Fate/stay nightで学ぶ世界の戦史
■第三回:戦国時代のルールブレイカー
フェイトの世界戦史シリーズ、第三回は戦国時代よ。
まてキャスター、なぜ古代地中海出身、しかも根っこは神代にあるおぬしが仕切るのだ。戦国時代なら拙者の方が適任だろう。
ふ、そんなコト? 今の私は宗一郎様の妻よ。夫のサポートをするのは妻のつとめ。教師の妻が教え子を導くのも当然というものよ。
すまんな、アサシン。ここはアレの良いようにさせてくれ。
ふむ、おぬしがそう言うのであれば是非もあるまい。裏方に徹するとしよう。
良い心がけねアサシン。さて、とっかかりに何か質問は?
あ、はい。あの、歴史の授業で戦国時代が戦乱の時代だったのは知っています。でも、根本的な疑問があって――当時の人々はなんで戦ったのでしょう?
いい質問ね。確かにそれは当時を理解する上での基本だわ。では、根本の部分から見ていくわね。
●戦国時代の冬木
(坊主)何だコレは? うち(寺領)への田んぼへの用水路が壊されてるじゃないか!
(武家A)あらどうしたの、不景気な顔して。
(坊主)でたな諸悪の根源。この狼藉をはたらいたのは遠坂、お前だな! この水不足の時期に用水路を破壊するとは見下げ果てたやつ!
(武家A)言いがかりはよしてちょうだい。聞くとたくさん恨みを買ってるそうじゃない。だいたいあなたのところ、段別銭(税金)が高すぎるのよ。
(坊主)ええい、うるさい。しらばっくれるのならば今度こそ考えがあるぞ。力に訴えてでも仏罰を与えてくれるからそう思え。
(武家A)へえ、面白いじゃない。弓矢の沙汰ならこちらは本業よ。やりたいっていうなら、相手になってあげても――
(武家B)そこまでです、姉さん。
(武家A)桜? ちょっと、なんであなたが。間桐の家とはずっと手を組んできたはずじゃない。
(武家B)少しやりすぎましたね、姉さん。家柄でいえば、間桐の宗家は鎌倉時代にさかのぼる冬木の領主。新興の遠坂がのびすぎることに不満を抱く人は、意外と多いんですよ?
(武家A)……ふん、傾きかけた間桐の家が、水運や塩田でも利益を出している遠坂と戦うつもり?
(武家B)姉さんらしいですわ。その傲慢な一人勝ちが恨みを買っていることに気づけないなんて。すでにこちらは、守護代様の書き付けもいただいていますのに。
(守護代)凛はちょっと生意気だからこのへんで少し痛い目を見るといいのよ。
(武家A)うわ、こらちょっとイリヤ! 何偉そうな顔してんのよ!
(武家B)どうします、姉さん。守護代様の書き付けがあれば、このあたりの土豪はこぞってこちらにつきますわよ。
(武家A)く……わかったわよ。どこの利権が欲しいわけ?
(武家B)そうですね。まずは、柳洞寺から奪った田んぼを返してあげてください。それと津領(港湾使用料)については、守護代様のものですからそちらに納めるのがスジというものでしょう。
(武家A)ぐぐぐぐ……。仕方がないわね。くー、覚えてらっしゃい。
(武家B)それと先輩の……いえ、衛宮の刀鍛治については、格式からいっても間桐の預かりになるところです。刀の奉納その他は、これよりこちらで管理いたします。
(武家A)それが狙いかーっ! ちょっと桜、いくらなんでもあざとすぎるわよ。わかったわ。そこまで言うなら弓矢で来なさい。こっちも馳走してあげるから。
(武家B)……可哀想な姉さん。どうやら痛い目を見ないとわからないんですね。
まあ、こんな感じね。小さいところでは集落レベルから、大きいところでは国レベルで。互いの利益(シノギ)を調整する方法として戦いが選ばれたのが戦国時代なのよ。
話し合いの次が戦闘か。いくらなんでも極端すぎるな。まるでヤクザの縄張り争いじゃないか。
その通りよ、衛宮士郎。警察力と裁判制度を兼ねるのは幕府と朝廷の仕事だけど、応仁の乱でその両方が衰退した結果、権威は残っても強制力はほとんどなくなったわ。
ヤクザの大親分=幕府がお家騒動で力を失ったせいで、日本中で仁義なき戦いがスタートしたというわけか。
各地方の管理者は、守護と呼ばれる武士が担当していたのですよね? さっきイリヤさんが演じられていた守護代とはなんですか?
イリヤ:守護の代理よ。守護は京都で国家運営の仕事があるから、実際に領地の管理をするのは守護代ってわけ。
守護の力が衰えていくにつれ、実務を担当して直接利益(アガリ)を得ている守護代がしだいに強くなったのよ。まあ、その守護代も実務を分担して代官にやらせているうちに貴族化して実権を失ったりもするわけだけど。
その逆転が下克上ということか。ま、足下すくおうってヤツはどこにでもいるわけだし。隙を見せる方が悪いわね。
とっても姉さんらしい意見ですね。……だから寝首をかかれるわけですけど。
けど、そんな無法が通るようでは安心して暮らせないだろ。
そうね。応仁の乱という『破戒すべき全ての符』(ルールブレイカー)によって幕を開けた戦国時代は、地方単位でルールが再編されていくわ。武力と司法を兼ね備えた存在――戦国大名によって。
そして、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康が最後にヤクザの大親分になって戦国時代(仁義なき戦い)を終わらせたわけか。
そうね。でもそのためにそれまで権威の象徴であった室町幕府を打倒し、平安時代から続いた荘園制度を消滅させる、最大のルール破壊が必要であったのはなんとも皮肉なことだわ。
第4回 長篠合戦絵巻(予定)
作成者:銅 大(アカガネ ダイ)
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