■『Hearts of iron2:ゲームの中の第二次世界大戦 ふたたび!』 ドイツ編

●1936年:戦争方針決定

 実を言うと、ドイツで勝つのは難しくない。
 ドイツ軍は初期状態における戦車なしの歩兵師団で十分に強い。その強い歩兵師団を流れ作業でだらだら量産して前線に投入するだけでいいのだ。(難易度を上げないなら)

エヴァ:アドルフ! あなた!
総統:どうしたんだい、エヴァ?
エヴァ:なんですか、この戦争計画は? 歩兵師団ばかり増設して、恥ずかしいとは思わないの?
総統:それが一番効率がいいんだ。
エヴァ:あなた、それでも偉大なるドイツの総統なの? 戦車を量産しなさい!
総統:えー? うちの戦車って、今は1号戦車とか2号戦車だよ? チハ(日本の97式戦車)より弱いよ?
エヴァ:なら、開発しなさい。ドイツの科学力は世界一です。
総統:でも、戦車だけでは戦線が張れないよ。歩兵も必要なんだ。
エヴァ:自動車化師団なら許してあげます。(歩兵をトラックで運ぶ)
総統:高いよ、それはっ?!
エヴァ:いきなり機械化師団と言わないだけありがたく思いなさい。(歩兵を装甲車で運ぶ)

 かくして、エヴァの一言でドイツは機械帝国として誕生する事になったのである。

●1939年:白の場合

 ラインラント進駐からはじまるオーストリア併合、ズデーデンランド要求などの歴史イベントをとりあえずそのまま進めていき、ついに1939年の夏を迎える。

総統:うう……
エヴァ:どうなさったの、アドルフ?
総統:いよいよ戦争かと思うと、胃が痛くて。
エヴァ:しっかりなさい! だいたい、ポーランドにケンカをふっかけても英仏は動かないと言ったのはあなたでしょ!
総統:そりゃ、歴史上の私だ。このゲームだと、ダンツィヒ要求はたいていポーランドとの戦争になるし、そうなると英仏も宣戦布告してくる。それが分かっていたら歴史上の私だって戦争したかどうか怪しいものだよ。
エヴァ:じゃ、やめる? イベントだからダンツィヒ要求はしなくてもいいわよ?
総統:それはそれで問題の先送りだ。このゲームでのドイツの優位は初期設定にあるわけだから、時間が経過すればするほど差はなくなっていく……ああ、いっそ36年に開戦していればっ!
エヴァ:今更手遅れよ。さ、覚悟を決めなさい。

ポーランド戦役直前

 オーストリア併合などで歩兵師団は増えているものの、全体的にドイツ軍の数は少ない。
 ドイツ軍は3個師団ずつまとめて軍団を編成している。ほとんどのエリアは歩兵1軍団だけで戦線を維持しており、敵陣に突っ込むエリアだけ集中して戦車や自動車化師団をまとめて配備している。

 どどーん! どどどどーん!

総統:うぉ?!
エヴァ:はじまったわっ! 戦争よ! この世の終わりよ! 神々の黄昏、ラグナロクが今はじまったのよぉぉぉぉっ!!!
総統:……テンション高いなぁ、キミ。

●1940年:黄の場合

 ポーランドを占領し、ソ連と分割しても戦争は終わらない。
 むしろこれからが本番である。ドイツ軍は休む間もなく西へと向きを変える。

エヴァ:あら? ノルウェー侵攻作戦(ウェーゼル演習)はどうなさったの?
総統:無理だよエヴァ。今回は海軍増強してないからね。
エヴァ:U-boatは作ったのじゃなくて?
総統:潜水艦で、輸送船の護衛はできないって。

 それに、ノルウェーの港がなくてもスウェーデンの鉄鉱石は手に入る。中立国や同盟国との貿易は、戦争がどれだけ激しくなっても影響を受けないからだ。

総統:とにかくフランスが本格的に兵力を増強しはじめたらえらいことになる。今のうちに何とかしないと。
エヴァ:やはりマンシュタイン・プランかしら?
総統:もちろんだとも。さあ、ベルギーに宣戦布告だ! ……戦力が足りないからオランダは後回し。
エヴァ:びみょ〜

 グデーリアンやマンシュタインの戦車師団がアルデンヌの森を突破して北フランスへ侵攻! 意外にもろいフランスだったが……

総統:あれ? なんか、包囲できた敵の兵力が少ないな。
エヴァ:というか、あまりいませんわ。
総統:ああっ?! マジノ要塞から大量のフランス軍があふれだして、ドイツ南部に攻め込んできたっ?!

 その数40個師団。戦車も混ざっている。ドイツ南部の戦線を支える歩兵3個師団ではどうしようもない。

総統:い、いかん! すぐに増援を南ドイツに送らないと。
エヴァ:あ、バカっ!

 戦車師団を含む戦略予備が南ドイツに派遣され、戦線は安定する。
 しかし、予備をここで使ったために北フランスでの進軍も停滞してしまい、戦争は膠着状態になる。

エヴァ:……何やってるのよ、まったく。
総統:面目ない。
エヴァ:しょうがないわね。ちょっと行ってくるわ。
総統:どこへ?
エヴァ:スペイン。マドリードよ。
総統:??

 マジノ線を攻略拠点として、そこから南ドイツに積極的に打ってでることで膠着状態を生み出したフランスでは、なんとかこのまま戦争を第一次世界大戦型の消耗戦に持ち込めるのではないかと考えていた。

 しかし、その予想は裏切られる。
 ピレネー山脈をこえて、スペイン軍が侵攻を開始したのだ。

フランコ将軍:やあやあ、総統。お困りのようだね。
総統:……うん。
フランコ将軍:こっちも内戦の時にドイツにはいろいろとお世話になったからね。ここで恩返ししたいのだが、どうかな?
総統:……ありがとう。
フランコ将軍:はっはっは。まあ、任せてくれたまえ。

 無防備だった背後を突かれ、フランス軍は総崩れになった。ドイツ軍はかろうじてパリを押さえ、ヴィーシー政府イベントを発生させてフランス戦役に勝利する。
フランコスペインの参戦

エヴァ:ね、怒ってる? 勝手に同盟工作なんかして。
総統:いや、別に。
エヴァ:ごめんなさい。イタリアじゃフランスの不意は打てないと思ったの。それならいっそ、スペインを味方につけた方がいいと思って。
総統:そうだろうね。
エヴァ:やっぱり怒ってる?
総統:いや、元々は私のミスだからね。感謝している。
エヴァ:じゃあなんで不機嫌なのよ。
総統:不機嫌なのはキミに尻ぬぐいをさせてしまったからだ。怒っているのは自分自身にだ。キミのせいじゃない。
エヴァ:……

 こうして西部戦線はなんとか安定したものの、強敵ソ連が東に控えている。
 夫婦げんかなんかしている場合じゃないぞ、総統!

●1941年:赤髭の場合

 史実における第二次世界大戦の最終的な勝者はソビエトとアメリカである。
 そのため、このゲームにおいてソビエト連邦はドイツを上回る経済力と、アメリカさえも上回る人的資源、そしてそれらを情け容赦なく戦争へと駆りたてるスターリンAIを備えており、放置しておくとろくなことにはならない。

総統:史実では私の命取りになったのが、このソ連との戦いだな。
エヴァ:ユーゴスラビアやギリシアに行って時期が遅れたのがまずかったのかしら? それとも、途中で南方旋回したのが?
総統:実はどっちもあまり関係ない。最近の研究では開戦時期が早くなろうが、モスクワを攻めていようが、やはりドイツは勝てなかっただろうと考えられている。
エヴァ:日本のミッドウェイの戦いみたいなものね。それならどうするの?
総統:まずは地図を見てくれ。

独ソ戦戦略目標

総統:当座の占領目標として、ソ連の中核都市がある。
エヴァ:首都であるモスクワ、古都であるレニングラード、南方のキエフにスターリングラード。いずれも史実における激戦地ね。
総統:これらの都市の確保が最初の目標となる。しかし、本当の目的はそうじゃない。
エヴァ:じゃあ何なの?
総統:ナポレオンと一緒さ。敵野戦軍の撃破。ソ連に勝つには、とにかく敵の戦力を削って削って削りまくる。このレポートを読んでごらん。
エヴァ:諜報部が調べた、ソ連軍の戦力ね。歩兵174師団、騎兵17師団、自動車化歩兵38師団、戦車&軽戦車16師団、山岳歩兵11師団、司令部ユニット6……こっちの倍近いわよ。
総統:しかも戦争がはじまるとどんどん増える。戦争しなくても増える。
エヴァ:手に負えないわよねー。なんか、こう、分裂増殖するアメーバーと戦っているみたいで。
総統:だが、キミのおかげで我々には史実よりも豊富な機械化軍団がある。これが我々のアドバンテージだ。
エヴァ:ほえ?

 1941年3月、ドイツはソ連に宣戦布告。独ソ戦がスタートする。
 ドイツ軍は独ソ国境に100個師団を集中していた。主力は装甲師団12個(4個装甲軍団)と、自動車化歩兵師団48個である。
 2個の司令部ユニットに率いられ、集中して投入されたこれらの部隊は易々とソ連軍の戦線を突破して後方に回り込んだ。
 そして、ソ連軍が対応できないでいるうちにこれを包囲、殲滅していったのである。

包囲殲滅

エヴァ:へぇ、意外とやるじゃない。
総統:ふふふ。史実では「電撃的に戦って冬までに勝利する」つもりでやって失敗したからね。今回は最低でもアルハンゲリスク=アストラハンのAAラインまでは行くつもりさ。2年でも3年でも続けようじゃないか。

 戦略目標のうち、年内に制圧できたのはキエフとレニングラードの2都市だけであるが、もうひとつの狙いであるソビエト野戦軍の殲滅は順調にすすんだ。
 12月末の時点で、ソ連軍は開戦前と比べて次のように数を減らしていた。

ソ連軍の被害
師団の種類3月12月
歩兵師団174123
自動車化歩兵師団3811
戦車師団16
騎兵師団1714
山岳歩兵師団11

 もちろん、大損害を受けつつもソ連の生産ラインもフル稼働している。モスクワのあるヨーロッパ・ロシアのあたりは占領されるのも覚悟の上だ。

 東に疎開した工場施設では戦車師団(BT戦車。T-34/76は開発中)を5個、自動車化歩兵師団を2個、歩兵師団を4個、騎兵師団を2個、そして高価な司令部ユニットを4個並列で生産していた。これに加えて空軍の迎撃戦闘機1、戦術爆撃機2、襲撃機(ドイツにストゥーカあればソ連にシュトルモビクありと言われる名機)3飛行隊も編成中だ。とにかく、これらが生産される端から包囲して殲滅していくしかドイツには道は残されていないのだ。

総統:な、なんだか「血を吐きながら続ける悲しいマラソン」(byモロボシ・ダン)な気分になってきたぞ?
エヴァ:ウルトラセブンは悲観主義者よ。こっちが血を吐くなら、あっちには血反吐を吐いてもらえばいいだけ!最後まで諦めない者が勝利者になるのよ!!


●1942年:バトル・オブ・ドーバー

 ドイツ軍の敵は東のソ連だけではない。
 西には老いたりとはいえ大英帝国があり、大西洋のはるか向こうには巨人、アメリカ合衆国が控えている。

総統:地続きのソ連と比べると海が間にあるだけマシだけどね。
エヴァ:逆に言うと、海に面している所はどこであってもつながってるわけよね?
総統:イヤな事を言うなぁ……
エヴァ:何を言ってるのよ。あなただって、林子平の『海国兵談』ぐらい知ってるでしょう?
総統:いや、それってドイツ人が知るはずもないだろ。つうか、日本人だって普通知らない。

 林子平は江戸時代の軍学者で、海防の重要性を次の言葉で訴えた。
「江戸の日本橋より唐、オランダまで、境なしの水路也」
 慧眼と言うべきであろう。

総統:とりあえず1941年末の時点での海軍戦力を比較してみようか。
各国海軍力
空母戦艦補助艦艇潜水艦
ドイツ28
イギリス115410
アメリカ106815
日本108311
イタリア44

エヴァ:あからさまに不利ね。っていうかU-boat以外の海軍艦艇を生産しなかったのはともかく、初期配置のヤツも消えてる気がするんだけど?
総統:41年夏頃にアメリカ海軍がバルト海まで入ってきてぼこぼこにされた。
エヴァ:そこまでするの?!
総統:うちが弱いからだよ。
エヴァ:ともあれ、放置しておくとろくなことにはならないわね。誰か、デーニッツ提督を呼んで来て!
デーニッツ提督:それには及ばないでござる、ニンニン。
総統:ど、どっから湧いて出たっ?!
デーニッツ提督:隠れて不意打ちは潜水艦の得意技でござるよ、ニンニン。
エヴァ:さすが海の忍者ね、頼もしいわ。お前に頼みがあるの。ドーバー海峡に潜んで、ドイツに近づく敵艦隊を沈めてまわって。
デーニッツ提督:お任せください!――と言いたいところでござるが、できれば手助けが欲しいでござる。
総統:追加の潜水艦ならないぞ? 今はソ連との戦いで手一杯だからな。
デーニッツ提督:船ではござらん、戦闘機でござる、ニンニン。
エヴァ:……つまり、制空権が欲しい?
デーニッツ提督:はい。潜水艦の天敵は航空機でござる。逆に言えば空からの攻撃さえなければ我らドイツ海狼忍軍は無敵でござる、ニンニン。
エヴァ:いいでしょう。期待しているわよ。

 こうして出撃したドイツ海狼忍軍はこの年の終わりまでにイギリスの戦艦6隻、空母5隻をはじめ多数の艦艇を沈めまくった。
 だが、それでもイギリス海軍は新造の艦を加えて空母9隻、戦艦11隻を保有していた。

総統:うーむ。どう考えてもこれは現状維持が精一杯だなぁ。
エヴァ:でしょうね。潜水艦はあくまで待ち伏せと不意打ちで戦うから。機動力のある水上艦隊に止めを刺すには難しいわ。

 U-BOATだけでは勝利を掴めぬと知ったドイツでは、翌年、新たな戦力の投入を決意するのである。

●1942年:青の場合

 レニングラードを制圧したドイツ軍は1942年の夏にはモスクワを占領。スターリンは自らの名前を冠するスターリングラードへと撤退した。

総統:ええい、やはりモスクワを落としたぐらいではびくともせんか。
エヴァ:あら、これは想定内なのじゃなくて?
総統:想定内だけど少しは期待してた。しゃあない、次の目標行こうか。
エヴァ:スターリングラードね。
総統:それとバクー油田だ。

ブラウ作戦

総統:おお? なんかソ連軍の密度が低くなっているぞ?
エヴァ:ひたすら包囲殲滅を繰り返したものね。

ソ連軍の陸軍戦力
師団の種類41年12月42年11月
歩兵師団12338
自動車化歩兵師団11
戦車師団
騎兵師団1410
山岳歩兵師団


総統:おお! 減ってる!
エヴァ:主戦力である歩兵師団の減少が著しいわね。これなら、これ以上戦力を増強しなくてもいけるのではなくて?
総統:いやいや、戦線が広がっている分だけ、戦力の増強は不可欠だよ。ここで手を抜くと後で痛い目にあうよ。
エヴァ:それもそうね。

 こうして独ソ戦開始より2年でドイツ軍は初期目標であるモスクワ、レニングラード、キエフ、スターリングラードを制圧する事に成功する。
 だが、スターリンはさらに逃走を続け、世界中を巻き込んだ戦争はいまだ終わる気配すらなかった。


●1943〜4年:ゼーアドラー

 スターリングラードやバクー油田まで奪われてもなおも戦い続けるソ連とスターリン。ドイツ軍の主力はドイツ本国から遠く東方にあって、西方はほとんど空っぽも同然である。一朝事があっても、本国に戻るには2ヶ月はかかる計算である。

総統:ここでイギリスやアメリカがノルマンディ作戦なんかやろうものならたちまちベルリンまで落ちるな。
エヴァ:なら、英国の海軍力を削る必要があるわ。
総統:ああ。そのための海鷲(ゼーアドラー)がこれだ!
Fw2000コンドルフォッケウルフFw2000コンドル
総統:史実の第二次世界大戦においてはチャーチルから「疫病神」とまで呼ばれた攻撃機だ。U-BOATの活躍の影にも、この機体の洋上哨戒があった。
エヴァ:……うーん。
総統:どうしたんだい、エヴァ? この機体に何か問題でも。
エヴァ:この機体については問題ないんだけど……なんかさっきから、忘れているような気がしてるのよ。

 エヴァの不安をよそに、北海へと繰りだしたFw2000コンドルは大活躍であった。
ゼーアドラーの活躍
 前年のバトル・オブ・ドーバー(ドーバー海峡の戦い)の結果、イギリス空軍は洋上に釣り出されて壊滅しており、ゼーアドラー隊は思う存分に暴れまくった。
 8個飛行隊のゼーアドラーによって、イギリス海軍は壊滅的打撃を受けたのである。

各国海軍力(19421944
空母戦艦補助艦艇潜水艦
ドイツ2832
イギリス11541510
アメリカ10685815102
日本10838511
イタリア4436

 アメリカ海軍も大打撃を被っているが、これは主に太平洋戦線における日本軍の戦果である。後、どういうわけかヴィシー・フランス海軍もアメリカの戦艦3隻を沈める殊勲をあげた。
 1942〜44年の2年間にわたる海空戦によって、大英帝国の誇る海軍力はほぼ壊滅に等しい打撃を受け、ドイツは西方を気にせずに対ソ戦に専念ができたのである。

●1943〜4年:ウラル戦線異状なし

総統:……
エヴァ:どうしたの、アドルフ?
総統:いや、そのね。我がドイツ軍の精鋭はついにカスピ海まで到達したわけだが。
エヴァ:キャビアが食べられるわね。
総統:私は酒は飲まない。とまれ、史実における攻勢限界ははるかに突破している。
エヴァ:史実ではスターリングラードから敗走している頃ね。
総統:ここで、次の目標を決めなければいけない。地図を見てくれ。

広大なロシア

エヴァ:うわー……すごいわねー。
総統:最大縮尺のマップでこれだ。シベリアはさらに東にある。
エヴァ:え? ソビエトのIC(生産力=工場の数)って、まだ203もあるのっ?!
総統:あるんだ、これが。工場が中央アジアのへんまで疎開しているからね。
エヴァ:じゃあ、そこまで行きましょ。
総統:行きましょって……そんな簡単に。
エヴァ:赤軍の戦力はガタガタなんだから、後は平押しに押していけばいいじゃない。
総統:そりゃそうだけどね。この先は道路(インフラ)も悪いし、補給も届きにくい。
エヴァ:諦めちゃダメよ、アドルフ。とにかく前進、前進、前進あるのみなんだから!

 かくしてドイツ軍は、進撃を再開した。中央アジアへ、そしてシベリアへ。ウラル山脈を踏み越えツンドラ地帯を踏破して、ただひたすら東へと向かったのである。


●1944〜5年:ツンドラを踏み越えて

 ソ連軍に、もはや昔日の勢いはなかった。
 ドイツ軍の敵は、茫漠とした広大な大地そのものである。

総統:新しい装甲軍団が編成されたぞ。移動を開始……うわ、到着まで半年かかる。
エヴァ:戦略移動を使ったら?
総統:それでも2ヶ月はかかるしな。なんといっても、輸送コストがもう真っ赤だ。
エヴァ:なら今さら気にしてもしようがないじゃない。
総統:そうなんだがね……けど人的資源も乏しくなってきたし、そろそろ新規部隊の編成は止めるか。
エヴァ:大丈夫なの?
総統:大丈夫だって。戦力にこれだけ差がつけば、我が軍がソ連軍に負けることはありえないよ。
ゲーリング:総統〜っ!
総統:おう、どうした空軍元帥。
ゲーリング:我が空軍12飛行隊がパルチザンの攻撃で壊滅しましたーっ!
総統:なんだとぉっ?!
エヴァ:あちゃー。

パルチザンの脅威

総統:ううん、大損害だ……アラド234の1個飛行隊はパンサー戦車1個師団に相当するのに。
エヴァ:つまり戦車12個師団壊滅?
総統:しょんぼり。
エヴァ:いいじゃない。シベリアの奥地では飛行場もあまりないし、使い勝手はそんなにはよくない……アラド234?
総統:どうかしたかね?
エヴァ:いえ、ちょっと気になったんだけど。我が機械帝国って、装備はきちんと更新してるのよね?
総統:うん。何しろ史実では戦争末期だからね。装備はすごいぞ。パンサー戦車に、ジェット戦闘機だ!
エヴァ:最近やけに石油の消費量が増えていると思ったら原因はそれか。
総統:どうかしたかね、エヴァ?
エヴァ:ねえアドルフ……このままだと私達、負けるわよ?


●1945年:仕切り直し

総統:やれやれ。
エヴァ:どう? スターリンは言うことを聞きそう?
総統:苦労したがね。とりあえず名前を変えて幾ばくかの金を渡してこっそり中立国――デンマークに送り込むことで同意させた。
エヴァ:長かったわねー。これでソ連も終わりか。
ソ連滅亡

総統:ところでエヴァ、今日は、その……
エヴァ:どうしたの?
総統:ほら、戦争は終わってないけど……ソ連を併合したらいわばまぁ、一区切りついたと言えるわけで。
エヴァ:石油をなんとかしないと後2年で戦車も飛行機も動かなくなっちゃうけどね。
総統:いやそれはそうなんだが、史実では私達は今日、その、なんだ。
エヴァ:イギリスもアメリカも戦争やめる気ないんでしょ? アメリカ大統領は……チャールズ・マクナリー? 誰よこれ。
総統:ええっと、ほら、前の選挙でルーズベルトが負けたから……。ああいや、そうじゃなくて、これからの事なんだが。
エヴァ:そうね。これからどうするの? 旧ソ連領からだとアフガニスタンあたりに宣戦布告すればインドに行けるわよ?
総統:う……
エヴァ:ごめん。ちょっと意地悪だったかな?
総統:いや。確かに史実の私達のようにもう未来がないわけじゃないしな。焦ることはないか。
エヴァ:ふふ。愛してるわ、アドルフ。
総統:私もだよ。

 1945年4月30日。
 ソビエト連邦は無条件降伏し、その領土はドイツと日本によって併合された。
 しかしイギリスとアメリカは健在で、戦争をやめる気はさらさらない。
 その上、今や資源大国となったドイツ唯一のアキレス腱――石油の問題が残っていた。
 はたして総統はこの混沌とした第二次世界大戦に終止符を打てるのか?!


●1945〜6年:バミューダ・トライアングル

 ソ連に勝利したドイツ軍は、海軍戦力を増強しはじめた。
 といっても、戦艦や空母を建造したわけではない。ヨーロッパからアジアにまたがる広大な帝国を築き上げたドイツにとっても、戦艦や空母の建造は荷が重すぎる。

総統:ビスマルクもティルピッツもグラーフ・ツェッペリンもなにひとつ作らなかったからなぁ。
エヴァ:作ったのはUボートだけだものね。
総統:それにぶっちゃけると、戦艦や空母の建造は時間がかかりすぎる。

 ドイツが量産を開始したのはニュルンベルク級軽巡洋艦である。これなら5ヶ月で完成するし、同時に6隻を並行して建造できる。

総統:イギリスにもアメリカにも、戦艦や空母は数えるほどしか残っていない。巡洋艦が護衛ならば駆逐艦にも潜水艦にも対応できるしな。
エヴァ:で、どこへ行くのよ? やっぱりイギリス本土上陸?
総統:石油が足りない。大事に節約してもどんどん減る。まして海軍と空軍を動かせば消費量はうなぎのぼりだ。
エヴァ:じゃあ、アラビア?
総統:4このゲームの時代だと、アラブの石油採掘は軌道に乗っていない。ないよりはマシだが、我がドイツはバクー油田を手にしていてすら、油が足りないからなぁ。
エヴァ:じゃあ……ここ?
総統:そこ。

 ヨーロッパどころかユーラシアの覇者となったドイツがポルトガルと同盟を結んだという知らせは特に驚くほどのことではなかった。隣のスペインが1940年にフランスの背後をぶっすり刺した時から数えてもすでに5年の歳月が流れている。

 大西洋に浮かぶポルトガル領であるアゾレス諸島に再建なったドイツ艦隊が集結したのはその直後であった。
 ここで補給を整えたドイツ艦隊はさらに西へと向かい――

バミューダ島侵攻

 イギリス領バミューダ島を制圧したのである。
 バミューダ島にはすぐさま戦闘機航空隊と海軍航空隊が派遣されて空の守りを固めた。Uボートもここを拠点にアメリカ東海岸を荒らしまくる。
 すでにアメリカからの物資なくしては国が立ちゆかなくなっていたイギリス本土にとっては致命的な打撃だった。
 バミューダ島を中心とするエリアはドイツ海軍航空隊、Uボート、そして通商破壊に投入された巡洋艦の三者による魔の海域となり、連合軍の艦艇はことごとく沈められたのである。

●1946年:油田を制する者

 ドイツによる大西洋通商破壊作戦。
 だが、これは作戦の第一段階に過ぎなかった。
 バミューダ島を足がかりに、ドイツ軍はついに新大陸へと足を伸ばした。
 しかしそれは、大方の予想のようにアメリカ合衆国本土への攻撃ではなく――

南米侵攻

総統:やれやれ。
エヴァ:お疲れ様、アドルフ。
総統:なんとか石油の自給自足はできそうだよ。いや、大西洋を越えて運ばなくちゃならないから大変ではあるけどね。
エヴァ:ついでにパナマ運河も押さえたし、これで太平洋側にも乗り込めるわね。
総統:いずれにせよ、これで負けはなくなったよ。旧ソ連のバクー油田とベネズエラ油田をドイツが、東南アジアの油田地帯は同盟国の日本が押さえた。
エヴァ:この時代の世界でいえば、残る大規模油田はテキサスの油田地帯だけね。
総統:ま、そこまで攻める必要はないだろうよ。もはや大西洋はドイツ、太平洋は日本が支配している。イギリスとアメリカも今度こそ和を請うはずだ。ようやく平和到来というわけさ。
エヴァ:……アドルフ。
総統:なんだい?
エヴァ:……なんでもないわ。

 黙りこくるエヴァと、それを不思議そうにながめるヒトラー。
 ベルリンに鳴り響く除夜の鐘。(がら〜んごろ〜ん)
 こうして、ドイツは最後の1年を。
 1947年を迎えたのである。


●1947年:平和への努力

 ソ連を降し、はるか大西洋をこえてベネズエラの石油も手に入れたドイツ。
 この時代はまだ本格的に採掘されていないアラブの油田も、必要であれば力ずくで奪うことができる。
 エネルギーを制するものが、世界を制する。
 この時点でドイツの敗北はもはやありえなかった。

総統:それでは講和を試みるよ。
エヴァ:……

 だが、連合国はただの1国もドイツとの講和を認めようとはしなかった。
 それどころか、ドイツが南米に上陸した事で危機感を抱いたブラジルが、ドイツに宣戦布告する。
 アマゾンの大ジャングルを南下し、アンデス山脈を乗り越えるドイツ装甲師団。
 なかなかにシュールな光景である。

総統:シュールなのはいいが、これはいったいどういう事だ?
エヴァ:ねえアドルフ、気づいてないの?
総統:何をだね?
エヴァ:好戦性のパラメタよ。

好戦性

総統:好戦性が300?! しかもこれは私のせいなのか?
エヴァ:ゲーム上の設定よ。このゲームは、ドイツが戦争をはじめないと成り立たない。ドイツが侵略してはじめて、第二次世界大戦というゲームが動き出す。
総統:なんてこった……。これでは戦争を終わらせる事はできない。
エヴァ:別にいいじゃないアドルフ。ドイツは、あなたは事実上、この戦争に勝利したのだし。
総統:だが、私は戦争のために戦争を欲したつもりはないよ。この世界を覆った戦争すべてが私が原因というのならば、いいだろう。私が決着をつければすむ事なのだな。
エヴァ:まさかあなた……
総統:私が政権を手放せばいい。世界中で戦争犯罪人として追われる身だからどこかに隠れる必要はあるが。なに、北欧かどこかの一軒家でひがな一日絵を描くのもいいだろう。
エヴァ:馬鹿な事を言わないでアドルフ!
総統:しかし他に方法がないんだ!
エヴァ:アドルフ。
総統:戦争を終わらせるには、これしかない。平和を取り戻すためであれば、いたしかたない。


●1947年〜∞:鉄の夢、あるいは鉤十字の帝王

エヴァ:……終わらせなくても、いいわ。
総統:え?
エヴァ:終わらせる必要なんかないわ。世界のすべてがあなたを敵だと言っても、私はあなたの味方よ。あなたがいれば戦争が終わらないというのなら、それを私が認めてあげる。その世界を含めて、あなたを愛してあげる。
総統:……それで、いいのだろうか? このような地獄のような世界で、いいのだろうか?
エヴァ:北欧神話のヴァルハラだって、同じよ。死んだ英雄達はヴァルハラにおいて永遠の戦いを続ける。神々の黄昏が来るその日まで。ヴァルハラが天国だというのならば、ここが、この世界こそが、天国に一番近いのよ。
総統:そして君は英雄をヴァルハラへ連れて行く戦乙女(ヴァルキューレ)か?
エヴァ:ええ。ヴァルハラへようこそ、アドルフ。
総統:やれやれ。となると、まずは――世界のすべてを、ヴァルハラに招待しないとな。

永遠の戦いへ

 その日、北欧で、南米で、中東で。
 いっこうに終わらぬ戦争にまだ中立を保っていたすべての国へ。
 ドイツと枢軸国からの宣戦布告がなされた。
 すべての人間が、地球上のすべてが、世界大戦に突入したのである。

目標ワシントンD.C.

総統:それでははじめようか。狂気に満ちた世界の中でもとびっきりの狂気を。
エヴァ:永遠の戦いと、永遠の宴を。

 ヒトラーが発射ボタンを押す。
 数千の戦略ロケットが閃光と轟音をあげてはるか天空へと駆け上がっていく。

【完】

 作成者:銅 大(アカガネ ダイ)