■銅大の読書万歳(13) 作品名:『猫の地球儀:焔の章』『猫の地球儀2:幽の章』 著者名:秋山瑞人 出版社:電撃文庫/株式会社メディアワークス ISBN:4−8402−1388−7/4−8402−1487−5 著者は、筆達者な人である。 電撃文庫の中では、いや同じ角川系列の富士見やスニーカー文庫などの中でも構 成、文章力、いずれもトップクラスの物書きであろう。 その上で知りたい。 「楽の章」はどこへ消えた? この小説の舞台となっているのは遙かな未来。 人類は(たぶん)滅び。軌道上のラグランジュポイントに残された宇宙コロニー には、(たぶん)遺伝子改造で知性化された猫たちが住んでいる。 猫たちは電波信号を発するヒゲを持ち、それを使って機械やロボットを動かし、 独自の文化・文明を維持している。 その中でも独特なのが宗教だ。 猫たちの宗教によると死んだら魂は夜空に浮かぶ「地球儀」へ行く。いわば、地 球は聖地、天国なのである。 そんな世界にいる一匹の猫。 聖地へ、「生きたまま」行きたいなどとぬかすバカタレ。それがスカイウォーカ ーと呼ばれる猫。坊主どもに見つかったら即、異端として抹殺である。その37番 目が幽(かすか)という黒猫。天才で。天才すぎて。猫たちの宗教のおかしいとこ ろにまで気づいてしまう。 彼の夢は、36番目までのスカイウォーカーの夢を引き継いで、地球儀へ行く事。 そしてもう一匹の猫。 猫たちの娯楽でもある決闘──スパイラルダイブ──で勝ち続けてきた闘士、焔 (ほむら)。 こちらは白い猫である。やはり天才で、勝って勝って、勝ち続けて、とうとう闘 士の中でも最高位にまでたどりついてしまう。 彼の夢は強い敵と、全力で戦う事。 どちらの夢もたいへん難儀である。 そしてどちらの夢も、完全に自分の中に閉じてしまっている。仲間は、いない。 さびしい話だが、夢とは本来そういう物なのかも知れない。 だがここにもう一匹の猫。 映画のフィルム缶を抱え、『映写機』なるものを探している猫、楽(かぐら)。 焔の大ファンで、いつも彼についてまわる。 幽にも会い、友達になってやろうと言う。 楽にも夢がある。『映写機』を手に入れ、「活動」をみんなで見ること。 それはそうだ。映画は娯楽だから。 みんなで見る、「夢」なのだから。 だからこそ、私としては不思議でしかたがない。 夢が閉じてしまって、深みにはまってしまって、そこから抜け出せない幽と焔。 たとえ夢がかなったとしても、この二匹に未来はない。 だが、それを助けられるかも知れない。それが無理でも未来へとつなげられるか も知れない楽は。「楽の章」は。 ない。 最初に述べたように、秋山さんは作家として優れた人である。『猫の地球儀』を まだ読んでいない人がいたら、私はぜひ一読をお薦めする。読んで損はない作品で ある。 だが、それゆえにこそ。無い物ねだりと分かっていても。 私としては夢想せざるを得ない。 「楽の章」があれば、どうだったろうかと。
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