深淵シナリオ『サマー・アポカリプス』  辺境の村「ヌル」。この村は「女神(ひめかみ)さま」という現人神 が宗教的政治的に支配している。この女神さまはその昔魔族を封印した 妖精騎士の子孫らしい。  年に一度その女神さまが村人たちの前に姿を現すという夏祭りの日が 近づいてきた。招かれざる客が村に入った時、物語の歯車はゆっくりと 動き出す… ------------ テーマカード ------------ 緑の指輪  我は母なり。今は、地上を去ろうとも子らのため、いつか帰還せん。 -------------------- 設定(GM向け情報) --------------------  鏡の太守イルティスは自分を倒しに来た妖精騎士を返り討ちにして封 印するが、その後のルドラウとの戦いに敗れ自身も封印される。しかし 一枚の鏡を現世に残していたことによりこの世界に影響を与えることが 可能だった。  その力を利用してイルティスは妖精騎士の封印の側にできた村を支配 下に置き、自身の封印の解かれる日を待っていた。  そんなイルティスにも一つ心配事があった。たまに村に「幻視」の能 力を持つ人間が生まれてくるのである。「幻視」から自分の存在を感知 される事を恐れたイルティスはそれを「鬼子」として葬り去るシステム を考え出す。しかし「幻視」を持った人間は自分の配下として使うにも 便利だったのでここに「村の『幻視』の能力を持った人間を常に一人に しておき、その者を自分の傀儡として操る」ための女神システムが完成 した。 時は流れ、物語の始まる二ヶ月前…  早くに両親を亡くし、2人で支え合って生きてきたカテーナ&エノー ラ姉妹の上に悲劇は訪れた。カテーナが「鬼子」だという女神さまのお 告げが出たのである。しきたり通りにカテーナの人形が人形師ベサレル によって作られる。  人形が完成した後カテーナは薬を飲まされ、誰もが死んだと思い悲し んでいた。しかし女神さまの交代を考えていたイルティスによって蘇生 したカテーナは新たな女神さまとして村を支配することとなった。  そのことに気づく者は誰もいないはずだった… -------- 用語解説 -------- 女神さま (プレイヤー用情報)  村の宗教的政治的支配者。天の声を聞く事が出来る卑弥呼みたいな存 在。「幻視」の能力を持つ。魔族を倒した妖精騎士の血を引くと言われ ている。神殿の簾の向こう側におり、正体を知っているものは誰一人と していない。性別(女性らしい)、年齢共に不詳。 (GM用情報)  正体は鏡の太守イルティスの影。「幻視」の能力を持ち、なおかつそ れ以外にも支配者としての資質を持つ者が選ばれ、村をイルティスが復 活するときまで支配する。各家庭や神殿内のあちこちに設置された鏡で 全住民の状態を監視し、そこから得た情報を元に預言や調停を行う。そ うとは知らない村人たちから「女神さまは何でもお見通しだ」と絶大な 信頼を得ている。 鬼子 (プレイヤー用情報)  村に災厄をもたらすと忌み嫌われる子供。鬼子である事が解ると、神 殿から与えられた毒の実(『鬼殺し』)を飲ませて殺さねばならない。 鬼子を出した家の軒先には黄色い布がぶら下げられ、その遺体は棺に入 れられて神殿内の納骨堂に納められる。  数十年に1人の時もあれば一年に数人のこともあったらしい。  また、子を失った家族のために村の人形師がその子とそっくりの人形 を作るしきたりになっている。 (GM用情報)  女神さまと同じ「幻視」の能力を持つ者のこと。村内に幻視の能力を 持つ者を女神さまだけにしておくためのシステム。さもないと女神さま の正体を知られる危険がある。  また、女神さまの交代の際にも新しい女神候補が鬼子として連れ去ら れる。この場合殺されることはないが、村には死んだものとして報告さ れる。 グライド  非常に珍しい薬草。これを飲んだ者は一時的な仮死状態に陥るが、そ の時の酸欠状態により脳組織が破壊され目覚めたときには記憶や感情等 の自由意志の一切を失っているという。 夏祭り  年に一度の豊穣を祝う祭。その際に女神さまから村人たちに祝福が与 えられる。 -------------- シナリオの導入 -------------- ・人形師ベサレルを追って ・人形を仕入れるため ・封印の調査 ・ただの旅人で行き倒れた ・女神さまの噂を聞きつけ、藁にもすがる思いで(運命の解消等) ・仮面の女占い師の予言 -------------------- ロケーション(場所) -------------------- ヌルの村  女神(ひめかみ)様に支配された山奥の村。その昔ここで妖精騎士と 魔族との壮絶な戦いが行われたとの言い伝えがある。魔族は倒され、鍾 乳洞の奥に封印された。それを塞ぐような形で女神さまの神殿が建てら れている。女神さまは妖精騎士の子孫だと言われている。  村の総戸数は200戸弱で総人口は800人弱。基本的に村内で自給 自足している。  また、村の全家庭には神殿から授かった鏡が家のどこかに飾られてい る。鏡自体は簡素な作りで大した価値はない。 (注)村人は純朴な人ばかりで村の中に悪人はいない。平和な村である ということを印象づけるように。 エノーラの家 ・軒先には鬼子を出した家であることを示す黄色い布が下げられている。 ・家は村の中でも大きい方で、一人で暮らすには広すぎるくらいである。 ・台所に小さな鏡が掛けられている。 ・鍵のかかった戸棚があり、その中にはカテーナに飲ませた鬼殺しが少 し残っている。<植物知識:目標値18>に成功すると、これは「グラ イド」という珍しい薬草をすりつぶしたものであることが解る(用語集 参照)。 ・家の裏側には物置があり、その中にカテーナの人形が置かれている。 人形を調べると片方の耳に小さな鈴のついたイヤリングが下げられてい て、澄んだ音が鳴る。このイヤリングは二個一組でカテーナのお気に入 りだったものである。エノーラはその片方を形見としてもらい、人形に つけた。 村長の家  それなりに大きな家。作りは他の家と同じく簡素なものである。居間 に他の家の物よりも大きな鏡が掛けられている。 ベサレルの家 ・家の中は居住スペースと工房に分かれていて、工房の扉は内側から閂 がかけられるようになっている。仕事中は誰もそこへ入ることはできな い。 ・居住空間には食べて寝るだけの物しかない。 ・工房には道具一式や丸太、作りかけの人形の頭部などが置かれている。 軒先に黄色い布の下げられた家(エノーラの家とは別)  老婆が少女の人形と暮らしている。これは老婆の娘の人形で娘は十数 年前に鬼子として処分された。  彼女と話すと「カテーナも可哀想に・・・」などと鬼子やカテーナに ついての情報を与えてくれる。 神殿  女神さまの部屋、魔族の封印、納骨堂に行くことが出来る。神殿のあ ちこちに小さな鏡が掛けられている(神殿内のモニター) ・洞窟(魔族の封印)  実は逆で魔族を倒そうとして返り討ちに遭った妖精騎士が封印されて いる。封印強度は0。よって正確には封印ではない。洞くつの奥に白骨 になった死体が倒れている。死体は腰のところで両断されていて、片手 に長弓を持っている。そしてその側に吸盤付き弓矢(トイレをスッポン スッポンするやつが先についている)が3本落ちている。 ・納骨堂  鬼子の棺が並んでいる。一番新しいのがカテーナの棺。開けると中は 空である。その横にあるのがカテーナの前の鬼子の棺で、そこを開ける と中年の女性の死体が入っているが、死体は比較的新しく、死後一月と いったところである(これはカテーナの前の鬼子兼女神さま)。 ・女神さまの部屋  簾の向こうに座っている女神さまの影。簾をめくるとそこに座ってい るのはカテーナである。彼女は薬の影響で生気がほとんど感じられない。 彼女の背後には巨大な丸鏡が掛けられている。その周囲には無数の手鏡 ほどの大きさの鏡がかけられていて、村の各家庭の鏡や神殿内の鏡から モニターされた映像が映っている(それ故、女神さまは各家庭の事情に 精通している)。  イルティスはカテーナに語らせる。女神制度でこの村を支配している のは自身の復活の時にここを拠点にするためだと。そしてその時には自 分が女神として世界に君臨することになるとも。  攻撃しようとするとカテーナが立ちふさがる。彼女は短剣で攻撃して くる。鏡からも毎ラウンド影響値攻撃がある。もし妖精騎士の矢を彼女 に撃った場合、彼女は気絶する(命中した矢から黒いガスが抜けていく)。  また、矢を鏡にはなった場合は、恐ろしい叫び声がして鏡が砕け散る。 そして神殿は炎に包まれる。丸鏡を破壊した場合、村の各家庭にある鏡 も砕け散る。村は大騒ぎになるだろう。 ---------------------------------------------------- タイムライン(PCたちに関係なく勝手に起こる出来事) ---------------------------------------------------- 2ヶ月前  カテーナが鬼子であると告げられる  ベサレル、カテーナの人形を作り始める 3週間前  カテーナ人形完成  カテーナ死亡。神殿へ運ばれる 現在(1日目) 物語の始まり PCの到着  PCはエノーラの家か(招かれざる客)、村長の家(歓迎される客) に滞在することになる。 ・その夜(エノーラの家) ・エノーラが外で待っていたミリエラと共に蔵へと入っていく。蔵の2 階にはカテーナの人形が置かれている。 ・2人はカテーナ人形の前で話し合っている。エノーラは毎晩姉の人形 が自分を呼んでいる夢を見ると語る。ミリエラは早く立ち直るように言 い、この村に来ている他所者(PCの事)が去るときに村から出て行っ た方がいいんじゃないか、鬼子を出した家で少女一人が暮らしいくには 厳しすぎるとアドバイスするが、エノーラは出て行きたくないようだ。 2日目 夏祭り ・闇の黒剣(満月)の夜 ・神殿前広場にかがり火が焚かれ、そして夏祭りが始まる。若い男女が 円になり、ダンスを始める。 ・ダンスが終わり、かがり火が消される。神殿の両脇にジェンコとミリ エラが立つ。神殿の扉が開くと、簾の向こうに女性らしき影が座ってい るのが解る。 ・影は立ち上がり、澄んだ美しい音色で「我は母なり、今は、地上を去 ろうとも子らのため、いつか帰還せん」と言いながら両手を広げる。す ると、影の背後からものすごい光が発して、目を開けていられないほど だ。参加していたPCは夢歩きする。  光が消えると、扉は閉じている。そして、祭りは終わる。 深夜 ・ミリエラがエノーラの家に来る。彼女は蔵のカテーナの人形を調べさ せてほしいと言う。彼女は夏祭りの際に、簾の向こうから鈴の音を聞い たような気がしたというのだ。彼女は人形を調べるが、何も見つからな かったようで「確かめる必要があるな」とつぶやきながら帰っていく。  その後神殿内で女神の調査を行っていたミリエラは女神自身によって 殺され、遺体は森に放置される。 3日目 ミリエラの死  翌朝、森の中でミリエラの死体が見つかる。死体は森の動物やら妖魔 やらに食い荒らされててひどい有様であり、死因の特定はできない。 4日目 PC退場。物語の終わり。  PC達は村を去っていく。 ------------ NPCリスト ------------ カテーナ  鬼子として殺された事になっているのだが実は仮死状態にされて神殿 に連れてこられ、新たな女神さまにされている。グライドの毒とイルテ ィスの影響によって自我は既に崩壊し、ただの傀儡と化している。  線の細い美少女タイプ。 エノーラ  カテーナの妹。姉想いの優しい少女。ボーイッシュで活発な美少女タ イプ。姉に対して罪悪感のようなものを持ちつづけている。両親を4年 前に亡くしている。 ミリエラ  シュラク隊のメンバーで、カテーナの親友。女神さまに疑問を抱き、 その秘密を知ったために殺される。宝塚の男役系。 コネゲン村長  村長。女神さまのお告げを忠実に実行する。人のいいおじさん。 老人形師ベサレル  元々はメジナでも屈指の人形師だったのだがラプシークの人形師とし て働いていた事があり、それが元でメジナを追放された。  十年前に村に流れて来た。道中頭に大きな傷を受け、一切の記憶を失 っている。村の人形師の下で働いていたが彼の死後、その仕事を受け継 ぐ。その完成度は生きているかのようである。  ちなみにイルティス云々に関しては何も知らない。 シュラク隊  女神さまのロイヤルガード。若い女性(16〜18歳)のみで構成さ れている。村の少女の憧れ。メンバーはリーダーのジェンコを筆頭にフ ラニー、ミリエラ、ペギー、ヘレン、マヘリア、ケイト、コニー、ユカ。  全員美人。もちろん女神さまを頭から信用しきっている。  腕に巻いた赤いスカーフがトレードマーク。