■銅大の読書万歳(39)
作品名:『消されかけた男』
著者名:ブライアン・フリーマントル
出版社:新潮社

 まだソ連が存在していた冷戦の時代。ドイツが東西に分かれていた頃。そし
てベルリンに壁があった時。
 そんな、今となっては懐かしささえ覚える時代を背景に、いくつものスパイ
小説が書かれた。
 今回紹介する、『消されかけた男』もまた、その一冊である。

 主人公は英国情報部――良質なスパイ小説の主役はCIAよりも英国情報部
の方が多い気がするのは私だけだろうか?――のチャーリー・マフィン。頭の
切れる海千山千の古株スパイだが、それが逆にわざわいしてか、老練な部長が
引退してからというもの部内では孤立している。
 いや、正確にいうと疎んじられていると言ってもいい。
 そんな彼がかつて逮捕した大物スパイ、ベレンコフの親友であるカリーニン
将軍が西側への亡命を希望しているという情報が入ってくる。この亡命が成功
すれば、ソ連の情報網に与える打撃は計り知れない。英米の情報部は共同でカ
リーニン将軍の亡命を受け入れる作戦を立案する。
 チャーリー・マフィンもまた、この作戦に参加することになる。彼自身はこ
の亡命に胡散臭いところがあると警告するが、窓際情報部員の言うことなど誰
も耳を傾けない。それどころか半ば捨てごま的な役割を与えられる始末。

 チャーリーの、たった一人の孤独な戦いが始まる……

 という事で、これ以上紹介すると完全にオチをばらしてしまう危険性がある
ので後は読んでみてのお楽しみである。
 冴えない、だがしたたかなチャーリー(なんとなくピーター・フォーク演じ
る刑事コロンボを想像してしまう)の活躍を、どうぞご堪能あれ。


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