■銅大の読書万歳(23) 作品名:『フルメタル・パニック』 戦うボーイ・ミーツ・ガール 疾るワン・ナイト・スタンド 揺れるイントゥ・ザ・ブルー 終わるデイ・バイ・デイ 上 著者名:賀東招二 出版社:富士見ファンタジア文庫/富士見書房 ISBN:4−8291−2839−9 4−8291−2875−5 4−8291−2953−0 4−8291−1307−3 これまで、本コラムではシリーズ途中の作品は意図的に省いてきた。 理由は簡単で、作品の評価というのはやはり終わってみないと分からないか らである。 しかしながら、レースだって試合だって結末だけよりも途中経過の方が楽し いってことはよくある。読書にも同じ事が言えるかも知れない。 というわけで、えらく中途半端ながら作品の重大な分岐点に来ているであろ う本作品をご紹介しよう。 で。無事(かどうかは不明だが)この作品が結末までたどり着けたら、そこ でまた何やかやと書いてみるのも楽しそうだ。 まず、簡潔に設定だけ説明する。 ロボット兵器が実用化され、ソ連がまだ存在する改変された歴史世界。 主人公は戦乱続くアフガニスタン育ちの日本人で、凄腕の傭兵である。 彼は特殊任務を受けて日本の高校へ入っている。目的は、このロボット兵器 を始めとするあり得ないテクノロジー(ブラック・テクノロジー)と関係があ る少女の護衛である。 あえてジャンル分けをしてしまえば、『学園物』+『ミリタリー・アクショ ン物』である。 ああ、それと『ラブ・コメディ』を忘れてはいけないな。 実のところ、前者の二つは食い合わせがたいへんよろしくない。 シリアスなミリタリー物にしようとすればするほど、学園物との乖離が発生 するのである。無論、学園を吹っ飛ばすにしろ死人を量産するにしろ、一回こ っきりであれば何の問題もない。 シリーズ物にしようとすると、とたんに困ったことになるのである。学園を 毎回吹っ飛ばすわけにはいかないし、学友を大量に殺しておいて平然と学園生 活を続けるわけにもいかない。 それでも、対象読者のニーズとか出版社の意向とか、あえて毛色の違う物を 使って対比を楽しむとか、まぁいろいろな理由でそういうシリーズ物を書く事 になったとする。しかも、そこそこ人気が出て途中下車は不可だ。編集さんは 『3ヶ月に1冊』などとお題目のように繰り返してくる。 あなたならどうする? 1:学園物は途中であきらめ、シリアスなミリタリー・アクションへシフト 2:リアル路線はあきらめ、ギャグ風味の学園物にシフト 3:整合性など知った事か。書きたいように書く。 このうち3番を選べる人はよほどの大物かさもなくば大馬鹿者である。通常 は1番か2番だ。 そして作者の賀東さんはどうやら1番を選んだように(今のところ)思える。 そうすると、学園物の部分を期待していた読者が離れる危険性があるが、合 わせて『ドラゴンマガジン』誌に連載もしている短編集が2番の傾向なので、 商売としてのリスクは最低限に留めることができるだろう。 しかしながら、ミリタリー・アクションへ絞った場合でも学園物の頸木はつ いて回る。現代日本人の、それも若者の感性を無視するわけにはいかないので ある。(というか、富士見ファンタジア文庫の作家はすべからくそうであるが) もっと困ったことに、主人公の昔からの知り合いで典型的な悪役である人物 は前作できれいさっぱり殺してしまっている。 となれば、それまで味方であった存在を悪役にするしかない。 この先の展開としては―― □主人公、所属していた傭兵組織を離脱。 □かつての戦友が敵に回る。 □かつての戦友との和睦。 □傭兵組織の中からも主人公に同調する存在が現れる。 (伏線ではってある潜水艦1隻) □真の敵(の下僕)との戦い。 (やはり伏線ではってある潜水艦長の兄) □真の敵との決戦。 (歴史改変というからには『航空宇宙軍史』のように異星人か?) ――となる事が考えられる。 正直なところ、私はこのシリーズ、1作目は無茶苦茶だと思ったが、その無 茶苦茶な部分も含めて楽しく読めた。だが、シリーズが続くにつれ、その無茶 苦茶に整合性をつけようとして作品がこぢんまりとしてきているような気がし てならない。職人肌の作家さんゆえ仕方がないことなのかもしれないが、そう いった整合性や読者のニーズ(などと言われている物)など吹っ飛ばす勢いの あるシリーズ展開を(つまり上に書いたような展開にならないことを)期待し ている。
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