■銅大の読書万歳(14) 作品名:『探偵はバーにいる』 著者名:東 直巳(あずま なおみ) 出版社:ハヤカワ文庫/株式会社早川書房 ISBN:4−15−030521−8 ちょっと昔、風俗営業法が変わる前、「ソープランド」が「トルコ」と呼ばれ、 エイズがアメリカのホモだけが罹る原因不明の奇病だった頃、俺はススキノでぶら ぶらしていた。 本書は、この出だしで始まる。 主人公は〈俺〉。名前は登場しない。 何をやっているかというと、まぁ、何でも屋である。ススキノのような繁華街で あれば日本中どこでもそうであるようにいろいろともめ事のタネはつきない。 酔客が暴れたり、ツケを払わない客がいたり。誰かが突然行方をくらましたり。 そういう所に、〈俺〉は現れる。そしてもめ事を解決する。 解決には腕っ節(それほど強くはない。弱くもないが)も使うが、どちらかとい うとススキノをぶらぶらしながら身につけたコネと、口車を使う。 もちろん法律を遵守したりはしない。嘘だってつく。実は友人たちと麻薬を作っ て売ってたりもする。お調子者で女には弱い。小悪党である。 だが、自分の中にある『ルール』には忠実な男だ。 もちろん、その『ルール』が明文化されているわけじゃない。〈俺〉が偉そうに 過去やら蘊蓄を語ったりするわけじゃない。 読者に『こいつはルールを守る男だ』と思わせるのはその行動なのだ。 ここがポイントなのだ。特にハードボイルド系の主人公は。語ってはいけない。 そうすると、とたんに安っぽくなる。 だから〈俺〉はススキノをいったりきたりして。 真相に近づいたり遠のいたりして。 だが、決して諦めることなく。 そして今宵も。札幌の繁華街ススキノで。 探偵は、バーにいる。
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