■銅大の読書万歳(28) 作品名:『ガイア』上・下 著者名:デイヴィッド・ブリン 出版社:ハヤカワ文庫SF/早川書房 ISBN:4−15−011131−6 4−15−011132−4 地球に、あなたが作った小さなブラックホールが落下した。 間の悪いことに、そいつは地球を突き抜けも蒸発もせずに、地球の中心で生 き延び、母なる大地を『食い』始めた……かも知れない。 さあ、どうする? 出だしから、こうである。 これは、燃える。 何しろ地球の中というのは宇宙以上に我々にとって未知の世界である。 教科書や百科事典に載っている、核があってマントルがあって、地核がその 表面に乗って、という地球の透視図というのは、あれは地震波の伝わり具合か ら間接的に『こんなもんじゃなかろうか』と想像したもので、直接、誰かが穴 を掘って確かめたわけではない。 実際、高度約400キロメートルの場所に宇宙ステーションを建設すること はできても、地下400キロメートルの場所に行くことはできない。 それがいきなり地下6378キロメートル(赤道から。極だとちょいと短い) の真下である。見つけたところで手出しはできない。 さあ、どうする? 一方で、人間社会も、末期症状の一歩手前で何とかぎりぎり踏みとどまって いるところである。時代は西暦2038年。20世紀の環境破壊のツケが、ず どどんと世界全体に重くのしかかってきている。人類はバイオスフィアを建設 したり、大量消費型の社会を変革しようとしたりしているが、相撲でいうと俵 踏んでこらえているような状態だ。いつ決壊して破滅へとなだれこんでもおか しくない。 さあ、どうする? とまぁ、何ともお先真っ暗な……なに、ブラックホールが暗いのは当たり前? いや、そういう話とはちゃいまんがな……導入部で始まるこの作品。 なんでこんなに必要なさそうな登場人物まで大勢いるんだ? と思っていた ら、あにはからんや。 地味そうな話が続くかと思いきや、物語は二転、三転、と急展開を見せ、必 要なさそうに見えた登場人物たちも、実はみんな重要な役を割り当てられてい る。特にポンコツ・スペースシャトル〈アトランティス〉の扱いは、宇宙SF 好きには感涙モノである。 全ての謎が解け始める後半から、物語は怒濤のごとき展開を見せる。 果たして地球の、そして人類の運命やいかに……と、これは読んでもらって のお楽しみということで。 この作品には、他にも様々な仕掛けがしてあり、なかなかに面白い。 インターネットが拡大したかのような〈ネット〉世界の扱いとか。 バイオスフィアの中で働く元不良少年とヒヒの母子に絡むエピソードとか。 そして、最後の最後で明らかにされる……おっとっと。 とにかく、『スタータイド・ライジング』のBEM軍団総進撃にも代表され る、デイヴィッド・ブリンのサービス精神満載のこの作品。 21世紀を迎えるにあたっての、お勧めの一冊ということで。 え、違う? ……ああ、2冊(上下巻)だった。
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