■銅大の読書万歳(27)
作品名:『とねりこ荘奇譚』『とねりこ荘奇譚2 ベルテインの火祭』
著者名:稲元おさむ
出版社:ソノラマ文庫/朝日ソノラマ
ISBN:4−257−76820−7
     4−257−76844−4

 本作品はオカルト風味の『めぞん一刻』型小説である。
 以上、紹介終わり。

 ……いや、そういうわけにもいかないか。

 とはいえ。
 はっきりいって、そんなすごい作品で、読まないと人生を損してしまうよう
な、傑作では全っ然ない。

 どちらかというと、バカ話で。
 どちらかというと、ムダ話である。

 それだけなら、紹介もせずに見捨ててしまってもいいような気がする。いや、
正直なところ今の私はかなりそういう気分になっていたりする。

 もっと人生の役に立つような本を紹介するとか。
 もっと心を豊かにできる本を紹介するとか。

 だが、違うのである。
 この『読書万歳』の趣旨は、本を読むことで人生の役に立ったり、心が豊か
になったりという為の読書をお勧めしているわけではない。結果としてそうな
ったら、まぁ、運が良かったというぐらいで。基本的には読書そのものが目的
なのだ。活字中毒ってのはすべからくそーゆーもんだと思う。手段と目的をは
きちがえてはいけない。

 でもって、人生がそうであるように。
 読書を長く続けるにはバカ話、ムダ話もまた、とても重要なのである。

 で、ようやく本題に入るわけであるが。
 この作品の主人公、須崎圭は大学に入り、下宿で一人暮らしを始める。

 なんというか、現代日本ではごくごく普通の当たり前のよーな話である。

 ところが、実は彼の父親はお坊さんで、息子の圭に後を継がせるべく、彼が
高校を出たら僧侶としての修行を始めさせようときちんと人生設計を効率良く
決めていたのだからややこしい。
 彼は家を出るような形で、学費も生活も援助を受けずに大学に通うことにな
る。
 そこまでして彼は何をやりたいかとゆーと……これが何もなかったりする。

 これまた、10代の学生にとっては当たり前の話である。
 一応は野望として恋人を作っての同棲生活にあこがれて――いつの時代の話
だ――いたりもするが、結局のところ彼はバカでムダな時間を過ごしたいと、
そういうわけなのである。

 ある意味で、彼の目的は十二分に果たされる。彼が住むことになるとねりこ
荘の住人が、そろいもそろってロクでもない連中ばかりで、騒ぎばかり次々と
発生するからである。

 一応はまともそうな管理人の女性(旦那さん行方不明)も、かなり非常識な
人物である事が1巻の終わりで判明するし、2巻ではさらにヘンな人間が増え
て騒動はもはや収まる様子もない。

 そんな中騒動の中では、ごくごく平凡でそれなりに下心だってある主人公の
行動が実に人間らしく、ほほえましく感じられる。
 そして本編の文章も、このちょっと泥臭いが基本的に善人な圭にあった、何
ともまったりとした感じで良い具合なのである。

 何かの役に立つわけではないが、続きを読みたいという気分にさせる、そう
いうお話なのだ。

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