■銅大の読書万歳(55) 作品名:絶滅哺乳類図鑑 作者:冨田幸光/イラスト:伊藤丙雄・岡本泰子 出版:丸善株式会社 表紙に奇妙な動物が描かれている。 馬のような頭に、熊のような身体。ゴリラのごとき腕。ただしその手は爪の 長い三本指をしている。 動物園でも、TVでも見た事がない、奇妙な生き物。 この動物の名前は、カリコテリウム。 本の中にはカリコテリウムとその仲間についてこう書いてある。 『……どの時代でもあまり繁栄することはなく、更新世前期のアジアとアフリ カを最後に絶滅した』 そう。 この本は、絶滅した動物たちについて書かれた本である。 どうして滅びたのか。それについてはこの本では書かれていない。ただ、彼 らがかつてそこにいて、そして今はいないという事を述べるにとどめている。 そして、彼らの骨から再現した229種類の細密画で、ありし日の彼らの姿 を我々に見せてくれる。 そういう本であり。 それだけの本である。 それなのに。 なぜ人はかくも滅びてしまった生き物に心ひかれるのか。 頁をめくりながら、生き生きと描かれた動物たちを見ながら、私はそう思わ ざるをえなかった。 滅びてしまった。 立ち去ってしまった。 歴史の舞台から退場した仲間たちに。 なぜこれほどの情熱をそそげるのだろうか。 好奇心? それは確かにあるだろう。 けれどもそれだけではなく。 おそらくはきっと。 人間自身が、心の中で気付いているのだろう。 気が遠くなるような進化の歴史の中。 自分たちもまた、滅びゆくさだめにあることを。 この本に記載された多くの動物たちと同じように。 人間もまた、地球から姿を消すのだということを。 生きてある人が、やがては老い、そして死ぬさだめにあるように。 ああ、だからこそ。 覚えていてほしいのだ。 思い出してほしいのだ。 自分たちがここにいたことを。 一所懸命に、はかない命を生きたことを。 愚かであったかもしれない。 傲慢であったかもしれない。 それでも、この本の動物たちがそれぞれの生を歩んだように。 人間もまた、ヒトという生き物にしかなしえない形で、精一杯に生きたことを。 そんな風に考えながら。 私はこの本を閉じたのである。
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