Hearts Of Iron:ゲームの中の第二次世界大戦 その3
『Hearts Of Iron』は、Paradox社の戦略級ウォーゲーム(電源あり)である。
第二次世界大戦における国家元首となり、自国の勝利のために戦うのだ。
戦略級であるからして、外交や技術開発、部隊編成のすべてがプレイヤーの判断に
委ねられている。一方で戦闘そのものにはプレイヤーの介入する余地はない。
とりあえず、敵を決めて戦力をそろえてぶつけるまでがプレイヤーの仕事と
割り切った方がよかろう。
■ソ連(第1回)
ポーランド。そしてフランス。
いずれも、第二次世界大戦では序盤に退場している。(むろん、その後もイギリスに
亡命政府や自由**軍が存在したりはするが)
そこで最後まで戦い抜いた国でプレイしてみようと思う。
アメリカは面白そうだがまあ後に回そう。
イギリスは世界中に植民地があって操作や管理がたいへんそうである。
ドイツは、もうちょっと後にとっておこう。
となると――ソ連である。
スターリナ:そういうわけで、私がソ連の赤い独裁者、ユリア・スターリナよ。
フルシチョワ:そして私がメイド政治委員のニーナ・フルシチョワです。
スターリナ様、さっそくですが国防方針をお決めになってくださいな。
スターリナ:それはむろんソ連といえばT-34ね。T-34を量産しなさい。
フルシチョワ:いえ、そうではなく。これから迎える戦乱の時代を、いかなる外交と
戦略で切り抜けるのかをお教えください。
スターリナ:ごめん、もうちょっと簡単に言って。
フルシチョワ:ぶっちゃけ、どこと戦争してどこと戦争しないかです。
スターリナ:ドイツは敵よ。ベルリンに赤旗を揚げるのよ。でも英米とは仲良くね。
フルシチョワ:中国と日本は?
スターリナ:中国に手を出すと英米が黙ってないでしょうね。でも日本との二正面
作戦はできれば避けたいわ。
フルシチョワ:トルコ、中東やアフガニスタンへは?
スターリナ:うーん、めんどくさいわねー。あ、でも中東の石油は欲しいわね。
フルシチョワ:申し訳ありません。中東に石油はでません。
スターリナ:なんで?
フルシチョワ:中東の石油が本格的に採掘されるようになるのは第二次世界大戦の後
なのです。
スターリナ:じゃあいいわ。ほっときなさい。
フルシチョワ:それではまとめます。
敵:ドイツとその同盟国。ただし日本へは様子を見る。
味方:英米とその同盟国。ただし戦わないだけで同盟国ではない。
ほっとく:各国植民地とメソ・アメリカ。
フルシチョワ:それではプレイ開始です。すでに70個師団ほど部隊がありますが
これをいかがしましょうか?
スターリナ:うーん、適当に西部方面へ配置しておいて。
フルシチョワ:はい。研究開発は戦車を中心にいたしますが、大砲も合わせて開発して
おきましょう。
スターリナ:なんで?
フルシチョワ:それは戦車の開発というのは車体の開発でしかないからです。たとえ
T-34の車体を開発しても載せる戦車砲がなかったら、マシンガンだけ搭載のT-34/MG
などという愉快なシロモノが出来てしまいます。
スターリナ:愉快すぎるわよっ! で、戦争になるまで3年ほどあるけど、外交は
うまくいってる?
フルシチョワ:ぜんぜん駄目ですね。
スターリナ:なんで。
フルシチョワ:外交力(Diplomatic Influence)が足りないのです。
スターリナ:何点ほどあるのよ。
フスシチョワ:-80点。
スターリナ:マイナスっ?!
フルシチョワ:2年間は何もできませんねー。
スターリナ:なんか陰謀のようなものを感じるわ。
●粛清のはじまり
フルシチョワ:スターリナ様。軍の上級将校が何やらたくらんでいるという噂です。
スターリナ:来たわね。粛清の嵐が。
フルシチョワ:はい。
スターリナ:粛清はダメよ。有能な将校を失ってはドイツに勝てないわ。
フルシチョワ:本当によろしいのですか?
スターリナ:当たり前じゃない。
フルシチョワ:ではそのように。
暫時経過。
スターリナ:いったいこの数字は何事なのよっ?! 生産から何から全部ダウン
しているじゃない!
フルシチョワ:残念ながら事実です。我が国は今争乱状態にあり、千々に乱れて
おります。
スターリナ:何が原因なのよ?
フルシチョワ:国民が従うべきルールを守らないからです。たとえルールを
守らなくても処罰されない――そう思ったならルールを決して守らない。
これがロシア人というものです。
スターリナ:……粛清しなかったから?
フルシチョワ:はい。
スターリナ:ど、どうすればいいのよ。
フルシチョワ:次のリストが来ております。これにサインしていただければ……
スターリナ:やだ。
フルシチョワ:後悔なさいますよ?
●敗戦
そして1940年秋。
ポーランドに続いてフランスも打倒したドイツ軍は、デンマーク、ノルウェーを
支配した上でついにソ連に侵攻を開始した。
だが、うち続く国内の争乱によってソ連軍はほとんど軍備を増強することができず、
史実よりもはるかに少ない戦力でドイツ軍と戦うことになった。
たとえ有能な将軍がどれだけいようが、軍隊がなくては戦えない。
ソ連は敗北した。
スターリナ:うう……悔しいーっ!
フルシチョワ:だから申し上げましたのに。
スターリナ:甘い顔を見せたら負けなのね。よくわかったわ。次はこうはいかないから!
フルシチョワ:それでは再度チャレンジを?
スターリナ:もちろんよ!
■ソ連(第2回)
スターリナ:さあ、気を取り直して行くわよーっ。
フルシチョワ:さっそくですが、粛清のリストです。陰謀を企てているかも知れない将軍を
適当にみつくろってみました。
スターリナ:粛清。
フルシチョワ:わかりました。
スターリナ:あ……でも。
フルシチョワ:表向きは死刑としておきます。ですが、死一等を減じてシベリアに
島流しにしておきますわね。
スターリナ:ありがと。
こうして粛清天使となったスターリナは、国内の規律を高め、国力と生産力を
向上させていった。
スターリナ:粛清はするけど、軍の機械化は進めるわよ。さっきは開発したけど
作れなかったT-34を量産するわよ!
フルシチョワ:本当、お好きですね。
スターリナ:うーん。こうして見るとソ連って実はすごい工業国なのよね。前の
プレイのフランスなんか比べものにならないわ。
フルシチョワ:はい。植民地はありませんが資源も豊富です。
スターリナ:よしよし、どんどん戦車を作るわよー。
●誤算
スターリナ:ドイツが宣戦布告して来たんですって?
フルシチョワ:はい。
スターリナ:早いわね。まだ1940年の春よ。史実より1年も早いわ。
フルシチョワ:デンマークやノルウェイは放置してこちらに向かってきたようです。
スターリナ:フランスは?
フルシチョワ:1940年2月の時点ですでに降伏しております。
スターリナ:うーん。ちょっと予想よりも早いわ。でもしかたないか。軍の準備は
できている?
フルシチョワ:はい。歩兵師団にも70ミリ対戦車砲を装備させて一通りの対戦車
戦闘力はそろえております。
独ソ国境で激しい戦いが始まる。
ドイツ軍は戦車師団を……戦車……おやぁ?
スターリナ:ど、どういうこと? 戦車なんてどこにもいないじゃない?
フルシチョワ:どうやらドイツ軍は戦車軍団を諦めたようですね。あれは国力と
時間がかかりますから。主力は歩兵師団です。
スターリナ:じゃあ楽勝じゃない。同数なら……あれ?
フルシチョワ:前線の兵がどんどん潰走しています。これ以上は持ちません。
第二線の部隊を出します!
スターリナ:お願い。それにしてもどうしてこんな事になったのよ。
フルシチョワ:軍事ドクトリンの問題です。我が軍は資源を集中して優秀な戦車の
開発に力を注ぎましたが、ドイツ軍はそういうハードウェアではなくソフトウェア、
軍隊の指揮や戦術、通信などを集中的に伸ばしているのです。同じ歩兵師団でも
戦力は2倍……いえ、3倍は違います。
スターリナ:じゃあ、同数の部隊なら、あっちが勝つってこと? どうしたらいいの?
フルシチョワ:うかつでした。こちらの戦車師団はあくまで反撃戦力として後方に
まとめて置いておいたのですが、こうも全戦線で敗走が始まると……予備兵力が
なくなってしまっては戦車師団を投入する機会さえなくなります。
スターリナ:くっ。
ソ連軍は潰走を続けた。戦車師団は強力ではあったが、数が少ない戦車師団では
キエフなどの大都市を守るのが精一杯だった。それも周囲を囲まれて補給をたたれて
しまえば、最後には全滅するしかない。
モスクワ前面での激しいが短い戦いの後、ソ連は降伏を宣言した。
■ソ連(第3回)
スターリナ:3度目の正直、いくわよーっ。
フルシチョワ:……
スターリナ:何よ、文句あるの?
フルシチョワ:いえ、感心しております。このねばり強さこそ我がスラブ民族の
真面目(しんめんもく)であると判断いたします。
スターリナ:当たり前よ。勝つまでやるのがロシア流なんだからね。
フルシチョワ:それでは、序盤はどのように?
スターリナ:前回は歩兵が弱すぎたわ。こちらも戦術や指揮能力を上げる軍事研究に
投資しておいて。
フルシチョワ:Tes. ですが、すでに研究開発はいっぱいいっぱいです。これ以上
増やすことはできませんよ。
スターリナ:うーん……そうね。よし、空軍は戦闘機部隊に関するものだけを
開発して。爆撃機の研究開発は全部キャンセル。それと戦車はT-34/76の開発までで
止めて。重戦車の研究はこれを禁止します。ドイツが戦車師団を編成しないのなら
こっちが重戦車を開発する意味なんてないもの。
フルシチョワ:分かりました。
スターリナ:あ……それと。ちょっと外交力を使ってやりたい事があるんだけど、いい?
フルシチョワ:それはかまいませんが、1938年後半からになりますよ。
スターリナ:うーん。それぐらいでちょうどいいと思う。
フルシチョワ:??
●電撃戦ならず
1939年9月。
ダンツィヒを巡る紛争がついにドイツとポーランドの間の戦争に発展した。
英仏などの連合国はドイツに宣戦布告。第二次世界大戦の始まりである。
フルシチョワ:至急電です。ついに開戦です。
スターリナ:こっちの準備もほぼできたわ。ぎりぎりになりそうだけどね。
ポーランドは1ヶ月で降伏。ドイツに併合される。
返す刀でドイツ軍はポーランド侵攻部隊を西にシフト。ベルギー、オランダ、
ルクセンブルクに宣戦布告。いよいよフランス侵攻である。
フルシチョワ:……あら?
スターリナ:どうしたの。
フルシチョワ:いえ、なんというか……ドイツ軍の動きがいつもより鈍い
気がするのですが。
スターリナ:そう。なら、どうやらうまくいったみたいね。
フルシチョワ:何か策が? そういえばフランスにやけに外交官を送ってましたが。
スターリナ:簡単なことよ。前回、我が軍が簡単に負けたのは数ではなく戦術・
指揮能力によるものだったわね。
フルシチョワ:はい。ですから今回は長い時間と多額の予算をかけてドイツ軍に
匹敵するレベルまで軍を鍛え上げました。
スターリナ:そのノウハウ。全部まとめてフランスに送ったわ。
フルシチョワ:なんですってっ?!
スターリナ:我が軍は前回よりそれなりに強くはなったけど……でも、まだ一国で
ドイツ軍と戦えるほどじゃない。ドイツ軍がフランスで苦戦している間に背後から叩く。
チャンスはその時にしかないの。
フルシチョワ:だからフランスに援助を……それも、即効性のあるカンフル剤を、ですか。
●縦深作戦
1940年4月。
西部戦線ではドイツとフランスの死闘が続いていた。
ここに来て、ドイツが戦車の開発と量産を等閑に付してきたツケが回ってきたのである。
戦車師団があれば、戦線を突破し、相手が立ち直る前に連続した突破で全戦線を
崩壊させることもできる。
だが、歩兵師団主体のドイツ軍はその機動力において史実のドイツ軍ほどの力を
持ってはいなかったのだ。
次々と戦力が東部の独ソ国境から引き抜かれてフランスへと移動していく。
スターリナ:よおし、みんな、準備はいい?
フルシチョワ:はい。
スターリナ:我が国はドイツに宣戦布告する。第一目標は旧ポーランド領とドイツ
東部。でも最大の目標はドイツ東部方面軍の包囲殲滅よ。トハチェフスキー将軍、
いいわね。
トハチェフスキー:ははっ、お任せあれぃ。
赤軍大粛清から偶然にも生き残ったソ連屈指の名将トハチェフスキー。
ソ連は突破前進のための精鋭、機甲軍団を彼の手に委ねた。彼の配下には
ジューコフ、コーネフの赤軍双璧(略して赤壁)をはじめとして
蒼々たる将帥が集っている。
トハチェフスキー:先鋒はジューコフ。お前に任せる。側面は気にせずただ前進せよ。
バルト海まで一歩も退くでないぞ。
ジューコフ:心得ました。
完全に不意をつかれたドイツ軍はたちまち敗走。赤軍はライヘナウ将軍率いる
ドイツ東部方面軍の包囲に成功する。
この大突破が成功したのには、赤軍機甲軍団が快速の戦車師団と機械化師団だけで
構成されていたのともうひとつ。
グデーリアン:だから戦車部隊が必要なのだと……くそっ。
ドイツ軍がほとんど機械化されていない歩兵だけの軍隊であったためである。
奇襲と包囲戦によって、ドイツの東側を守る軍はいなくなった。
だが、西部戦線から引き抜こうにも――
ソ連による無形の軍事援助によって強化されたフランス軍は首都のパリを失い
ながらも抵抗を諦めてはいなかった。
ドイツの盟邦イタリアはというと、フランスに攻め込むどころか、半島南端に
イギリス軍の上陸を許すというていたらく。とてもではないがドイツを助ける
どころではない。
そしてついに、赤軍はドイツの首都ベルリンの包囲に成功する。
すぐさまトハチェフスキー率いる精鋭がベルリン市街に突入するが――
ヒムラー:おのれスターリナめ。和平条約を破っての奇襲、許し難し。かくなる上は
このヒムラー。ベルリンを死地に総統へ最後のご奉公を務め奉らん。
ジューコフ:ううむ。損害が大きすぎるな。貴公、どう思う?
コーネフ:きゃつらは死兵だ。まともに戦うのは下策だぞ。
ジューコフ:奴らが華々しく死にたいのは奴らの勝手だが、こちらがそれに付き合う
必要はないな。よし、トハチェフスキー将軍にお願いしてベルリンは包囲にとどめよう。
こうして赤軍はベルリンを半年にわたって包囲。
その間に旧オランダ、ベルギーを含むドイツのほとんどの地域を制圧した。
補給を絶たれ、立ち枯れの状態となったベルリンが降伏したのはその年の12月の
ことだった。
スターリナ:やったわっ! ドイツを打倒したわよ!
フルシチョワ:おめでとうございます。
スターリナ:これで後は枢軸国のスロバキアとハンガリー、ブルガリアを占領するだけね。
フルシチョワ:地形は山がちでありますが、しょせん彼らは二流の軍隊しか持ちません。
さほど気にする必要はないかと。
スターリナ:そういえば、日本は?
フルシチョワ:枢軸には加盟していないようですね。ですがむろん、連合国では
ありません。どうします? 攻め込みますか?
スターリナ:うちの海軍で? 言っちゃなんだけど海軍にはびた一文払ってないわよ。
フルシチョワ:満州国や朝鮮なら奪えますよ。
スターリナ:うーん気が進まないな。初志は貫徹したし。これでいいわ。
フルシチョワ:それではそのようにいたします。
スターリナ:まあ、ヨーロッパが真っ赤に染まってとってもきれい。
フルシチョワ:フランスはほぼ旧来の領土を取り戻しましたね。マジノ線は我が軍が
支配していますが。
スターリナ:これからは仲良くやっていきましょ。……こっち主導で。
フルシチョワ:大英帝国はさすがですね。終戦間際にルーマニアを支配されました。
スターリナ:いきなり黒海に大艦隊が来るんだもの。海軍国ってあなどれないわよね。
そういえば、海軍国といえば日本は?
スターリナ:ありゃー。これはひどいわね。
フルシチョワ:日本は日中戦争が泥沼になった上、対日禁輸などの資源不足でついに
東南アジアのヨーロッパ植民地へ侵攻してしまいました。最初は良かったのですが
アメリカが連合国側に立つとたちまち劣勢に追い込まれ、海軍は壊滅してしまいました。
スターリナ:それでも満州国は無事なのね。
フルシチョワ:我が国が攻めませんでしたからね。
スターリナ:日本の青色はアメリカ軍か。中国沿岸部のピンク色はイギリスね。
あれ? 朝鮮半島にいるのは……
フルシチョワ:はい、フランス軍です。インドシナに上陸した日本軍を追い払った後、
フランスは朝鮮半島に侵攻いたしました。
スターリナ:大陸には日本軍がけっこういるみたいだけど、制海権がないと撤兵も
できないのね。海軍国はたいへんね、これは。
フルシチョワ:ソ連は広いですが、どこまでも歩いていけますからね。樺太はダメですが。
スターリナ:なんにしてもドイツを打ち破って気分がいいわ。今夜は祝杯よ!
(おしまい)
作成者:銅 大(アカガネ ダイ)
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