■銅大の読書万歳(48)
作品名:氷山空母を撃沈せよ! 1〜3
原作:伊吹秀明 作画:沖一
出版社:学習研究社
ISBN:4-05-602121-X/1巻
ISBN:4-05-602228-3/2巻
ISBN:4-05-602418-9/3巻

 太平洋戦争序盤の山場。ミッドウェーの戦いで出撃した一機のB−17は日本機
動部隊を守る零戦の迎撃を受けて大破。負傷したパイロットは朦朧とした意識の中
で氷山を見る。
 意識を取り戻したパイロットは自分が“不時着して”助かった事を知る。
 B−17は別名『空の要塞』ともあだ名される大型爆撃機である。普通の空母に
着陸できるような機体ではない。
 いったいどうして?
 ここはどこだ?
 いぶかしむパイロットは案内されて飛行甲板に出る。寒い。そして彼が見たのは
広大な平原のような飛行甲板と、そこに不時着した愛機。
 そう。
 これこそがアメリカがエセックス空母の量産をとりやめ、総力をあげて作り上げ
た超々巨大空母、氷山空母ハボクックなのだ。

 と、いうわけで今回紹介するのは架空戦記中屈指の怪物兵器、ハボクックが登場
する『氷山空母を撃沈せよ!』である。
 英語にすると"Sink The Habbakuk"
 これほど“タイトルが内容のすべてを表している”という作品も珍しい。
 そのハボクックであるが。
 とにかくでかい。

 全長1700メートル。
 基準排水量850万9500トン。

 その巨体を構成するのはパイクリートという加工された氷の塊である。
 この、現実の歴史では構想のみ行われた氷山空母を『もしも』アメリカが太平洋
戦争に投入していたら? というのがこの本のifである。
 もちろん、とうていありえない仮定である。仮想の話としても駄法螺に類する。

 だがしかし。

 見開き2ページでどどどどーん、と登場するハボクックの映像的衝撃の前には、
そのような些事、等閑に付すべきであろう。
 繰り返すようだが、とにかくでかいのだ。
 戦力となる搭載機数は1000機。普通の空母10隻以上である。しかも普通の
空母は自身の防御力はからきしであるが、ハボクックは違う。戦艦の主砲を受けよ
うが魚雷をくらおうが爆弾が雨あられとふってこようがびくともしない。850万
トンをこえる巨体はそれだけの浮力をこの艦に与えているのである。
 まさに不沈空母である。

 この作品のうまいところはハボクックという言語道断なモンスターを設定し、そ
れをいかに撃退するかに物語を集約させているところにある。どちらかというと散
漫で、散文的な事実の羅列になりがちな架空戦記たちの中で、本書の特色がそこに
ある。良質な娯楽作品を作るための典型的な構成パターンの一つであろう。

 絶大な航空攻撃力と防御力を備えたハボクック。
 この難敵に、ミッドウェーの戦いで勝利※した南雲機動部隊もあっさりと返り討
ちにあう。
 日本が誇る戦艦大和を中核とした戦艦部隊の砲撃もまるで効果がない。

 敗北の崖っぷちに立たされた日本海軍に勝利の術はあるのか?
 不沈空母ハボクックの弱点とは?
 果たして、氷山空母は撃沈できるのか?!

 正直、オチの部分はちと弱い気がするが実に燃える作品である。
 架空戦記はちょっと……という方にもおすすめ。

※いうまでもないが史実におけるミッドウェーの戦いは日本の敗北であった。

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