RPGで情報収集や戦術を活用するには


1.なぜ情報収集や戦術が軽視されるのか?

 あるとき、シャドウランをプレイされた古株のゲーマーさんから、このよう
な報告がなされました。

 曰く──

「戦闘でまともな作戦や戦術を使わず、格下のNPCに撃退されるシャドウラ
ンナーがいる」

「敵の奇襲を警戒した行動を取ると、他のプレイヤーからイヤがられた」

 ──というものです。

 確かに、情報収集や戦術を軽視するプレイヤーはいます。
 マスターでさえ、そうした行動を嫌がることがあります。

 で、その原因をちょいと考えてみました。

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『この大きな部屋は、どう見ても兵舎だ。簡素な寝台に藁を積んだものが1ダ
ース近くあり、オークの替えの服や武器が転がっている。寝室用のトイレが並
んだ、かなり不快な光景が見える。部屋の南西の隅にはテーブルがあって、そ
の上には小さな箱があるようだ!
 ただし宝物に手を触れるには、まず部屋を占めているオークの連中を倒す必
要があるだろう!』

         (D&Dのシナリオ『キングズ・フェスティバル』より)

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 引用した上の文章を読んでみてください。TSRのシナリオではよくある形
式ですが、部屋の描写から始まり、宝物の存在なんかを話ておいて、最後にそ
こに存在する障害(敵など)について触れています。
 劇的ですね。「うひゃぁ〜」とかいうプレイヤーの声が聞こえてきそうです。

 ダンジョン探検型のシナリオでは、このように『この先何が待ち受けている
のだろう、ワクワク』というプレイヤーの希望を満たすための演出が多くされ
ています。

 向こうに何があるのか分からず、
 敵の総数も、強さも、行動の予定も、何も知らないまま、
 PCはダンジョンの扉を蹴破るわけです。

 シャドウランなんかで、情報収集や戦術が上手にできないプレイヤーさんと
いうのは、ダンジョン探検型シナリオのつもりで行動しているのではないでし
ょうか。

「先の展開というのは見えないものだ」→[情報収集や事前準備の必要はない]

「戦闘のバランスはマスターがとってくれる」→[何も考えずに殴ればいい]

 このように考えるプレイヤーさんに、情報収集の必要性を訴えたり、敵の行
動を阻害する有利さを説いたところで意味はありません。

 情報収集でネタがばれてしまうと、面白さが薄れてしまいます。

 敵の行動を阻害しようがしまいが、必ずクライマックスではボス敵が登場し
て、激しい戦いの末にPCが勝利することになっているのです。

 同様に、ダンジョン探検型シナリオのつもりで準備をしているマスターさん
に対し、依頼人のウラをとったり、誘拐されそうなヒロインに完璧な護衛をす
るのは(マスターに対し)失礼な行為になります。

 依頼人の隠された目的はできるだけ盛り上がる時に明かされるように準備さ
れていますし、ヒロインは必ず誘拐されなくてはいけないのです!!

 面白いのは、D&DでTSRのモジュールなんかを遊んできたプレイヤーは、
こうした考え方をしない傾向にある、という点でしょうか。
 何しろ、出てくる敵やトラップとまともに渡り合っていたのでは、hpが幾
つあっても足りないようなシナリオばかり。マスターをだまくらかし、モンス
ターを捕らえて拷問してでも、ダンジョン内部の情報を手に入れなくてはなら
なかったのです。

 では、そろそろ結論を述べましょう。(こーゆー結論を最後にもってくる論
理展開が、実はダンジョン探検型なわけですね)

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 1)情報収集や戦術を軽視するプレイヤーは、情報収集を行ったり、
  戦術を組み立てたりする行動が、正しく評価されない/害を及ぼすシ
  ナリオばかり、これまでプレイしてきている可能性がある。

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 2)マスター側も、ストーリーをドラマティックにするために、わざと
  情報を隠したり、PCの作戦に合わせて敵を強化したりして、情報収
  集や戦術の効果がなくなるシナリオやマスタリングをしている可能性
  がある。しかも、マスター側はこれを善意でやっている。

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 3)1)のプレイヤーに、情報収集や戦術の大事さを訴えたり、2)の
  マスターの元で情報収集や戦術を駆使したとしても、互いの認識のズ
  レから、ちぐはぐな結果に終わる。

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 トラブルを事前に防ぐには、やはりマスターとプレイヤーの間で、事前の確
認が必要と思われます。

 とはいえ、プレイヤーの側で──

「あなたのマスタリングでは、私たちが正面から何も考えずに殴りあって勝て
る程度の敵しか登場させませんか?」

──と聞くわけにはいかないでしょう。

 やはり、マスターの側のシナリオ紹介&プレイヤー募集で──

「戦闘は手を抜きません。PCが全滅することも充分ありえます。とりあえず
戦ってみる、という感覚では勝利はおぼつきません」

「ドラマ性やキャラクター間の精神的な葛藤をメインにおいたマスタリングを
心がけます。戦術やいわゆる『有利な行動』にはあまり気を配らなくてもけっ
こうです」

──とするのが一番と思われます。


2.戦闘のバランスはプレイヤーが取るべし

 では、情報収集や戦術に慣れていないプレイヤーに、そうした素養を身につ
けてもらうにはどうすれば良いのでしょう?

 そのためには、まず発想の転換が必要です。

「PCの数は4人で、戦闘系が2人か。よし、敵は小鬼を5匹ほどにしよう」

 ゲームマスターをしていて、上のように考える人は多いはずです。

『PCの戦力に合わせ、PCが勝てるように敵を用意する』

 この原則を守っていれば、確かにセッションはスムーズに進行するでしょう。
 ですが、そのことがプレイヤーに良くない先入観を与えてはいないでしょう
か? 
 たとえば「RPGの戦闘というものは、工夫しなくても勝てるものだ」とか。

 もしそうなら、良くない傾向と言わざるをえません。勝利が約束された戦い
には、死の恐怖からくるストレスも、勝利による高揚も感じられないからです。

 いやもちろん。

私だってウィッチ・クェストでAK47を構えて匍匐前進をする
13才の魔女
を見たいなどと考えてはおりません。ここで問題としているの
は、戦闘がもたらす興奮がシステムに組み込まれたD&Dやソードワールド、
アースドーン、エルジェネシス、シャドウランなどのゲームについての話です。
考えてもみてください。これらのゲームで『勝利が約束された戦い』がいかに
味気ないものかを。

 そこで、私は次のマスタリング手法を提唱したいと思います。

 《 戦闘のバランスは、プレイヤーが取る 》

 たとえ、最終的には勝利するにせよ、マスターによってお膳立てされた勝利
と、自らの手で掴みとった勝利とでは、その価値に雲泥の差があるからです。
 では、具体的にどうするべきでしょうか。

「まじめに戦わないと死ぬよ。手加減せぇへんからね」

 などとマスターが言ったところで、先入観を抱いているプレイヤーには無意
味です。彼らはそれを単なるマスターの脅しとしか考えません。
 そうでないにしても、戦術的な知識や判断力は、一朝一夕で身につくもので
はありません。
 まずは認識を変えるところから始めましょう。

STEP1:情報公開制度

 実際の戦闘の前に、何らかの形で敵の戦力をPCに公開します。
 まともに戦っては勝てない/被害が大きいということを認識させるのです。

[アースドーンのプレイにて]
NPC「お...おれはもうダメだ。仇を..とってくれ」
PC 「しっかりしろ! 誰にやられたんだ!」
NPC「オークの重装歩兵だ。2個分隊(16人)いた。アデプトは2人だけ
   だが、残りも[近接戦闘]をスキルで持っていやがる。最初のラウンド
   に1個分隊がスピアを投げてきて、1個分隊が歩兵用シールドとブロー
   ドソードを構えて突っ込んできた。装甲点が7点あるんで、なかなかダ
   メージが通りゃしねぇ。しかも、最低4人で1人の敵に向かってきて翻
   弄状態ねらいだ。俺もそれでやられた...(ガク)」

PC 「....」

 彼我の戦力差にプレイヤーが文句をつけるかも知れませんが、気にしてはい
けません。そのうち、彼らにも『タダで敵の情報を得られるというのは、なん
てラッキーなんだ!』ということが分かってきます。

STEP2:判定は公正にそしてオープンに

 敵の情報を公開したら、次に作戦をたてる時間を設けます。おそらく、いろ
いろな意見が噴出することでしょう。逃走、自殺突撃、囮、詭計...なかに
は、どーしよーもない作戦が出て来るかも知れません。いや、出てくるアイデ
ィアのほとんどが、実状に合わないどーしよーもない意見でしょう。
 それでもいいのです。ポイントは『自分で考えること』なのですから。

PC 「よし、作戦は決まった。吟遊詩人が道に迷ったフリをして敵に近づき、
   ムダ話をして時間をつぶしている間に迂回して本陣に突撃だぁ!」

GM 「んでは、吟遊詩人の魅力による交渉テストだ。難易度は、見張りのオ
   ークの社交防御値で...」


 PCのたてた作戦は公正に判定します。良い作戦は、低い難易度の判定で、
悪い作戦は、高い難易度の判定で。ただし、あまり高すぎる難易度の設定は、
プレイヤー側のやる気を削ぎますから、そこそこの難易度の設定を数回繰り返
させる、という方式にするべきでしょう。また、成功/失敗がはっきりしない
判定をのぞいて、ダイス目や難易度をオープンにするのも良い手法です。

PC 「やった! 囮作戦成功!」
GM 「あ〜、それはいいがね。オークたちは君(吟遊詩人)に騙されたこと
   に気がついて怒り狂っているぞ」

PC 「...しまった」

STEP3:終わった後で

 セッションが終わったら、次のステップです。反省会など、セッション後の
お喋りの中で、プレイヤーの反応を確認します。

「残念だった。あそこで、あーしていれば...」
「次回こそは...」

 こういった反応を返してくるプレイヤーであれば、将来は有望です。ゲーム
を上達させるためにもっとも必要な物──チャレンジ精神を持っているプレイ
ヤーだからです。
 逆に、「つまらない」「面倒」「どーでもいい」といった反応が返ってくる
ようでしたら、そのプレイヤーはRPGの戦術や作戦に対して思い入れがない
と考えられます。そういったプレイヤーとは、戦闘以外のところに重点をおい
たRPGシステムで遊ぶのが正しいと思われます。

 いずれにせよ、無理強いはいけません。
 ですが、食わず嫌いもいかがなものかと。

 情報収集や戦術/作戦立案は、はまるとけっこう楽しいものですよ。


 作成者:銅 大(アカガネ ダイ)


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