ソードワールド掛け合い所:1号室 LOG 001

ソードワールド掛け合い所:伝言板の1999年03月09日から1999年06月21日までのログです。


99年06月21日:19時11分02秒
ラムリアース戦記08.9:二つの城 / カヲル
魔法王国ラムリアース。大陸で最も古い王国。氷結海から流れ込む冷たい風のため、寒冷な気候にもかかわらず、強大な国力を有する国。魔法の力は大陸に並ぶものなく、魔法戦士のみで構成された騎士団さえ有する大国である。
 ファンは、ラムリアースをはるかに凌駕する国民を有する。通常であれば、ラムリアースをも圧倒するほどの。しかし、国の乱れた現在、圧倒されているのはファンのほうだ。さらに、ラムリアースにはファンの騎士団が攻め込んでも、落とされた事のない堅固な城を二つ有している。
 
 対魔法処理の施された城壁を持つ『鋼の壁』
 人間の10倍以上もの高さを誇る城壁を持つ『大地の壁』
 
 『鋼の壁』は、ファン北部の鉱山都市グードンから、ラムリアースの首都ライナスへと続くエールの街道沿いにある。ファンの街からライナスまでは6日、国境からならばわずか3日でライナスに行く事のできる街道であるため、駐屯している騎士の数は2千5百人、総人員数は8千人にも及ぶ。城壁は、魔法防御呪文のかかった鋼鉄で覆われている。垂直に切り立った、わずかな凹凸もない城壁は、隕石召喚の呪文にすらやすやすと耐えてみせる。無論、こんなものが新王国時代に作れれたわけではない。魔法王国から引き継がれたものである。
 この城を外から剣にて攻める試みは、一度とて成功した事はない。この城が落ちる時は、内からのみである。
 
 
 『大地の壁』は、いにしえの街道(注1)と、マルヴァーン方面へ続く街道が交わる所にある砦である。国境へは半日ほど。ライナスまでの距離は、5日といったところか。駐屯している騎士の人数は2千人、総人員数は6千に上る。城壁は、基部の厚さが6メートル、城壁上部で3メートルの分厚さで、高さは20メートルに及ぶ。その周りには、深い堀が巡らされ、城壁に取り付くだけで一苦労であろう。一定間隔毎に設置された塔には、多数の攻城兵器が設置され、敵の攻城兵器に対する対策も万全。魔法王国時代の城を修復して使っているため、各所に魔法の仕掛けが施されているとのうわさも有る。
 城内には、すべての兵が1年間篭城するに充分な食料、武器が常に貯えられている。これは、鋼の壁に比べれば劣るものの、実に高い水準に有る。難攻不落を豪語するに足るだけの備えをしているといえよう。
 唯一の弱点が、城門が大きい事だ。馬車3台が、何とかすれ違えるほどの幅がある。兵の出し入れには便利だが、反面、脆弱な扉部分が大きいため、攻められると弱い。ラムリアース側は、跳ね橋のほかに、鋼の扉を設置し、篭城事には、内側に土嚢を積む事で対応している。
 
 
 ファンがラムリアースに攻め込む場合、まず、この二つの城のうち、どちらかを攻略しなければならないのである。小規模な戦争であれば、大抵城の堅固さに負けて敗北していた。一方大規模な戦では、押さえの兵力を当ててラムリアース内部に侵攻するという手段が行われていた。その結果は、大きく二つ。押さえの兵力を隙を突かれて撃破され、後方撹乱にあい、戦争に負けるというもの。そして、押さえの兵力が多すぎて、本隊の戦力が足りなくなり戦争に負けるというもの。
 
 起死回生の戦を仕掛ける以上、今度こそ、どちらかを攻略しなければならない。その作戦は、今・・・ある男の胸のうちにのみある。絶対にばれないよう、味方にすらもらさぬように秘めたこの作戦が上手く行くかどうか。これが、今回の戦の帰趨を決める事になるだろう。
 
 
 注1:いにしえの街道は、ロマールの街からパイソン、ファンドリア、ルーナムを通ってライナスに至る、中原を南北に貫く幹線街道。そのため、エールの街道と同じくよく整備されており、ロマールからファンドリアまで7日、ファンドリアからライナスまでも7日で行く事ができる。
99年06月17日:21時18分09秒
ラムリアース戦記02.7:酒場のポルカ / ディアス・ダロ
 誰が宰相になったとしても、街の暮らしに変わりはない。何人か貴族が吊るされれば、それは一時は酒の肴になるものの、 それはそれ。いつもと同じ夜を過ごしているはずの ファンの都の酒場件冒険者の宿 かささぎと灰色兎亭には、今夜招かれざる客が訪れていた。
 
 込み合った店の中で大柄な男が一人きりでテーブル一つを占拠して居るが、誰も何も言わない。いや、言えないのだ。 モンスターとの戦いを何度も潜り抜けてきた冒険者たちは、敏感にこの男の危険な匂いを感じ取っていた。
 男は周囲の思惑などどこ吹く風といった顔つきで卓一杯にならべられた酒と料理を次々に片づけていく。
 その傍若無人さに鼻白んだ戦士風の男が隣の物静かな娘に尋ねた。
 「シムーン、あいつ何もんだ?」
 「ジリャールさん、人の噂は大声でするものではありませんよ。」
 話し掛けられた娘は、この店の名物料理である子豚の香草詰めから一切れ切り取る手を休めて答えた。
 「あのひとはですね、ロフレッサーさんです。この国一番の戦士とのことですよ。」
 ロフレッサーを見て黙り込んだジリャールにはかまわず、シムーンは自分の分を取ると子豚をドワーフの戦士に回した。
 
 「どうぞ、リーケンさん。」
 「この国は、風向きが悪くなっとるな。今度来れるのはいつになることやら。」
 「風が悪いんじゃないよ。人が悪いのさ。ねえ、ヤッファ、あんたもそう思うだろ。」
 ハーフエルフの少女に話し掛けられたグラスランナーは、ロフレッサーの財布にまだ気を取られたまま、生返事を返した。
 「おやおや、リーケンさん、あなたが心配しているのはこの国のことよりその料理のことでしょう。」
 「違いない。ほれ、ティーナ、お前がいらんならワシが全部片づけちまうぞ。今度こいつにありつけるのは何時に成るかわからんからな。」
 「だめ、私とヤッファの分。」
 
 屈託なく食事と会話を楽しむ3人も、久しぶりの一杯が入っていなければ、戦士とグラスランナーの目に燃える物に気付いたかもしれない。 三人が気付いたときには、ジリャールがロフレッサーと呼ばれた男の前に立っていた。
 
「あんたがロフレッサーか?」
「人に物を聞くときは、自分の名前ぐらい名乗るもんだ。そのぐらいのしつけもできてねえのか?」
「おれはジリャール。あんた、この国一番の戦士だそうだな。」
「そのとおりだ。」
「じゃあ、あんたを倒せば俺が一番だな。」
「やってみるか?」 お互いにあいての力量を測るべく、二人の間に重い空気が張り詰めた。突然、ロフレッサーは左手で後ろをなぎ払った。重く鈍い音とともに、小柄な影が宙に舞い、床に叩き付けられた。店の中の全ての動きと音が止まった。
 ロフレッサーはその巨体からは思いもよらぬ俊敏さで 倒れたまま動くこともままならぬグラスランナーの手から膨らんだ財布を奪い返した。
 「いい手だ、一人が気を引いて一人がその隙にってわけか。だが相手が悪かったな。」
 そう言いながらロフレッサーは無造作にグラスランナーの右腕を折った。乾いた音がしてあっさりと手首が普通向くはずの無い方向へ向き、 その音は静まりかえった店の中に響き渡った。 ロフレッサーは気を失ったグラスランナーの人差し指と中指を掴んだ。
 「ついでだ。二度と馬鹿な考えを起こさないようにしてやろう。」
 「そこまでしなくてもいいだろう?」
 「そういやあ仲間が居たな。止めて見せるか?」
 
 殴り合いの原因が自分たちの仲間であることを知ったシムーンは叫んだ。
 「やめてください。」
 「あの二人、やめるとは思えんが?」
 「あなたもそこでのんびり食べてないで、なんとかとめてください。」
 「ん、やっちゃっていいの?」
 
 「ああーっもうー。」
 一人苦悩するシムーンをよそにジリャールとロフレッサーの殴り合いが始まった。
 しかし、ロフレッサーのこの国一番の戦士の名は伊達では無かったらしく、たちまちその巨体に組み敷かれて今やジリャールは一方的に殴られていた。
 「やっぱりとめんといかんかなあ。」
 そう言いながらリーケンは椅子を取り上げると、身軽にテーブルの上によじ登った。
 「いーかげんに、せんかいっ。」
 そういいざまに思いっきり椅子をロフレッサーの頭に叩き付けた。
 「おや。」
  派手な音とともに椅子はバラバラに壊れたが、ロフレッサーは首を一降りすると、何事も無かったかのように今度はリーケンに掴みかかった。岩のようなこぶしに殴られてたまらず逃げ出すリーケン。
 「はなれて。」
 見事な右ストレートを食らったリーケンが壁に叩き付けられると二人の女性から魔法が飛んだ。これにはたまらずロフレッサーも倒れた。
 
 最悪のタイミングで酒場の入り口から警備兵がなだれ込んできた。
「どーして、結局こうなるのかしら。」
「もお、いっつもそう。」
 ティーナとシムーンはため息をついた。
 
「ここの地下牢は少しは乾いてるといいんだけど。」
99年06月16日:20時53分25秒
ラムリアース戦記02.5:帝国の礎 / ディアス・ダロ
 ティーナ・チェンバールはラムリアース侵攻計画をもってクロークの私邸にいた。ファンの戦力約6万。ラムリアースは5万。しかし兵の質には大差がある。そしてティーナにはもう一点不安材料があった。
 「ラムリアースから開戦の意図を隠し通せるか。初期に各個撃破によっていかに多くの損害を与えられるか。ここがポイントです。ラムリアースの兵力集結と反撃が始まる以前に講和を結ぶしかありません。」
 「よかろう。で、誰にやらせる?」
 
 クロークはティーナの不安材料にずばりと切り込んだ。クロークが宰相の座を得るまでの間に何度かの騒乱、あわや内戦かと思われるほどの物も含む。があり、有力貴族の多くが力を失っていたからだ。
 「このところの多少の混乱の影響もありますが、これを任せられるほどの者は数少ないのも確かです。」
  <−多少の混乱− いい言葉ね。>こんな場合にも苦いユーモアを彼女は失わなかった。
 「正直、私は今回の作戦を任せられるほどの人材を見出すことはできませんでした。」
 ティーナはクロークの目を見ながら言い切った。< さあ、宰相閣下、いかがいたしましょう。あなた御自身が出馬されますか? それとも適当な生け贄をお考えですか?> 
 クロークは唇を歪めた。
 「我が国の南方にはまだ何人もの有力な貴族が残っている。彼らに申し付けることとする。」
 「・・・南方の兵力約1万だけでは開戦初期の衝撃力が不足しませんか?」
 「いいかね、君。我らには同盟国というものがあるのだ。」
 「・・・・・わかりました。・・・・・で、実際には誰をお考えですか?」
 「先陣はアウレ・マハール。将軍にはテイラーを任命する。」
 ティーナは首をかしげた。
 「テイラーはわかります。南方の名家ですの出ですし、有能といわれていますから。しかし、アウレ・マハールとは何者ですか?」
 「レムリア伯だ。このあたりでは無名だが、このごろ勢力を拡大しつつあるようだ。急速に、しかも秘密裏に。」
 「我が国の命運を任せるのに足る人物なのですか?」
  クロークは再び唇を歪めた。それが普通の人間には微笑と言われるものの恐るべき戯画であることを、ティーナは恐怖とともに理解した。
 「彼は有能だよ。十分にね。」
 ティーナを帰してクロークは南方貴族について調べさせた結果を再び取り出した。南方でも貴族どもは愚かな争いを続けていた。わずかな土地をめぐって無駄な争いを続けてはかえって消耗する貴族の多いその中に、このごろ急速に力を付けている男が居た。この男は使い方によっては役に立つ。少なくともこの前の采配は見事だった。まるで前もって何が起きるのかを見通しているかのようだった。
 実際に、どれほど役に立つ男かは、戦場が証明してくれるはずだ。
 クロークは手先にしようかという男の事は頭の片隅に追いやって、これからの正規軍の把握について考えはじめた。南方貴族軍と同盟国軍はラムリアースの兵力をすり減らす程度には使えるはずであった。そのあとは私の指揮する暗黒騎士団が両国を支配する。
 そしてファラリスのもと栄光の千年王国が築かれるのだ。
 クロークは彼をたたえる民に手を振り、民は熱狂を持って答えた。
99年06月01日:19時21分30秒
ラムリアース戦記02.3:クロークの決断 / ディアス・ダロ
 ティーナはファラリス神殿に接するクロークの屋敷に招かれていた。失敗に終わった暗殺の試みの後、王都は殺伐とした雰囲気に包まれていたが、今宵クロークの屋敷を訪れた客は、決して洗練されているとはいいがたいクロークの屋敷に咲いた一輪の名花にもたたえられよう。
 ティーナ・チェンバール。ファンのファラリス神殿始まっていらいの才媛とたたえられる彼女は知性と美貌の見事な結合を示し、ファラリス神の恩寵を体現するものとして宝石のごとき扱いを受けていた。
 「お召しにより参上いたしました。」
 一礼した彼女の目に映ったのは、クロークによく似た何者かであった。激しい衝撃が人を別人に変えてしまうことがあることは、知識としては彼女も承知していた。声も、姿もクロークその人であったが、何者かが欠落していた。
 「よく来た。今回のことについてどこまで聞いている?」
 彼女の知っていることは少なかった。暗殺に火球が使われたこと、下手人を生かしたまま捕らえることができなかったことが彼女の知る全てであった。それを確認してクロークは廃屋から得られたいくつかの証拠を示した。
 下手人の持ち物に怪しい所は何も無かった。全てファンの店に有りそうな物。すべてファン国王の肖像を持つ使い古された銀貨のずっしりした袋からは今回のたくらみは依頼人にとって物入りだったであろう事を示すのみに思えた。依頼人につながる物は何一つとしてなかった。彼女はため息をついた。
 「誰が企んだか知れませんが、今回の一件をしくんだのは慎重で頭の切れる奴ですね。」
 「これをどう見る?」
 廃屋の床にあったというラムリアース特産の木の実を見て彼女は考え込んだ。
 「魔法、木の実、さらに銀貨も指し示す方向は一つです。」
 「銀貨から何かわかるのか?」
 「お手持ちの銀貨をご覧ください。我が国で普通に銀貨を集めれば、必ずや彼の国の銀貨が混じっておりましょう。今でしたらイルアーナ王のものです。モラーナやパイソンのものも混じっておりましょう。それに対してこの銀貨は全て我が国のものです。」
 「ラムリアースだな。」
 「そちらを向くようにこれらは調整されております。」
 「ラムリアースだな。」
 「閣下、証拠がそろいすぎているように思われませんか?これは我らとラムリアースの間に揉め事を起こさせようとする何者かの陰謀とは考えられませんか?」
 「よいのだ。」
 「え?」
 「その思惑、乗ってやろうというのだ。」
 「閣下。」
 「今、ラムリアースは国力充実しているように見える。しかし、内実はどうだ。寵姫が国政を壟断し、無能な貴族が家柄だけで要職を占め、騎士どもは惰弱に流れている。」
 「しかし、閣下。我が国には彼の国と戦うだけの国力はありません。」
 「来年には我が国は戦うことすらできなくなるだろう。」
 「どういう事ですか?」
 「今年の我が国の食料生産は危機的状況にある。来年の春には我が国は飢饉に見舞われる。収穫までに餓死者すら出るだろう。」
 黙り込んだ彼女にクロークは言った。
 「今年しかないのだ。」
 
 ラムリアース攻略の作戦立案を命じて彼女を送り出した後、クロークは彼に宰相の座をもたらしてくれた人型を取り出しながらつぶやいた。
 「ラムリアースめ、イルアーナから農奴の端まで皆殺しにしてくれる。」 クロークは暖炉の火に新しい薪とともに薫り高い香油をくべた。燃え上がる火の中に、クロークは炎上するライナスを見ていた。
 
 クロークは張り付いたような笑みを浮かべた。炎の明かりに照らされた笑顔は陰惨極まりなかった。
99年05月31日:17時17分43秒
ラムリアース戦記02:マハールの誤算 / ディアス・ダロ
 クロークの宰相就任の日、アウレ・マハールはファン王都のレストランにいた。クロークの出世はとんとん拍子だった。宰相就任に反対する貴族二人があいついで病死するに従い、表立って反対する者もなくなり、心有る者は野に下った。そして今日ついにクロークは宰相に任ぜられるのだ。
 
 この店はファラリス神殿と王城を結ぶ途中にあり、ちょっとしゃれたワインとハムを出すことで知られている。
  ベランダに置かれたテーブルについて、マハールは自らの手がけた芝居の首尾を見届けるつもりでいた。
  王城よりの廃屋の二階に火球のスクロールを持たせた男を、マハールは手配していた。この男が首尾よくクロークを仕留めてくれれば、それでよし。最悪の場合、自ら手を下すこともマハールは考えていた。
  クロークを仕留められなかったときにも、ファンの目はラムリアースに向くように、廃屋にラムリアースの特産の木の実の殻をいくつか散らしておいた。
  打てる手は全て打った。マハールは、今、この場において、自分がこの店のワインを楽しめていることに密かに満足感を覚えた。
 
 王城からクロークの行列が戻ってきた。道端には、王城のいつもの風景がある。農夫、商人、乞食、下級貴族、あの帯剣した若者は騎士だろうか。短く切り揃えた金髪に、碧眼。だいぶ前にはやった、べんがら色のマントを着ている。王都を見に来た田舎騎士かもしれぬ。
  暗黒騎士団の精鋭に守られて、クロークの一行が廃屋の前に差し掛かった。クロークは馬上にあるが、奴ではない。
  しまった。立ち上がったマハールの目の前に、一瞬、目も眩む閃光とともに、巨大な火球が放たれた。
  火球に巻き込まれてはじけ飛ぶ人の体。馬上の男はもはや人としての形をとどめてはいない。周囲には火球の余波を受けて何人もの人間が倒れている。
  「宰相閣下。」
  そう言いながら、マハールは混乱の中に飛び込み、本物のクロークを探した。一行の前方には居るまい。後方に居るはずだ。あれか。マハールは脅えて逃げだそうとする群集をかき分けながら、馬から助けおろされた男の方に向かった。
  クロークも無傷ではなかったらしい。しかしこれだけ騎士団の連中が居るのでは手を下すこともできない。
  マハールはこの場の混乱を利用してこの場を掌握しようと試みた。
  「そこの者、私はレムリア伯、アウレ・マハールだ。うろたえるな。」
  マハールは、衝撃にうろうろしている隊長らしき男を怒鳴りつけた。そいつは振り向いて何か言いかけたが、 マハールはさらに大きい声で黙らせた。戦場で鍛えた声は伊達ではない。
  「うるさい。うだうだ言うな。落ち着いて私の指示に従え。黙って私の言うようにお前の部下を動かせばいいのだ。いいな。」 そして気おされた隊長をうなずかせて続けた。
 「まず、そこの神官たちだ。ぼさっと突っ立っていないで負傷者の手当てをさせろ。」
  ファラリスの黒衣に身を包んだ神官が立ち尽くしていた。殆ど白に近い金髪と白に近い青い目の持ち主。普通だったら憂いの表情が似合う美形。しかし今は目を裂けんばかりに見開いて倒れた女兵士を見詰めていた。その黒いレザーアーマーの女兵士が倒れた辺りには、黒い血が地面に染み込みながらも次第にその輪を大きくしている。
  神殿の警備兵か。あれは助からんな。マハールは女兵士の首筋を貫いた木の破片が血まみれになっているのを見て首を振った。
  衝撃に気が抜けたようになっていた神官たちが負傷者の手当てを始めた。美形の神官が飛びつくように女兵士の手当を始めたのを見てマハールは言った。
 「あきらめろ。その女は助からん。技と呪文は有効に使え。」
  その男は何も答えず、食いつきたそうな視線をマハールに送ると、歯を食いしばってすべての呪文を兵士につぎ込んだ。
  さらに言葉を続けようとしたマハールに先ほどの帯剣した若者が勢い込んで近づいて来た。
  「エンゲ・バウアーと申します。騎士を拝領しております。私にも何か御申しつけください。」 甲高い声と、うなじの白さはマハールをどきりとさせた。
  「女騎士か。わかった。犯人を追え、兵を連れて行け。隊長、兵を付けてやれ。」
  「わかりました。」
 隊長の付けた兵とともに女騎士エンゲは廃屋に走った。
 「他の者は火を消せ。」
  火球の火が向かいの建物の壁に燃え移ろうとしていた。神殿の兵士と、やっと集まってきた王都の警備兵を消火に回すことで、火は収まりそうであった。
 
 「レムリア伯。ご苦労だった。」
  火の勢いが衰えたのを見て一息ついていたマハールは、後ろからかけられたしわがれ声に振り向いた。
 左右を暗黒騎士団の屈強な騎士に支えられてクロークが立っていた。しかしその豪華な黒衣は所々焼けこげ、火傷の傷は癒されていたものの、ちりちりになった髪の毛は、クロークが今回の襲撃を無傷で乗り切れたわけではなかった事を示していた。
 「は、ご無事で何よりです。」
 マハールは頭を下げた。そして違和感を感じてクロークを見た。クロークは建物の火を眺めていた。マハールに声をかけたものの、クロークの目に何も映っていないのは明らかだった。クロークは火を見ていた。自らを焼いた火を。 建物の火が完全に消えるまでクロークはそこを動かなかった。
  マハールは背筋に薄ら寒いものを感じた。俺はこいつを殺せなかった。しかしこいつはこれまでのクロークじゃない。俺は何かを殺したのだ。では、それは何なのだ。そして、生き残ったもの、あるいは今生まれた者は何なのだろうか。
99年04月27日:17時26分27秒
ラムリアース戦記01.7:天国の牧人 / ディアス・ダロ

 昼間だというのに重く垂れ込めた雨雲は時ならぬ夕暮れをファンにもたらしていた。迫り来る闇の中、ファンの中心部を占めるファラリス神殿は闇の中にあってなおほの暗いその偉容を誇示していた。神殿の中は所々に配置された松明の光も届かぬ所が多く、設計者の意図どおり、松明の光も闇の暗さを際立たせるだけに終わっていた。
 
  人気の無い神殿の中、祭壇の前にクロークは跪き、一人瞑想に耽っていた。神殿の中には血の臭いを覆い隠すための甘い香りの香が焚かれ、ねっとりとした煙が天井に向かって立ち昇っていた。
  時候を知らせる鐘を聞いてクロークは立ち上がり、肉体の奥深くを走った重い痛みに眉をひそめた。目の前に現れてくる邪魔物を叩きのめしてきた。やっと自分が望む所に立ったと思ったところなのに、自分に残された時間が余り長くないことをクロークは思い知らされた。
  「いそがねばならん。」
  クロークは口の中でつぶやき、神殿の執務室へ向かった。重厚な扉の中は、クロークの好みに合わせ、質素ながらも快適な住処に仕上がっていた。古い家具と数冊のかび臭い古写本のみを持ってクロークはファンにやって来た。今や彼はファンのファラリス神殿を統べる身であり、広大な領土を持つ有力貴族の一員でもあった。邪魔な貴族どもにさらに何度か、神の御加護があれば、近いうちにファンの宰相の座を手にすることになるだろう。
  その時、この地はファラリス様の統べる理想の地となるのだ。
 
  能力あるものが正当な位置を占めることをファラリス様は望まれている。力あるものによる効率的な統治を実現しようとクロークは考えていた。
  貴族の家に生まれたというだけの無能な者たちこそクロークのもっとも憎悪するところであった。こうした彼の考え方は、多くの敵と味方を創った。ほとんどの貴族はクロークを憎んだが、騎士以下の下級貴族は彼を支持した。不思議なことに、無能な国王はクロークを信頼し、クロークをこの位置にまで引き上げてくれた。
 
  その意味では、彼がもっとも憎むべきなのは硬直した体制の頂点にある国王であり、最初に打倒しなければならぬ対象でありながら国王の後ろ盾なくして現在のクロークは無かった。幸いなことに、この矛盾を彼が意識することはほとんど無く、それはクロークの胃にとって幸せなことだった。
 
  ファンを手に入れようとしている今、クロークの抱える問題は、彼を取り巻く旧勢力の抵抗であった。クロークが望むものを手に入れれば、この抵抗はさらに激しくなることが予想された。すべての貴族相手に神の御加護を求めるわけにはいかない。あの方は御忙しいのだ。これまでに得られた助力だけでも過分というべきだろう。
 夜の闇より現れた異形の悪魔に食い尽くされた者、マーファの手におえない不可思議な病に犯され、苦痛のうちに死を迎えたもの。
  「神の御名は誉むべきかな。」
 ファラリスの恩寵を想うたびにクロークは感謝の念が沸き上がってくるのを押さえ切れなかった。私は愛されている。その思いは深まるばかりであった。
  騎士階級と商人とは、大貴族、既存宗教の神殿と戦う彼の力の源泉となっていた。しかしそれだけでは足りない。クロークには味方が必要だった。さらにいえば、手駒が必要だった。
 
  彼とすでに敵対していないファンの有力貴族はほとんどいなかった。北部では、ライデン、ロフレッサー、南部ではテイラー、ツナガぐらいであろうか。
  このうち、ライデン、ツナガははかつて勢力を誇ったが、今は当主が引退しており、後を継いだ者にはかつての力が無い。もっとも今の当主と深刻に対立していないのは彼らが今やそれだけの力を持たないからでもあった。さらにライデンはこのごろ悪癖に身を持ち崩したといううわさもある。
  ロフレッサーはクロークの方がその野卑さを好まなかった。
  「やはりテイラーか。」
  南部地方の有力貴族であるテイラーと北部の諸貴族との間には軋轢があった。クロークも敵の一人としてみられているはずだ。しかし、北部の連中を打たせてやるとなればこちらの味方に付けられよう。神殿建設を名目にした南部よりの兵集めは進んでいる。その兵力をもって北部諸貴族を打倒する。テイラーはそのあとで始末すればよい。刎ねるべき首が一つにまとまるのは大歓迎だ。
 
  馬鹿者ぞろいの貴族に同士討ちをさせる。その後に訪れるのは理想の千年王国だ。クロークは唇の端だけを歪めた。それは、普通の人間の間では笑いと称されるものであった。
 
 「だれか。使いの者を呼べ。」
 
  クロークは手駒を入手するために、彼の最強の兵器を用意させることにした。 かつて使った手駒のことはもう忘れ果てていた。今度思い出す時があれば、その危険性に気づいて処分を考える時であろう。
 
  「神をたたえよ。地は神の御手に在ればなり。」
 
 風が強くなって来ていた。
 
99年04月27日:14時21分26秒
ラムリアース戦記01.3:傍観者の幕間劇 / ディアス・ダロ
 
 ファンの王城を白く煙る雨が包み込んでいた。よく手入れされた中庭の木々から春先の花は散り、若葉が雨に打たれて重く頭を垂れていた。中庭の一角には、質素な四阿が木々に埋もれるようにひっそりと隠れて建てられ、 庭を散策するものにひとときの憩いを与えている。
  普段の年ならば、そろそろ恋人たちの逢瀬に格好のこの場所も、天候に恵まれぬ今年は閉め切られ、訪れる者も絶えてなかった。今日の二人を除いては。
  今、四阿には覇気に乏しい中年の男がけだるげに長椅子に身を預けており、初老の男が紅茶を入れるのを見るともなく眺めていた。
 「シュテファン。」
 「はい、陛下。」
 「次の王は誰だと思う?」 主が答えを求めているのではないことを知っているシュテファンは、なにも答えず、紅茶のカップを主の脇の小テーブルに置いた。
 「クローク大司教か? 違うな。奴の目的は権力ではない。奴にとって、権力は手段であって目的ではないのだ。 奴の目的は、この世に奴の崇めるファラリスの王国を築くことだ。知っておるか?奴はそれを自分の欲望のためにではなく、人々の幸福のためにやろうとしておるのだぞ。しかも本気で。
  だから奴は王には成るまい。奴は余の身を守るだろう。余が奴にとってつごうのよい王である限りはな。」
 
 いつになく長広舌を振るった主は喉に渇きを覚え、紅茶を一口すすった。
 「いつもながら見事な味だな。」
 「恐れ入ります。」
 
 「ではテイラーか?南の連中は奴を担いで国中を練り歩きたいだろうが、テイラーでは北はうなずくまい。」
 シュテファンはちらりと主の顔を見たが、そこからは何も読み取れなかった。
 「ロフレッサーにやらせてみるのも面白いかもしれん。あやつなら2年で国土を3倍にし、4年後には全てを焼き尽くしてしまうだろう。1年と3年でやり遂げるかもしれん。」
 主はカップをテーブルに戻し、窓の外に目を向けた。居城の寝室の窓にあでやかな衣装をまとった人影が見えたように思ったのである。
 「余はあの男がうらやましい。あやつは自らの生きたいように生きている。あやつならこんな時どうするのであろうな?」
  シュテファンは、カップがからになったのを見た。しかしポットウォーマーをもってしてもはや紅茶が十分な暖かみを持たぬのを知って、主の意志を確かめるように言った。
 「よろしゅうございますか?」
 「話せ。」
 主はためらいなく答えた。
 「手紙のやり取りは続いておるようです。手引きをしている侍女も突き止めましてございます。あの者たちはまた近いうちに連絡を取りましょう。いかがいたしますか。」
 主は静かにカップを机に戻し、自分の手も、声も平静なのに満足した。
 「圧力を加えろ。あれの主催する次の舞踏会をだいなしにしてやれ。逃げるときには裏から手を回して助けてやれ。来るときに持ってきた金と宝石なら持ち出させてもいい。宝物庫の見張りを入れ変えろ。我が国のものは持ち出させるな。」
 
 重い間があり、シュテファンは尋ねた。
 「了解いたしました。その後はいつものように。他にはよろしゅうございますか?」
 「お前に話すことは、もう無い。」
 シュテファンは一礼して出ていった。主は寝室の窓を見た。そこには豪華なカーテンが窓を彩っているだけだった。
  主は小声で愛する者の名をつぶやいた。その声はあまりにも小さく、誰の耳にも届かなかった。 彼自身にさえも。
 
99年04月01日:12時51分25秒
ラムリアース戦記01:ファンの苦悩(再録) / ディアス・ダロ
 
 
 降り続く雨にファン城の壁はじっとりと湿気を含んでいた。
 異常な長雨に憂慮した黒剣騎士団団長レムリア伯爵アウレ・マハールは国内各地に派遣した密偵の報告を受けていた。
 その結果は、マハールの最悪の予測をも上回るものであった。
 長雨のために、今年の予想収穫はファン北部地方は30%の減収、ファン南部地方は10%の減収になる恐れがあった。
 幸い、生産力のあるファン南部の被害の方が軽く、全土あわせれば80%の収穫は見込めるものの、ファン北部地方の燕麦の被害ははなはだしく、ファン北部地方の燕麦は例年どおりの収穫は望めなかった。
 このままではまた民が飢える。ファン北部地方の馬鹿領主どもは例年どおりの年貢を取り立てようとするだろう。そうすればまた反乱だ。
 ファンは長年にわたって発作のように発生する農民反乱に悩まされていた。貧しさが反乱を産み、情け容赦なく鎮圧された後には多くの死者と、流民。怒りと絶望とが残された。特にファン北部地方では飢饉の年が来るたびに激しい農民反乱が繰り返されていた。
 ファン北部の小貴族より成り上がったクローク大司教はファラリス神殿の建設のために、農繁期のこの時期にもファン南部の農奴を動員しようとしており、反対するファン南部の領主をファラリスの教えに背くものとして捕らえ、処刑している。これはファン北部の元にあえぐファン南部の全体的な構図の一部に過ぎなかった。
 軍事力に優るファン北部はファン南部を押さえ、不足する食料を補っていた。
 
 マハールは怒りを押し殺した。どこにクロークの手先が潜り込んでいるかわからない。暗愚な国王を操るクロークこそが今やファンの第一人者であった。奴はもうすぐにも宰相の座も入手するだろう。そのとき奴の目が向けられるのはファン南部だ。
 
 クロークの最終的な目的はファン南部の盟主テイラー将軍にある。奴は将軍を退け、自分がファン南部を押さえることをねらっているのだ。
 国内の密偵の報告に続いて、マハールはラムリアースから戻った密偵の言葉に考え込んだ。かの地では雨も降らず、病気も発生していないというのだ。
 恐るべき隣国ラムリアース、堅固な国境の砦と、決して数多くはないが、精強な重装騎兵と、何よりも魔道を操る魔道師群の恐ろしさはマハールも身に染みていた。
 だが、その恐ろしさは自分の身に降りかからなければただの惰弱と言って片づけられよう。 マハールは密偵を下がらせ、考え込んだ。
 マハールの胸に黒い思いが湧き上がってきた。クロークを煽って軍を起こさせ、ファン北部をラムリアースにぶつけてやる。両者が疲弊したとき。
 ”ファン・ドゥ・リース” 麗しのファンよ。ファン南部はそのときこそ自らの運命を自ら決められるようになる。
 
  稲妻が轟き、マハールの顔を一瞬照らし出した。
 
 「これもラムリアースの力か?」
 
 マハールは重く垂れ込めた雲に向かってつぶやいた。雨は降り止みそうに無かった。
 
99年03月29日:21時48分51秒
ラムリアース戦記5.1:暴虐の予兆2 / 皇帝
漆黒のマントに豪奢な金髪をなびかせ、宮廷の階段を降りてゆく黒剣騎士団長、それを階段の下から見守る一人の美しい女性がいる。騎士団長の副官である。彼女は剣の腕では他の騎士に劣るものの神官としては1,2を争う能力をもつ。しかし、彼女が副官として登用されたのは神官の能力もさることながら、その広範な知識によるところが大きい。世界の地理、歴史、言語、神学、魔術、法律、統治、etc...。数え上げたらきりが無いぐらいの幅広い知識をもって騎士団長を補佐してきた。
彼女が剣を差出す。「ありがとう。」とその剣を身にまとう騎士団長。その剣は黒く華美ではなく機能的であり、良く手入れがされている。

「ラムリアース討伐の命令が下った。拠点の攻略と魔法騎士団の制圧だ。」
「はい。」
「歩兵部隊は将軍が率いて領土を蹂躙するらしい。」
「・・・・」
「当面の食料は確保した。歩兵部隊の分だがな・・・。」
「はい。」
「宰相閣下は、ラムリアースの魔法力を減殺したいようだ。どう思う?」
「はい、私もそのように存じ上げます。魔法力で優位に立つラムリアースの魔法力を削ぐことでファンを優位に立たせる。そのために、魔法騎士団を壊滅させる。魔法騎士団を壊滅されるためには白締騎士団が邪魔、その白締騎士団を領土を蹂躙することによって分散しようと考えていらっしゃるのではないでしょうか。」
「ふむ、なるほど・・・。早急に軍義を開く、騎士を参集してくれ。」
「はい、かしこまりました。」

・・・一方・・・

町のはずれから歩くこと約1時間、険しい山の森の中に1軒の小屋が建っている。一人の男が額に薄らと汗を浮かべながらその家を訪れようとしている。彼は、ファン王国の将軍の一人である。彼が訪れようとしているのは、昨年までファン王国の将軍をしていた彼の恩師でもある老将軍である。

彼は、小屋の裏手で薪割をしている老将軍の姿を見かけ声をかけた。
「突然で申し訳ありません。将軍、お元気そうで何よりです。」 白髪のしかし、がっしりとした体格のその老人は、ゆっくりと後ろを振り返る。
「おお、君か。君がここへくると言うことは、ファンの滅亡も近づいたというわけじゃな。」
「将軍には、全てお見通しというわけですね。お願いです、また、我々の指揮をとっていただけませんか?」
「何を言う。老兵は、ただ、消えるのみじゃよ。私は...、周りの連中が陛下に直言し、暗殺されたり死を賜ったりしたのを見て、恐れをなした臆病者じゃよ。部下たちに対する責任を全うせずにな...。」しばしの沈黙が流れる。過去を思い出すかのように。
「ああ、それより、私に話してみなさい。頭の切れる君がそのように悩んでいるところを見ると、相当の無理難題を押しつけられたと見えるな。」

事の次第を聞き終えた老将軍は、しばらく腕組みをして考え込んでいたが、ようやく口を開いた。
「で、君の意見は?」
「はっ、この作戦における最重要事項は、ラムリアース正規軍が対応行動を起こす前に、我々が略奪を完了し、黒剣騎士団を含め、再集結を完了しなければならないことです。従いまして、作戦の当初重要視しなければならない事項は、迅速に略奪を完了して再集結するための(速度の発揮)、ラムリアース正規軍の動向を継続的に把握するための(情報収集)です。」
「ふむ。再集結した後の戦力比では勝ち目はあるのかね?」
「はっ、両軍が完全な形で対峙したなら、ファン1.5:ラムリアース1で勢力的には我が軍が有利です。ですが、装備、練度、士気などの能力を総合的に加味すると敵が有利ではないでしょうか。」
「ふむ。この決戦で我が軍の勝ち目は?」
「はっ、敵の領土に広範囲かつ甚大な被害を与え、敵の正規軍に分散を強要すること、また、分散した正規軍が完全に集結する前に各個に撃破することです。」
「ふむ、なるほど、どちらにしても速度が要求されるわけじゃな...。」
「はたして、略奪は敵の主力部隊が動き出す前に完了するじゃろうか?暗黒騎士団とは完全な連携がとれるじゃろうか?敵の主力部隊は分散してくれるじゃろうか?どうじゃな?」
「はっ、実行に移すには練度が足りません。あと半年は練兵する必要があるでしょう。また...、」
「なんじゃ、ここまできて隠し事も無かろう。」
「はっ、最近では千人隊長、百人隊長とも、宰相の息のかかったものが多くなり、戦いを知らない者が増えてきております。戦術的にも未熟かと...。」
「ふ〜む。そうか、良く分った。ここは勝つ算段よりも、負けぬ算段をするべきじゃな。ま、そうあせらんとも、今日1日ぐらいは留守にしても問題なかろ?どうじゃ、汚いところだがわしの家に泊まってゆかんかね?そう、それと、「はっ」は、止めにせんか?もう、昔の上司と部下でもあるまいに。」

彼は、負けぬための戦いのため、知力を尽くしていた。史上まれに見る大虐殺を行った将軍が、戦いの当初から負けを予感し、そのための策をめぐらせていたことなど誰も知る由がなかった。この、老将軍を除いては。
99年03月29日:21時38分14秒
ラムリアース戦記5:暴虐の予兆 / 皇帝

王城の、ひんやりとした涼しさを保つ廊下を規則正しい靴音を立てて歩いて行く一人の男がいた。ファン王国の将軍の一人である。彼は今、ラムリアース討伐の命令をもらうため王に謁見すべく謁見の間にその歩みを進めている。彼のため息とともに。

「ファンはだいぶ変わってしまったな。暗黒神の大司祭であるクロークが重用され、宰相の地位に登用されてからは宮廷内には媚びへつらう者が闊歩し、正論を言う者が追いやられている。」
「国王陛下もお人柄が変わられたようだ。重税を課し、美女を集め政治には関心を示さなくなってしまわれている。」
「軍隊もそうだ、正規軍から大幅に騎兵を引き抜き、暗黒騎士団を編成し、功績在る将軍たちを追いやってしまった……。一体何を考えているのか。」
「ま、いまさら愚痴を言っても仕方ない、そうでなければ将軍の末席にいたこの俺がファンの正規軍を指揮してラムリアースなどに戦うことなど無かったろう。しかし、本気でラムリアースに勝つつもりか?何か策でも?」

彼が、あれこれ思考を進めている間に謁見の間の控の間に着く。そこには既に黒剣騎士団長が待っていた。騎士団長、ファンにおいて選りすぐられた暗黒神の神官戦士による騎士団の団長。騎士団長の職につく彼はその役職に不似合いなほど若く、また、黒のマントに豪奢に光る金髪、その外見は彼を見る人を魅了する。しかし、ひ弱なわけではなく、その精悍な顔つきと知性のある眼光は彼の意志の力を感じさせる。将軍はいつものことながらその容貌に感嘆を感じつつ、騎士団長に挨拶をする。騎士団長は無言ではあるが、誠意のあるまなざしを向け会釈を返す。

謁見の間の扉が開き、彼ら2人は中へと入る。上質の絨毯の上を2人終始無言で御前まで歩いて行く。国王は玉座に鎮座し、その横に宰相クロークが立っている。国王はソッポを向き、宰相は薄ら笑いをしているかのように見える。 宰相が口を開く。
「国王の名をもって、両名にラムリアース討伐を命ずる。」
「黒剣騎士団長、黒剣騎士団を率い、主要な都市を攻略するとともに、魔法騎士団を制圧せよ。」 黒剣騎士団長は、「はっ」と短く答え、いっそう頭を低くする。
「将軍、残余の、徒歩主体である正規軍を率い、ラムリアース領土を徹底的に蹂躙、破壊せよ。特に幼児については全員を虐殺すること。」
彼は、「な...」なんと言うことをと言おうとして言葉が詰まった。とっさに「ははっ」と、これも深深と頭を下げる。
「なお、」宰相は続ける。「残余の正規軍については全ての糧秣を黒剣騎士団に申し渡すこと。その他の事項については団長・将軍の両名により決せよ。」

2人は再度一礼すると退出していった。控の間で、騎士団長が将軍に向かって口を開く、「すまない、卿には迷惑をかける。我々も全力を尽くす、卿と卿の軍に武運の賜らんことを。」、両名どちらが言うとでもなくお互いに「ファン王国に勝利を」と言うと、騎士団長は控の間から退室をした。

将軍は力無く椅子に腰掛け、これからの自分の運勢を嘆くのであった。
「略奪はわかる。食料の少ない現在の我が軍にとって食料調達は必須の事項だからな。しかし、幼児の虐殺とはなんだ!」
「まて、その前に...、通常戦で敵の正規軍を撃破する前に蹂躙などできるものか。敵の正規軍をまるまる残したままこちらは戦力を分散させなければならないだろうに。一体何を考えているのだ。これだから軍事の素人は困る。」
「あの黒剣騎士団ならそれができると言うのか?」
「まあいい。在野に下られた老将軍にご意見を伺いに行くとしよう。流石は老将軍だ、この様な事を見越して野に下られたか。」

ファンの宮廷内から発したこの一言の命令により、史上まれに見る大虐殺が今まさに行われようとしていた。
99年03月29日:05時17分22秒
ラムリアース戦記18:後世の歴史家は語る。 / カヲル
 「数とは力なり」 
 ・・・・戦争の原則の一つ。 
 

 200年前のラムリアースとファンの戦争を考えるさいに、真っ先に浮かぶ疑問がある。ラムリアースとファンの人口、気候などを考えた場合、ファンのほうが圧倒しているはずなのに、なぜファンが負けたのか? ということである。
  
 当時の資料は、戦争による混乱や時間の経過、国家による歴史の偽造などにより、正確なところは不明である。
 よって、現存する資料から信頼の置けるものを選別し、推測するしかない。
 
 もっとも信頼できる資料は、新王国暦520年の、ラムリアース、ファンドリア、オーファンの国勢調査の結果である。以下に、それを並べてみよう。
 
 ラムリアース:総人口150万人弱
 オーファン :総人口150万人
 ファンドリア:総人口120万人
  
 ファンドリアとオーファンは、ファンが滅亡した跡に建国された国である。単純に言って、ファンの人口は270万人であったはずだ。ラムリアースの2倍近い。しかも、ラムリアースは、ファンと比べると、寒冷な気候である。面積当たりの食料生産能力は、ファンと比べて低いはずなのだ。何故に、ここまで国力の違いがありながら、ラムリアースはファンに勝利し得たのであろうか?
 
 一つには、ファンが、それ以前から内乱を繰り返し、国力が衰えていたことがあげられる。当時のファン国貴族は、自分の利益を優先し、領民から搾取することを当然のことと考えていたらしい。その結果、農民の反乱が相次ぎ、毎年膨大な戦費を費やすという、悪循環に陥っていたらしい資料がある。
 
 このような政治の腐敗により、ファンの辺境の領土は、独立国の様相を見せていたらしい。国王の命令が非常に及びにくい状態になっていた資料があるのだ。
 
 ファンの領土が、今まで考えられてきたものより狭かったという説もある。ファンドリアもオーファンも独立後に数次にわたって領土拡大戦争を行っている。この時に征服されたのは、ファン王国の領土の範囲であり、旧領回復戦争だとされてきた。しかし、私が最近入手した古い歴史書にこんな記述があるのだ。
 
 新王国暦494:ファン国の内乱。ファンドリア南の都市国家、パイソンを併合する。
 
 新王国520年の地図には、パイソンなる都市はファンドリアにない。征服後、都市の名前を変えたのであろう。問題は、この都市が、ファン王国に属していたのに、内乱に乗じて独立し、その後ファンドリアに併合されたのか。それとも、もともと独立国だったのが併合されたのかである。
 もし後者であるなら、ファンの人口は今まで考えられてきたものより、確実に少ない事になるのだ。
 
 
 さて、今までは、ファンにばかり目をむけてきたので、ラムリアースに目を向けてみよう。
 
 ラムリアースは、非常に安定した国であったとされている。内乱や農民反乱などは少なかったようだ。当然ながら、国力の消耗はほとんどなかったはずである。ファンとは対照的といえるであろう。
 
 ファンの侵攻で行われたラムリアース南部の虐殺、水源の破壊、施設の破壊。これにより、長期にわたる多大な被害を被ったことは、言うに及ばないであろう。ラムリアースは、この地域を救済し、生産能力を回復するために、大量の食料を供給せねばならなかった。そのために、被害を受けなかった地域でも、餓死者が大量に出たという可能性も捨て切れない。もしこの仮説が正しければ、ラムリアースの人口は、490年代にははるかに多かったはずである。
 
 ラムリアースが北方にありながら、高い自給率を持ち、多くの余剰人口・・・つまり騎士や正規兵を養えた理由については、ジャガイモの栽培が当時から盛んであったことをあげたい。
 
 芋というのは、地下茎に栄養が貯えられたものであり、栄養成長した部分が食べるところである。これに対して、小麦は、生殖成長した部分・・・種が食べるところである。この差により、ジャガイモは、栽培期間が短くてすむ。さらに、小麦や豆などより、はるかに多くの収穫を約束してくれるのである。
 しかも、ジャガイモは、もともと荒れ地の植物であるため、やせた土地でも栽培が容易で、寒さにも強い。穀物ほどではないが保存が利き、パンと比べると調理も容易。もっとも、少し暖かい地域になると、とたんに保存性が悪くなる。しかも、成長が阻害されやすい。ロマール辺りでは、有効な作物とは言えないであろう。
 
 
 さて次に、両軍の戦術的、戦略的な行動に注目してみよう。これも、歴史偽造、資料の消失、脚色により正確なところはわからないが、複数の国の歴史書や、吟遊詩人のサーガを比較検討することで・・・・・・・・・
 
 
 
 後世の歴史家が語るというかたちで、いろんな可能性を書いてみました。参考になれば幸いです。
99年03月23日:21時59分44秒
ラムリアース戦記15外伝その1:馬売り / Djinny

 俺達は馬の轡を取ったままの恰好で暫く棒立ちになってた。
 森を抜けてすぐの所、少し小高くなった見晴らしの良い場所だ。
「すげえ」
 ボーナムの奴がごくりと唾を飲んだ。
「これ全部畑ですかい」
 見た通りだ、と俺は答えた。
 俺達の目の前には見渡す限りの小麦畑が広がってた。
 所々に村らしいかたまりと森がある他は、全部畑みたいに見えた。
 ここは大国ファンとラムリアースの国境辺り。
 ろくすっぽ畑地なんかないとこだって聞いてたけど、どうしてどうして、堂々たるもんだ。
 俺は自分の国のことを思い浮かべた。
 見渡す限りの、………までは同じだが、あるのはくさっぱらだ。水利の良いところなら結構畑もあるけど、とてもこんな広さじゃない。
 そのくさっぱらで、何百頭も馬が飼われている。お蔭様で、一応、うちの国は西部諸国一の軍馬の産地って事になっている。ラバン産の軍馬って言えば、西部諸国じゃ一級品の代名詞だ。
 俺達が引いてるのも、その馬だ。しかも、一番でっかくて、刃物の光を怖がらない奴を選んで買い取り、連れてきた。

 なんでこんな処まで来たかって?
 そりゃ、売る為さ。俺は馬商人なんだ。

 なんでかって? 簡単簡単。
 ラムリアースとファンの間で戦争がおっぱじまったからさ。
 本当はみんな未だ知らないことになってるけど、そこはそれ、噂ってのは「ガネードの逃げ足より速い」って言うだろ? もっとも、半エルフのティムの野郎は「シルフより速い」の間違いだって言ってるが(タラントくんだりじゃそう言うらしい)。
 道々聞いたりしてきた所じゃ、ファン軍は連戦連勝らしい。馬を何頭も乗り潰す勢いで進撃してるって話だ。
 そりゃあ景気の良い話だが、しかし、実の所ファンの軍馬ってのはほとんどが輸入品なんだな。
 それも、今戦争やってるラムリアース産のが一番多い。
 て、ことは、早いとこ牧場を押えるなり何なりしなかったファンの騎士様は、馬に困ってるって寸法だ。
 で、そこに俺が一番いい馬を持ってやって来る。

 取り敢えずはここにいる3頭だけです。
 でも、お話によっちゃあいくらでも。なんせラバンは戦争してませんから。
 ええ、そりゃもう。お値段は大勉強で。
 ずっと末永く御贔屓にしていただけるんなら、こちらも願ったり叶ったりでして。

「親方」
 気の抜けた声が俺の楽しい想像をぶち壊した。
 ティムの野郎だ。このタラント出のいなかもんが。
「なんだ」
「へえ、なんかあっちの方にキラキラするもんが見えるだ」
 ティムはひょろっと長い手を伸ばして指を差した。割と近く、丁度この丘を下った辺りだ。
「そうか?」
 俺はあいている方の手で手庇をして見てみた。
 おお、いる。キラキラ光ってる。よく見れば鎧の照り返しらしいのも見えるし、ちらちら赤いのが見えるのは、あれは旗か何かだな。
「よーし、でかした」
 俺はティムの肩を叩く代わりに馬の顔を撫でてやった。
「いいか」
 と、ティムの教えた方を指差す。
「あのお客さんに馬が売れるかどうかで、お前らの分け前も変わる。くれぐれも、粗相のないようにしてろよ」
 ティムはぺっと唾を道端に吐いて、
「へい、………で、おらはなにをすればいいんで」
 と、ひょろりとしたイメージそのまんまの気の抜けた声で言った。
「お前らは何も言わなくて良い。話すのは俺がやる」
 俺は親方の威厳を持った言い方で言ってやった。
 太っちょのボーナムがごっくんと唾を飲み込んだ。しゃっちょこばって、
「へい、親方」
 と、こっちはこっちで頼りになりそうもない空返事を返して寄越した。
 俺は少しだけ、こいつらを選んで連れてきたことを後悔した。
 だけどしょうがない。
 レニは女だし、店に必要だ。ノートンはしっかり者だから店を任しとく方が良い。ギルとクリスは新参者で気心が知れてない。こいつらを連れてくるしかなかったんだ。

 まあいいさ。
 お客がそこにいることは判った。後は売り込みに行くだけだ。
 俺達は勇んで、しかしのろのろと山を下り始めた。道が思ったより悪かったからだ。
 それが、信じられないくらい重装備の騎馬が何頭も通って荒らされたからだって知っていたら、俺はそのまま回れ右して帰っていたかも知れない。だが、俺はどういう訳かうっかりしてそれに気が付かなかったし、俺が気付かないものに後の二人が気付く筈もなかった。


99年03月20日:19時48分33秒
ラムリアース戦記40:反撃の狼煙火 / カヲル
TRPGのための政治学的設定の部屋LOG 005
 98年12月21日:11時27分23秒
 向こうに参加したい / アウレ・マハール
 より抜粋
 
 ラムリアースの小村 焼け残った農家
 「マハール導師、なぜこのような事を許すのだ。すでにラムリアースの1/3は押さえた。われらの領土となる土地を自らの手で破壊しているではないか。」
 「わからぬか。それがわからぬうちは、うぬはまだ騎士止まりよ。
 ラムリアースが反攻の体制を整えられた後もこの地を押さえられると思っておるのか。
 ファンはラムリアースにまだまだおよばぬ。たしかに奴等の驕りがこの好機をわれらに与えた。
 われらはできるうちにできるだけのことをせねばならんのだ。
 この戦いにしくじればファンは滅ぶ。」
 
 TRPGのための政治学的設定の部屋LOG 005
 98年12月22日:00時03分23秒
 Re:向こうに参加したい(アウレ・マハール黒剣騎士団長へ) / ジョニィ
 より抜粋
 
 「相変わらずだな」聞きなれた声が背後からした。
 「その事が解っているのは、我が国では卿と、国王陛下、それと私ぐらいかも知れんな。」そう言いながら、将軍が近づいて来る。
 「すまんが、優秀な騎士団長である卿には、もう少し苦労してもらう事になりそうだ。」口の端に悪戯っ子のような笑みを見せる将軍。
 「実は…」
 
 (調べたところ、アウレ・マハールさんが黒剣騎士団長になっても良いとの発言がなかったので、一部削除しました)
 
 
 ファン軍は、兵糧を略奪によって賄っている。ラムリアースの村村に兵を送り込み、苛烈な略奪を行わせているのだ。
 今までは、全軍に充分なだけの食料を供給し、なおかつファン本国まで送るだけの量を確保していた。
 だが最近、各地に散った中隊から送られてくる戦利品・・・主にジャガイモなどの食料と、鉄製農具・・・の量が激減しているのだ。
 
 最初は、ごく当然のことと、首脳部は考えていた。
 近辺の村での略奪が限界に達し、より遠くにある村で略奪をしなければならなくなっている。輸送に時間がかかるのは当然だ。また、辺境に近づけば、村はまばらになり、部隊の移動にも時間がかかるようになる。
 物資の届く間隔が、間遠になるのは当たり前なのだ。
 
 だが、今の状態は異常だ。戦利品を本陣に送ってくる部隊は激減し、定期連絡すら怠る部隊が続出している。中には、まったく連絡の取れなくなった部隊すらあるのだ。
 
 「むう・・・好き放題をやらせすぎたか?」
 「うむ・・・任務であることを忘れ、自分達の欲望を満たす事を優先しているのかも知れん。」
 「一度、すべての部隊を集結させ、規律を矯め直すか?」
 「うむ。しかし、それでは兵糧が足りなくなるぞ?」
 「では、今、ルーナムなどを囲んでいる兵達に、代わりに略奪をしてもらおうか?」
 「ふむ。そして、今まで略奪をしていた部隊には、再教育を行うわけだな?」
 「そうだ。」
 
 ファンの首脳部は、まだ、事態を軽く見過ぎていた。
 ラムリアース南部の戦力は、ほぼ撃破し、組織的な反抗ができる者などいないと思い込んでいた。当然ながら、送り込んだ部隊が、やられることなど、考慮の外だったのだ。
 集結命令を出してから10日もの時が過ぎたというのに、合流した部隊は5割に満たなかった。そして、集結した部隊も、手ひどい痛手を受けていた。実に、1割の戦死者と、2割の重傷者がいたのだ。逃亡したり、索敵に出て帰ってこなかった・・・おそらくは捕らえられた・・・ものや軽傷者も含めれば、実に5割に達した。
 
 全兵力の半分を略奪部隊にまわしていたファン軍は、
 この時、25%の兵力を失っていたのである。
  
 そして、彼らは知った。
 帰って来た部隊にこれほどの被害をもたらしたのが、少数の特殊部隊・・・おそらくは冒険者・・・と、それに率いられた農民達によってもたらされたのだということを。
 帰ってこない部隊のほとんどが、動き出したラムリアース正規軍によって全滅させられたのだということを。
 
 兵力の損耗、そこから来る士気の低下、略奪による兵糧の確保の困難、ラムリアース正規軍の出陣・・・
 
 ファン軍の首脳達は、反撃の狼煙日が四方に見えることに恐怖したのである。
 
  
 
 ラムリアース戦記の第4弾です。
 番号が、さらに飛んでいます。
 なぜなら、このお話は、戦況が激変しているのに気づかずに、長期間のほほんとしていたファン軍の様子だからです。
 
 この裏では、いろいろな話が同時進行しています。
 (1)略奪部隊にちまちまとした襲撃をかけていた冒険者達が、本格的な攻撃を開始するお話。
 (2)ルカオンを中心とする南部貴族達が、王城の貴族達に働きかけて、早く救援に来てくれと交渉するお話。
 (3)グレイ・フォレスト内での政治闘争が終結し、ラムリアースの正規軍が動き出すお話。
 (4)現在のファン軍の配置を調べ上たものを元に、ラムリアース正規軍が各個撃破を行う話
  
 
 ちょっと考えただけで、これくらいのお話が浮かびます。私一人ではちょっと書ききれませんね(^^)
 
 この次辺りから、ファン軍の退却戦などになるでしょうか?
99年03月20日:01時52分54秒
ラムリアース戦記15:ファンの暴虐 / カヲル
家庭教師が、領主の息子に勉強を教えている様子 
 
 「正面から軍隊がぶつかり合い、戦闘をした場合、数の多いほうが圧倒的に有利なのはわかりますね? では、例えば、五百の兵力の軍と、二百の兵力の軍がぶつかった場合、勝利した軍は、どれだけの兵が残っているかわかりますか?」
 「三百人ですか?」
 「ふむ。単純な引き算ですね。ですが、戦場での計算はそれほど簡単ではありません。まず、双方の戦力の比率を、出来るだけ単純化します。この場合、五対二ですね。次に、双方を二乗します。そして、多いほうから少ないほうを引きます。これの平方根が、残る戦力を現すのです。」
「すると・・・5X5−2X2=21、21の平方根は・・・4.58。これを百倍して・・・458人も残るのですか?」
「はい。ですが、さらにこれに、兵の錬度、地形、指揮、指揮官の能力など・・・」
 
 
 ファン軍は、連戦に連勝を重ねていた。
 
 国境に建設された”大地の壁”砦を、奇襲と10倍の兵力で瞬く間に攻め落とし、各地にある領主の館・・・その多くは砦としての機能を備えている・・・を圧倒的な戦力を背景に攻め滅ぼした。
 降伏勧告を突っぱね、砦を死守して戦死したものたちは幸せだったというべきだろう。戦わずして降伏したり、捕らえられたものたちに比べれば。投降した兵達は、奴隷として後方に送られた。領主の家族達や騎士達はなぶり殺しにされた。そして、女達は・・・
 
 ファン軍は、ラムリアース南部の主だった拠点を、まず攻略した。そして、各地の砦が連絡を取り合うのを妨害した。こうして準備を整えると、ラムリアースの領主達が連携も集結も出来ないでいるうちに、一つ一つ潰していくという戦法を取ったのである。見事な各個撃破作戦といえるだろう。
 
 また、ルーナムの街などの、最初から大兵力の集結している拠点は、押さえの兵力を当て、増援として周囲の砦から送られてきた戦力を各個撃破するという戦法をとった。そして、増援を送ったことにより手薄となった各砦を、各個撃破していったのである。
 
 ラムリアースの隙をついたとはいえ、15の砦を瞬く間に落とした事は、充分賞賛に値するであろう。侵略地域はラムリアース国土の2割に迫らんとしている。
 
 この、初期の戦いにより、ラムリアース南部の戦力バランスは、圧倒的にファン軍有利となったのである。
 
 しかし、ファン軍の進撃は、そこで一旦止まった。
 そして、各地に百人程度の部隊を派遣し、略奪を行わせ始めた。兵糧の確保と、兵に休養を取らせるためである。
 
 ファン軍は、奇襲をかけるために、スピードを最優先にした作戦を立てた。兵糧を用意する時間すら削り、騎士だけで国境の砦に奇襲をかけて大打撃を与え、さらに追いついてきた歩兵で止めを刺す。その後も強行軍を重ねたのだ。兵の疲労は極に達していた。
 
 ファン軍の、本当の蛮行が始まるのは、この時からなのである・・・
 
 
 
99年03月09日:05時54分54秒
ラムリアース戦記20:王城の暗雲 / カヲル
ある御前会議を見た、冒険者が漏らした言葉 
 「貴族って奴はよ、自分の栄達と利益しか頭にないんだよ。口ではもっともらしいことを言ってても、その実自分の利益が裏にあるのさ。」
 
 
 ラムリアースの王城グレイ・フォレスト。その謁見の間。そこでは、イルアーナ14世を前にして御前会議が開かれていた。議題は、老齢と病で相次いで亡くなった、騎士団長と将軍の地位をどうするかについてである。
 
 貴族1「やはりここは、副騎士団長だったクラモン男爵を騎士団長にするのが順当ではありませんかな?」
 貴族2「論外だ! 身分が低すぎる! 副官という役職でさえ分不相応なのだぞ!」
 貴族3「確かに。それよりは、代々武官を務めてきたハイオン侯爵を推挙します。身分、財力、共に申し分ない」
 貴族1「何を言う! ろくな実戦経験もないハイオン侯爵など、相応しくないわ!」
 貴族4「まあまあ、そういきり立たずに。それでは、実践経験、身分、財力、共に申し分ないリヒャルト殿はどうですかな? 国境の砦を10年も守り抜いたと言うことで、兵からの人望もあります。」
 貴族5「論外だ! そやつの父は、冒険者上がりの新参者なのだぞ! そんな成り上がり者に任せられるか!」
 貴族6「確かに、伝統ある我が国の騎士団長に、そんな成り上がり者をつけるわけに行きませんな」
 リヒャルト「成り上がりだと? 実力もないのに生まれだけで高い地位についている貴様らに言われたくないな。俺も父もラムリアースに対して多大な貢献をしている。お前らよりもはるかに、な。」
 貴族4「まあまあ、リヒャルト殿。確かにお腹立ちの気持ちはわかりますが、そう険悪にならずに。皆さん、今、ファンが我が国に侵攻してきているのです。ここはやはり、実力のある者を押すべきでしょう」
 貴族3「実力だと? リヒャルトの守る砦はあっさり落とされたではないか」
 貴族2「いや、弁護するわけではありませんが、城主のいない状態で10倍の戦力に攻められたら、さすがにどうしようもないでしょう」
 イルアーナ14世「・・・・・・・・」(終始無言)
 
 みな、必死になって自分の支持する候補者を推挙し、他の候補者を誹謗している。自国が現在、侵略を受けていることなどお構いなしだ。
 
 いや、ファンが侵略してきた故にこそ、もめていると言えるかもしれない。
 
 安定した国では、家柄ばかりが重視され、実力による人事は行われにくくなる。今回のファンの侵攻は、滅多にない手柄を立てるチャンスなのだ。成り上がるチャンスなのだ。その手柄を、立てやすいように采配してもらうためにも、自分の属する派閥の者を上に立てなければならない。
 
 一度特定の地位につけば、よほどの失態を起こさない限り死ぬまでその地位についたまま。これはつまり、次のチャンスは当分訪れないと言うことを指す。今しかないのだ。
 
 
 彼らは知らなかった。あるいは、侮っていたと言うべきか。攻められたのならば攻め返せばいい。土地を奪われたのなら奪い返せばいい。そう思っていた。
 
 自分たちの国で、何が行われているのか。民達が徹底的な略奪と暴行を受け、大量の死者が出ていることを。民衆に、ぬぐい去ることのできない恐怖と・・・ラムリアースと言う国に対しての不信感を植え付けるために、あらゆる非道が行われていることを。
 
 侵略の目的は土地を奪うこと。すなわち、民衆に対しては、さほどの非道を働くはずはない。そう思いこんでいたのかもしれない。あるいは、「多少の」非道を働かれても、かえって好都合と考えた者もいるのかもしれない。  ファンの非道から救われたと民衆に思わせることができれば、今後の統治がやりやすくなると。
 
 一部では、知っている者もいた。だが、ファンの非道が表だって問題にされることはなかったのである。
  
 いずれにしろ、ファンの軍隊が好き放題をする時間を与えたこと。これは、認めなければならない失敗と言うべきであろう・・・
 
 
  これも転載です。番号が20に飛んでいるのは、後で、間にお話を挿入したいと考えた人のためです。時間的にここに入る、といったことが、一目で分かるように、という。どちらかというと、読む人のためにこうしてあるといえるかもしれません。
 
 ちなみにこのシリーズは、ジョニイさんという方がプレイしていた、政治物セッションから派生してきたものです。(すでに、別物になっているとの意見多数?)
 ラムリアース王国設定(オリジナル)や、 ラムリアース王国設定(ジョニィ・バージョン) 等をご覧になれば、背景が見えてくるかもしれません。
 もっとも、私の書いているものは、「公式設定に反しない範囲で、ジョニイさん達のオリジナル設定を出来るだけ入れていく」というものですので・・・
 やはり、「元」とはかなりかけ離れていますね(^_^)
 まあ、掛け合いをするからには、共通の情報・ルールがないと難しいですから・・・
 
 
 シナリオにするには:
 やはり、謀略物ですね。貴族お抱えの冒険者になって、対立貴族のもとに潜入、弱みを探り出したり、暗殺したり、逆に警護したり・・・とってもダークなシナリオになりそう<<(^^;)
99年03月09日:05時24分57秒
ラムリアース戦記10:魔法戦士ルカオンの帰還 / カヲル
 前提1,ファン王国末期の混乱について、公式設定とできるだけ同じにする。
 前提2、とりあえず、ジョニイバージョンの設定は、将軍のつかんででいる噂レベルのもの(^^)として扱う。 あるいは、完全に無視する(ジョニイさんすいません〜)
 
 
 ある軍師曰く
 「より強力な敵に勝つには、正面から戦ってはいけません。それでは必ず負けます。」
 「基本は奇襲と各個撃破の併用した作戦でしょうな」
 
 
 男は、水晶球に向かって、意識を集中していた。背の高い、がっしりした男だ。腰に剣を差している。一見して戦士のようだ。普段着と言うことなのか、重い鋼の鎧は着ていない。だが、目ざといものなら、彼の指にはまった、メイジリングに気づいただろう。そう。彼は、魔法戦士なのだ。
 彼の名はルカオン。東方諸国では、かなり有名な冒険者だ。 
 
 ルカオン「ほ、本当ですか!? ラムリアースがファンに攻撃を受けた!? しかも、宣戦布告もなしに!?」
 
 ここは、世界最大の国、オランの王都にある賢者の学院である。
 そこの一室で彼は、遠話の水晶を使って、実家の次兄と話しているのだ。定期的に近況報告をしろ、さもなくば家を出ることは許さんと言われているので、しかたなく今回も・・・と思っていたら、とんでもないことを次兄から聞いてしまった。
 ルカオン「それで、戦況はどうなのです? うちは大丈夫なのでしょうね?」
 せわしなく、水晶に向かって質問する。水晶に写った次兄は、深刻な顔で答えた。
 ヘリオン「かなり良くない。我が国は、今、将軍と騎士団長が老齢と病で相次いでなくなり、後継争いで大もめにもめている。主立った貴族の当主達は皆王都に行っていて、指揮をするものが国境付近にいない。その隙をつかれて、各個撃破されている。あるいは、お二人が亡くなったのもファンの謀略なのかもしれんな・・・うちも父上と兄上が王都に釘付けになっている」
 
 ルカオン「く・・・わかりました、では、こちらから増援を送ります。」
 ヘリオン「増援? お前、オランにいるんだろう!? だいたいただの冒険者が、まとまった数の兵士を持っているはずも・・・」
 ルカオン「違いますよ、兄上。冒険者を送るのです。」
 ヘリオン「な・・・そんなもの、役に立つわけが!」
 ルカオン「魔法を使える者が多く、個人の実力は高い。統制は取れていませんが、グループを組んでいるレベルでの結束力は絶大。数人のグループで、数十人の兵士の働きをしてみせる奴らです。そして何より、ここはオラン。かなりの数を集めて見せますよ。」
 そういって、ルカオンはにやりと笑った。
 
 最近覚えた、転移魔法を使えば、オランからラムリアースまでの距離は問題にならない。資金については、これまで冒険をしてため込んだ魔法の宝物を売ればどうにでもなる。
 そして、さらにいくつかの問題点を話し合った後、ルカオンは、まず仲間を説得するために冒険者の店へと向かった。
  
 
 好き放題に略奪と暴行を続けていたファンの第97中隊が奇襲を受けて物資を強奪されたのはこの3日後のことである。
 しかし、ファン軍の上層部はこれをあまり重視しなかった。
 略奪により物資が非常に潤沢であったこと、辺境に派遣した小部隊からの報告であったこと、略奪された量が、その部隊の行動に影響されるほどの量でなかったことなどが主な理由である。
 だが、この時すでに、12の部隊が同じ被害を受けていたことは全くつかんでいなかった。
 
 理由はいくつかある。
 まず、第97中隊が受けた被害と同程度の被害であったため、部隊の指揮官があまり重要な事だと考えなかったこと。略奪を受けた村人が、何とかして食料を取り戻そうと、闇に紛れて忍び寄るというのは頻繁にあったこと。落とした砦からの敗残兵が小規模な襲撃をかけてくることも頻繁にあったこと。なにより、部隊指揮官に自分の失態を隠し、手柄ばかりを報告したいという心理が働いたこと。
 
 これらによって、ファン軍上層部は、組織的な反抗が密かに始まったことを気づかないでいたのだ。あるいは、今まで恐れていたラムリアース軍に連戦連勝していためにおごりと侮りの心が芽生えていたからかもしれない。
 
 だが、この対応の遅れが、ラムリアース軍に貴重な時間と軍事行動を行うための物資を与えたことは否定できない。
 
 ・・・包囲されて補給の途絶えていたルーナムに久々に食料が運び込まれたのはその2日後のことである。
 
 
 TRPGのための政治学的設定の部屋 LOG 005 からの転載です。
 いきなりラムリアース戦記の10番なのは、このお話の前に、ファンの謀略偏〜出陣偏が入る(かもしれない)からです。アウレ・マハールさんとか、参加してほしいですね〜
 
 シナリオに役立てるには:
 シナリオにするとすれば、やはり、小人数の冒険者達が間抜けなファンの軍隊を翻弄し、飢え死にしそうな村人に食料を与えて感謝されるというのが美しいでしょう。
 少し強くなったら、夜陰に紛れて包囲されている砦や街に補給物資を届けるシナリオも良いと思います。
 SWロードス島ワールドガイドの邪神戦争偏は参考になると思います。制限は緩く、より派手な展開になるでしょうけど。

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