■銅大の読書万歳(36)
作品名:『デュマレスト・サーガ』(日本では1〜31巻)
著者名:E.C.タブ
出版社:創元推理文庫

 デュマレストという男がいる。
 彼は“旅人”である。
 彼が旅を始めたのは10才の時。
 故郷の過酷な環境から逃げるために、彼は宇宙船に密航するという手段を取
った。本来なら、宇宙へ放逐されても文句は言えないところであるが、老船長
の温情で彼は死なずにすんだ。
 その後も彼は星から星へと旅を続けた。
 宇宙は広い。
 金がある時には低速代謝で。
 金がない時には下等の冬眠容器で。
 長い距離と、長い時間をかけて、彼は故郷から遠く離れた。
 彼の故郷の星のことを誰も知らないほどに遠くへ。
 やがて、大人になった彼は望郷の念にかられた。
 だが、彼の故郷を知る者はいなかった。
 どの星図にも、彼の故郷はのっていなかった。
 それどころか、彼の故郷は伝説か冗談となっていた。
 彼の故郷の名は、地球。
 故郷を目指す彼の旅が始まった。長い、長い旅が。

 本シリーズは、このような形で始まる。そして、31巻まで延々この調子で
続く。普通に続けていれば、書く方も読む方も飽きがきそうなものであるが、
この作品においては2つの点でそれを防いでいる。

 1つは、デュマレストが訪れる様々な惑星ごとの特色である。
 生態系が奇妙であったり、社会が奇妙であったり、あるいは奇妙な事件が発
生してそれにデュマレストが巻き込まれたりと、訪れる惑星一つ一つに、ユニ
ークな特徴が付与されている。

 もう1つは、各惑星ごとにばらばらな社会を構築している中で、星系間にま
たがる巨大な秘密結社の存在である。名をサイクラン。純粋知性の集合体で、
謎の目的を持って行動するこの組織と、デュマレストはとある事から敵対する
ことになる。

 このように、前者でエキゾチックな設定を、後者で緊張感を、それぞれ出す
ことで長いシリーズを飽きさせずに読ませる手腕はさすがといえる。

 ちなみに、本シリーズは31巻まで刊行された時点で終わっている。
 1885年に31巻が出てからずっと、続刊が出なかったためである。(翻
訳の31巻は1989年出版)
 しかし、実際には1997年にGryphon Pressから最終巻が発行されている。
 タイトルは『The Return』。
 そう、デュマレストの旅は永遠に続くわけではない。彼は故郷に戻り、全て
に決着をつける必要があるのだ。
 絶版となっている本シリーズを含めて、この最終巻が発行されることを願っ
てやまない。

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