■銅大の読書万歳(4)
作品名:『龍騎兵 1〜5』
著者名:青木基行
出版社:歴史群像新書/株式会社学習研究社

 第一回に続き、かなりマイナーな作品。ジャンルを無理矢理に分けるとした
ら、『架空歴史小説』か? その中でも軍記物に分類するのが妥当だろう。

 小説として見た場合、格別に優れているわけではない。今でもたくさん出版
されている架空戦記小説とだいたい同レベルである。そもそも終わっていない。
5巻目で一応の区切りはついているが、あくまで第一部完ということで、打ち
切られたと見るのが妥当だろう。

 では、どこに紹介する価値があるかというと、その独特の世界設定にある。
 この世界では(どっかの歴史犯罪者が改変でもしたのか)漢帝国が、建国か
らわずか二年で匈奴(騎馬民族)の襲撃を受けて滅びてしまったのだ。
 我々の世界では四〇〇年あまりにわたって中華に君臨した漢帝国がである。

 結果として、中華は秦の始皇帝による統一を受ける前の群雄割拠の時代に逆
戻りしてしまう。そして、その分裂による影響はヨーロッパと東アジアの地位
を逆しまにするのである。つまり、呉王国がスペインやポルトガルのような海
外植民地経営を行い、日本がイギリスのような貿易国家になり、アメリカ大陸
(この世界では蓬莱大陸)への移民も行っているという世界になっているのだ。

 そして、この戦国な中国を舞台に『龍騎兵』が活躍するというのがこの作品
の骨子である。ちなみに作者はウォーゲーマーでもあり、軍記物としてはかな
り安心して読める。破天荒な作戦・戦術は登場せず、あくまで理詰めに物語は
進行する。
 逆に言うと、そこがまずかったんじゃないかという気もしないでもない。

 設定は面白い。
 キャラにも魅力はある。
 イラストは……作品世界には合っている。

 だが、一部のコアな軍事/歴史マニアをのぞけば、やはり一般の読者が望む
のは三国志演義のような豪快で爽快な作品なのだろう。

 つまり、はったりという奴である。

 当時ほとんど無名だった田中芳樹さんの『銀河英雄伝説』がミリタリーやサ
イエンスの分野では間違いだらけ(ただし、その多くは作者が意図的に行って
いる)であるにも関わらず読者の圧倒的な支持を得られたのに、この作品はそ
うではなかった。

 ようするに、読者が求める物を作者は提供できなかったのだ。
 これでは『第一部完』で終わってもいたしかたない。

 自己満足だけでもOKの同人誌であればともかく、商業作品であればそれで
はダメだということだろう。
 それを良しとするか悪しとするかは別として。

 そういう点で、いろいろと考えさせられる作品ではある。


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