TvA
コンセプト
- 「伝統的呪術技術者(トラディショナルズ)」と「未熟練超常能力者(アビリティーズ)」との息詰る攻防戦。
- 「術式」と「ESP」の戦い⇒限定用途に先鋭化したESPとしての「術式」と生の「ESP」との対決
- 修練によって得た「術式」と突発的、事故的に得たESPではその使用にかんして修練の差が存在。すなわち、力を行使しうる人格を有しているかどうかが差となる。
- 修練によりいびつになった人格(特権意識、自負、プライド)⇔能力により歪みかけている、悲鳴をあげている人格
- 演出はスピーディに一章一殺。白土三平忍法帖の如く手早く、緊張感を持たせる。
登場人物(仮)
トラディショナルズ(伝統派)
- 匂陳(こうちん)
- 全体の指揮をとる。プロフェシー(易、卜占)に長ける。実行能力としての式神使役なども可能なはず。ヨビコウとセイブツの関係に気がつくが知らせる前に事切れる……。
→年輩で現状への認識が甘く、アビリティズに対して懐疑的。
実際には
- 玉梓(たまずさ)
- 霊媒、プレコグニショニスト。想像妊娠によりその胎内に魔胎を有す。二重存在(複座式)として憑依状態にある自分を内部からモニタリングするという技術を使用する。
→勝気で、アビリティズに対して攻撃的。精神攻撃に対して抵抗することが出来るので話的に長く出せそう。おそらくは性的なトラウマにより人格崩壊するかも。
- 息吹(いぶき)
- 祓い師。リセッタ。場に存在する意積(積層思念:そのうち詳述)を神道的な禊祓い儀式により祓う事が出来る。
→明朗だが、潔癖症の気あり。ちょっとキャラが立っていない。
- 烏(からす)
- 呪詛、積念の操作に長ける呪禁・厭未系術師。トラディショナルズ自体が羽黒山修験系統(やっぱり霞城が舞台なんですが……)なので異色。アビリティズの精神攻撃がいわば呪詛なのでオブザーバーとして参加。おそらくと匂陳、息吹と仲悪いんだろうな。
→不良大学生、修験上がり。肉体頑健だが精神不健康。
アビリティズ(フルコンタクト?(爆))
- ヨビコウ
- アビリティーズの思想的バックボーン。および指導者。能力の開発、訓練を行った。訓練に関しては「能力を持つものの自負と義務」をいびつな方向にくすぐるよう仕向けた。
→学生のバイト塾講師。実はセイブツ(未定)に印象操作されている。(未定)
- リンリ
- アビリティーズ実働のリーダー格。敵意、害意への感覚が鋭敏で受動的なテレパス能力に相当。一歩間違えば被害妄想となるところを押さえつける自制心を持っている。そのため抑圧が強い。
他のアビリティーズを含め自分の現状を受け入れるためのアビリティ修練を良い事と考えている。
→フレーバー未定
- キソカイ
- 写真記憶の持ち主。また、そのイメージを場に焼き付けることにより精神地雷を敷設できる。しかし、忘れることが出来ず、記憶のオーバーフローに恐怖を抱く。
→フレーバー未定
- コテン
- 感情誘導。対象から怒り、不快感を誘導することができる。無関心そうなフツーの男の子。ただし妙に不機嫌に見える。標的に対して社会的なトラップを仕掛けることになる。
→フレーバー未定
- エイゴ
- 強制追体験を相手に与える。過去に乱暴されかけたことがある。ホラー(スプラッタ)ビデオによる記憶を使用するほか、テレパスとして「拾った」記憶を用いることも出来る。
→フレーバー未定
- バケガク
- エンパサー。エンパス能力と感情誘導を利用したエンパシックヴィールスを用いる。また、アビリティズ達の能力を結合利用するハブとなる。
→フレーバー未定
- セイブツ
- キーパーソンとなる、予定。けど細かいこと一切未定。
→受け美少年にしたいなぁとかいうとわかり易すぎるんでしょうか。
とりあえずは、設定から先に浮かんだので、早いとこ話のフローを書かなくては。
2002/04/14 東京へ
帰ってくる最中の電車の中で妄想ドライブを行い、二つほどアイデアを得る。
一つは精神攻撃のネタ。今まではトラウマ、悪意とかを高密度に相手に叩き込むというのを考えていたのだけれど、WWWでのメイルボムのように膨大な量の無意味な情報をマスとして送り込むというのを考えた。最も人間は普通膨大な量の無意味な情報なんてすぐは作れない。
ここで写真記憶を持ったキャラクター(キソカイ)が電話帳一冊分の電話番号の羅列をテレパスの力を借りて相手の脳に一気に流し込むというのはどうだろう。いや、円周率とかでもいいのだけれど。
あとは、エイゴと玉梓の戦闘に関してたきのはらさんのアイデアを自分なりに考えてみたもの。
しかし、個々の戦闘のアイデアだけじゃ駄目なんだよなぁ。早く全体を通してのテーマなり、問題構造なりをフローに書かないと。
2002/04/22 対立構造
今のところ悩んでいるのは物語の基本的な対立構造。アビリティーズ(以下A's)とトラディショナルズ(同様に以下T'sと略)が何故戦わなくてはならないか。
T'sのほうにはA'sを敵視する理由が十分にある。彼らおよびその背後にあるT'sの母体組織としての山連(山岳修験連絡会)としては超常的な活動を行う存在は全て自分のコントロールに置きたいという欲望がある。当然だ。超常現象による工作活動は「公には認められていない」ものの、この世界では実効力を持っている。コントロールされない力は関連するもの全てにとって脅威となる以上、管轄を自認する山連にはA'sを制圧し、コントロールし、導く「義務」がある。
ここまでが公の理由。もう一つは個々の拝み屋の危機感&嫌悪感である。彼らは自分達で望んで超常能力を得るためにこれまで修練を重ねてきた。彼らにとって能力とはこの修練により獲得したコントロールできる力である。しかるに、A'sは望まずしてその力を得、そしてコントロールが不全なままにその力を行使している。T'shaそのことに対し危機感を抱く、そしてもう一つ。
この世界においてT'sのような拝み屋はその存在を認められていない。彼らは確かにその能力を用いて工作活動を行い、重宝されている。しかし、それはT'sがとる手法が現行の法体系で扱えないところにあるからであり、すなわち彼らは実際にはその存在を認められはしない。彼らは常に日陰の存在であり表舞台に出て評価されることは無い。そのT'sにとって自分が能力を持っているということこそがアイデンティティとなっている。他者が持ち得ない力を行使することができるという事実。これこそが彼らのプライドであり存在意義だ。
A'sはそんなT'sの存在を根底から揺るがす。修練無しに力を得、それを行使する者達。T'sにとりA'sはある意味嫉妬の対象であるし、未熟で危険な存在である。ゆえに、T'sはA'sに対して敵意を抱き、屈服させ、制圧することを望む。
では、A'sはどうか。
A'sには積極的にT'sと事を構える理由は実は無い。考えようによってはT'sに従い、先達としての彼らとともに能力の開発練成を行ったほうがいいのかもしれない。
これが悩んでいる。何故、A'sはT'sに従わないか。
従って良い筈なのだ。むしろその方が望ましいはずだ。修練とは別に能力を得たもの。おそらくそうしたものたちは、これまでも存在しT's達に引き取られ能力の訓練を受けるなり、その能力を無力化するメソッドを受けるなりしてT'sのコントロール下にあったはずだ。
A'sとT'sが戦わなくてはならない状況にいたるということは、こうした本来あるべき関係がどこかで崩壊していることを示している。(つーかそうでないと話になんない)
鍵となるのはA'sを育てたヨビコウの方針によるはずだ。
彼は何者なのか。
彼が物語上果たす役割は、A'sの能力開発とサポートである。そしてその能力開発はコントロール方法の教授と平行して能力を使用した工作活動の教授を行っている。
すなわち、彼はA'sを工作要員として育て上げている。特に、強制追体験、エンパシックヴィールス、精神地雷敷設、感情誘導などは明らかに破壊工作、対人工作を目的としている。
その目的は何か。
ヨビコウの目的は何なのか?
現状では独自勢力によるテロ活動を指向しているように思える。
しかし、もう一つの見かたもできる。それはA'sに対してコミュニティ維持のための自衛能力を与えたというものだ。
前述のとおりA'sにはT'sという潜在的な敵がいる。また、T'sの庇護を受け能力のコントロールを教授してもらう道を選んだとした場合それは同時にT'sの指揮下に置かれることを意味する。
すでに物語世界において超常能力を扱う組織は存在している以上、彼らT'sから独立するためには自衛能力が必要になる。
では、何故A'sは独立したコミュニティを築かなければならないのか、もしくはヨビコウがそう思い至ったか。
さて、昨日の続きをちょっと考える。
思うに、ヨビコウは物語の現在以前に山連の術者との接触があったと考えるべきだろう。そしてそこでの接触はヨビコウにとって好ましくない、もしくは敵意を抱かせるに十分なものであったはずだ。
この物語世界においてはA'sは新興の勢力であると思われる。おそらくその存在は認められていてもT'sのように組織化されてはいないはずなのだ。
T'sはA'sの組織化を望まないはずである。そして過去にT'sによるA'sの組織化を阻む抗争があったと考えるべきだろう。物語冒頭でのT'sのA'sへの対応を考えるにその抗争は日本全土にわたるようなものではなく、局地的なものであり、そして速やかに制圧されたのだと思う。そうでないと最初にA'sはもう少し体系化された組織の一員となっているはず。(実際にはヨビコウを中心とした小さなコミュニティである)
すると、ヨビコウをかつてのA'sとT'sの抗争の生き残りとするのが自然だろう。
なぜ、A'sが簡単に制圧されたか。それは以前にも述べたようにA's達は事件などで突発的に能力を獲得しているために、その能力にふさわしいだけの訓練、マインドセットが為されていないためであり各個撃破or吸収されてしまったのであろう。
従って、ヨビコウがA'sによるコミュニティを作らなければならないと考えるに至ったわけだ。
統一背景の設定が大体まとまった。
時代はほぼ現代。
東海地震がおこった後で、その時の対応のもたつきなどから、災害有事の名のもとに、有事法制が成立している。
関東圏地震の危険が真剣に議論されたために、首都機能の分散化が図られ、東北圏では仙台にいくつかの省庁、機関が存在する。
山形は市町村併合により村山地方を行政区画とした、「霞城市」に変わっている。環日本海での経済がある程度活発化しており、酒田港は新潟についで輸出入の多い港となり、霞城市はそれの中継etcによりそこそこに潤っている。が、やっぱり地方都市。
個人情報保護法も成立しているので割と息苦しいのかもしれない。
能力者たちに関しては、大きく分けて国家機関所属の術者(霊的特殊公務員)、民間組織の術者、モグリの術者が存在する。
国家機関に所属するものは公安、宮内庁、文部省などの宮中組と国土交通省、農水省地方改善局、林野庁などの外宮組に大まかに仕事が分かれる。宮中組はそれぞれ霊的テロ対策、霊的宮中警護、霊的存在・霊的遺物の調査・保存・保管がメイン。伊勢、土御門等の神職・陰陽師がその構成員となる。一方で外宮組は鹿島・香取、塩竃などがメインを張り、国土の円滑な開発を行っていたがここ最近は、羽黒・大峯といった修験出身者が中堅〜管理職(課長以上)に多くなってきており地方の霊的存在との保全的共存に路線転換しようとしている。
民間組織としては、比叡山が全国的に広く浅く、高野山が狭く深く、一応神社本庁以下の延喜式に載るような神社は地域を重点にカバーする。以上は民間組織とは言えど、公団のようなもので政府各機関との連携が深い。
それとは別に勢力を持つのが日蓮宗関連になるのだと思う。
別に免許があるわけではないのでモグリも何も無いのだけれど、特定の組織に所属していない術者はモグリと呼ばれることが多い。一般に拝み屋と呼ばれて出て来るのはこのあたり。
もちろん、狭い業界なので能力者同士での知り合い、情報の融通等は非公式に為されているらしい。また、国家機関所属の術者たちも実践に関しては民間委託するケースが多い。モグリの術者といわれていても主に政府筋の仕事で飯を食っている連中も多い。定員外職員といったところか。
霞城においては仙台の塩竃神社と出羽三山で紳士的なものではあるけれどショバの取り合いが起きている。
今回の事件の発端はA'sの一人(セイブツ)により霞城に地盤を持つ要人(もしくはその血縁者)が霊的攻撃を受け、ボディガードを勤めていた出羽三山の術者がその存在に気がつき、交戦。動機はセイブツの身内が要人(もしくはその縁者)により害を受けたことによる遺恨。山連の術者はA'sに関する知識の不足などから脱落するも、セイブツにも重症を与える。
出羽三山では情報収集とともに対策チームを編成し現地入りさせる、すなわち指揮官の匂陳、情報収集要員の玉梓、解除処理工作員の息吹、呪的戦闘・防御及び連絡その他のユーティリティ要員としての烏である。
一方、A'sではセイブツの暴走を止められなかったことをリンリが悔いる。しかし相応の理由があってのことだと知っているためにセイブツの発見・保護を行うためにヨビコウがA'sを召集。
この時点でヨビコウはT'sの活動があることを過去の自分の体験から予測。リンリとバケガクにセイブツの捜索を任せる一方で(以下略)
今日は月例出署日。とはいっても、赴任して2週間では自己紹介以外特に何も出来ないわけで、全体会議では特に無し。ただし、現場主任同士の打ち合わせでは、えらく楽しかった。とゆーか、喩えとしては
「ネームレベル冒険者のブリーフィングに、1レベル冒険者が混じったときのワクワク感」とゆーかんじ。
それはさておき。
前に書いたとおり、SkyPerfecTVを導入したわけだが、その時にちょっと思うことがあったのでD16の、ここ最近思っている呪術観と絡めて、書く。
特にスポーツとかに興味があるわけではないので、原稿や日記を書いているときはアニメ番組を適当につけっぱなしにしている。先日、「妖怪人間ベム」が流れた。僕は、「ゲゲゲの鬼太郎」は割と見たのだけれど、「妖怪人間ベム」はあまり見なかった。筋を覚えている話も一つくらいだ。それは小学校に上がる前に家族で海水浴に行ったときに民宿で見た回で狼女が出てくる話だった。特に印象に残っているのは貯蔵庫にぶら下がっている牛の半身肉をもってゆき、狼たちと食べるシーンだ。
それ以外は覚えていない。で、あの主題歌が流れて「そういや、これ(「妖怪人間ベム」)見るのってこれが二回目くらいなんだよなぁ」とか思っているうちに見覚えのあるシーンが出てきた。
「あれ?」
ホテルの中で人が倒れて、ベラがある女に陥れられて……。
そうだ、この女、狼だ。
そのとおりだった。
その回は僕が唯一覚えている、狼女の回だったのだ。
えらい偶然だが事実である。これに似た偶然の一致現象に関してはいろいろな話がある。有名なのはコリン・ウィルソンが著作「オカルト」の序文の中で陳べているような事象だ。
「(引用開始)書庫で調べ物をしていたときのことである。一冊の本が本棚から落ちてきた。みると、落ちて開いたのは、まさに私が探しあぐねていたページだった(引用終わり)」
この辺に関してはシンクロニシティ(同時性でしたっけ)とか言われてた気がする。
で、結論から言うとこういうことが「予言者」のセンスなんじゃないかと思う。
思うにこうした偶然の一致ということは、本人が自覚しているよりも多く起こっているのではないのではないだろうか。これほど明らかな形をとらなくても小さな偶然の一致、意味をなさないようないつか繰り返された事象。私達はそうした意識に上らないような現象の中で生きている。私達が理解している世界、自分が言葉によって語ることのできる世界は余りにも小さな世界でしかないことは多分共通の前提としていいんじゃないだろうか。私達は多分あまりにも多くの情報を言語化というか、顕在化できずにいるのではないだろうか。
あまり適切でな喩えではないかもしれないけれど、MP3などの音楽圧縮技術では人に聞こえない領域の音情報などを減衰させて全体としての情報量を減らしている。私達が理解している世界は多分こうした圧縮、整理された世界だ。しかし、切り捨てられた情報に意味が無いわけではない。それは顕在する意識が認知できなかっただけで、依然としてそこには「ある」。
そして、人間として越し方行く末に思いを馳せるとき、総体としては同じ人生など無くても人生を構成するピースのパターンはいくつかの相似形を持つのではないだろうか。ただし、そうしたピースのうち人が認知理解できるのは一部だけで、結果として再構成がかなり難しい、のではないか。
僕は予知能力とは、こうした、人生のかけらの中から自分にとって意味のある、そして必要とする高度な予測を組み立てる能力じゃないだろうかと思う。顕在化されない意識、無意識のレベルで、そのままではノイズでしかない情報から共通のパターンを瞬時に見切る能力。
つまり「勘」ってやつ。
センスとしての「予言・予知」はこんな感じなんじゃないかと思う。ここで、センスとしての「予言・予知」と断ったのは、明らかに学習からなる「予言・予知」もあるし、事象が起こった後に納得するための「予言・予知」もあるからだ。(「思い返してみればあれは予兆だった」ってヤツ)
で、以下からは以上で述べた「予言・予知」にもとづく、呪詛のやり方。これは完全フィクション。
すべての人間に上記の「勘」は大なり小なりあると仮定する。で、呪詛対象に対し、認知できないレベルでの情報を与えてゆく。そして、閾値を越えた時点で、呪詛対象はそこで自己に対して否定的なイメージや予測を「再構成してしまう」
結果として不安になったり、精神衰弱に陥ったりする。
と、フィクションとしては上手く呪いになる。
ただし、あまり劇的じゃないかも。
上手くまとまらないけれど、力尽きたので終わる。
「 高架の下を通る車はまばらだった。
『後一歩で僕は誰にも愛想笑いをする必要が無くなる。もう、他人の期待に応えようと背伸びする必要は無い。そして、人から失望されることへの恐れに苛まれる事も。
本気なんだろうか?こんなところで立ち止まっていれば人の目を引かないだろうか。本気なら急いで……』
本気で死ぬつもりか?違うんじゃないのか?
視界の照度がいつのまにか下がっている。バイパスのオレンジ灯がやけに遠くに見える。感覚がオブラートで包まれたかのように、光も、音も、自分が今立っているという感覚すら緩やかに削がれてゆく。
ああ、そうか。
お前もこの世界に耐え切れなかったんだな。
……自殺する勇気があるなら、何故思いとどまれなかった。
馬鹿な台詞だ。人は簡単に死ぬ。この身体は刃物の一刺し、数メートルの落下、洗面器一杯の水でたやすく壊れる。
誰もが、今の自分と同じように、なんとなくその一歩を踏み出したのだろう。
事実に気がついたときにはすでに遅いのだ。
自らの意思のもと、覚悟して死ぬ人間なんて、いない。みんな、弾みで死んでいく。
目隠しをして塀の上を歩いているのだ。真っ直ぐな道と聞かされて。
気がついてしまったから、誘われてしまう。
下ろす足を一歩ずらせるだけで、いい。
こんな風に。
風に吹かれて、一枚の人型が吹き飛ばされた。
烏は高架のガードレールに手をかけると深く息を吐いた。轟音を立てて長距離トラックが高架の下を抜けていった。タイヤに踏まれた人型が、雨上がりのアスファルトに貼り付いた。
「置呪詛(おきすそ)……。ここまで意積を使うか」
感覚が戻っていた。夜風が頬をなでた。夜気が雨の匂いを運んだ。オレンジ色の灯火がぎらぎらと水溜りに照り返していた。
烏は時計に目をやった。22時43分。十五分ばかりここでためらっていたのだろう。そのためらいの時間は、実際に車道に飛降りたものがためらった時間だ。
流祓(ながしばらえ)による「流し」。息を吹き込んだのみの人型により、呪詛を振り換える技が烏を救った。この地に仕掛けられた、穢れ、呪詛は人形が換わりに受け取った。
烏は高架から下におり、車道の人形を拾い上げた。そして、ライターのオイルを振り掛けた。
「トフカミエミタメ、カンゴンシンソンリケンタケン、ハライタマヘ、キヨメタマヘ」
そう呟き、アーミーナイフに石英を擦りつける。火花が散り、人形が炎にまかれた。
「知らせなきゃいけないな……」
携帯電話、もしくは公衆電話を使いたいところだった。しかし、話すことによる「縁」「因果」の連結が匂陳の布陣を崩す恐れがある。
報告は口頭で行うしかない。その上で組で向かう必要がある。
相手は訓練されている。ただのESP能力者ではない。その点において匂陳は間違いを犯している。
その間違いは危険だった。」
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