■本日の妄想:『ガンダムSEED DESTINY外伝:宵待ち月』
大好評(?)のうちに完結(??)したガンダムSEED DESTINYの最終回のその後。
●オープニング
月面を走るトレーラー。枯れ木のようなじじいがヘッドフォンを耳に通信機をいじっていて、ちゃらちゃらした若者がハンドルを握っている。
「どうやら戦闘は終わったみたいだな」
「どっちが勝ったんすか」
「どっちも勝ってないようだが、あえていうならデュランダル議長の敗北のようだな。大砲も要塞もぶっ壊れたらしい」
「またぐだぐだが続くんですかね」
「だろうな――おい、ちょっと止まれ」
「ほえ?」
じじいが通信機をいじる。
「会話を拾った。こいつは宇宙服の近距離通信だな。近くに遭難したやつがいるぞ」
「撃墜された艦かモビルスーツなんじゃないすか? 危ないっすよ」
「だとしてもほっとくわけにもいくまい」
やがて、大破した2機のモビルスーツが見えてくる。インパルスと、デスティニーである。
●1章
月面都市の整備工場のじじいに拾われたシンとルナは、そのままそこで生活をはじめる。
だが、シンはすっかり腑抜けな状態になっていた。
一日中、部屋に閉じこもってぶつぶつと呟くだけ。
ルナはじじいを手伝って仕事をしながら、そんなシンをかいがいしく世話をする。
●2章
地球圏の混乱はまだ続いていた。
連合とそれを裏から操るブルーコスモスの影響力が失われたからといって。
プラントとデスティニープランを推し進めるデュランダル議長の指導力が失われたからといって。
そこに産まれた空白がそれまでどこにも存在しなかった「良きもの」で満たされるはずはないのだ。
月面都市群も、その例外ではなかった。
幾つもの紛争や戦乱が発生し、治安が悪化していく。
そんな中で外出したルナが酔っぱらった兵士の集団に襲われる。
●3章
ステラに導かれるようにして部屋を出たシンは、ルナを助けるために兵士へ立ち向かう。
シンは最初こそ優勢であったが、やがて囲まれてぼこぼこにされてしまう。
それを助けてくれたのは修理工場のじじいだった。
じじいは己の強さ弱さは、ケンカの勝敗には関係ないと言う。
弱くても勝つ方法はある。
強さのみを求め、その強さを打ち砕かれた時に何もできなかった少年は、その言葉に何かを掴めたような気がした。
●4章
仕事でルナが月面都市を出てルナチタニウム鉱山に行く。
だが、運悪くその鉱山の利権を巡る戦いが発生する。
ルナがいる鉱山の飯場が戦いに巻き込まれて空気供給システムが機能停止。
このままでは後6時間で酸素がなくなり、ルナ達の命は失われる。
しかし鉱山とその採掘施設さえ無事ならかまわない両軍は、そのまま戦闘を継続する。
「どうするんだ坊主?」
「ルナを助ける」
じじいは修理工場の奥へとシンを連れて行く。そこには修理された少年の愛機、デスティニーガンダムがあった。
●5章
デスティニーガンダムが自分の機体よりも大きなロケットブースター、酸素と灯油(ケロシン)を燃料とする旧式の化学ロケットを背負っている。
「出力……定格の20%」
「稼働時間……全力で220秒」
「頭部機関砲、残弾800発。ビーム砲、ビームライフル、全て破損。掌底ビーム砲、使用不可。機動防楯、展開不能。……使えそうなのはビームブーメランだけか」
シンが出撃前のチェックをする。コンソールパネルはいたるところでエラーや異常を示す赤いランプが点灯している。
「お互いぼろぼろだな、デスティニー」
これから自分が戦うオーブ製や連合製のモビルスーツの方が、このスクラップも同然のデスティニーよりはよほど強いだろう。それを操る自分にしたところで、どこまで戦えるのか怪しいものだ。
「お前にはいつもムチャばかりさせてきたな」
戦って勝てば、良い未来が来ると信じていた。
敵を全て倒せば、新しい運命が切り開けると考えていた。
自分が欲しい未来がなんなのか、それすらも分からないままに。
「これが最後だ。だからもう一度だけ力を貸してくれ」
シンは操縦桿を握った。
きしみながら。ふらつきながら。
それでもデスティニーガンダムは1歩を、踏み出した。
(続く!)
■本日の読書:『機動戦士Zガンダム1/2』長谷川祐一(ゼータガンダムエース2号に収録)
ティターンズに捕らえられたアムロ・レイを救出するために、カバラのパイロット、エドガー・エドモンド・スミスは、『ちょっと可変型』ガンダムで出撃するが――という物語。
相変わらずの長谷川節。
今回主役のZガンダム・ハーフは、リ・ガズィの前身のような感じで、航空機形態に変型するため巨大な分厚い盾を持っている。
前半戦、敵基地に突入して戦う場面ではこの巨大な盾を利用して敵の攻撃をことごとく防ぐわ、近づいた敵をこの盾で殴り倒すわ大活躍なのだが、脱出時に墜落する。
「あまり盾を傷つけると飛べなくなると注意はされてたんですけども……何しろコレで飛んでますから」
ダメじゃんか、このモビルスーツ。ギャンの盾よりまだダメ。
そして、このダメで半端物のモビルスーツを主役にもってきて、ダメなりに知恵と度胸で戦わせるところに長谷川祐一さんの真骨頂がある。
まあ、その結果として最後はどうしてもボロボロになるが。そこがイイのである。
■本日の読書:『マンガでわかる小説入門』構成/すがやみつる 作画/横山えいじ
正しくは「マンガでわかる小説家入門」じゃないかと思われる本。
かなりぶっちゃけた具合で、出版社の自転車操業だの、大量に返本された本の山の最後だの、小説家の懐具合というのが出てくる。
本書における最大のファンタジーはただ一点、小説家になりたいという青年の理解の速さである。
私は本書に出てくるのとたいへんよく似た青年を知っているが、彼は3年同じことを言ってもまだ理解してくれない。
『上達するためには書くしかない』という一点をである。
これはプロだろうがアマだろうが同じである。天才でもないかぎり、いいアイディアやキャラや文章が湯水のごとく湧いてでるわけではないのだ。
自分の中にある、書きたいもの。
それを、とにかく形にするのである。傑作も駄作も、形になればこそだ。
だから、私が本書で一番好きなのはp42〜43の次のやりとりである。
かけるん:眼鏡をかけてメイドの姿をした美少女の戦士が、カッコよく大活躍す物語が書きたいんです!
雑家屋:それだけ?
かけるん:はい!
雑家屋:もうちょっとなにかないの? 主人公にはどんな魅力があるのかとか……
かけるん:魅力ですか
かけるん:目が大きくてまつげがバツバツで、バストは102センチのGカップで、まるでサッカーボールかスイカみたいにまん丸で……
かけるん:そのバストで悪人の顔をはさんでボヨヨンボヨヨンと窒息死させる。
雑家屋:ううむ……
かけるん:ダメなんですか?
雑家屋:いや面白いもしれん……少なくともわしはその先を読みたいぞ。
多くの人がこの部分を読んで「こいつ、こんなくだらない事を考えていたんじゃダメだぞ」などとしたり顔で思っているのではないかと思う。
そうではない。この部分こそ、この小説家志望の青年が小説家になるために絶対に必要なものを、誰に教えられることなく持っているという証であるのだ。
■本日の読書:『単位物語』清水義範
身の回りにあるいろいろな単位について、清水義範さんがいつもの軽いのりでほえほえと語るエッセイ。
独特の語り口調はさすがである。
私が特に好きなのは、次のふたつ。
『小間切れ五十匁』
昭和34年のちょい前。
少年はお肉屋さんにお使いに行き、ちょっとばかり誇らしげで力強い声で「牛の小間切れ(牛コマ)五十匁ください」と言うのだった。
まだ日本中のお肉屋で、グラムではなく匁でお肉が売られていた時の話である。
百匁は375グラム。四貫は15キログラムで、これはきっちりそうで、端数は出ないのである。
という部分がいい。
『数えられますか』
落語調のお話。
イカは一杯二杯と数えるという話から、いろいろな物の数え方に話はうつり、最後は英語での数え方になる。そこでポイントとなるのが『それは数えられる物か否か』という点。
バターや水を、重さや容器などで数えるあたりはいいのだが、パンツはpair of pantsで一着のパンツというあたりからおかしなことになる。
そして最後にお金は数えられないから、many moniesではなくてmuch moneyというというところで、八五郎さんが怒る。
「バカ言っちゃいけねえや。どうも話がおかしいと思ったんだ。英語ってのは間違ってるね。お金ですよ。あれほどみんながせっせと数えてるものが、数えられねえとは、冗談にもほどがある。もう英語なんて知らねえや」
おあとがよろしいようで。
■本日の読書:『武装錬金 9』和月伸宏
週刊少年ジャンプから、季刊の赤丸ジャンプへの左遷をくらった本作であるが、こうして9巻を読むかぎりには、むしろそれは良い方へと働いているのではないかと思う。
内容が充実してきているのである。無駄な枝葉を刈り込むことで、このマンガの幹の部分はより成長を遂げたのではないだろうか。
特に、週刊連載の最後の3話は良い。
『大決戦』における大戦士長の武装練金バスターバロンがまんま巨大ロボというのは大笑い。確かに最強だわ。バスターバロンに対抗してヴィクターが巨大化したのにはギャグすれすれのインパクトがあったし、それでいて当事者の大戦士長がすっげークールに「長い戦いになりそうですね……」とさらりと流してしまうのには素直に脱帽。
続く『決断を要す』は物語を畳むための、言うなれば会話だけのお話。マンガではアクションがあるより、こういう設定やらギミック解説やらだけしかない話の方が描くのはたいへん。笑わせたり盛り上げたりと苦心の跡が感じられる。
そして週刊連載最後の『BOY MEETS BATTLE GIRL』は、主人公カズキとヒロイン斗貴子さんが不器用に進めてきた恋物語のひとまずの決着。
この物語の主人公カズキはすごく良くできた少年なのだが、この話でキャプテン・ブラボーが言うように「それでも今はまだ、17才の高校生だ――」なのだ。
カズキの強さは弱さを感じない、いびつな強さではない。
己の弱さを自覚した上で、その弱さに負けない心が本当の意味で彼を強くしているのだ。
だから、斗貴子さんを抱き寄せての
「まだ少し、勇気がたりない」
という告白は、この物語初の、“カズキが他人に甘えた”言葉ではないだろうか。
そしてそれに斗貴子がてれた様子で笑みを浮かべ
「それなら。足りない分は私から補え」
と答える部分は、この、ことあるごとに臓物をぶちまけたがる少女がうちに秘めている情の強さをはじめて年下の恋人に見せた名場面であろう。
そして、季刊誌にうつっての『ファイナル』。
いやもう、文句はありません。
本編では今ひとつな扱いであった再殺部隊にもちゃんと見せ場があるし(負けるけど)、地球にすむ全ての生き物の力をエナジードレインによって我が物とできるヴィクターに対抗するためにカズキがとった決断はさすが前向き前のめり主人公の面目躍如。
生命ひとつない、荒漠たる月の大地の上。
たとえ勝利しても、もはや生きて帰ることかなわぬ孤独な少年にヴィクターは問う。
「その覚悟は一体どこから来るのか」と。
少年は力強く答える。
槍を持ち、月の大地を踏みしめ。
その背に、美しく青き星を負って。
「あの惑星から――」
かくして物語の最後の幕が開く。
続く最終巻前半(後半はパピヨン戦だ)における鍵は、ヴィクターとカズキの決着ではない。
このカズキの決断に、地球に残された彼の仲間や友達がどう答えるかである。
いやまったく、今から楽しみでしょうがない。
■本日の読書:『撲殺天使ドクロちゃん 6』おかゆまさき
ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ〜♪
「ねえ、桜くん。なんだか最近ボクの扱いが悪くなってる気がする」
「なに言ってるのドクロちゃん。扱いが悪いのは僕だってば! 最近は静希ちゃんとのイベントもめっきり減っちゃってるし!」
「それは仕方がないわね。水上さんは使えない人だから」
「南さん! 使えないってどういうこと?!」
「そうだよ。桜くんはいつも静希ちゃんを『使ってる』よー?」
「ナ、ナニヲ言い出すのですか、このアホ天使はっ?! 見たのかっ? 見たんだなっ?!」
「もー、桜くんったらどうしちゃったの? 見たってなんのこと?」
「桜くんのただれた下半身はともかく、静希ちゃん本人の言動は、笑いを誘う役には立たないの。この巻でもそうだけど、静希ちゃん絡みのギャグは本人ではなく、繰り返しギャグや桜くんの妄想を誘発しないと発動しない」
「なるほど。考えてみれば修学旅行の土産物屋の時も静希ちゃん>ドクロちゃんの繰り返しだったよね」
「そっかー、桜くんてただれてるんだ」
「なっ? ドクロちゃん、あなたナニを聞いていたのっ! 2行以上続くセリフは覚えられないとかそういうどこかのアホですかっ!」
「むーっ! どうして桜くんはボクにそんな意地悪を言うのっ! このわからずやーっ!」
どがびしゅっ! ぎゅるぎゅるぎゅる、べちょっ! ぴとん、ぴとん……
「ああっ、桜くんがぐるぐる回ってバター……じゃなくてジャムにっ!」
「そしてドクロちゃんは、締めの役。こうして桜くんを撲殺すれば物語は否が応でも終わりを迎えるから」
ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ〜♪
■本日の読書:『ミリタリー・クラシックス 11号』
『海軍メイドさん事件』などの愉快記事もあるのだが、まあそっちは置いておいて。
興味深かったのは、『金剛型高速戦艦』の特集記事における、インド洋での比叡と霧島の砲撃について。
1942年2月の南雲機動部隊によるインド洋作戦に同行した金剛型戦艦4隻は、開戦以来初の砲撃戦を経験する。
目標はイギリスの駆逐艦エドソール。すでにそれまでの空襲でイギリス艦隊は壊滅し、各艦がばらばらに逃走に入っていたのだが、エドソールは不幸な事に日本艦隊と遭遇してしまったのだ。
むろん、空襲すれば駆逐艦1隻なぞひとひねりなのだが、せっかく戦艦を4隻も一緒に連れてきているのである。金剛型戦艦の比叡、霧島が、巡洋艦の利根と筑摩をお供にしてエドソールを砲撃してみる。
結果はかなり悲惨であった。
比叡が主砲210発、副砲70発。
霧島が主砲87発、副砲62発。
利根と霧島が20サンチ主砲を合計で844発。
駆逐艦1隻相手に撃って撃って撃ちまくって、さすがに見かねた空母から発進した艦上爆撃機の爆撃で足を止めた上でようやく撃沈である。航空参謀であった源田実は、戦後の著書で「エドソールは蒼龍(搭載)機の攻撃で沈没」と記述しているそうだ。
数字だけ見ると、あまりにひどい。これをして、日本海軍の砲撃戦能力は実はけっこう低いんじゃないかと見る向きもあるぐらいである。
もっとも、これは致し方ない部分もあるだろうとは思う。
まず、駆逐艦エドソールにしてみればこれはもう、逃げの一手である。普通、軍艦の運動というのはそれほど自由ではない。たとえば駆逐艦であれば雷撃をするには敵艦と一定の角度で進むとか、そういう動きをする。また、逃げるにしても味方と一緒に艦隊行動をしていればその動きはやはり制限を受ける。
だが、エドソールは自分1隻だけ。この状態で雷撃したところで避けられるだけだし、とにかく相手の裏をかいて動き回って逃げ回り、チャンスを掴んで遁走するしかない。
よってその動きは普通の軍艦の動きとは違ってでたらめになる。よほど接近して撃たないかぎり、未来位置の予測が難しくて当たるものではない。
ところが戦艦側からすると、接近して沈めるのは簡単だが、へたに駆逐艦の反撃をくらおうものなら、赤っ恥である。艦長としてみれば、こんな実弾演習のような戦いで艦を傷つけたり部下を失ったりしては面目が立たない。ましてや、自分達の戦いは艦隊の全員が後ろから物見遊山でながめているのである。
よって、遠距離から気の抜けた砲撃をばかすか撃っていくしかない。ところが当たらない。乗員の頭に血が上る。おかげでよけいに当たらない。
とまあ、こんな感じではなかったのだろうか。
ちなみに、やはりこの号で紹介されているノルウェーはナルヴィクにおけるドイツ駆逐艦隊対イギリス艦隊の死闘では、圧倒的優勢な戦艦ウォースパイト以下のイギリス艦隊が「必要なら体当たりせよ。敵艦斬り込みも許す」などとゆー、むやみやたらと熱い命令を出している。こういう腰の据わり方という点は、やはり歴史の長いイギリス海軍が上と言わざるをえまい。
後、『兵器進化論10:機雷』の野木恵一さんの冒頭の文章が面白い。以下に引用する。
「機雷は嫌い」と言ってしまえば単なる駄洒落だが、実際に機雷ほど嫌われている兵器もないだろう。偵察機や輸送艦といった地味な兵器のマニアもいるが、機雷のマニアとは聞いたことがない。
まず機雷は卑怯で陰険だ。じっと隠れていて、警告もなしにいきなり爆発、船を沈める。華々しい戦闘の末に沈んだのならばともかく、いきなりドッカーンでは船も浮かばれまい。いや、沈没してるんだが。
わははは。なかなか趣きがあってよろしい。
■本日の読書:『双頭の鷲』佐藤賢一
百年戦争中期におけるフランスの英雄、『大元帥』ベルトラン・デュ・デクランを主人公にすえた小説。
とはいっても、日本でこの人物を知っている人はほとんどおるまい。ゲームジャーナル付録の『英仏百年戦争』というゲームで、彼の人物がどの程度の評価を受けているかで紹介してみよう。
ベルトラン・デュ・デクラン 采配:3 武勇:4
これは、戦闘では采配=3ユニットを指揮できるというものである。
指揮ユニットの数、つまりサイコロ3個振って武勇=4以下の出目で1ヒット(敵1ユニット除去)となる。
3ユニット指揮できれば、1回の戦闘で平均して敵を2ユニット吹っ飛ばせる計算になるわけだ。これは強い。
敵となるイギリス側と比較してみよう。
『黒太子』エドワード 采配:4 武勇:3
『鉄人』チャンドス 采配:4 武勇:2
さらに、本書ではデクランのライバルであるブーシュ伯グライーはというとこんな感じだ。
『ブーシュ伯』グライー 采配:4 武勇:3
ちなみにこれらの『黒太子』や『ブーシュ伯』グライーは、このゲームでもほぼ最強クラスの武将である。武勇3はこのふたりをのぞけば、イギリスはスコットランド方面の指揮官『熱い拍車』ヘンリー・パーシーだけである。しかもこの武将は采配が2しかない。
そして他のほとんどの武将は、期待値が1ヒットかそれ以下となる。
こうしてみると、百年戦争でもっとも武勇が高いベルトラン・デュ・デクランという人物のすごさが分かるだろうか。
さて、ゲーム的な分析はさておいて、本書のベルトラン・デュ・デクランというのは実にいい味のキャラクターだ。
戦争が好きで、人におだてられるのが大好きで、学もなければ政治力もない、どちらかというとダメ人間である。
いきなり最初の登場場面がこうだ。
「わりぃ、わりぃ、遅れたな。キンタマかいてて、手が放せなかったんだ」
それは奇妙な顔の男だった。有無をいわさず、人の目という目を引きつけるや、直後に強烈な印象を叩き返す。圧倒されるとは、このことだろうか。なんとも灰汁の強い面構えは、まさしく丸だということができた。
浅黒く焼けた顔は丸く、飛び出した顔も丸く、どっしりとした鼻までが丸く胡座をかいている。白々と頭皮を露にしながら、髪も綺麗な丸刈にして、いやが上にも目立った耳は、これまた休憩する揚羽蝶のようだった。
なお、この描写は小説ならではの誇張もあるだろうが、実際に当時の文献でも絵画でも、ベルトラン・デュ・デクランが丸くて不細工な顔であった事はきっちり残っている。
そして、このとにかく型破りな男を読者と一緒にはらはらしながらながめる役が、従弟であるエマヌエルという修道士である。この小説は主にそのエマヌエルの視点から描かれている。
貧乏貴族の出身で、傭兵隊長をしながら長らく不遇な生活を続けていたベルトラン・デュ・デクランは、フランス王太子シャルル(後に戴冠してシャルル五世)という後ろ盾を得てどんどん出世していき、そのタフな戦いによってイギリス(というかイングランド王家)をほぼフランス領土から駆逐するにいたる。
そして、貧乏貴族としては破格の、大元帥(王軍長)にまで出世して生きながらにして軍神と呼ばれるようになる。
だがその一生が幸せであったかというと、実はそれほどでもなかったのではないか。
当時の人々が残した武勲詩には、彼の生い立ちについてこうある。
「父君と母君は、その子供を激しく嫌い、しばしば心の中で願うようになった。この子が死んではくれまいか。あるいは流れの早い川に呑まれて、うまく溺れてはくれまいか」
ベルトランの母ジャンヌは生まれた醜い子供を放り出し、自分に似た弟や妹ばかりをかわいがった。
両親に疎まれ、虐待されて幼児期を過ごした少年は、結局のところ最後まで大人になれないまま死ぬことになる。その天才に周囲は勝手に期待を抱き、利用していった。名誉も金も思いのままの人生であったが、彼が本当に欲しかったのはそんなものではなかったのだ。
本書の最後は、エマヌエルはベルトラン・デュ・デクランの墓を毎日きれいに掃除しながら祈りを捧げる場面で終わっている。
来る日も来る日も友の墓に向かいながら、修道士は安易に感傷に浸るわけではなかった。絶望の贖いは未来に向けた祈りでしかありえない。ひとつの祈りを何度も何度も繰り返して、エマヌエルは是が非でも、神の耳まで届けてみせるつもりだった。
――次はジャンヌが微笑みますよう。
それは母性に縋る祈りだった。なんとなれば、母なくして子供はない。まして男が立って歩けるわけがない。まして女を愛してやれるはずがない。
破天荒なひとりの天才の、哀しい物語である。
のべのべ
■本日のアニメ:『魔法少女リリカルなのはA's 1〜4話』
アニメの公式サイトはこちら。
前シリーズは後半のバトルがすごかった。
今回はいきなり1話からすっとばしまくり。
1話から4話にかけての主なバトルを紹介。
第1話
突然でてきた赤い服の魔法少女(ヴォルケンリッターのひとり、ヴィータ)との戦い。
彼女が使う魔法の杖(アームドデバイス)、グラーフアイゼンは、見てのとうり、まんまウォーハンマー。
最初はそれでも魔法少女らしく(?)砲撃戦(??)メインであったのだが、遠距離砲撃ではなのはに一日の長があったため、カートリッジロードを行って肉弾戦に。
ウォーハンマーをロケットブーストしてぐるぐる回転しながら突っ込み、
「ぶちぬけえっ!」
と勇ましく吼える魔法少女……とゆーか、もうすでにこれ、魔法少女じゃねぇっ!!
第2話
なのはのピンチに登場したのは、もうひとりのヒロイン、フェイトちゃんとその相棒のアルフさん、フェレット扱いも気の毒なユーノ君。
ちなみに戦闘においては次のように。
なのは:遠距離砲撃戦型(バトルテックならアーチャー)
フェイト:近距離格闘&射撃戦(バトルテックならサンダーボルト)
アルフ:肉弾戦&防御支援(バトルテックならウルヴァリーン)
ユーノ:各種支援型(バトルテックならワスプ)
クロノ:バランス型(バトルテックならフェニックスホーク)
ところが、ヴォルケンリッター側も4人勢揃い。スペック的には向こうが上。しかも敵とはいえ、武人としての心を持ちあわせ、さらに互いを思いやる優しい心の持ち主である。
シグナム:「戦いは実質3対3。だが、一対一なら我らベルカの騎士に――」
ヴィータ:「――負けはねぇっ!」
……どこらへんがリリカルなのやら。
今回のメインは、ヴォルケンリッターの将、シグナムと、フェイトの一騎打ち。
シグナムが使う剣(レヴァンティン)と戦鎌(バルディッシュ)が激突する!
「レヴァンティン!叩き斬れ!」
“ヤ・ヴォール(了解)”
つうわけで、なのは達が一敗地に塗れるところで2話は終わり。
第3話
さすがに3話めは状況説明やキャラクター同士の触れ合いがメイン。
敗北を喫したなのはのレイジングハートと、フェイトのバルディッシュが、自らの意志で敵が使ったパワーアップブースター『ベルカ式カートリッジ』を要求するところが実に心憎い。
悔しかったんだろうねぇ。
……でも、普通そういうパワーアップを魔法少女はやらないと思うんだがっ!
第4話
ベルカの四騎士を、時空管理局が捕捉。
とはいえ、並みの管理局員では束になってもベルカの四騎士をどうこうできるはずもない。
ちと焦燥気味の執務官クロノ君の元へ、助っ人が転送される。
こうして、なのはとフェイトが魔法少女らしく変身するのであるが……
変身シーンの音が、『ガション』『ガキョン』『バシュン』『プシュー』――って、おいこらっ! 音が違うっ! これ魔法少女の変身違うっ!
パワーアップしたふたりの魔法少女が凛々しくデバイスを構えて――次回へっ!
以上、バトルを中心に紹介したが、それ以外の日常の場面もきちんとほほえましくもイイ話になっているあたりがすごい。いや、さすがだ都築真紀さん。
■本日の読書:『ネコソギラジカル 上・中・下』西尾維新
どんどんどんぱふぱふぱふ〜♪
祝、戯言シリーズ完結。
3冊まとめて一気読み。楽しくたっぷり堪能。
正直なところを言わせてもらうと、このシリーズ完結作を私はかなーり危ぶんでいた。とうてい作品世界にちりばめられた謎や伏線が全部消化されるとは思えない。それよりは、さまざまなモノが決着もつかず曖昧模糊に五里霧中、うやむやのまま投げっぱなしで終わるに違いないとこう踏んでいたのである。
そしてそれはその通りだった。
説明されないことは説明されないまま、謎は謎のまま終わった。
過去に何があったのか、現在に何が起こっているのか、未来に何が起こるのかも、ただ「ひとり」をのぞいて明らかにされなかった。
ただ「ひとり」――いーちゃんが自分の過去を認め、自分の現在に立ち向かい、自分の未来を望むようになったという、本当にそれだけの。
世界が終わるだの、人類最悪、人類最強、人類最終、大仰な事をさんざっぱら吹くだけ吹いておいて、風呂敷も広げるだけ広げておいて、結局最後の最後には、「思春期のガキ臭いことをほざいてナルシズムに浸ってるような、生意気なガキ一人」の。
成長物語であるというのだからお笑いである。
大まじめに物語の終わり、世界の終わりを望んでいた狐面の男こそ、いい面の皮である。
彼が物語を加速させた結果、もっと長大ではるかに遠大でひたすら莫大な物語からはほとんどのモノが抜け落ち、こぼれ落ち、ふるいにかけられ。それこそ世界の終わりすらなくなって。
残ったのは『青色サヴァンと戯言遣い』だけになってしまった。
大好きだから、一緒に死ねない。
大好きだから、解放してあげる。
……ごちそうさまと言うべきか、あほらしいと言うべきか。なるほど、このやり方はダメだと狐面の男が見切りをつけるわけである。
終幕において、人類最強と同じ請負人になったいーちゃんは、依頼人の女子高生(どことなく『きみとぼくの壊れた世界』の妹ちゃんの相似品)に、こう言ってのける。
「ぼくが解決するのは、事件じゃなくて、問題さ」
ぼくは言った。
「ぼくの辞書にはすべての言葉が載っている――」
「話し合いで、解決しよう」
ここに、あの世の中をひねて後ろ向きとゆーかどこも向いてない少年の姿はない。相変わらずの戯言遣いで、でもそこにあるのは確固とした強い意志。
失敗するかも知れない。
ダメかも知れない。
どうにもならないかも知れない。
いや、世の中にはむしろそういう事の方が多くて、成功したりうまくいったりなんとかなったりするのは、ほんの少しだけ。
だが、だからといって。できない理由をどれだけ並べたところで。
自分ががんばっていけない事はないのだ。
戯言遣いの物語はこうして終わり、それでも世界は続いていく。
いつかどこかで請負人になったいーちゃんと会うかも知れないが、それはもう。
別の、物語なのである。
■本日の読書:『アンリミテッド・ウィングス 1』松田未来 監修:藤森篤
知る人ぞ知る、リノのエアレース。
その中のアンリミテッドクラスに、美少女オーナー率いるチームが捲土重来を期して参戦。
その機体は『研三・改』!
かつて日本が作り上げた高速研究機『研三』の二号機である。
搭載するエンジンは、DB605をレストアしてチューン。出力は3500馬力!
漫画の冒頭でも紹介されているが、このバケモノのような機体で、なんと電信柱の高度を、時速800kmで飛ばしまくるのがリノのエアレースなのである。(本当)
主人公は元自衛隊のイーグルドライバー(F−15のパイロット)で、熱血漢。
ヒロインは不治の病に冒されたエアレースチームのオーナーの美少女。
チームのメンバーもそれぞれ一芸に秀でた連中である。
リノのエアレースに実際に参加している人物もぞろぞろ登場する、まことに熱くて面白い漫画である。
■本日の読書:『歴史群像 74号』
●ナポレオン帝国の崩壊(佐藤俊之)
1812年、ロシア遠征に失敗したナポレオンはヨーロッパでの覇権を維持するための再度の戦争、そして勝利を望んだ。
一方でかつてイエナ=アウエルシュタットの戦で大敗を喫し、ナポレオンに屈服していたプロイセンは、シャルンホルストらによる軍制改革が進み、ロシア遠征を機会に捲土重来を期して立ち上がる。
プロイセン、オーストリア、ロシア、そしてイギリスの対仏大同盟を、ナポレオンはそれでもさほど恐れてはいなかった。
正面からぶつかりさえすれば、ナポレオンの天才は諸国を圧倒する。敵野戦軍を引き寄せて撃破すれば今度こそ勝利は間違いなく、かつてのアウステルリッツの戦いがそうであったようにフランスの栄光を輝かせることになるはずだと。
しかし、そうはならなかった。
理由はいろいろ考えられる。長引く戦争による大陸軍(ラ・グラン・タルメ)の質の低下、逆に軍制改革に伴う各国の軍の質の向上。ナポレオンの戦い方に、対立する諸国が慣れた事。
ナポレオンとフランス軍に内在するさまざまな欠点が長所を上回り、逆に対仏大同盟諸国の長所が欠点を凌駕したとも言える。
だが、本当の理由は戦争があまりに巨大になり過ぎたという事なのだろう。
両軍合わせて60万人にも達する軍勢が激突したのだ。これだけの軍勢ともなると、一箇所に集めるのも尋常の努力では足りない。幾本もの道路を通って軍勢を通し、巨大都市の物資を持ってその腹を満たし、命令を伝え受け取るために何百人もの伝令が何千もの命令書を携えて何万回となく行き来する。
実際、この1813年の戦役を通してナポレオンの天才は発揮されることはほとんどない。彼は自らが集めた巨大な軍勢によって押しつぶされてしまったかのように見える。
確かにプロイセンの参謀将校達は良い仕事をした。これだけ巨大で、何ヵ国にもまたがる軍勢を各個撃破されることなく分割して進軍させ、ナポレオンに不利な状況での決戦を強いたのは彼らの功績である。
とはいえ、その手法そのものはかつて天才ハンニバルをローマ共和国が破ったのとあまり変わりはない。天才を相手に勝てぬのであれば、その才能を封じ込め、使えないようにすればいいのである。
相手のルールではなく、こちらのルールで戦う。
必勝法というのは、そういうものなのだ。
風邪をひく。
病院で薬を処方してもらう。
そして寝る。
まだ微熱が続く。
引きつづき寝る。
■本日の読書:『JAPAN WAR 1945〜新大東亜戦記〜』荻原玲二 原案協力/佐藤大輔
収録作品は『4月/帝都上空』と『8月/満州曠野』の二本。
『帝都上空』は、本土防空戦。夜戦戦闘機のパイロットが主人公。B−29や夜間戦闘機との戦い。機体は斜め銃を持っている『月光』と、その後継試作機『電光』(史実では実戦投入なし)である。
とはいえ、最新鋭機の『電光』も兵器としての完成度は今ひとつ。「誉」エンジンはなかなかの難物であるし、後方銃座は撃墜したB−29から拾ったブローニングを流用しているし、主兵装はこれまたドイツからもらって倉庫に入れておいた37ミリ機関砲(FLAK18)を借用というつぎはぎ機体。
これで、レシプロの夜間戦闘機としてはおそらく最強クラスのノースロップP−61『ブラックウィドウ』(黒衣の未亡人)を相手にしようというのだからたいへんである。
戦闘はなかなか燃える。
『満州曠野』は8月のソ連侵攻をめぐる物語。主役メカ(?)は、九七式(改)であるが、これでT−34と戦うのは悪夢以外のなにものでもない。
実際、至近距離でT−34に不意打ちをかけたものの、九七式の戦車砲は簡単に弾かれる。
「くそったれ! 鐘ついてんじゃねえぞ!!」
戦車兵のこのセリフが泣ける。
それにしても満州戦はこれはもう、どうもこうもならんよなぁ。関東軍は民間人を見捨てるし、さらに8/15以後は侵攻を続けるソ連軍にどんどん手をあげてスターリンを朝鮮半島まで素通しするし。
この戦争の原因が、大陸権益をめぐる欧米列強や中国との争いであった事を考えると、まことにやるせない。
■本日のアニメ:『魔法少女リリカルなのはA's 5〜6話』
アニメの公式サイトはこちら。
相変わらずのバトルアニメ。
すげー燃えるんで私は大喜びですが。
しかも6話は泣かせるしっ。号泣ものだしっ。
5話:
1話と2話が完敗であったので、今回はデバイスがパワーアップしてのリベンジ。
相変わらず、なのはのスタイルは「私が勝ったら話を聞かせてもらうからね!」という本当におまえは小学校3年生かとゆー割り切りぶり。いや、たぶんこれも血筋か。
なのは対ヴィータは、なのは優勢。
フェイト対シグナムは、ほぼ互角。
ついでにやってるアルフ対ザフィーラも互角。
とはいえ、なのは側には時空管理局という組織のバックアップがあるので(しかも無能ではない上に、なのは達、子供のことを大事にするイイ人達である)長引けばヴォルケンリッターが不利。
実際、戦闘に参加していなかったシャマルもクロノ君に発見されてあわや捕獲される寸前に。
そこに登場したのが仮面の戦士(顔を隠す必要あり=つまり間違いなく、誰かの知り合い)。クロノをぼこぼこに殴り倒し、顔をぐりぐりと踏みにじって唾を吐いて「管理局も質が落ちたな」などとぬかす始末。(嘘です)
あんたそれでも親か。(私の妄想です)
この仮面の戦士の乱入と闇の書の力を利用して、勝負は水入りに。
6話:
ヴォルケンリッター側がなぜ『闇の書』のために魔力を集めているかの事情説明。
泣ける。
むちゃくちゃ泣ける。
『闇の書』の主となったこの世界の女の子、はやてちゃんは両親を失い、自分も足が不自由でひとり寂しく暮らしていた。
そこに発動した『闇の書』にプログラムされていた人格――四人の騎士が現れたが、もちろんはやてちゃんは『闇の書』の力など欲しくはない。ただ、ずっとひとりで寂しかった彼女は、四人とずーっと仲良く暮らすことができればそれでいいと考えた。はやての優しさに、それまで歴代の『闇の書』の主にロボットのごとく使われてきた四人もしだいに打ち解けて、家族同然の生活を続けるようになる。
しかし、『闇の書』の呪いは、はやてを次第にむしばみ、このままでは命すら危険となる。はやての足が不自由なのも、この『闇の書』の呪いであったのだ。
元より『闇の書』は危険な存在としてこれまでも狙われてきた。時空管理局などの組織に頼ることはできない。彼らは最善でも『闇の書』と四人の騎士を封印し、はやてはふたたびひとりぼっちで暮らすことになるだろう。
「ずっと一緒に暮らせたらええね」
優しい主の、本当にささやかな願いをかなえるため――四人の騎士は、はやてに黙って『闇の書』を完成させ、そして呪いからはやてを解放してあげようとする。
そのために、戦い、傷つけ、傷つくことになろうとも。
この話の後半で、砂漠の世界で魔物と戦い傷ついたヴィータちゃんのセリフが泣かせる。
ぼろぼろになり、砂に足をとられて転んだヴィータはハンマーで身体を支えるようにして立ち上がる。
「痛くない――こんなのちっとも痛くないっ!」
「帰ったらきっと、あったかいお風呂と、はやてのご飯が待ってんだ」
「優しいはやてがにこにこ待っててくれるんだ。――そうだ、あたしはすっげー幸せなんだ! だからっ!!」
きっと前方をにらむヴィータ。
砂漠を割って出現する巨大なクリーチャー!!
「こんなの、全然、痛くねぇっ!!」
うう……
『闇の書』が最終的に完成してえらい騒ぎになるのは確定(推定:11話〜12話)だが、できれば最後の13話は後日談で、はやてちゃんと四人の騎士が平和で幸せに暮らしている場面でありますよーに。
■本日の読書:『ゼロの使い魔 6』ヤマグチノボル
今回の主役はしょぼくれたお間抜けなコルベール先生。
20年前まで軍の特殊部隊として、殺戮と破壊の限りを尽くしてきたという、今の言動からはとても想像がつかないディープな過去。
その過去が彼に追いついた時、コルベール先生が選んだ道とは、というもの。
物語の背後では戦争も激化しており、ラブコメ、特にコメディ部分とそうしたシリアスな部分との食い合わせがそろそろまずいぐらいに乖離中。
どちらもそれほど悪くはないのだが……いつ破綻するかひやひやものである。
■本日の読書:『鋼の錬金術師 12』荒川弘
相変わらず密度の濃い、丁寧な物語。さすがだ。
現時点で演出面では最強のブラッドレイ大総統を相手にリンとランファンが立ち向かう。
マジで命があって良かったね。
戦い方といい、セリフといい、この巻のメインは君達だ。
一方で、スカーはどことなく蚊帳の外。
スカーをてこ入れするために用意された『ウィンリィの両親を殺した犯人』ネタも使われてはいるが、これがなかったら本当に『人造人間を捕まえるためだけの餌』で道化でしかない。
人造人間側はグラトニーが『呑んでいいよ』モードで次巻へ続く。
けど、ブラッドレイ大総統ならともかく、こいつではなぁ。緊迫感は11巻のラストとは比べものににならない。
話はいよいよ終盤へ向かって転がりはじめた、そんな感じ。
■本日の読書:『灼眼のシャナ X(10)』高橋弥七郎
アニメも絶好調の『灼眼のシャナ』。
10巻は16世紀に行われた“紅世の徒”とフレイムヘイズの戦いがメイン。
なんといいましょうか、巻が進むにつれて、紅世もフレイムヘイズも『普通』になってまいりました。
ただ力のありようがこの世界の住人と違うだけで、心のありようにはあまり差がない――それゆえに、読者としては感情移入がしやすい存在へと。
おかげで『理解不能な存在を楽しむ』という、SFファン的な楽しみ方――たとえば『宇宙のランデブー』を読むような――はできないものの、紅世の側にもフレイムヘイズ側にも愉快なキャラが多くて良い感じです。
個人的なお気に入りは、元修道女のゾフィーさん。このおばちゃんフレイムヘイズはタケミカヅチと契約しており、修道服をまとったまま空を飛んで、スーパー稲妻キックを敵にぶちかますという豪快なおひとである。
21世紀の現在もご存命のようで、最終決戦での活躍が期待されます。
もうひとりは紅世側の宰相モレク。残念ながらこの巻での退場となったが、その紅世らしからぬ言動はおそらくこの巻で唯一の“癒し系”キャラ。
今も生き残っていれば、悠二と仲良くなれたんじゃないかな。
脇役がどれもこれも魅力一杯であったのに対し、相対的に割りをくらったのが、主人公である先代の『炎髪灼眼の討ち手』マティルダと、この巻の敵の親玉であるアシズ。
マティルダは人格能力いずれも完成された存在ゆえに、隙がなさすぎ。キャラとしてのおもしろみにかける。かといって、その完璧ぶりを楽しめるかというとそうではない。むしろ対比としてのヴィルヘルミナにスポットが当たってしまっている。
その敵であるアシズはというと、いくらスペックが高くとも『へたれ』+『妄執』というバックボーンの弱さで相殺、つうかマイナス。
彼の部下がいずれもひとかどの連中であったがゆえに、アシズのダメさ加減が際だつというか……キャラの位置的にマティルダ&アラストールの鏡像なので、しょうがないっちゃあ、しょうがないのだが。
後、マティルダ&アラストールの最後の切り札があんな核兵器のよーな神威召喚だったのはバトル物としてはマイナス。
駆け引きもくそもない、一方的な戦いは美しくない。
とはいえ、全体としては面白い。特に魅力的な脇役達は参考になる。
■本日の読書:『灼眼のシャナ XI(11)』高橋弥七郎
さて、現代に戻り物語再開。
学園ドラマに必須のイベント、学園祭です。
……いまいち、つうか、いまさん。
■本日の読書:『ヴィンランド・サガ 2』幸村誠
トールズ父ちゃん、強ぇぇぇっ!!
なんといいましょうか、ブラッドレイ大総統相手にもひけをとりませんよ、これはっ?!
1巻の『現代』ではおちゃらけた顔が多いアシェラッドがトールズ相手にひたすらシリアス顔を続けているせいで、アシェラッドまでかっよくなっちゃたよっ?!
戦いに、いや正しくは強い父親に憧れるトルフィンを諭す場面。
「剣は人を殺す道具だ。お前はこれで誰を殺すつもりなんだ」
から
「よく聞けトルフィン
お前に敵などいない。誰にも敵などいないんだ。
傷つけてよいものなど、どこにもいない」
ここは、屈指の名場面であった。
もうひとつ、後半、決闘が決着した後のアシェラッドとの会話。
「それほどの腕をもちながら15年もアイルランドにひきこもっていたとは……もったいないとは思わんのか?」
「思わん。
こんなもの(剣)に頼らざるを得んのは、オレが未熟だからだ。
本当の戦士には剣などいらぬ」
うーん、かっこいいなぁ。
2巻の続きは『アフタヌーン』誌だそうだが、月刊誌というのはやはり妥当ではないかと。じっくり続きを読ませてもらいたい。
■本日の読書:『産霊山秘録』半村良
〈ヒ〉の一族をめぐる、伝奇物語。
前に読んだのがかれこれ25年前の高校生だったか中学生だったかなので、今読み直すといろいろと印象が違って面白い。
物語は400年前の戦国時代からはじまって、江戸時代、そして戦後の動乱期へと続く。
『産霊山(むすびのやま)』。
すべての生き物の祈りが向かう場所。
より良き明日を祈る思いが積み重なり、そして未来へとつながる場所。
権力者はその地を我が物にしようと求めるが、はたして本当に祈りはつながっているのか?
だとしたら、なぜ、争いはなくならぬ?
なぜ、苦しむ命はなくならぬ?
生きることに意味はあるのか。
祈りに意味があるのか。
そして――産霊山に意味はあるのか。
本書に語られる時代はいつも苦しみと哀しみに満ちており、そしてそれゆえに、すべての生あるものは愛おしい。
良い本である。
実は先週より37度台の微熱が続いている。
ぐったり。
■本日の読書:『戦時商船隊』大内健二
商船および商船改造艦の戦いについてまとめた本。
読み応えあり。
1章:
帆走仮装巡洋艦ゼー・アドラーの戦いについて。
通商破壊といっても元はといえば海賊である。
過去の海賊にロマンはなく、現代の潜水艦にもロマンはない。
その端境にこういうロマンに満ちた戦いがあるかと思うと、なかなか面白い。
2章:
こちらも第一次世界大戦。
日英同盟から地中海に進出し、護衛任務を戦った日本の第二特務艦隊の戦い。
このやる気が、なぜに第二次世界大戦では消えたか。やはり余裕のなさか。
3章:
給炭艦サイクロプス失踪事件の謎。
アメリカ海軍の輸送艦が、暇なときに民間に貸し出されて鉱石運搬をやっていたというのははじめて知った。
何より、一万トンをこえる大型艦がまるで海に溶けたように消えたのは興味深い。
4章:
仮装巡洋艦ラワルビンディとジャービスベイの戦い。
イギリス海軍の男というのは、ここぞという時の腹の据わり方が違う。
あるいは、絶対に負ける戦いだからこそ、腹をくくるというべきか。
いずれも、見事な戦いぶりである。
5章:
第一次世界大戦〜第二次世界大戦で失われた、客船についての記録。
6章:
日本海軍特設軍艦の記録。
7章:
リバティー船物語。
粗製濫造の例としてあげられるアメリカのリバティー型戦時標準船であるが、我が国の戦時標準船(二型)などを知っていると、むしろすごく豪華で立派な船に見える。
なんといっても第二次世界大戦の四年間で、実に1712隻、1944万総トンの船が建造されたのだからおそれいる。
そのほかの商船をあわせると、3041隻、2200万総トンの船を建造している。これは、第二次世界大戦開戦時に、世界最大の商船隊を持つイギリスの船舶保有量を上回るのである。
ちなみに、他に20隻以上の大型航空母艦、40隻以上の巡洋艦、700隻をこえる駆逐艦や護衛駆逐艦、100隻以上の護衛空母を建造している。
……なんでこんな国と戦争したんだ、わしらの爺さん、ひい爺さんは。
ちなみに日本が太平洋戦争中に建造した戦時急造船の合計は1340隻で、隻数だけならリバティー型と遜色ないが、その大半は1000総トン未満の小型船。建造トン数では313万総トンと、リバティー船の五分の一以下である。
そしてその質にいたっては、浮かぶだけで精一杯というのがざらだったのだ。
とはいえ、これはアメリカが本気になった証拠であり、それまでの大恐慌などの不景気時代、アメリカは1922年〜37年の15年間に、貨物船2隻、油槽船数隻、客船29隻しか建造していないのだ。
だから、第二次世界大戦時には、アメリカの商船は2000総トン以上の商船の90パーセント以上が船齢20年以上の老朽船であったという。なるほど、爺さんひい爺さんが眩惑されるわけである。
なお、リバティー型は同型艦1712隻であるが、これだけ多いと問題になるのが船の名前である。とにかく最初は一番船パトリック・ヘンリー以後、アメリカ建国の英雄を扱ってきたが、あたりまえだがすぐにこれはネタが尽きる。
しょうがないので、とにかく俳優でもスポーツマンでも、ボーイスカウトのリーダーにいたるまでひたすら名前を借りていったらしい。
だから、リバティー型の船名リストをながめるのはアメリカ人名辞典みたいで楽しいそうだ。なるほど、私も一度見てみるか。
8章
日本の商船として戦った外国商船の記録。
9章
砕氷客船高島丸の航跡について。
南樺太を領有していた関係で、戦前の日本では砕氷客船にそれなりに必要性があったというのは確かに言われてみれば納得である。あそこは氷に閉ざされるから。
10章
商船型上陸舟艇についての記録。
SS艇は小型の強襲揚陸艦で、直接海岸に乗り上げて、兵員や戦車を揚陸させるものである。日本陸軍ではこれを「海上機動旅団」として使用するつもりであったが、完成させてみるともはや日本軍は守勢で上陸作戦などろくになくなっていた。そのため、ひたすら輸送船として酷使されたSS艇は次々と失われていく。特に1944年のフィリピン攻防戦は激戦で、終戦時には6隻が残るのみであった。
だが、生き残った彼らは改造されながら戦後の日本の海運を支え続けた。
そのうちの1隻、君島丸(SS20)は1960年に再開された日中貿易の第一船として天津におもむき、300トンの天津甘栗をのせて神戸に帰国したそうである。
11章
アメリカの軍隊輸送船についての記録。
12章
捕鯨母船第三図南丸の活躍の記録。
捕鯨母船というのは鯨を解体するのででかいのだが、解体しても肉は運ばない。肉を運ぶのは冷凍船のお仕事である。
では捕鯨母船の中には何が詰まっているかというと、鯨油タンクで、鯨油を運ぶのだ。
そして、南氷洋で鯨をとってないときは、戦前より第三図南丸は鯨油ではなく石油を運ぶ油槽船として活躍していたのである。
戦争になって、第三図南丸は油槽船として使用されるようになる。幾度も敵の攻撃を受け、一度など潜水艦から魚雷15発の攻撃を受ける。そのうち11発が命中したがなんと爆発したのは1発だけ。残り10発は不発で刺さったまま港に入って修理したとか。
そんな第三図南丸も、1944年2月のトラック大空襲で沈む。
しかし、意外にも戦後になって第三図南丸に再び活躍の機会が訪れる。本来の仕事である、捕鯨母船の1隻として、沈んだ第三図南丸が使えないかというのだ。
戦後の日本の食糧難はよく知られているが、その日本人の食膳に上がった庶民の肉の代表が鯨肉である。復興未だの日本では戦時標準船を改造した捕鯨母船も使っていたが、やはり最初から捕鯨母船として作られた船に比べれば性能は低い。
トラック環礁の水深40mの海底にひっくりかえっていた第三図南丸は浮上して修理され、南氷捕鯨に参加することになったのである。すでに兄弟船はなく、名前も図南丸と改められた1970年に解体されるまで、32年間の長寿をはたしたのである。
13章
PQ船団の記録。
14章
伊豆大島航路の客船橘丸についての記録。
橘丸は流線型を多用したデザインで、なかなか洒落た船なのだが、そこにいたる経緯が面白い。
日本では1934年に、蒸気機関車の一両を流線型に改造し、特急「燕」号を牽引させたのだがこれが大人気。
国鉄だけでなく私鉄も次々と流線型のデザインを使用して、1935年〜37年は世は流線型ブーム。新築のビルまでもが流線型と称するデザインになったとか。
で、まあ橘丸もそういう経緯で流線型が強いデザインとなったわけである。
15章
日本の戦時商船の武装についての記録。
16章
高速貨物船山城丸が、中東戦争での戦闘に巻き込まれたというたいへん珍しい記録。
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