■銅大の読書万歳(22) 作品名:『消滅の光輪(1)〜(3)』 著者名:眉村卓 出版社:ハルキ文庫 ISBN :4-89456-783-0 4-89456-784-9 4-89456-785-7 この作品には、一つの特徴がある。 主人公がたいへん冗舌だということだ。 といっても、主人公が決してよく喋るわけではない。彼の内心が小説内で赤 裸々に描かれているという意味で冗舌だというのだ。しかも、この主人公、や たらと良く考える。一つの事柄からめったやたらと連想を続けるのだ。 一歩間違えると冗長と取られかねないこの主人公の冗舌ぶりは、同じ作者の 『不定期エスパー』でもいかんなく発揮されている。 ひたすら何ページにもわたって、あれこれと考えを組み立てる──しかも結 論は『どちらにせよ選択の余地はないのだ』とかが多い──くせに、決して読 みにくくないこの文章は眉村さん独特の物である。 なぜ読みやすいか? おそらく、主人公が真面目で論理的な思考の持ち主であるせいだろう。幾ら 思考を巡らせたとしても、決して論旨が破綻したりしないのだ。 それも当たり前と言えるかも知れない。 何しろ、本作品の主人公は植民惑星一つを管理する司政官なのだ。数万のロ ボット官僚を駆使し、連邦の意志を具現化する者として植民惑星の絶対者とし て君臨する存在……だったのは昔の話。 植民が進むと共に住人の力は強まる。司政官の仕事と言えばそれと結びつい た連邦内の公社や軍隊などの組織との間で、意見調整をするぐらいだ。 しかし、主人公が派遣された植民惑星ラクザーンは違った。 ラクザーンが巡る恒星の新星化が迫っていたのだ。 この恐るべき、そして不可避の大災害を前に主人公は司政官にのみ許された 強権を発動する。惑星の全ての権限を自分の元に集中させ、全人口を別の植民 惑星へと移住させるのだ。もちろん、これには大金がかかる。移住先でも金は 必要である。なりふり構わず主人公は金を集めていく。 さらに住民を始めとする数々の反対や発生する問題に対し、主人公は得た強 権を振るうことを全くためらわない。 決して私腹を肥やすためではなく。 決して名誉を求めるためではなく。 ただひたすら連邦の理念に従って行動する主人公。だが、作品を通して読者 が感じる連邦の制度や上層部の意志や行動はその理念からほど遠い。さらに言 えば、連邦という巨大な組織の中においては司政官などただの中間管理職の一 人でしかない。 そして、主人公もまた、その事に気づいている。 『消滅の光輪』──それは連邦の理念を人という形にした司政官制度そのも のの事を指すのかも知れない。 だが、それでもなお、主人公は歩みを止めることはない。 敗北が必至だとしても。 滅亡が不可避だとしても。 なぜなら、彼は司政官なのだから。
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