ソードワールド掛け合い所:2号室 LOG 001
ソードワールド掛け合い所:2号室の1999年03月18日から2000年06月18日までのログです。
2000年06月18日:02時52分00秒
キュアリオスティなんかいらない(蛇足) / 本吉
「戦神マイリーよ。自分の心に勝利を収めた娘に祝福を」
神官が神に祈っている。その後すぐに、わたしは全ての戒めを解かれた。
今は冒険者の店に向かっているところだ。
わたしはまだ、マイトの腕に抱えられている。
もうわたしは歩けるというのに、彼は下ろしてくれない。
さんざんに冷やかされてはいるけれども、みんなの優しさが感じられて嬉しい。
自然に『わたしは幸せなんだ』って思った。
もう故郷に帰らないといけない、とは言っても、これまでの空白を埋める事ぐらいいくらでもできるんだし。
分かってる?マイト。
帰りこそは、はぐれないでいてよね。
わたしも離れないけどさ。
あ〜、なんで顔が引きつってるのぉ?
へっへ〜んだ、覚悟しなさいよ。
もう、絶対に離れたげないんだから。
絶〜対に、絶ぇ〜〜〜っっ対にだからね!
2000年06月18日:02時21分31秒
ララバイをかき消せアーリーバード / 本吉
「降臨の儀式はもうすぐ終わりだ」
闇司祭が告げてきた。
わたしの抵抗は、結局のところ、何だったのだろう。
何をやっても、何を言っても、効果はなかった。
助けに来てくれた人々も、まだ、この館に潜むもの達に苦戦している。
しかも、その中に銀髪の男はいなかったそうだ。
「あら?儀式が完全に終わるまで、外の人達が待ってくれるのかしら?」
精一杯の虚勢を張るが、声に力がこもっていないのが分かる。
闇司祭はこちらを無視して、精神を集中し最後の詠唱に入ろうとする。
これが世の中の不条理ってものかしら?
わたしの魂は壊れてしまうの?
もっともっと長生きしたかったのに。
マイトとだって全然話し足りなかったのに。
やりたいことは、いくらだってあったのに。
子供だって欲しかったわ。マイトに似てヒネクレてて、いつも苦労ばっかり掛ける子で、親の言うことになんでも反発しちゃって、でも、最後には私の言うことをちゃんと聞くの、「わかったよ、母さん」っとか言って、マイトみたいに口を尖らせて、そうしたら、三人でそのまま一家団欒しちゃったりなんか・・・してみたかった。
って、待ってよ。『してみたかった。ふうっ』じゃないでしょうが!
マイト!ここに来てないって?じゃあ、どこにいるのよ。
イーカゲン出て来なさい。いまだったら、まだ怒んないからっ。
まさか!わたしの居場所を未だに知らないってんじゃぁ無いでしょうね?
わたし待ってるのよ?まだあなたのこと待ってるのよ!
さあ!はやく来なさいってば!
こんな奴に、いつまで私のこと好きにさせとく気なの!
鎖につながれた手足からは血を、相手を睨み付ける瞳からは涙を流すわたしの形相は、かなり怖かったに違いない。
だが、闇司祭はひるむはずもなかった。
私の方なんか、ちっとも見ていなかったから。
神への呼びかけのために集中していたから。
呪文の詠唱が始まるのも、もう後わずかだろう。
今度こそ、本当に、ダメかもしれない。
・・・・・・いやよ、絶対いや!
「マイトーーー!!」
もうわたし一人じゃダメなの!お願い。助けに来て!!
「リーナ!?」
え??
「リーナーーー!!」
そして破壊音!
わたしは、自分の正気を疑った。
聞こえるはずのない声と共に天窓から天使が現れたから。
左手に断罪の剣を持ち、その身を光の翼でおおい、それよりも強い光を瞳に宿して、わたしの前に急降下してきた。
舞い降りるだなんて生易しいものじゃなかった。
ファリス様にブン投げられたんじゃないかってくらいの速さで、降ってきたのだ。
それもそのはず。天使は私の待ち望む人の姿をしていた。
神々を怒らせるぐらいの事も充分やりそうな、私の愛しい人。
闇司祭は身の危険を感じ、とっさに身をかわす。
その表情は、驚愕に引きつっていた。
床に降り立ったマイトはバツが悪そうにこちらを振り向いた。
「ちょっと遅くなっちまったか?」
「もうマイトってば、『ちょっと』じゃないわよ。時間なんて関係ないの。女性を待たせたって所で、もうダメなんだからね」
言いつつも、わたしは笑顔を浮かべた。
わたしの顔は涙と血でベタベタになっていた。髪もメチャクチャになってる。
少しみっともないかな?と思った。
今まで聞いたことのある昔話で、助けられた時にこんな格好をしていたお姫様だなんて、聞いたことがなかったから。
私の内心を分かっていないであろう彼は、「待ってろ」と一言残して、敵に向かっていった。
破れた天窓からも、さらに飛び降りてくる人影がみえる。
扉が破られ、いく人かの戦士や魔法使いが飛び込んできた。
既に他の敵は打ち倒されていた。
グラスランナーの奏でる呪歌が響きわたり、声を聞く者に勇気を与えた。
魔術師は高笑いをあげながら、わたし達に魔法で援護してきた。
ポムは、闇司祭の隙に乗じ、杖を蹴り飛ばした。
シル姉さんと半妖精の呼びだした精霊が、闇司祭に恐怖と沈黙をもたらした。
天窓からも、いくつかの攻撃魔法が飛んでいく。
皆が傷付けば、後ろで待ちかまえる少女が傷をいやす。
魔法使い達の手からは、粉々になった魔晶石が幾つもこぼれ落ちていた。
そして遂に、マイト達戦士3人の剣が、槍が、斧が、闇司祭に迫っていき・・・。
闇司祭は最後の詠唱を唱えられぬまま、ただ、魂の自由をのみ、手に入れた。
2000年06月18日:02時02分18秒
終幕へのマーチ / 本吉
「シル姉、厄介なことになっちゃったねぇ」
人ごとのように抜かしている当人が、また妙な事態に首を突っ込ませてくれた。
小さな村で人知れず発生した惨劇。村人は一人も生き残っていなかった。
見過ごせるような事ではなかった。
私達にはラーティ様からの『頼まれ事』があるというのに、だ。
ラーティ様は私が旅立つ前にこう言った。
「シィル、お願いします。どうかマイトを見つけて下さい」
人から傅かれるだけだった彼女が、深く頭を下げていた。
彼女の言葉にこめられた苦悩は、私の心を突き動かすのには充分だった。
さらに、雇用者としての命令ではなく、親友としての頼み。
私はこういうシチュエーションにめっぽう弱かった。
で、流れに流れて、このような所まで来てしまった。
ここは、アルトーコ。
まだマイトは見つからない。
「マー兄の匂いはするんだけどなぁ」
ポムが妙な表現をする。
匂いはともかく、言いたいことは分かる。
私も感じるからだ。
マイトは必ず近くにいると。
事件について独自の調査を始めて、はや10日。
犯人は、闇司祭に間違いない。
既にアジトも突き止めた。
この数日が勝負だ。
「天の裂け目亭」とかいう酒場によって食事をとる。
しばらくあたりの冒険者を見まわしていると、酒場の外から凄まじい足音が近付いてきた。
昔ならマイトがこんな騒音と共に現れ、私達を冒険に連れだしていたものだ。
あの頃の仲間も、今ではポムだけになってしまった。
時間の流れを感じ、ため息をつきかけ・・・。
ドバタンッ!
扉を開き入ってきた男から、熱風が吹きつけてきたような気がした。
懐かしい空気を感じ、とっさに振り向き相手の顔を確認しようとする。
が、既に入り口には誰もいない。
「はれ?」
ポムの声が聞こえてきたときには、既に腕を掴まれていた。
そのままグイッと引っ張られ、相手の方に振り向けさせられる。
「頼む。手を貸してくれ!」
聞き慣れた声。
両肩をつかまれた私の視線は、相手の赤い瞳に縫い止められる。
その瞳のなかに、これまでの行いに対しての罪悪感などコレッポチも見あたらない。
自分の立場が分かってないだろう?なぁ、マイト。
「ねねねね、マー兄。今度はどんな事やる気?」
いきなり順応するなポム。
「闇司祭をブッ飛ばしにいく!」
まるで炎を背負っているかのような雰囲気でマイトが叫ぶ。
ふむ?この話に付き合うのもいいのかもしれない。
が、しかし、だ。
「マイト。お前はいつも唐突に・・・。歯をくいしばれっっ!」
私は叫んで、マイトの顔面に拳をめり込ませる。
「久しぶりとは言わんぞ。お前はラーティ様より捜索願が出ている。だが時間をやろう。一応、お前の話も聞いてやる。簡潔に、分かりやすく、一切の隠し事なく、速やかに話せ。黙秘することは認めん。ポム、逃がすなよ」
私がうっすらと浮かべた冷笑の効果は、プロからの折り紙付きだ。
「はいは〜い!」
嬉しげにマイトの後ろに回り込むポム。
「ってぇ〜。お前等って、ホンットに変わんねえのな。ちっとは俺を見習えって」
手加減したのが間違いだった。笑みを浮かべて、なおかつ戯けたことをほざいてきた。
お前を見習うなど、死んでもゴメンだ。
「じゃあ再開の挨拶はこの辺にして、だ」
言葉と共にマイトの顔から笑みが消える。
マイトの語った内容は、いくつかの点では私の期待を裏切らなかった。
リーナがさらわれた。しかも、私達が追っている闇司祭に。
闇司祭の実力は高く、いくつかのしもべをアジトに配している。
アジトは、街から離れた山中にある古代の遺跡。
その遺跡は既に冒険者達によって漁りつくされ、誰も立ち寄らなくなって久しい。
そこに目を付けたのだろう。
作戦の詳細は決まった。
救出目標はリーナ。
排除すべき障害は、闇司祭。
私達はいくつか準備を整え、救出作戦を開始した。
2000年06月18日:01時52分42秒
レジスタンス! / 本吉
「万物の根元たるマナよ・・・」
さらってきた娘を祭壇に横たえ、娘にかけていた魔法を一部だけ解いた。
娘は自分が置かれた状況を知り、身をかたくする。
「娘よ、名を何という?」
「・・・リーナ」
こちらから目をそらさずに答えてきた。
「ではリーナ、言っておこう。おまえには、暗黒神への生け贄になってもらう」
リーナにつげる。
だが、おびえる様子はなく、こちらをにらみつける瞳はどこまでも青く澄み渡っている。
「怖くないのか?助けは、来ないぞ。街につげることのできる者は、もう、誰一人いないのだからな」
リーナの表情がはじめて苦痛にゆがむ。
他者の痛みを知ってやれると思い上がる愚か者特有の表情だ。
「マーファ様、この生での苦しみが続くこと無きように、彼らの魂に導きを与えたまえ」
「この期におよんで、他者の魂の安息を祈るというのか?
おまえの魂は破滅するのだぞ?
貴様等光の神々を信仰する者達には、何よりの恐怖であろうが」
「破滅なんかしないもの」
キッパリと、しかも自然に答える。
「貴様の信仰する神々が助けをよこすとでも?
そんなことは最早あり得ない。神々はこの世界でろくな力を振るえず、人の心は闇に染まりつつある。
私に救いの手を差しのべてくださったのも、偉大なる暗黒神ファラリスのみだった。
あの村がいい例えだ。この世界は、光の神々に見放されつつあるのだよ」
「見放してなんかいない!わたしがあの村に立ち寄ったのだって、きっと偶然なんかじゃないんだから!」
叫んだかと思うと、顔をうつむけ静かな声で告げてきた。
「確かに、神々は肉体を失い、この世界へ直接介入できなくなったわ。
奇跡の技は、わたし達から遠くなってしまった。
でも、だからこそ、私達信者がいるんじゃない?
神々が何かをしてくれるのを待ってるなんて、もう古いのよ。
今は既に自分達で世界を動かしていく時代になってるんだから」
一息ついて顔を上げ、さらに続ける。
「教えておいてあげる。わたしを助けに来るのは、わたしのことを心から心配してくれている人。
周囲の環境に流されちゃったあなたには想像もできないでしょうね。彼ならあらゆる障害を乗り越えてやってくるわ。
神に頼ってるあなたとは違うの。彼って運命の紡ぎ手ヴェーナーにすら反旗をひるがえしちゃえる人なの。
それに忘れちゃいけないわね。普通の人が近付かない所ほど、冒険者にとって目立つ所はないのよ」
そう告げて、不敵な笑みを浮かべる。
「クッ、クククッ。面白い奴だ。良いだろう。儀式の準備が整うまであと半月、半月ある。それまでここでゆっくりと待つが良い」
「じゃあ、それまでにあなたも覚悟を決めておくのね」
「分かった。覚悟しておこうではないか」
儀式ががますます楽しみだ。
そうやって強がれるのも、今のうちだけだ。
そのまま儀式をむかえて、これまでに私の味わった苦痛を思い知れ。
裏切られた者のみが持つ傷を、貴様の心に刻みつけよう。
その傷から染み出た絶望が心を染め上げたときにこそ・・・貴様の魂は砕けるだろう。
リーナに背を向ける。
「必ずよ。必ずあなたに裁きは下るわ」
背にあたる声。
今度の生け贄ならば、ファラリスにも御満足いただけるに違いない。
後ろ手に扉を閉じ、神に祈る。
偉大なるファラリスよ。私はあなたに頼るだけの存在ではない。
私ならば、あなたの教えを世に知らしめることも可能だ。
そのための奇跡を我は求めるのだ。
ファラリスよ。我に自由を。
誰にも、そう、誰にも妨げられることのない自由を、我に与えよ。
部屋を後にした私の手のひらには、汗がにじんでいた。
儀式を前にしての、歓喜による汗だと、私は思うことにした。
2000年06月18日:01時40分54秒
どんな時でもグララン・ダンス / 本吉
シル姉。ここらで休まない?
\(”;) ネエネエ
だってぇ、天の裂け目亭でフレイムウィンドに蹴られたお尻が痛いんだよぉ。
p(><、) ビ〜
ダメ?ポムの自業自得?
p(=。=、) クスン
でも、もう日が暮れちゃうよ?あの村に寄ろうよ。野宿じゃ物騒でしょ。
(’0’)/ アレアレ
・・・あっれぇ。誰かぁ、いないのぉ?
\(”三;”)/ オーイ
あっシル姉、ここ、ここぉ!ひとが寝てるよっ!
へ(。 。)ノ゛ コイコイ
え?・・・しっ、死んでるぅ〜〜〜。
(。 。;)// ドッヒャー!
▽
村の人みんな死んでるぅ〜。
(TwT)ノノ ジョッバー
みんなレクイエムでゆっくり休んでよ。もう苦しくないよね?
♪〜(ーoー) ルルル〜〜
シル姉、どうしよっか?このまま、マー兄さがす?
く(’n’) 困ったねぇ・・・
そうだ!見なかったことにしない?きっと踊ってるうちに忘れちゃえると思うよ。ね?
〜〜〜\\(^v^)、 ヒラヒラ〜
え?やっぱりダメ?
c< TーT) イタ〜イ・・・
え゛っ、天の裂け目亭に帰るの!?
(−◇−;) え〜
ポムあそこ嫌いだ!馬がすぐ蹴るもん!
p(−m−三−m−)q イヤイヤ
で・・・結局こうなるのね。
O<(’x’、)//===3 ズルズルズル・・・
2000年06月17日:22時40分14秒
届かなかったヒーリング / 本吉
「さあ、こちらに来い。娘よ」
漆黒のローブに身を包んだ男が立っている。
「に、逃げ、るんだ。あんたには、待ってる人が、いるんだろ」
男の前に立ちはだかろうとする老人が、息も絶え絶えに声をあげる。
「だめよ。あなた達こそ逃げて。お願い、こんな事で命を粗末にしないで!!」
全身で叫んだのは、村人達をはさんでローブに身を包んだ男の正面に立つ傷だらけの娘。
だが実際のところ、周りで倒れている村人にも、一番傷の軽いであろう娘にも、逃げるすべはなかった。
彼女が、人を捜す旅の途中で、この名も無い村に来たのは数ヶ月前のことだった。
この村に足を踏み入れた彼女は、ますは呆然とし、ついで、世界に怒りを覚えた。
そこは老人ばかりの住む、病に冒された村だったのだ。
村に住む人々は生に絶望し、病に苦しみ、死を渇望していた。
彼女は、当初持っていた目的を心の奥底にしまい込んだ。
あの人ならば自分がどこにいようと見つけだし、必ず迎えに来てくれると信じて。
彼女に村を放置することは、できなかった。
村人に対する彼女の献身は並々ならぬものだった。
彼女は持てる能力の全てを駆使し、まず、村人の病の苦しみを取り除こうとした。
が、村人の態度は、冷たかった。
彼らの絶望は、彼女がいくら足掻こうが埋められない空虚な穴。
彼らの心の穴は、彼らが求めるものでしか埋めることができない類のもの。
そう思い知らされても、彼女はその村を離れなかった。
村人達の過去に何があったのか、分からないままに日々はすぎていた。
彼らの村に男が訪れ、若き癒し手の身柄を要求し、その要求を村人全てで拒絶したときにも。
そして、その男−闇司祭によって、知る機会は永久に失われた。
「ファラリスよ。生に束縛されし者どもに永遠の自由を!」
その後に続く呪文の声を追って、強烈な衝撃波が走った。
闇司祭の真正面に立つ娘に。周囲に倒れた村人達に。小屋と呼んでも差し支えない様な家屋に。
彼女が顔を上げた時には、既に息のある村人はいなかった。誰一人として。
「ファラリスよ。彼の者に自由を理解させんが為に、束縛を与えよ」
闇司祭の手が娘に触れる。
そして、彼女の意識は闇に呑まれた。
彼女の名はリーナ。
彼女を助けるべき者は、未だ、遠くを彷徨っていた。
2000年05月08日:01時15分58秒
小さな英雄 / 本吉
「遠き者は声に聞け、近き者はしかと見よ。今こそ語られる、勇者コーリィの冒険談を」
店内に広がる声、楽器の音色。
そこで紡がれているのは、小さな少女のささやかな冒険談。
だが、そこは詩人の語ること。
随所に誇張や、創作が入っている。
その唄も中盤にさしかかり、いよいよこの「天の裂け目亭」に舞台が移る。
やがて情景が目に浮かんでくる。
・・・・・・・・・
「じゃあ、コーリィ。ここで大人しく待ってるんだぞ」
あたしは初めての場所で父さんの後ろから離れるのが、とても怖かった。
でも、父さんはカウンターにいるおばさんの方に行ってしまった。
あたしは自分に言い聞かせた。
あたしは一人でも寂しくない。
あたしは寂しくっても泣かない。
あたしはその場でグッと拳をにぎりしめた。
そうして入り口の所で父さんを待っていると、きれいな海色をした瞳の日に焼けたおばさんがやってきて、話しかけてくれた。
「オヤジさんを待ってるのかい。そんなところで立ってないでさ、こっちでミルクでもどうだい?」
そう言って、おばさんが大声でカウンターに注文をすると、お父さんがこっちを振り向いてうなづいたので、あたしはイスにかけよった。
「おばさん、いただきます」
おばさんはなぜか自分の剣の方をにらみながら、
「いいんだよ、”お姉さん”も」と妙に力を入れてから
「のどが渇いてたからね」と言い、こっちをみてニッコリと笑った。
・・・少し目が怖かった。
あたしはミルクを飲みながら、おば・・・お姉さまと話をはじめた。
しばらくして、奥の扉から、何か白っぽいお兄さんと真っ黒なお兄さんときれいなリボンをたくさん着けたお姉さんとが出てきた。
すると、お姉さまの雰囲気が変わった。
何か、怖くなってる。
そしてこちらを振り向いたお姉さまが、あたしの手を引き入り口の方に駆け出そうとし、すぐに立ち止まった。
いつの間にかお姉さまの視線の先に、不気味な騎士と、戦車を引っ張っている馬がいた。
なぜかすごく怖かった。
あの騎士は闇の狭間から来たに違いない。
でも、あたしは騎士をにらみ返した。
きっと、ここで逃げてしまえば、もう父さんと旅ができなくなる。
夜の闇も、見知らぬ人も、向かい合えば平気と思えたからこそ、ここまでついてきたんだ。
怖くても、あんたなんかには負けない!
震えながらも騎士をにらみ返すあたしの肩に大きな温かい手が乗った。
「コーリィ、よく頑張ったな。あんな鎧の怪物共なんか、父さんが追い返してやる」
父さんの声だ。
「すまなかった、お嬢さん。娘のことは任せてくれ」
父さんの手から温もりが流れ込み、父さんの声に乗って勇気が運ばれてくる。
あたしはもう怖くない。
だって、あたしの前には父さんの背中があるから。
どんな壁よりも、どんなおまじないよりも、あたしをしっかり守ってくれる父さんがいる。
そう、あたしはもう震えていない。
お姉さまはあたしを見つめると、小さく笑って、駆け出していった。
「コーリィ。すぐに終わらせる。今のうちに外に行って治療道具を一式取ってきてくれ」
父さんが騎士を牽制しながら声をかけてきた。
「うん。すぐ取ってくるから、まかせといて!」
あたしは外に向かって駆け出した。
はやく馬車から帰ってきて、父さんを驚かせるために。
・・・・・・・・・・
詩人の紡ぐ物語は、少女が自分の胴体ほどの荷物と格闘するところで最高潮を迎える。
だが、少女は苦難の末、勝利を収めるのだ。
そして、少女の小さな輝きを織り込んだ物語が紡ぎ終わり・・・。
「ちょっと、やめてよ!照れるじゃない」
少女は隣に座る半妖精に飛びついた。
顔が赤い。
自分のことを唄われたので照れているようだ。
楽器を抱えたままの半妖精は、あわててテーブルの周りを逃げまわる。
横で見ていた半妖精の仲間達が無責任な声援を送る。
その隣でドワーフにコキ使われていた青年が、そっちを振り返り微笑んでいる。
だが、横で丸まっていた黒猫に引っかかれ、すぐに店の修繕に戻った。
夜も更け、大騒ぎが繰り広げられていたテーブルも、今は静寂を取り戻している。
小さな英雄は、父の膝の上で安らかな寝息を立てていた。
2000年05月03日:17時16分42秒
ティルンの嘆き / (一行掲示板より)本吉
「天井の破れ目亭?」
違うな。天の裂け目亭だろう。
ここは冒険者の集う酒場のようだ。
いきなり前の宿を追い出されて懐が寂しい。この宿なら、手頃な部屋に唄う場所もあるだろうと思って入った宿だが、選択を誤ったかもしれない。
俺と相棒はこれまで、長い旅はしてきたものの、冒険と言える程のものに関わったことがない。
相棒には度胸や勇気といったものが不足している。未だに、師匠から教わった魔法を使いこなせないのも−いつも見当違いの魔法ばかり掛けやがる−そのせいに違いない。
店内に入る。
荒くれ者が集まるという冒険者の店。話には聞いていたが、イメージと大分違う。
確かに荒れてはいる・・・店の方が。
補修して間もない床に、煤けた壁。
あの焦げ方は魔術でも使った後ではなかろうか?
まるで、この中で戦闘でもあったかのようだ。
「あのー、すみません。部屋は空いてますか?」
俺の頭上で間延びした声を上げたのが、俺の相棒であるフォウン、フォウン・ルナックだ。
長身の身体をローブに包んでいる。竪琴と杖を背に背負い、更に何やら後方に引きずっているのだが、それについてはあまり説明したくない。
浮かんでいる表情がもう少しキリッとしていれば、それなりに見所もある顔なのだが。
「良かったですねぇ。部屋空いてるそうですよ、ティルン」
このぼんやりとした表情が、すべてを台無しにしている。しかも、中味もかなり抜けている。
ガリッ!!
フォウンの足をひっかいて抗議する。
堂々と俺に話しかけるなっ。俺の見た目はただの猫だ。
カウンターに座っている女剣士も怪訝な目で俺たちを見てる。いや、あいつも剣に話かけているから、同類かと思っているのかもしれんぞ。
もうこれ以上のトラブルは、ごめんだ。
普通にしてろ、普通に!
自己紹介が遅くなってしまったな。
実は、俺は高貴なるツインテールキャットだ。
名をティルナード・リュンターと言う。
フォウンの師匠に恩があって色々コキ使われてきたが、今じゃフォウンの相棒として旅をしている。
見よ、この凛々しい眉目、美しい漆黒の毛並み、研ぎ澄まされた爪。普段は隠している2本のすらりとした尾。そして!人を魅了してやまない、このニクキュウ。
フッ。自分で惚れ惚れしちまうな・・・。
「さて。このままじゃどうしょうも無いですから、この人を部屋まで上げちゃいましょうか」
俺が自分の世界に浸っている間に、フォウンは一人と一つで2階へ上がって行ってしまった。
チッ、まあ良いだろう。俺に手伝わせようとしないだけでも、大した成長だ。
俺は酒場の隅に行き、身体を丸め一休みする。
今現在のトラブルは、フォウンの後ろで布団に巻かれて引きずられていく物体だ。
「アレ」のおかげで、俺のこの美しい毛並みが汚されてしまったんだ。フォウンも転ばされたり、焦がされたり、宿を追い出されたりしたんだが、それは些細なことだ。
本人は楽しんでいるようだし・・・。
いや、「アレ」などと言ってはいけない。れっきとした精霊使いだ。ただイタズラ好きなだけだと思うが、この街で会ってからと言うものフォウンにちょっかいをかけてくる、困ったヤツだ。
師匠の元で修行していた頃も、いつも師匠に魔法でおちょくられていたものだ。この街に来てもやっぱり、そういうトラブルに巻き込まれている。
まあいいさ。俺に被害が来ない様にだけしていれば、好きにやってくれればいい。
・・・・・・
物語を探して旅する詩人。
夜の森、道に迷った詩人。
森の中を彷徨い、もう真夜中。
疲れて座り込んだところで、遠くの方からにぎやかな音が。
笑い声でムズムズ、
歌声を聞き立ち上がり、
不思議な楽器の音色に惹かれてついフラッと森の奥へ。
しばらくすると見えてきた、大きな木の根本で輪になって歌い踊る精霊達。
詩人は驚くよりも、精霊達の奏でる音色にもう夢中。
・・・・・・
ふと気付くと、フォウンが一階の酒場で歌を唄っていた。宿の主人に交渉したのだろう。
俺は少しばかり眠っていたようだ。
ある程度稼ぎの見通しも立ったようなので、俺は安心してもう一度丸まり、歌に耳を澄ます。
恥ずかしげに美声を披露するスプライト。
スプライトに負けじと歌うドライアード。
ポコゴンガツとノームの打楽器。
家から持ち出した箒で、リュートを弾くまねごとをするブラウニー。
ほら、ここにも聞こえてくる。
こんなステキな歌声が。
俺の野生の勘が告げた。
何かヤバイ!
フォウンの表情に、何か企んでいそうな笑みが広がる。
人を引きつけずにはいられない、高らかで軽快な音色。
フォウンの口からキュアリオスティの呪歌が紡がれる。
歌声と楽器の伴奏が、店いっぱいに広がる。
一階で酒を飲んでいた酔っぱらいも、二階でくつろいでいた泊まり客も、外にいた人も、好奇心を刺激されて、皆こちらに注目する。
ゲッ!あの精霊使いまでもが顔を出してきた!!
「ぬうっ。話の腰を折るでない!」
爺さん、そういう問題か?
「いいんじゃないの、楽しそうだし。兄ちゃん、芸でも始めるのかい?」
そんな悠長なモノではない。
「こぉら!またこんな所で油売りおって!!いいかげんにしろ!!」
「イタタ。親方、今度は違うだよ。勘弁〜」
あいつは幸運だ。逃げることができただけでも。
やっと、曲が落ち着く。
その日は、精霊のお祭りの日。
楽しいことが大好きな精霊が集い大騒ぎ。
それを見ていた詩人も、ついつい輪の中に。
最初は驚いた精霊達。
でも、きれいな歌声に惹かれて皆で大合唱。
みんなで唄い、
みんなで踊る。
きらめく水しぶきをあげるウンディーネ。
長い髪をなびかせ空を飛び回るシルフ。
闇に映えるウィルオーウィスプ。
炎の軌跡を描くサラマンダー。
輝くジャベリンを手に舞うバルキリー。
こんな時でも、レプラコーンはシェイドを使ってイタズラ。
精霊達は、詩人の歌が気に入った様子。
さあ、あなたも一緒に輪に入りませんか?
・・・また曲が変化した。
心が浮き立ち、身が軽くなるような音色。
周囲の人間の何人かが手足をあげて踊り始める。
ただし表情は、楽しさとは程遠い・・・一部を除いて。
ダンスの呪歌だ!
「カ、カヲル様〜。僕は、僕は・・・」
こ、このエルフ、泣きながらも踊るとは・・・。
「わっ、今度はダンス?楽しい曲だね」
「フム、なかなか・・・」
「ねえっ、何をそんなに落ち着いてるのよ!」
おまえ等ッ、何を楽しそうに踊っていやがる。抵抗したんならトットと逃げろッ!
俺は逃げたくとも逃げられんのだぞ!
そう、俺もなぜか踊り始めてしまった。あんな半人前の呪歌に影響されるとは・・・。
どんどん調子が速くなる伴奏。
歌声も最高潮だ。
後ろから近づいてくる足音。
ダンスによる足音とは、明らかに違う。
かき鳴らされる竪琴。
近づく足音。
ひときわ大きな音で竪琴を鳴らし、曲が落ち着きを取り戻す。
ふと気付くと、空がうっすらと白み始める時刻。
朝日が昇るまでに、精霊界に帰らなきゃ。
明日から仕事で大忙し。
じゃあ、みんな。また今度。
精霊達は、詩人にお別れの挨拶。
バチバチ、ゴツゴツ、ボウボウ、バッシャーン、ヒュゴー。
親愛の情のこもった挨拶。
詩人は、もう、もみくちゃ。
・・・・・・。
森のはずれで目覚めた詩人。
昨夜の大木は見あたらない。
あれはやっぱり夢なのか?。
詩人はそれで納得し、鼻歌歌い人里へ。
いつの間にかボロボロになった服には気付かないままに・・・。
リュートの音色が空気にとけ込んでいき、静寂が戻った。
皆、沈黙し事の成り行きを見守る。
そんな中、フォウンと精霊使いだけが落ち着き払っている。
フォウンが曲の余韻からさめる。
そして一声。
「どーも。気分はいかがですか? 」
聞こえてくるフォウンの抜けた声。
「もー絶好調。と、いうことでさっそく呪文を・・・」
ああ、始まった・・・モウダメダ。
結局は面白がる周囲の人々。
じきに後悔するだろう。
あいつらのジャレ合いに巻き込まれて!
遠くなる暖かい寝床。
遠くなる温かい食事。
そんなことを思い浮かべながら、俺は一目散に被害の及ばぬ所まで逃げ出していった。
2000年04月16日:04時21分18秒
遅れ(すぎ)て来た二人 / (戦闘はどうしたって?さあ?)本吉
とある街中を歩く二人組。
一人はノッポの魔術師の青年。
一人は小さな狩人の少女。
旅塵にまみれたこの二人、旅の途中のようです。
さて、なにを話している事やら・・・
ねえ、カルツ。もう休もうよぉ。
人間とグラスランナーじゃ、体のつくりが違うんだから〜。
そうですか?まあ確かに、私と比べるとピエラの体力は無尽蔵に思えますけど。
いたっ!叩かなくても・・・。
ふむ、「闇の中の灯り亭」ですね。
そうですね。今日はここで泊まりましょうか。
キィッ、パタン。
・・・「・・・!!・・・!!」キンッ、ガスッ!
どこかから争いの音が聞こえてきます。
マスター。部屋は空いていますか?
・・・・・・???ピエラ、何か変ですね?
なになに?
あら、わぁー面白いじゃない!
中と外じゃあこんなに違うんだ。
・・・ねえ、入り口間違えたんじゃない?
・・・ボウッ、ピシャーン!ガラガラ・・・!
ふぅ、面白い事ですか。
この宿は明らかに、外から見た時と広さが違いますね。造りまで全く違います。
ですが、確かに、私達は「闇の中の灯り亭」に入りましたよね。
そうよね?でも、いいんじゃない。
あたいなら別に気にしないわ。騒々しくて埃っぽい宿も、あたい好きよ。
・・・ゴン!ドターン、ゴロゴロ、ガツッ!
騒々しくて埃っぽいのは、宿のせいじゃないでしょう。
目の前でデュラハンと冒険者の方々とが、戦闘してるようですから。
あら、そうね。どうするの?
・・・「あぶな「行けー!「こっちに来「バルキ「ひけっ」リン!!」ドカバキ!
言うまでもありませんね。
私のソーサラマジックの出番でしょう。
・・・「で「これでどう「フハハハッ!!」!」ゴィンッ!!
じゃあ、気をつけてね〜。
・・・ピエラも加勢するんですよ。
・・・「エ「まだ!」ルト!」キュィン、バチ!!
エー、あたいは、か弱い女の子なのにぃ。
カルツ、がんばれ!オットコッの子!
なに言ってるんですか。
ピエラは私の命を何度も救ってくれたでしょう?
悲しいことに、私はあなたを守りきれていないのですよ。
・・・「スト「ライ「おまえで、ガシャーン!!ぁぁ!」ガィ〜ン!!
えっ、そんなことないわ!あたい、全然そんなこと思ってないもの。
あたいカルツがいなければ、今頃どうなっていたか。
あたい達は、二人で助けあってきたんでしょう?
お願い!そんなこと言わないで・・・。
そうでしたね。私とピエラは背中を預けあった仲でしたね。
ほらほら、いい子ですから落ち着きなさい。
こうしている間にも戦いは進んでいるんですよ。
さあ、行きましょう。
・・・ガラガシャーン!!ゴロゴロ・・・。ゴトン!
待って!!
行っちゃダメ!カルツ!
心配しないで下さい。
あまり危ないまねはしませんから。
・・・・・・・・・。
ちがう、ちがうのよ!
カルツ、気付いてないの?
ダメなの・・・。もう手遅れなのよ、私達。
そんなことありませんよ、ピエラ。
私を見くびらないで下さい。
・・・。
そんなことじゃないの!
もう、終わってるのよ。・・・戦闘が。
はぁ!?
・・・シーン・・・
・・・・・・狙ってましたね?
へへへ〜。
じゃあ、私は薬草で皆さんの怪我を手当します。
あなたは呪歌で体力を回復させてあげて下さい。
お願いしますよ、ピエラ。
わかったわ。
さあ!みんなで踊って、元気になろう!
違うでしょう。
フンだ!
あんまりあたいに冷たくすると、後が怖いのよ。
じゃあ、今夜は一人部屋で寝ますか?
え〜っ!?・・・わかったわよ。
じゃあ、お願いしますよ。
おや、皆さん、もう治療を始めていらっしゃる。
では、私も・・・。
実はここは、「天の裂け目亭」。
元々彼らのいた地より、遠く離れたところ。
さて、この後二人は治療に大わらわ。
自分達の現状を考える暇もないくらいに。
こうして、彼らの夜は更けていく・・・。
2000年04月16日:04時00分56秒
天使の誘い?死神の一押し? / 本吉
ねえ、暇そうね。
今、奥から入ってきた3人組は見た?
心の中の冷たい炎を持て余している魔術師、捜し物が何かすら判らないマイリー神官、心の渇きに苦しむ吟遊詩人ってところかしら。
きっとこの先、あらゆる所で騒動をまき散らすわね。
あの子達となら、あなたの探しているモノも見つけることができると思うわ。
あらっ、しらばくれてもダメなんだから。
あたしには見えるの、あなたの心に渦巻くものが。
仲間になるきっかけなんか幾らでもあるものよ。
ほぅら、向こうからきっかけが来てくれたわ。そろそろあなたの出番ね。
あたし?あたしの名前は・・・そうね、決めたわ。あたしの名前はクローネ。旅の占い師クローネってとこね。
別にいいじゃない、細かいことは気にしないものよ。
それじゃ、ごちそうさま。
え?あたしの胸の鑑賞料じゃないの。
何をうろたえてるの?耳まで赤くして。
ウフフ、その顔に免じて相談料はまけておくわ。ホントは、どっちも高いんだから。
次は覚悟しておくのよ。
じゃ、またね。
2000年03月20日:02時59分15秒
探索者マイト / (時間を少しさかのぼります)本吉
「今度こそは・・・」
やっと酒場が見えてきた。情報が確かなら「天の裂け目亭」という酒場のハズだ。
俺は歩く速度を落とし、一息つく。
すると、後ろから男が来ることに気付いたので、俺は脇に避けた。どうやらこいつも、あの酒場に用があるようだ。ずんずん突き進んでいき、扉をくぐり。
「こぉらティム!!このサボり魔が!こんなとこで油売ってやがって!」
中でものすごい怒鳴り声をあげる。
おお、怖い。ここまで聞こえてくる。
俺の名はマイト、マイト・カストラだ。
冒険者として、剣を振るっていたころもあった。今では妻を探して大陸中をさまよっている。
リーナは旅の途中によった宿で、ふとした拍子に消えてしまった。俺はすぐに賢者や魔術師を訪ね、リーナの行方を追いはじめた。
もう一年になるが、リーナはまだ見つからない。生きていることは確かなんだ。
あちこちで聞き込んだ情報も、この「天の裂け目亭」で最後だ。
酒場の前に立ち、ドアに手を伸ばす。
リーナ。今度こそは。
と、意気込んだ俺の顔面を何かが直撃した。
中から開いたドアにへばりついた自分を意識したのを最後に、俺の意識は闇に沈んでいった。
クゥ、またこんなオチかよ・・・。
2000年01月05日:00時44分09秒
天の裂け目亭騒乱!? / (ハデにやるけど、怒らないでね。)本吉
(天の裂け目亭楽団による交響曲第12楽章「降ってわいた狂想曲」もしくは新入冒険隊による独奏曲終楽章「終わらない即興曲」より)
「ちょっとカフィ、正気なの?」
リルのまだ幼さの残る顔は、興奮の余り真っ赤になり、今にもつかみかかってきそうな−いや、もう胸ぐらをつかまえられていた。たいした早技だ。
振り回されているハーフエルフはのんきな顔だ。リルと変わらない体格に、少し尖った耳、肌の色は紙の白さだ。整った顔には、底抜けののんきな表情が浮かんでいる。床に落とした竪琴で、吟遊詩人だろうと見当がつく。
こんな時でも、カフィは弦の調律のことを考えていたりした。
「聞いてるのあんた。デュラハンの呪いに真っ向から立ち向かおうなんて信じられない。ドルなんてね『俺は宣告を受けてない』とか言って、姿くらますこと考えてたのよ。自分のやろうとしていることが分かってるの?ねえ、どうなの!」
ここまで一息に言って、カフィの胸ぐらをつかむ様は、はっきりいって、かなり恐い。この小柄な体で、どうしてこんなに人を威圧できるのか。
まだ未発達な胸に大きく息を吸い込み、なおも言い募ろうとするところで、何とか声を出せるようになったカフィが切り返す。
「何も、そんなに突っかかることないだろ。確かに無茶言ってるのは承知さ。だからこそこれまでにあちこちの遺跡で集めたものを、倉から引っ張り出してるんじゃないか。そういうリルだってしっかり武器や防具を身につけてるし、ドルも、あれだけ逃げるって言ってたのに、まだここにいるし。なんだかんだ言っても二人とも手伝ってくれるんだろ、いつもみたいにね」
そう言って微笑むカフィの顔をにらんでいたリルも、ひとつ大きなため息を吐くとカフィから手をはなし、まだ文句を呟きながらも、短衣の裾をひるがえし、倉の中の装備を探り始めた。
ドルはすでにいつもの服装に着替えている。黒いソフトレザーに黒のマント、ここまでは分かる。だが、黒のシルクハットをかぶるあたりから、怪しさが増す。先が180度曲がってしまったステッキなんか持って、何に使うのだろう。まるっきりコメディアンだ。
本人曰く、これが魔術師の正しい在り方だと力説しているが、何か勘違いしているのでは、といつも思う。オランの魔術師ギルドでどんな事があったのだろう?
リルは既にスケイルメイルを着込み、スピアを手に取って腕慣らしをしている。そのしなやかな動きに見とれていると、唐突にスピアの柄で頭を殴られた。
「いつまでボーとしてるの?」
カフィはリルからスプライトの精霊が働いていることを感じたが、そのことには触れずに、後頭部を押さえて倉の戸を開けに行く。
「あっ!」
後ろから聞こえた声の内容よりも、声を発したのが普段喋らないドルだと言うことに驚き振り返る。
「どうしたんだい?」
カフィが聞いてもドルは後ろ手に何かを隠し、首を振るばかりで答えない。リルは気にした様子もなく、扉が開くのを待っている。まあ良いかと扉を開けて外に出ると、
・・・・・・そこは酒場だった。
「はぁーーーっ、今度は、ドルなの」
「・・・巻物を広げただけだ」
後ろから聞こえるリルとドルの声。どこからともなく聞こえる蹄と車輪の音。
「うひゃぁ。来たみたいだね、デュラハン」
言葉と裏腹に、わくわくしたカフィの表情。
「もー、何でもいいわ」
どこか疲れたリルの声。
唐突に、酒場のホールに現れるデュラハン。
異変に気付く酒場の人達。
・・・・・・
ゆっくりと上がっていくデュラハンの腕
『マナよ!障壁となれ!!』
朗々と響きわたる、ドルの呪文の詠唱。
・・・・・・
死を宣言するその指の行き先は
「あんたになんかカフィはやらないよっ!」
既に構えられたリルのスピア。
・・・・・・
一心に精霊に呼びかけるカフィの姿。
『バルキリーよ!死を恐れぬ勇気を我等に!!』
カフィの瞳はデュラハンからの宣告に呑まれない。
「おう、坊主。助太刀するぞ!」
そこここであがる、呪文を詠唱する声、武器を構える音。
「いくぞーっ!」
「おーーっ!!!!!」
勇ましいリルのかけ声。それに答える、酒場全体を揺るがす大音声。
さあ、独奏曲から交響曲へ・・・
99年05月20日:02時10分40秒
ラムリアース戦記外伝:幻視 / T2
ルーンの街。下町の長屋には、普段よりも暖かな日差しが降り注いでいる。
彼、『黒司祭』アレクがこの街に来てから半年以上が経つ。只管に彼が、狂気ともいえる熱心さで街の者を見てきた甲斐もあって、近頃は彼の診療所を訪れる者も少しは減ってきていた。
そのお陰で、彼にも休憩する時間が出来ている。
「偉大なる我が神よ、汝が加護が我が身を通して万人に与えられん事を。」
簡単な祈りを捧げて、彼は昼食を摂りはじめる。身なりとは裏腹に、それは非常に質素なものだ。彼にはこの街に来るまでに冒険者として得た蓄えがあったが、それは人々の薬代に消えていく。無論、侯女からの援助もあるにはあるが、それでも倹約しない訳にはいかなかった。なにせ、彼にとっては「人を癒す事」が最も重要な事柄なのだから。
食事が済んで、彼は窓辺の椅子に腰を下ろした。普段なら近くに住む誰某が何か言いながら駆け込んできたりもするのだが、今日に限ってはそういう事はない様だった。
日差しが暖かい。
まるで戦争の事など遠い国の事であるかのように。恐らく侯女は今も重臣達を集めて会議をしているのだろうが、彼には関係のない事だった。何しろ戦場は遠い。癒しを待つ者も沢山いるだろうが、何か非公式にでも要請があるまでは彼はこの場所を動けなかった。
下町の喧騒が遠くに聞こえる。
彼は何時しかうたた寝を始めていた。
突如、彼の視覚に衝撃的な物が飛び込んでくる。
倒れた女性。その黒いレザーアーマーには見覚えがある。彼女が倒れた辺りには、黒い血が地面に染み込みながらも次第にその輪を大きくしている。
彼女を見下すように立っている男は誰だろうか。その男は地位のある者らしく、周りの者に女性の処置について命令を下していた。
突然場面は切り替わる。
同じ戦場の、異なった場所だ。そこは傭兵の部隊のようだった。様々な格好をした者達が、一人の隊長から命令を受けて戦闘を行っている。
不意に、視覚が一人の傭兵に引き付けられた。
美しいブロンド。意志の強そうな眼差し。すっと通った鼻筋。
夢の中のアレクの胸が、不意に切ない感情に満たされる。そう、あれは、あれは。
女傭兵の後ろに、一人の敵兵が近付いていた。彼女は乱戦でそれに気付く事もない。敵兵の剣が、容赦なく振り上げられる。
「危ない!」
アレクは、自分の声で目を覚ました。今の夢の内容を、はっきりと覚えている。何度か、彼にはこの様な事態に覚えがあった。
大変だ。
「神よ。貴方のご配慮に感謝いたします。」
そう呟くと、アレクはしまい込んだ装備を取り出しはじめた。
近い内に、目通りを願わねばならないようだ。
99年05月09日:00時01分23秒
フィフの語った話 / Djinny
以前IRC−CHATで発生したお話を再編集しました。ログ部分にはほとんど手を加えていないので、読みにくいかと思いますがご容赦ください。
なお、編集したのはDjinnyです。ご苦情などはdjinny@geocities.co.jpまで。
乳母(Djinny) 「お見合いのお話を持ってまいりました。そろそろ身を固めて頂きませんと。有らぬ噂が立ちますぞ」
カヲル侯女(カヲル) 「ええっ! そ、そんな、私・・・」
カヲル、側近の美少年のほうを見やる。(註:カヲル候女には、他にもいっぱい美少年や愛人がいるらしい)
側近のフィフ少年(Djinny) 「姫さま………」
少年、うるうると目を潤ませる。
カヲル、とりあえず、見合い用の絵姿を見てみる。(美少年だったら即オッケイ)
カヲル 「どんな相手ですか?」
乳母が見せた絵姿には・・・カエルみたいなのと、ブタみたいなのと、馬みたいな男達が。
カヲル 「却下!! あなた、美意識というものがないの!?」
乳母 「何をおっしゃいます!!」
家柄の欄を見ると、どれもすごくいいらしい。
乳母 「この長い顎の殿方など(うっとり)姫さまに相応しい方ですわ」
乳母、馬面が好みらしい。なお、男の家系は、隣国の王族に連なっている。
カヲル 「うーん、あなたって、すごくよく仕えてくれるのだけど・・・その趣味だけは何とかならないものかしら?」
カヲル、しばし考え込む。乳母には弱い。
乳母 「男は顔の長さです!(断言)しかも、玉の輿とはこのことですのよ」
カヲル (結婚して、1年くらいしたら不慮の事故にあってもらうというのはどうかしら・・・)
乳母 「何をお考えで?」
カヲル、ギクっとする。
カヲル 「玉の輿といっても、私は、この領地の領主よ? よそに行く訳にはいかないわ」(必死でごまかす)
カヲル 「第一条件として、うちに入ってもらわないとね」
乳母 「いいえ、お子様ができれば、この領内だけでなく、あちらの領地も」
カヲル 「だから、これは下げてちょうだい」(懇願)
乳母 「…はい」
この事があった後、カヲル侯女は、皇帝陛下に取り入り、愛妾の地位を得るのであった(^^)
Djinny こら〜!!(^^)
中略(この後、掛け合いは終わり、新たにredさんも参加して、雑談に戻りました)
(以前別の掲示板で登場したカヲル候女を sw-kake2 に登場させようという話が出る)
Djinny: Kake2なら、カヲル候女はのびのびできそう。
kaworu: のびのび・・・むさい男が多い冒険者の店で?
kaworu: あ、エルフとかもいますから、そこそこは・・・
Djinny: そりゃ、店の2階とかにカフェーを作るのですよ。そこでは貴族達がイギリス風にお茶しているのです。で、候女閣下はその間でミュージカルライクに…
Djinny: ららら〜〜〜♪
kaworu: 取り巻きに美少年を連れて〜(爆)
フィフ(Djinny) 「候女さま、ぼ、ぼく、僕なんかがこんなところにいて良いんでしょうか」
カヲル 「いいのよ。」
カヲル 「で、でも、皆さん名前のある貴族のひとばかりで………」
カヲル 「私がいいといったら、いいのよ。しゃんとしなさい。」
フィフ 「は、はいっっ(汗)」
カヲルは、すでに、皇帝陛下の愛妾らしい。
Djinny: うわ、じゃあ、そのヒモすね (少年のこと)
kaworu: そうみたい(^^)
kaworu: 金髪碧眼、色白できゃしゃな美少年。
Djinny: ををを(好み♪)
kaworu: とある魔法の薬で、肉体的には成長しないようにしてあると、もっとナイス。<<さすがにそこまではしません(^^)
フィフ 「チェンジリングの僕がこんなところに来られるのも、カヲルさまのお陰なんだ。僕はこのかたに一生をささげる!!たとえ報われることがなくても………」
Djinny: なんてのはどうでしょ。
Djinny: 成長はするけど老化しませんよ。
kaworu: ないす! ハーフエルフですか(^^) 成長も、少年程度で止まりますからね・・・
Djinny: いや、チェンジリングなんで、モノホンのエルフでしょう。
kaworu: エルフですか。筋力は、高くても9程度ですから・・・ やはり、身長は低くて、きゃしゃですね。
red: うお^^;;ログを読み込んでる間になんか話がみょ〜なほうこうに^^;;
Djinny: 華奢で金髪碧眼、不老長寿、不幸………
Djinny: うんうん♪ 目は大きくて、うるうるしてて、口癖は「す、す、すみませぇーんっっっ」
kaworu: 4号室 に、書いてみては?
Djinny: そういうキャラなんですか? だったら候女閣下も…欲しいなあ。
(中略。なお、その後4号室にカヲル候女とフィフ少年が追加されました)
Djinny: よろしうお願いします(親より)
kaworu: ちなみに、あそこは、キャラ自慢コーナーにもなっておりますので、いろいろ書いてください。(註:4号室のことです)
Djinny: そーだねー、もっとみんな使って欲しいなあ。
kaworu: お願いされました。<<親から。 きっと、支度金と言って、お金を沢山置いてきたんでしょう。<<実質的な人身売買
Djinny: いいや、女衒に売っただけです(かわんねえって)
kaworu: もっとひどいのでは(^^)
kaworu: きっと、そういう所に手を回しておいて、いい出物があったら、買うわよといっておいたのでしょう。
Djinny: なるほど〜。
kaworu: そして、「偶然にもたまたま」通りかかって、その美少年を救ったというふうに思わせる。かくして、絶対的な忠誠心を持った美少年を手に入れる。<<基本的に悪女<<同時に、いい領主さま
フィフ 「候女さま………(扉の向こうで聞いてしまった)」
フィフ 「そんな!」(夕日に向かってダッシュ)
カヲル候女、追いかける。
フィフ 「僕は、僕は………それでも、僕は候女さまのことが………」
フィフ、暫く走って、木の幹に手をかけて立ち止まる。木の幹を華奢な手で叩く。ぺちぺち。
フィフ 「僕は、どうしたら良いんだろう」
カヲル候女 「フィフ、こんな所にいたのね。」
カヲル候女、しばらくフィフを見つめる。
カヲル 「例え、あなたをだましていたとしても・・・それでも、私があなたを救ったことは事実なのよ? あのままだったら、あなたは・・・」
カヲル 「それにね、私が、あなたの事をかわいいと思っていることも事実なのよ?」
フィフ 「候女さま………」(焦る)
カヲル 「戻ってらっしゃい」
カヲル候女、そう言って、両手を広げて、最高の笑顔を見せる。
フィフ 「いやです………きっとこのまま戻ったら、僕は貴方を………」
カヲル 「フィフ・・・」(顔を曇らせる)
フィフ 「ぼく、感謝してます。でも、僕は、許せないんです………」
kaworu: (メロドラマみたい^^;)
Djinny: (そうですな)
カヲル候女 「なにを許せないというの?」
候女、ゆっくりと、フィフにちかづく。
フィフ 「………あなたも、父も、………そして、そんな人達を愛してしまった僕も!!!」
フィフ、木の幹を叩く。ばしっ。
も一つ、ばしっ。
カヲル 「許さないわ。出ていくなんて・・・ あなたは、私のものなのよ。」
候女、フィフを背後から捕まえ、抱きしめる。
フィフ 「カヲルさま………」
フィフ、そのまま、涙をだらだら流す。
カヲル 「いい子だから・・・ね?」
カヲル候女、耳元に口をちかづけてそう言う。
フィフ 「ううっ……… このまま、流されちゃ、いけないんだ………」
kaworu: きっと、あのあと、強引に逃げようとしたところを、麻酔薬を塗った針で刺されて、連れ戻されたんでせう(^^)
Djinny: ひでえ(笑)
kaworu: ひどくていいんです(^^)
Djinny: そういうキャラなんですね、彼女は。 識別完了。
kaworu: 基本的に悪女です(^^)
Djinny: OK。 そういうのも大好き。
red: 暴漢かなんかに襲われる振りをしてフィフクンに決断させるとか(笑)
red: 「やっぱり姫の事、見捨てるなんて出来ないよッ」
(中略)
red: とかいって彼は助けに来るんだけど実は茶番なの(笑)
kaworu: 茶番ですか(^^)
Djinny: ありがちー >茶番
red: 暴漢もサクラなんだろう、きっと(笑)
Djinny: そいつはもう当然ですな。
kaworu: 当然でしょうね(^^)
99年04月29日:05時39分05秒
エルフの盗賊 / Djinny
うざったいわねー。
え?
雨もだけどね。もひとつは、あの餓鬼。もう上に行った? あ、そう。
優柔不断なのよねー。ばかみたい。駆け落ちしたなら駆け落ちしたなりに、前の女の事なんか忘れりゃ良いのよ。
そう思うでしょ、あんたも? (と、隣りの席に置いてある細い剣を叩く)
ん? 変? ああ、これね。こいつ、生きてるから。
(剣に向かって)あ、えと、まずかった?
いいよね、別にぃ〜。こんなとこまでファリスの神官もこないだろーしね。
いやいや、あたしもこう見えても苦労してきたのよ。取り替え子ってのはあの坊ちゃんに限ったことじゃないのよ。あ、確かに確率は低いけどね、でも、ここにこうしているからねぇ。
そんなんでぐれちゃってさあ(苦笑)、お陰で盗賊ギルドに引っ張られた時は自己流の業を一通り覚えてたのよね。だから、親方には結構重宝されたもんよ。
え? 今?
それが、何でか知らないけど冒険者なんかになっちゃったのよ。
あんたのせいだよ、アーウィン(と剣を叩く。なんとなく、剣が不服そうに動いたようにも見える)。
ま、充分楽しいけどね、今でもさ。
次の仕事が入るまで、ここにいるわ。なんか、面白そうな店だし。ん? 払いは大丈夫。現金はあんまりないけど、宝石はあるからね。
あたしの名前? そうね………「リリー・マルレーン」を誰かがうたってるから、マレーネにしといてよ。
99年04月28日:03時59分55秒
イシュリーンの語ること 2 / カヲル
イシュリーンは、耳を傾けている。異世界から来た、エルフの若者の話に。そして、話が途切れた時を狙って、慰めるように話し出した。
「そうか・・・愛するご主人様を、戦場に置いてきてしまったか。それは、ショックだろうの。」
その言葉に、フィフは過剰に反応した。
「違う! ぼくは、カヲル様を憎んでいるんだ! 憎んで・・・」
思わず立ち上がった彼は、そのまま、力を失ったように、すとんと座り込んだ。
「ほっほ。わしには、恋人を目の前で殺されて、打ちひしがれているように見える。ちょっと世事に長けたものなら、みなわかるじゃろうて。ああ、興奮するでない。今わしが、良いことを教えてやろう。おまえの話からして、ご主人様は死んではおらん可能性が高いぞ。人間とは意外と丈夫にできておるもんじゃし、身分の高い貴族なら、身の代金を取るために、殺さずに捕虜にするもんじゃ。その上、美しい女性ともなれば、殺さず捕らえようとするはずじゃ。」
「本当ですか!?」
打ちひしがれていたフィフの顔に、希望の灯が点る。
イシュリーンは、一つうなずくと、沈痛な顔をした。
「だがの、戦場で捕らえられた女性は、おおむね死ぬより過酷な運命をたどることが多い。指揮官が捕らえたのならまだ増しじゃろう。だが、雑兵どもになら・・・。早く、助けてやらねばならん。」
フィフは、とたんに立ち上がった。それを、連れの女エルフが、必死に止めている。理由は、雨が降っているとか、一晩やすんでからでないと、倒れてしまうとかいったものだ。だが、イシュリーンには、恋人が昔の女のところに行こうとするのを止めてと懇願しているように見える。
(少し、加勢してやるか)
「フィフ君、彼女の言う通りじゃ。倒れるまで動き回るのは、自分の心を納得させるには最良の手かも知れん。だが、それは、逃げているだけじゃ。なにが重要か考えて、行動せにゃいかん。君が倒れることは、目的を果たすために良いことかね? 今は、ゆっくりと休むことと、心を落ち着かせて、冷静に作戦を考えられるようにすることが大事なことなんじゃ。」
フィフは、うな垂れ、席に戻った。女エルフの視線が痛い。(ふむ。こちらにも、手を打っておくかの)
「娘さん。わしの事を、ひどい爺と思っておろうの。だがの、戻らせてやりなされ。このまま逃げたんでは、この坊主は、一生、心に傷を持ったままじゃ。踏ん切りがつくまでやらせてやりなされ。その時始めて、この坊主は、あんたとのことを真剣に考えられるようになるじゃろうて。」
女エルフは、顔を真っ赤にした。
(若いのう。こんなに若いエルフの二人ずれなど、聞いたこともない。かなりのわけありじゃの。うまく聞き出すには・・・)
「フィフ君、わしはまだ、君の知る知識を、ほとんど教えてもらっていない。思い付くままで良いから、何か話してみてくれんか。」
フィフは一つうなずくと、話し始めた。いろいろな助言をもらったのに、このままでは、礼にもとると思ったのかもしれない。
人間の二親から、取り替え子として生まれたこと。体よく親に売り飛ばされたこと。そこを、たまたま通りかかったカヲル侯女に救ってもらったこと。その後の生活・・・・・・・
99年04月27日:07時35分05秒
イシュリーンの語ること / カヲル
ある雨の日の事・・・天の裂け目亭に、新しい客人がやってきた。内側へと続く扉から。どうやら、エルフの男女のようだ。二人は、隅のほうに席を取ると、陰気に料理を食べている。男のエルフのほうが落ち込んでいるのを、女のエルフのほうが必死になだめているようだ。
その隣に座って、一人で飲んでいる老人が、先ほどから、そちらをちらちらと眺めている。机の上には、分厚い本。いや、余白が半分ほど残っているようだ。ノートと言うべきだろう。老人は、意を決したように立ちあがると、分厚いノートを持って、二人のエルフに話し掛けた。
「どうなすった。ずいぶんとふさいでいるようじゃが。」
「ほっといてください! 僕は・・・僕は・・・」
そういって、男のエルフは涙をにじませる。
「ふむ。だがの、君たちが、こちらのドアから出てきたからには、ほっとく訳にもいかんて。わしの名は、イシュリ−ン。異世界の研究にかけては、ちょっとしたもんじゃ。」
「そんな方が、僕みたいなただのエルフに何のようだと言うんです?」
「ほっほ。まだ、お若いようじゃ。さよう。物をたずねるからには、自分から名乗り、自分から説明するのは礼儀じゃ。説明しよう。おいマスター、こっちのテーブルに、喉に良い飲み物を3っつと、暖かいスープを頼む」
そういうと、老人は、にっと笑った。
「ここの代金は、わしが持とう。」
戸惑う二人に、老人は、この冒険者の店の成り立ちを語った。異世界との扉が開きやすい森を囲むように作られた城壁。その壁に埋め込むように作られた冒険者の店。そして・・・数ヶ月前に、ふらりと森の中から現れた、高位の魔術師がいたこと。
「彼は、森の中で迷った末にここに来たそうじゃ。異世界に来たと言うのに、まったくあわてんでの。好奇心丸出しで、いろんな事を聞くんじゃ。なぜ慌てんかと問うに、瞬間転移の魔法で帰れると抜かしよる。最後には、うちのギルドにある最高の魔術書の写しと、自分の魔術書の写しを交換することまで交渉しての。そこの・・・おまえさんがたが入ってきたドアのところから、瞬間転移の魔法で帰りおった。」
老人は、酒で喉を潤すと、話を続ける前に、酒のお代わりを注文する。ここまで話すまでに、なくなってしまったのだ。二人のエルフの杯も空だ。
「それからじゃ。ある、特定の世界から、この店に来るものが多くなった。彼らは、この店が、ごく普通の店と思いこんどる。それどころか、あっちの・・・大通りに面したドアに気づきさえしない。空間が不安定なところで、強力な魔法を使った副作用かもしれんの。」
「では、僕たちも、異界の迷子になったりしないで、帰れるんですか?」
「おまえさん達が、普通の店に入ったとおもっとったんなら、そうじゃよ。さて、最初に言った通り、わしは、異世界の研究をしとる。話を聞かせてくれんかの。いや、その前に、名前じゃな。」
エルフは名乗った。フィフ、と。そして・・・
99年04月22日:11時30分04秒
黒剣の麗華 / 皇帝
木漏れ日の明るい森の中を行く2頭立ての馬車を突然の夕立が襲う。馬車は変わらぬ速さでしばらく進むと、森の中の一軒の店の前で止まり、中から1人の女性を降ろす。女性は、雨にぬれながら一軒の店の中に入って行く。その店の名は「天の裂け目亭」
店の中はにぎやかで、賭け事をする者、酒と料理を囲んで盛り上がる者、歌を歌う者、それに聞きほれる者、水晶球を除き込む者、一人静かにカウンターで酒を飲む者、さまざまである。
ハンカチで雨をふき取る彼女の姿は、見る人の心を惹きつける。漆黒の髪に黒い瞳、ほのかに香るラベンダーの香り。凛として、それでいて清楚な雰囲気を醸し出す。
身支度を整えた彼女が忙しそうに働く店の主人に向かって口を開く。
「あのぅ、ご主人、ちょっとよろしいですか?今、人を探していますの。赤毛で長身の体格の良い戦士風の男性です。名前はロフレッサー、黒剣騎士団に所属する騎士隊長です。」
「まあ、そうでしたか、すれ違いですね。もしまた来ましたらお伝え下さい。明後日に軍議が開かれますので騎士団の兵舎においで下さい。と」
「折角ですから雨が上がるまで休ませていただきますね?何かおいしそうな果物あったらお願いします。」
遅れて入って来た御者とともに一つのテーブルで摘み立てのイチゴを食べる。彼女は1口食べると、御者の持ってきた地図を漫然と眺めている。
どのくらい時間が経っただろうか。彼女が亭主のそばに歩み寄り、また話しかける。
「あのぅ、ご主人、お願いがあるのですけど。冒険者募集の広告を出してもらえないでしょうか?できればベテランの経験豊富な方、得意分野は何でもかまいません。そうですね、「相応の能力には相応の報酬を」とでも言ったキャッチフレーズで、詳しくは黒剣騎士団の兵舎で面接と試験をしたいと思います。よろしくお願いします。」
「あと、食料、馬、薬草などを商っている商人がいましたら商談したいと言ってもらえませんでしょうか?」
「はい、ではよろしくお願いします。」
そして彼女はもと来た道を帰っていった。ラベンダーの香りと雨上がりの雫に反射する日の光を残して。
99年04月20日:18時53分04秒
冒険者たち / ディアス・ダロ
やれやれ、まったく台風みたいな人でしたね。
リーケンさん、ご苦労様です。もうその人、放してくださって結構ですよ。
ジリャールさん、まだ面倒を起こすつもりでしたら店の外でお願いしますよ。
もう止めませんから、お一人でどうぞ。
ご亭主どの、はじめまして。私はシムーンと申します。本来、この人がリーダーなんですけれど、
今はちょっと事情がありまして私がこのパーティーのリーダーを務めております。
ちょっと失礼しますね。
ジリャールさん、わたくし、汚い言葉は嫌いだと申しておいたはずですよね。
いえ、わかっていただければよろしいのですよ。
失礼いたしました。
あら、ヤッファ、おかえりなさい、首尾良く言ったようですね。
右手をどうしました?怪我をしていますね。噛まれましたか?
申し訳ありません、ティーナさん、リーケンさん、診てあげてくださいな。
みんなそろいましたので改めてご紹介させていただきます。
私どもは冒険者 プランターズです。以後お見知り置きください。
この人がリーダーの戦士 ジリャールさん、
マイリー様の神官戦士 リーケンさん、
レンジャーのティーナさん、
吟遊詩人のヤッファ、
私はセージのシムーンです。
よろしくお願いいたします。
今日は何がおすすめですか?
はいはい、ではエールとビーフシチュー、黒パンとチーズをお願いします。
冒険の話ですか、すみません。わたくしたちこれからちょっと遠出をしなくてはならないのです。
今度戻ってきましたら必ず。
ありがとうございました。おいしくいただきました。ではまた今度。
冒険者たちは店を出ていった。
99年04月14日:18時43分24秒
戦士の来訪 / ディアス・ダロ
おい、親父、酒を出せ。一番強いやつだ。トロウル殺し印の蒸留酒?ああ、それでいい。
おっと、そんな小さいグラスを出してどうすんだ。そこのビールジョッキに注げ。こぼすなよ。
金か?ほら、金貨だ。これで足りるか。あと5本分と料理の分も取っておけ。
あん?何だお前は?馬屋の小僧?冒険の話を聞かせろ。俺におごる?そんな小銭は取っておけ。話ぐらいいくらでも聞かせてやるし、お前の分の飲み代ぐらいけちけちせずに払ってやるぞ。
今日の俺は機嫌がいいんだ。
おい、小僧、どこ行くんだ?
ああ、親方に引っ張られて行っちまったか。おい、すっ転んだぞ。大丈夫か?
ふん、客がいなくなっちまったな。ああ、親父がいたな。
俺か?
俺はロフレッサー。黒剣騎士団の騎士隊長さまだ。昨日からな。
その前?しばらくファンの地下で静養してたのよ。図らずも、ってやつだ。どうだ、難しい言葉知ってんだろう。
インテリなんだよ。俺様は。え、なんでそんなとこに居たのかって?
ちょっとばかしごたごたがあってな。
先週は面白かった。冒険者の一団と殴り合いになったのよ。戦士の奴、何とかいってたな?
リ・・リ・・、リジャ・・・ジャイールじゃあ無かったな。まあ、リ なんとかだ。そいつはまあちっとは腕が立ったな。そいつと盗賊みてえな奴は叩きのめしたんだが最後に残ったドワーフの神官戦士をぶちのめしてるすきに、精霊使いと魔法使いが呪文かけてきやがってよ。
気が付いたらファンの地下牢でおねんねよ。様にならねえな。まったく。
おうよ。こんどなんかむにゃむにゃやってる奴見たらぜってえ最初に一発食らわしてやるぜ。
団長にも言われたからな。あっちの魔法使い奴には気を付けろって。
あっちってどっちだって?親父、好奇心は猫を殺すって言うぜ。知りたいか?結構だって?
お前利口だな。長生きできるぜ。
え? 馬が暴れてる?
フレイムウィンドにちょっかいかけた奴は痛い目にあってるぜ。
おう、親父、また来る。
赤毛の大男は風とともに去っていった。
99年04月09日:09時08分44秒
馬商人の下っ端/ティム / Djinny
あー、おらが来るとこじゃねかったかな、ここ。
なんか物騒な人がいっぱい居るだな。
え?
冒険者さんの店だったか。
そりゃそりゃ。
………おらも似たようなもんだけど。
いやいやいやいや、冒険なんておらには飛んでもねえ。むいてねえだ。
だが、聞きてえなあ。
皆さんの冒険の話とか。
おらも、結構そういう話聞くのは嫌いでねえでよ。
酒くれえおごるから、ちっとばかし話してくれや。
「こぉらティム!!このサボり魔が!こんなとこで油売ってやがって!」
や、やべ、親方だ。
つうわけで、また。
今度来た時は、なんか面白い話をしてくれや。
ほ、ほいじゃ!!
(襟首を後ろから掴まれ、引き摺られて行く)
99年03月18日:20時15分32秒
吟遊詩人の語る事 / ディアス・ダロ
店の片隅にすりきれた毛布が置かれている。そこの主は盲目の乞食。
擦り切れた衣装を身に纏い、どうやら耳も聞こえぬらしい。
薄汚れた包帯が両目を覆い、まれに話し掛けるものがあっても何も答えない。
その乞食はいつも静かに座っていた。
この店に何が起こっても、彼の世界を乱すものは何もない。
名高い吟遊詩人のバラッドも、都に並び無き踊り子のわざも彼には届かない。
彼は彼だけの世界に生きている。そう、彼の世界にも何かが起こっている。
時に微笑み、時に涙を流し、時に失われたすべての感覚を持って何かを感じ取ろうとしている。
彼の世界に起こることを知る者はない。
ある日、この店をトルバドールが訪れた。神の声と神の業を持つというトルバドール。
携えたるは半神の手になるリュート。
人の手ならざる業に鍛えられた17弦のリュートは
トルバドールの手に従いこの世の物ならぬ調べを紡ぎ出す。
トルバドールは請われるままにリュートを取り出しつま弾きはじめた。その調べが届いたか、
あの乞食もその音に耳を傾けているように思われた。
トルバドールはまずはかない恋の調べを奏で
勇士の勲しを謡った。そして異国の調べを奏でようとして片隅の乞食に目を留めた。
「おう、このたくらみは何としたことか。あのお方を前にして、私ごときに何を語らせようとされるのか。
偉大なるヤン・ヤムシユ・ハレル、私を試そうとされたのですか?
神々をも魅了したそのみ業の前に我が稚拙な業をさらしたるは恥ずかしき限り。」
トルバドールはリュートを捧げ、ヤンの前に進み出た。ヤンの手を押し頂いてリュートに触れさせると
ヤンの顔に微笑みが浮かんだ。
ヤンは手早くリュートのペグを探り、2本のペグを締め直した。
弦の上に手を躍らせれば、深く、厚く、広く、その響きはまるで別物のよう。
「若者よ。そなたの業を妨げるつもりはない。我はすでにこの世の者ならざれば。
我が体はこの地に在れど、我が心はこの地に在らず。我は契りにより異界をめぐるさだめなり。
我が見るは空を行く船。我が聴くは吠え哮る竜の叫び、神々の勲し、世界の滅び。一片の花。」
「御師よ、その目はいかがなされたか。またその耳は?」
「右目と右耳は深淵渡るものに預けた。左目はこの世にわずらわされぬために自ら捨てた。
我をこの世につなぎとめるはただ片耳のみ。」
偉大なるヤン・ヤムシユ・ハレルはその一夜のみ、求めに応じてリュートを手にした。
その夜、謡われた歌のことは、そののち誰も語らなかった。
言葉にすることのできぬものはそのままに。
99年03月18日:07時32分29秒
冒険者の店 天の裂け目亭 / カヲル
トアール国の首都、アルトーコ。そこの中央には、市民の憩いの場である公園があった。そのさらに真ん中に、小さな森があった。
だがそこは、ある事件が起きた時から、封印され、厳重な監視の元に置かれることになる。
ある暗黒司祭が、強力な魔神を召喚しようとして、邪悪な儀式をしたのだ。幸いにも、冒険者達の活躍により、儀式は失敗た。だが・・・暗黒司祭は、ただでは死ななかった。開きかけた空間の穴に呪いをかけ、強い歪みを残したのだ。
それ以来、その森の中に入ったものに、行方不明者が増えた。そして、異世界からの客人が訪れるようになったのだ・・・邪悪な者。善良なもの。双方の・・・
ここは、異世界に通じる森を取り囲む壁に埋め込むようにして作られた、冒険者の店。天の裂け目亭である。
「いらっしゃいませ〜。この店の主人のカヲルでーす。
あなたは外から来た冒険者ですかぁ?
それとも、森からのお客様ですかぁ?」
「もし、外からの冒険者でしたら、この店に滞在することをお勧めしますよぉ。王様からの補助金で値段は格安。仕事の依頼も結構きますよぉ。それに、ここに滞在しているだけで、あなたの腕を奮う機会もあるでしょうし・・・賞金も出ますしネ。」
もし、森からの客人でしたら、自暴自棄にならずに、ゆっくりと待つことです。言葉が通じるほど近い物質界なら、数年でもとの世界に帰る天の裂け目が出来ます。その時を逃さなければいいのです。
もし、それを逃しても、自分で転移魔法を習得するか、転移の巻き物を手に入れれば帰れますよ。
さあ。まずは座って。お酒でもどうですか? 色々、お話を聞かせてくださいネ。
酒場には、沢山の冒険者達がいる。
ある者は酒を飲みながら仲間と賭け事をしている。
ある者は仕事を求める掲示板を前に悩んでいる。
ある者は、冒険で手に入れた正体不明の魔法の品を前にうなっている。
ある者は、冒険でであったモンスターの記録に余念がない。
中庭では、剣の稽古に励む若者の姿が見える。
自分の挑んだ冒険を歌にして、皆に聞かせているものがいる。
雑然とした・・・しかし、活気に満ちた店内だ。その時、あなたは・・・
ソードワールド掛け合い所:2号室ログ / TRPG.NETホームページ / Web管理者連絡先