前のあの時に誓った目標が。
 必ず──
 びきっ。
 手にしたマルチスキャナが割れた。
 しまった。つい力が入ったらしい。彼は自省した。
「またやったんですか、師匠」
 師匠ではない、という言葉は言っても無駄なので口にしなかった。
 年齢のわりには小柄な少年が新しいマルチスキャナを取り出して、つん、と人差し指で押した。空中を飛来するそれをつかみ、少年には一顧だにせず針をエンジンに差し込む。
 ここは与圧された無重力ドッグだ。与えられた運動量はそのまま保存される。
「師匠、ノズルの磁場は定格でした」
 彼は無言で手を差し出した。スクロールが渡される。親指で端を押し、ペーパーを開く。問題ないようだ。グラフや表がきれいに整理して並べられている。
 かち。かち。
 彼が親指を動かすとペーパーがめくれ新たなページが開かれる。すぐに全てのページを見終わる。後でもう一度確認するためにスクロールを畳んでポケットにしまう。
「師匠、タンクのアイス、交換の注文だしときましたけど……もったいないですよ。一回も使わないまま推進剤を捨てちゃうなんて」
 彼は答えなかった。その必要を認めなかった。
「はいはい。わかってますよ。エネルギー変換効率が下がるんでしょ? けれど、2%か3%なんでしょ? わざわざ高い金払って交換して……宇宙軍はそこまでは面倒見てくれないから自腹なんでしょ?」
 やはり返答はない。
「そんな頑固な事をしてるから、食費をけずる羽目になるんですよ師匠。ボクがあれこれやりくりして毎日ご飯作ってあげてるからまだしも、そうでなかったらとっくに栄養失調でぶっ倒れていますよ。元々燃費の悪い肉体してるんですから」
 彼はむう、とうなった。
 痛いところをつかれた。
 二m近い長身と一〇〇kgを遙かにオーバーする体重を持ちながら脂肪の占める割合がきわめて低い彼の肉体は当然のごとく基礎代謝が大きく、ただそこに座っているだけでもカロリーを消費する。
 消費したカロリーは何かの形で補わねばならない。つまり食事として。贅肉のない肉体というのは実はあまり具合がよくない。
「ですから二週間、アイスの交換を遅らせましょう。それなら1%のロスですみます」
「その1%が生死を分ける。それが戦場だ」
 彼はむっつりとした顔のまま言った。いかつい外見とは不似合いなほどの美声だった。
「いつ来るかも分からない戦争のために食べる物を食べてないとそっちの方が生死を分けます。後方兵站の充実は兵法の基礎でしょう」
 少年の言も一理ある。彼は考え、頭をめぐらせ、熟考の末に言った。
「五標準日でどうだ」
「一〇標準日ですね。分かりました、業者にはもうそれで発注してあります」
 彼は嘆息した。思えば四年前は全てが単純だった。彼は“狩人”であり、そしてそうであるからには“ケモノ”を狩る事だけを考えていればよかった。彼の肉体も、知識も、鍛錬も、経験も、すべてはそのために特化していた。血筋、つまり遺伝子すらそのようにチューンされていた。そうでなければ“狩人”にはなれない。
 彼がその事に疑問や不満を抱く事はなかった。族滅されたあの日までは。
 あれから四年間。彼は“狩人”で生涯を終わるのであれば付き合う必要がないはずの様々な俗事に手をつける事になった。その多くは不愉快な物であり、残りも彼には理解しにくい物であった。
 この少年も、と彼は考えた。
 理解に苦しむ存在だった。
 きっかけはたいした事ではなかった。この星にゼファー・ファルコン号ごと雇われた彼が宇宙港の地理を確認していた時に遭遇した、それだけの存在である。
 もちろん万事に手抜かりのない“狩人”を目指している彼は宇宙港の隅から隅までありとあらゆるところに鼻面を突っ込んだ。どうやら廃棄寸前らしい古ぼけたブロックで少年と三人の男達が何やらもめていたとしても、彼は地理さえ確認できればそれで良く、関わり合いになるつもりは毛頭なかった。整備用エアロックの点検さえさせてもらえれば、後は少年がそのエアロックから外に投棄されようが、その時に宇宙服を着ていようが着ていまいが、まったく関知する所ではなかったし、そうも言った。
 だが、男達は別の考えがあったらしく、愚かにも彼に襲いかかってきた。
 “狩人”の敵は“ケモノ”であり、人間ではない。だが、もちろんその技は人間にも有効である。有効過ぎるほどに。
 ナイフを持った二人は、ほとんど一瞬で床に叩きのめされた。念入りに四肢の骨を砕いたのはやり過ぎだったが、本来、しぶとさでは定評のある“ケモノ”用の技を使ったのであるからいたしかたない。
 残る一人は逃げればいいのに銃を持ち出してきた。なぜこんな面倒な方法で自殺したがる人間がいるのか彼としては悩むところであったが、これもいたしかたない。“狩人”としての最低限のモラルとして命までは奪わなかったが、それも武装解除が終わった後で応急処置をしていなかったら危なかっただろう。戦場で仲間が倒れた時に備え、“狩人”は緊急救命医とほぼ同レベルの手当の心得がある。
 彼はそのままエアロックの点検を続けようとしたのだがそこで少年に止められた。早く逃げた方がいいというのである。おかしな話である。逃げる必要性を彼は認めなかったのであれば自分一人で行くようにと少年に言った。ところが少年はどこへも行かず、代わりに大勢の男達がやってきた。倒した三人を見て誰がやったのか問いかけてきたので、自分がやったと彼は言った。そして礼には及ばないと。手当をしたのはあくまで自分の中に存在するルールを守るためで、この三人のためではなかった。
 だが男達はどうしてももめ事を起こしたかったらしい。刃のきらめきが彼を取り囲んだ。
 彼はため息をついた。どう見てもそこにいる男達の数は彼の腰の医療キットの薬剤の数よりも多かった。死人を出しては祖霊に申し訳がない。
 やめねぇか。男達の後ろから声が聞こえた。そいつは“狩人”だ、お前らが束になってもかなう相手じゃない。
 道理の分かる人間が一人いて助かったと彼は思った。
 うちの若いのが迷惑をかけた、と出てきた老人は言った。彼はかぶりを振った。それほど手間はかからなかった。骨は脆かったが臓器はまだまだ丈夫で、ちゃんと医者にかかればそのうち三人とも自力で歩けるようになるだろうと伝えた。
 老人は他の面々に三人の男達を運び出すように指示をし、最後にその少年はお前さんの物だと言って立ち去った。
 彼にはその言葉は理解できなかったが、少年には理解できたようだ。そして一標準年近くが経過した今も彼について回っている。物覚えのいい子で、彼が苦手とするあれやこれやの手配りも上手だった。最近では朝起きる時から夜寝る時まで、すべてのスケジュールを管理されている。
 ロケットの保守点検が終了した。彼が立ち上がると、そうでなくても物だらけで狭い機関室がさらに狭くなる。あおりで、少年がバランスを崩した。
 転ぶ──
 そう少年が思った時、す、と差し出された腕が少年の細い腰を支えた。
「大丈夫か?」
 呼気が感じられるほどすぐ近くに、顔があった。短く刈った赤毛。彫りの深い顔立ちは全体の作りがいかついので怖く見えるが、十分にハンサムといっていい。
 とくとくとくとく。
 少年の心臓が早鐘を打つ。
「ご…主人様……」
「またその呼び名に逆戻りか」
 少年をのぞきこむ灰色の瞳がわずかに険しくなった。
 ぞくぞくぞくぞく。
 少年の背筋がぶるぶると震える。
「はふ……あ……」
 今だ。
 少年は己を鼓舞した。
 今こそ告白する時だ。
 いや。
 この距離ならば。
 いっそ唇を。
 少年が決意した時、ちー、という呼び出し音が手首のコムログから発せられた。
 するり、少年の腰を支えていた腕を引き抜き彼はコムログをリンクした。
「なんだ?」
《…………!》
 コムログからは一言、二言。
 ちり。
 少年のうなじの毛が逆立った。肌が粟だった。血の気が引いた。
「あ……あ……」
 仁王立ちになった彼の全身から、『闘気』としか言いようのないものが噴き出していた。
 今こそ少年は理解した。一年前に出逢った時の立ち回りが、彼にとってはまったくの余技であった事が。
 そして同時に。
 船内にいても聞き取れる警報が、宇宙港の中で鳴り響いていた。
 まるで夜泣きをする赤子の声のような音だった。
 一度聞いたらしばらくは頭の中で鳴り響き続ける、たとえ熟睡していても一発で目が醒める、そういう警報だった。それを目的とした警報だった。
 “ケモノ”警報。
 人類の天敵である“ケモノ”が、この星に一二年ぶりにやってきたのだ。
 笑い声が、少年の耳に聞こえた。
 本人は笑っている事に気づいていないだろう。
 だが、コムログを切った彼の唇はV字型に歪み、暗い愉悦のこもった笑みを浮かべていた。
「ユーリ、発進準備だ」
「あ、はいご主人様!」
 言ってからしまったと思ったが、すでに彼はそんな些事は気にならなくなっていた。
 待つだけではない。
 調べ、推理し、行動した。
 この星こそ、キーとなるだろうと考えていた。
 その考えが正しい事が一年の雌伏で証明された。
「“ケモノ”と戦うんですか?」
 ユーリの言葉に、彼はびっくりした表情を浮かべた。そしてすぐに表情を消す。一年間ずっとかぶり続けてきた仮面をかぶる。
「無論だ。俺はマルガの“狩人”だからな」
 ギルフォード・ラッシュ=ギルは淡々と言った。