■銅大の読書万歳(56)
作品名:仙木の果実
作者:八房龍之介
出版:メディアワークス
ISBN:4-07-308896-3
え〜、この作品を一言で称するなら
『手間と知性をかけたムダの産物』
と、こうなります。
私は、こういった洒落っ気たっぷりのムダ話やらホラ話が大好きでして。
小説で言うなら『光の王』やら『ハイペリオン』とか。
ましてや、オカルト話となりますと、もうムダなホラがてんこもり。
だからオカルトって好きさ。
この作品、いつとは書いていませんが時代背景は19世紀末か20世紀初
頭の、どことは書いていませんがたぶんイギリス。
主人公のジャックはいかがわしくも「先生」の肩書きをつけており、その
助手のジュネと一緒に、オカルト的な事件に巻き込まれたり首をつっこんだ
りいたします。知恵とか勇気とかでなんとかするのではなく、もー、完全に
力押しで物語は進みますが、それがさらりと描かれていやみが無いのは絵柄
のせいでもありましょう。
背後にはけっこう重い設定がつけられているにも関わらず、それには触れ
ないというのも、はったりがきいていてよろしい。
中のお話について、ちょっと一言ずつ感想を。
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『未亡人の指紋』
部屋に置くと邪魔になるので、雑誌はできるだけ買わないようにしている
のですが、この話が掲載された『電撃大王』はついフラフラと購入してしま
いました。
「心霊現象という名の心の迷いを癒す立派な精神治療じゃないですか」
とうそぶくインチキな『オカルトのディレッタント』であるジャックの、
「ほ.....本物かぁぁぁ!?」
というセリフがこの作品の方向性を表していてよろしいかと。
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『幼女の夢』
鬼畜で救いようがない話。ウムウム。こうでなくてはいけません。
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『密室の悪魔(改訂版)』
密室殺人事件を前に、自分が容疑者にされていながら
「だってさ〜、密室だよ、密室!! 何かしらこう、ふつふつと無駄にたぎる
物がないのか、君たちは!!」
と力説するジャック。さすが。
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『祈りの街』
再び鬼畜で容赦のない横顔のジャック君の登場。その人非人ぶりが好き。
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『仙木の果実』
雑誌のタイトルにもなった作品。とらえどころのない主人公とヒロインの、
ボトムズのキリコとフィアナのよ〜な腐った関係がうかがえるお話。
鬼畜ぶりはいま一つ。
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『鍵屋の憂鬱』
ちょっと中弛みかな?
ジャックの檄した表情が見られる、珍しいお話。
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『とびうお』『がくぶちのなか』
おまけの品。キャラメルといっしょに入っているアレ。絵の品が良いから
得をしているが、それほどたいしたモンではなし。
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『睦びよきもの共』
無敵の爺い、ラスキン老の無敵ぶりがお見事。
えーと、後は....最初の1ページと1コマがイイ感じ。
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『彼女に降る雨』『彼の人に降る雨』
シリーズの終わりとなる前後編。
ジャックが消息不明になり、途方にくれるヒロインのジュネ。
「これ以上君があの莫迦の
ままごとに付き合ってやる義理はないだろう」
「----でも、これが私の役目ですから」
ジュネの、ズレまくった一途な想いと、
「一人が、一人でやってく事が出来るなら----
本当にそれで平気だと言うなら----
やってみせろよ!!」
ジャックの、これまた途方にくれるほど不器用な想いとが、
物語の最後で一つの結末を迎えます。
そして、また新しい始まりをも。
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あなたが、『ムダ』を愛する人であるなら、お勧めの一冊です。
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