山形魔人学園拳風帖リプレイ「暁からの手紙」第1信翠さま お久し振りです…というほど経ってはいないんだよね。 台風の日以来か、結局。あれのせいでさんざんだったものね。翠のとこは、家、もう大丈夫? 私のとこときたら、家は全壊だわ道場は無傷だわ*1(こうも極端なのは、あの通り*2でも、玉城道場だけだったらしい。ここまでくると、親父殿の莫迦さ加減にも思わず頭が下がってしまう)で、なんだかんだあったのだけど、とどの詰まり、私は親父殿の兄貴殿(であるところの、まぁ、伯父貴殿だね)を頼ることになりました。 というわけで、今、山形です。山形県霞城市*3。編入試験にもどうやらパスして、霞城第三高校というところに通うことになりました。進学校の第一高校、やっぱり進学校で女子高の第二高校には…最初っから受けられなかった。ま、翠じゃあるまいし、行ったってあたしじゃついてけないって。三高はわりとよく遊びよく学ぶ、そこそこの進学率をも誇る、でもってどっちかっていうと個性的な人材(変人ともいうらしい)を輩出する、というんで知られてるんだそうです。…入学案内(公式版と生徒会発行版)を読んだ限りではそんな感じだよ。何にせよ二、三日うちに見学に行くことになってるから、実際どんなとこかはあとでお手紙するね。 沖縄を引き払ったら、親父殿の空手莫迦、武道莫迦とも縁が切れるかと思ったんだけど、やっぱりそうは問屋がおろしちゃくれませんでした。伯父貴殿も、あの親父殿の兄君だけあって、これまたその手のタチの悪い馬鹿で…まあ結局、伯父の道場(空手と琉球古武道。山形でも需要はあるらしい)の女子部の師範代をつとめることになりました。それはそれとして、奇異の目で見られるのも嫌だし、沖縄を離れた時くらいは少し別種の生活をしてもいいような気もするので、こっちの学校では武道絡みの関係はとりあえず隠しておくつもり。空手その他が嫌いなわけじゃないんだよ。でも、私、物心つく前からそればっかりだったからね。あの親父殿じゃしょうがないんだけど、でもそれしか知りませんっていうのもなんだかな、と思って。環境変わるし、たまにはいいかも、ってさ。私、翠と違って笛のひとつ吹けるじゃないし。そういうわけで。 伯父の家に一室いただいて、それなりにくつろいでます。やたらと寒いのがちょっと大変かな。外に出られないんだよね。熊が冬眠するわけがよくわかる。 そうそう、意外も意外、ってなことがあったんだ。 ここに着いて最初に荷物開けたら、チビがついてきてたの。荷造りのときにまぎれこんだのかな。ほんとに私についてきてくれたのかも。どっちにしても何か心強いものがあります。 ちなみに、チビは、あっさり、私ともども、伯父の家の居候としておさまってます。伯母様なんか、暁ちゃんも寒いだろうけれどチビはもっと辛いわよね、かわいそうに、って仰って、いろいろ気を遣ってくださるの。それでも寒いんだろうね、陽溜まりにちっちゃい布団置いといてやると、そこに来て丸くなって眠ってます。 というわけで、なかなか快適にすごしてます。夏休みとか、もし暇があったら遊びにおいでよ。伯父のところ、子供がいないせいか、私のこと、えらく大事にして下さってるし、友達も大歓迎だそうですので(でも、伯父貴殿がそういうこと言って笑うと、鬼ガワラが笑ったみたい。けっこう凄いよ。うちの親父殿がかわいく思える)。 ではまた、今日はこのへんで。 乱筆乱文失礼 暁 拝 第2信 翠さま 今日、高校見学に行ってきました。 猫かぶり作戦、初日から大失敗*1。 いったい裏からどう手が回ったのか知らないけど、私が空手を遣うことはすでに学校側の知るところとなっていた模様。 伯父貴殿の車に乗せられて校門前に着いたら、案内役として待っていたのが…なんというか、曰く云い難しな風貌*2の男子生徒で(なんというかその。やたら怪し気というか。強そうでは、あった)、どうも伯父貴とは顔見知りらしい。まぁ、話をしてみると真面目な人のようで、とりあえずひと安心、ではあったんだけど。 ところがそのあとがいけない。こっちがなにも云わないうちから、空手部の方には話を通してありますから、と、いきなり御親切にも(…とかいっちゃいけないよね。先様はこれまた本当に親切のつもりだったようなので)空手部室に案内してくださるし、そしたら空手部の方々は本当に待ってて下さったようで、まさかここでは空手には手を出さないつもりともいえず(言えるムードじゃありませんでした。というか、言う隙なんかありゃしなかったのだ)、気がつくと、古武道やってることまで口走り(でもそう言うとどうしてみんな必ずヌンチャク持ってくるのかね。いや、使えるけどさ)、挙げ句、そこを立ち去る時には入部だか助っ人だかを約束してしまってました。開き直るしかないか。…というわけで、初日から大失敗。 ちなみに、案内して下さった御仁、電光寺数馬さんと仰って(凄い名前だよね)、家が道場だとかいう空手家で、隣のクラスなんだそうな。とても同い年には思えないって雰囲気だったんだけど。で、まぁ、あちこち学校を見せていただいたんだけど、いやもう、凄かったよ。そうとしか言い様がない。 教室とか、学食とか見て、次に特殊教室(理科棟、っていうらしいんだけど)に入ったら、どこからともなく異様にお元気で明るくていらっしゃる、化学部長、と名乗る方が湧いて出て(日比野陣也さん、というそうな。こんどはまともな名前)、少し言葉を交わした後、 「それじゃあ実験中だからぁ」 と、さらに明るく立ち去ってゆかれたんだけど、で、暫くしてそっちの方向から爆発音が…何なんだか。 さらに呆然としたのは、調理室のドアを開けたとき。おいしそうな匂いとあたたかな湯気の向こうに見えたのは、総髪にサングラスのおにいさんがエプロンかけてお玉を手にしてる姿で。自分の正気を疑っちゃったわよ。調理部の部長で調理室のヌシでいらっしゃるとかで。そこで遅いお昼をごちそうになりました。…味は…冗談抜きで美味しかった。いやほんと。なんでもその調理部部長氏は学校新聞の料理コラムを担当してるとか、それが“ぱぷりんの3分料理教室”って題だとか、でもって御本人のお名前は葬狂十郎(はふり・きょうじゅうろう)と仰るとか…親の顔が見たいわ。 っていうかさ、この学校、何なんだろ。 なかなか波乱含みのスタートよね(…それどころじゃないって)。 いいことも、もちろんあったんだけどね。クラスの女の子と仲良くなれたし。大澤さん…大澤春奈(おおさわ・はるな)さんていうんだけど、新聞部の人だって。いい感じのひと。あと、担任の先生、めちゃめちゃ美人でかっこいい方だったし。 新聞部っていえば、この学校、どっかの三流スポーツ新聞みたいなゴシップ紙が、まっとうな新聞部の他に存在するみたい*3。私が学校に着いて車から降りたとたんに、シャッター音が降ってくるわけ。何かと思えば、樹の上からカメラ構えてるバカがいてさ。電光寺くんの言によれば、学園パパラッチカメラマンで、ハイエナとか何とか呼ばれてるそうで。本名も聞いたんだけど忘れちゃった。どうもハイエナ氏、あたしと同じクラスらしいんだけど。最低。今度、本気ではたき倒すべきか、考えてます*4。 ではまた。 学校生活が落ち着いたら(そんな日がくるのかどうか、はなはだ疑問ではあるけど)、またお手紙しますね。 乱筆乱文失礼 暁 拝 追伸 すごい美人(長い、ぬばたまの髪がとても印象的)の、オカルトな方と同級になってます。 水城志弦(みずき・しづる)さん、と仰る(素敵な名前じゃない?)。でも、いまいち感じ悪い。 あたしが教室に入ってくと、ちょうど“こっくりさん”が進行中で、いいネタがみつかった、ってわけでもないんだろうけど、 「転校生はなぜ三高にきたのですか」 とかなんとか尋ねてくれちゃって(このへん、うろ覚えだけど)、そしたら出てきた答えが“蛇”とか“わざわい”とか。 なんで、そんなのが出てくるかね。 チビのこともあるし、どうもおだやかじゃない。 …ま、ほっといても、いいか。 第3信 翠さま 蛇の群れとニコチンにまみれた一日でした。 へんな疑いはかけられるし、最低。 この学校、まともじゃないって、絶対。 …ああ、ごめんね。こんな手紙じゃ、驚くよね。 とりあえず、も少し落ち着いたら、長い手紙出します。何とか、生きてるからさ。 というか、生きてます、って便りをどっかに出しとかないことには、今の自分が生きてるって事実までおかしくなりそうでさ。でも、そのうちなんとかなると思うんだけど。 一応、お知らせ。 1 猫かぶり大作戦は潰えました。完全に。 2 チビが口をきくようになりました。というか、あたしと会話できるようになった。 3 私は正気です、多分。 4 当初の希望通り、演劇部に入部届け出しました。 そんなとこ。 ではまた。 願わくば、できるだけ早期に、状況説明の手紙を出せますように。 暁 拝 追記 女の子の友達、なくしちゃったかも。 周り、野郎ばっかりで。どうしよう。 第4信 翠さま こないだは殆ど地獄発みたいな手紙でごめんなさい。混乱の極みの挙げ句にパニックおこしてたみたい。らしくない、って怒られそうだな。 こないだの、その前の手紙でちょっと書いたと思うんだけど、“こっくりさん”やってた人たちがいたんだよね。発端は、多分、そのへん。それと、もひとつあってね。部屋に戻ってチビに声かけたら、返事する声が頭の中で聞こえたの。チビの返事らしいのよ、確かに。 言っておくけど、あたし、完全に気は確かです。 …といいつつ、おかしくなってるのかもしれないけど。もしそうだとしたら、そういう趣の人間になったんだと、了解して、この手紙、読んでね。 つまり、ここから先は、あたしの見た限りのことが書いてあるんであって、法螺も嘘もないし、あたしにとっては、これを妄想とかなんとかではなく、そう判断できる材料もないってこと*1。 一日目。その前の日“こっくりさん”をやっていた三人のうちの一人が休みました。風邪だ、ってことだったんだけどね*2。あ、ちなみに前日はどういう状態だったかっていうと、三人がこっくりさんのコインに指を置いていて、水城さんがそれを見守るというか、リードする形であれこれ云ってたの*3。 二日目。もう一人が休みました。 で、パニック。いや、あたしがじゃないよ。クラスの娘たちがさ。 残るもう一人が、次は自分の番だとか転校生が災いをもたらしたんだとか蛇の災いがどうのとか言い出して、んでもって周囲の人間もあたしのこと遠巻きにしだすし。 あたし、内心、真っ青だったのよね。だってさ、この日、あたし、意志の疎通が可能になってたチビを学校に連れてきてたんだもの。鞄に潜ませてさ。 何だか変なことがおきてる、チビをつれてったら、何かの助けになるかもしれない、そう思ったから。脈絡ないよね。とにかく、“三人目”が泣き出したのをきっかけにクラスの女の子達が大騒ぎになっちゃって、で、ふと気がつくと件の三人目と水城さんがいなくなっちゃってるわけ。ハイエナ君だったかな、この学校って中庭が日本庭園になっててそこに茶室があるんだけど、そこかもしれないって云い出して、で、わらわらとそっちに向かったの。扉に鍵がかかって密室状態になっちゃってたんだけど、騒ぎを知ってわざわざ駆け付けてくれた電光寺君がそれをぶちやぶってくれて、で、それってんで入ってみると“三人目”が奥で泣いてて、でも、水城さんはいなくて*4。 その“三人目”の彼女ね、顔にひどい痣ができてたの。痣、っていうより、蛇のウロコ見たいのが。ぎょっとはしたけど、一緒にパニック起こすわけにもいかないから、そのへんにいるのに保健の先生呼んできてもらって、その後あたしも保健室までついてって。まわりじゅう視線冷たいし(ヘンな噂広まっちゃってるもん、あたりまえだよね)、もう泣きそうだった。でも、大澤さんがずっとついててくれて、気にしないで、って云ってくれてたからよかったんだけど。ところがあたしったらさ、こともあろうに大澤さんの目の前で、チビを鞄から出しちゃったのよ。さすがに大澤さんも真っ青になって…当然だって。チビ、いくら私のちっちゃい頃から一緒にいようが、最近意志の疎通がかなおうが…ミニサイズ白ハブだものね。蛇だもん、真っ向。 なんかもう、どう説明したのか、いまだに思い出せない。とにかくあたし、チビを袖口に押し込んで、大澤さんに後を頼んで、保健室飛び出してた。 前日に、云ってたんだよね、チビ。 「これだけの大きなお方が眠っている地ともなれば…同族の私とて口をきけるようになろうともいうもの」 とか何とかさ*5。 蛇の伝説か何かがあるはずなんだって思ったの。それを探してなんとかすればなんとかなるはず、って。わけわかんないよね、もう。走り出したらそのへんでハイエナ氏がうろうろしてたんで、図書館はどこ、探し物につきあいなさい、まだやくたいもない写真撮るつもりなわけ!?とか何とか云ったような気がする*6。いやまぁその頃には、どこがどうなったのかわかんないけど学校中が大パニックで、写真ネタはごろごろしてたんだけど。例えば…生物部の飼ってる動物(何故かやたら山羊が目立った…でかかったからかな)がわらわら逃げ出した挙げ句、 大山羊と事を構えんとする電光寺君とか(何なんだか) 山羊の群れの角にひっかけられて校庭中ひきずりまわされるクラス委員長とか(もっと何なんだか) あと…もういいよね。もう一度言うけど、あたし、気は確かだからね。とにかく莫迦なんだか地獄の様相なんだか決めかねる状況だったってのは理解いただけたと思う。莫迦にしか見えない?そうかもね。 で、ハイエナの彼をひきずって図書館に駆け込もうとしてたら、そこを葬君につかまったの。彼、なんか妙に落ち着いてて、君の知ってることを教えろ、ときたもんだわ。知ってる限りの事は言った。ついでにチビも紹介した…ような気がする。このへん、全部記憶があやふやなのよ。 パニックの説明しても、しょうがないよね。話を進めよう。 結局、わかったのは、こういうこと。 霞城市の場所には、かつて霞城(かすみじょう)というお城があって 三高は霞城の三の丸の跡に建ってて それから、このへんには、昔、敵が攻めてきたときに、あたり一面を霞にとざして敵の侵攻を阻んだ蛇神が祀られている、ってこと。 そういう神様なら、なんで祟るのかしらね、って思うんだけど。 とりあえず、封印が何らかのはずみで解かれたわけだし、鎮めの儀を行えばいいんだ、って葬君がきっぱりと言い切った。 で、行うことは行ったんだけど…でも事態はなんにも好転しなかったのよね。 気がつくと、その時あたしたち中庭にいたんだけど、中庭じゅうに変な霧が立ち篭めてた。日比野君が何だかやたらと小瓶をかかえてこっちに来て*7、中身はニコチンだっていうの。あたし、近付かないことにした。あたしはとにかく、チビには毒だろうしね。でも、蛇に効くのってニコチンだっけタールだっけ、聞けば煙草から抽出したっていうし。えらいことしでかすもんだよね。人、何人殺せると思ってるのかしら。そこにいたのは、日比野君に葬君、電光寺君、それとハイエナ…本名は灰枝君っていうんだけど、たいしてかわりゃしないやね。なんか、めちゃめちゃぱーぷーに見えるくせに、実はろくでもなく強い連中が周囲にいるんだ、っていうのは、勘で分かった。なんであたしがそんなとこにいるのか…ってのはちっともわかんなかったけど。 ニコチンがかかるといけないから逃げといで、って、チビをそのへんの樹の上に避難させたのを妙にはっきり覚えてる。 次から、また、あやふやになっちゃうんだ。あ、信じられなかったら信じなくていいよ。あたしも悪夢でも見たって事にしちゃいたいからさ。 空気が、揺れて。 化け物だ、と思った。蛇と、それから、水城さんの(何故か、水城さんだ、って思ったんだ)髪に似た生き物が、あたしを狙って飛んできた。ほんとはあたしじゃなかったのかもしれないけど、ううん、よくわかんない。あっちこっちで瓶の割れる音がして、ニコチンの凄い臭いがして、そいつをつかまえろって誰かの喚く声がして、とっさに黒髪のなびく方に身体をひねって、かわされて…。足下が変な感じがした。そしたらそこらへんじゅうが蛇の群れで。で、唐突に、あたしはチビとも話せたんだから、この蛇とも話せる、って思ったの。めちゃくちゃだよね。でも、あたし叫んでたの。動いちゃだめ、お願い、動かないで、って。そしたら蛇が止まった。黒髪の蛇だけがあたしのこと睨んでた。反射的に飛びついて押さえ付けた。後ろで葬君が九字を切ってた。それからあたしの腕の中で、骨が砕ける音がした*8。それから、霧が晴れた。 霧が晴れた時、あたし、水城さんを腕の中に抱えて、呆然と突っ立ってた。 足下に、水城さんサイズの化け物の皮がおっこってた。 あたりじゅう、すごい臭いがしてた。あたしも水城さんも他の人たちもニコチンまみれで。恐ろしいよね。こんなんじゃ蛇で殺される前にニコチンで死ぬって。っていうか、死んでないのが不思議。 保健室に行ったら幸い誰もいなかったし隣のシャワールームも使えたから、使って、水城さんの体も洗った。なんとか自分で手当てまでしようとするんだけど、駄目なのね。手が震えて、包帯ひとつまともに扱えない。この狼狽え者、って、親父殿の怒鳴る顔が目に浮かんでさ。本気で、泣けた。 で、水城さんは病院送りになり、あとは…くわしいことは次の便で書く。 まだいろいろあったんだけど、あたし、いまいち信じ切れてなかったりするから。もうちょっと気持ちの整理がついたら、もう一本御報告の手紙書くよ。それまでちょっと待ってね。 ではまた、すぐにね(…できれば、ね) 乱筆乱文、所々乱心御容赦 暁 拝 第5信 翠さま お久し振り、お元気ですか。 手紙、すぐに出すって云ったけど、けっこう随分になっちゃった。ごめんなさい。ようやく起こったことに対する気持ちの整理がついたんで、筆を取りました。 ありていにいうと。…チビね、何だか怪我を治せるらしいのよ*1。前に、私の腕の中で水城さん(…ま、その時は取っ付かれた蛇女姿だったんだけど)が電光寺君にはたかれて…ってなことを書いたと思うんだけど(…書かなかったっけ?結局、そういうことだったんだけど)、とにかくその結果としてえらいことになってた*2。で、このままだと救急車呼ぶにしても間に合わない、って慌てふためいてたら、チビが、「私がなんとかいたしましょうか」って云うのね。で、するっと水城さんの胸元に降りてって…何がおこったのかわからないけど、チビの体がぼおっと光ったかと思うと、水城さんの怪我がみるみる治っていくじゃない。 異常といえば異常なことなんだけど、その時はもう、判断力なんか消し飛んでて、ああ治った治ったって喜んでただけ。 で、水城さんの怪我の具合がなんとか“すぐに命に関わる”状態じゃなくなったんで、彼女によくわけを聞いてみたの。でも要領を得ないこと夥しい。なんでも、彼女、もともと、“モノ”が“見え”たらしいんだけど(…まぁ、そのへんは私より翠のほうが詳しいよね)、ここ最近その力が強くなってるような気がしたので、こっくりさんとかやってみたら、いつもよりはっきりした答えがきけるのではないかと思ったんだけど、まさかこんなことになるなんて…だって。自分がどんな状態だったか、とかそういう前後のことはよく覚えてないみたいだった。 どうしようかと思ったんだけど、とりあえず余計なことは云わない方がよさそうだと思ったんで、彼女が蛇お化けになってたってことは肚の奥に飲み込むことにした。ついでに意識が戻る前、彼女の怪我がどんな状態だったかってことも伏せとくことにしたの。だいたい、怪我させた張本人であるところの電光寺君とか、真面目すぎって感じの人と見受けられるんで…自分の仕業がどういうことになったか知ったら自己嫌悪でどうにかなっちゃいそうだったしさ。とにかく、体からニコチン流さなきゃ、ってんで服脱がせたとたん、こっちが目眩おこしそうな惨状だったんだから。 とりあえず善後策を考えていろいろやったんだけど、ふりかえってみると結構無茶だったな。 ニコチンだらけの中庭なんか、日比野君の提案により電光寺君が消火栓を破壊、その結果水浸しになって証拠隠滅だもん。「いや、とりあえず何がなんだか分からない状態にしちゃえばよしってことで」とか日比野氏、あっけらかんと云うんだわ。彼、自称化学者の卵なんだそうだけど、こんなことでいいのかな*3。水城さんの怪我については、自転車玉突き事故に巻き込まれた(どっから出てきたんだ、そんな駄法螺)とか云ってごまかして、で、学校に救急車呼びつけるとコトが大きくなるからってんで、伯母様に車出してもらって病院に運んで、で、一件落着、と。 まぁ、結局何がわかったってわけでもないから、未だに後味悪い・薄気味悪いにかわりはないのだけどね。 追記。 この事件は三高の真下で超局地的直下型地震が発生し、そのために動物の行動に異常が観察され、またその時に生じた断層のために消火栓が壊れたものとして処理されました。 …あ、これ、灰枝氏の筆によるインチキ記事じゃないからね。彼、この事件に関しては書いてないんだ。書かない、書けるかよ、って吐き捨てるように云ってた。悔しそうだったなぁ。 さらにもうひとつ、この話には後日談がつきます。ちょい下世話だけどね。 葬君、またお見舞いの料理つくって、で、水城さんの入院先に出向いたらしい*4。 でもって、最近、二人、なんか仲いいんだってさ。 と、春奈…大澤さん…が云ってた。同封の三高新聞の、灰枝氏の筆による「驚異の料理人のスペシャルゲスト!」とかいう激悪趣味な記事にもそのことは詳しく…。あいつ、「悪趣味な記事は書くが不幸な記事は書かん」って云い切って、こういうことやるんだ。こういうこと書き立てるのはいいのって詰め寄ったら「確かに悪趣味だろうがよ、あいつら別に不幸にもなってなかろうが」って当然のように云われちゃってさ。もう、あいつそのうちぜったいぎゃふんといわせてやるから。あ、ちなみに、周囲の反応はというに「遠くでシアワセになってほしいカップル」(日比野君談)ってとこ。…こういうこと報告してる私が実は一番下世話って話もあるけどね。 でもまぁ、何かイイ感じではあるのよ。微笑ましいというか、ね。こないだ、なんか小難しげな本抱えて、いそいそと調理室に向かう水城さんをみかけたんで、 「葬君に貸すの?」 ってからかってみたら、なんか急にふわっと赤くなって。彼女もともと綺麗なんだけど、それがえらく可愛く見えました。 ってことで。 ひとのことはともかく、私はけっこう大変。 勉強の進度、こっちのほうがけっこう速くって。おいつくのにひぃひぃいってます。 いそいそと入った演劇部は何か爆発あり宙乗りありの超スペクタクルを売り物にしてるんだそうで…で、活動日はなぜか全てワイヤーに釣られての演技(?)の練習してるし*5。 でもまぁ、そのうち市政何年だかの記念行事の合同演劇祭に出してもらえるってことで、けっこう嬉しいんだけどね。 ではまた。またお手紙しますね。 乱筆乱文失礼 暁 拝 感想をいただければ幸いです。 掲示板へ メイル (2000/6/29 改訂掲載) 無断転載、使用を禁じる。 |