繍羅世界の宇宙観はじめに繍羅世界の宇宙観を真の知識として知るものは限られている。特に、「内界」の外『銀の黄昏のヴェール』の向う側に関しての知識を伝える文献、伝承は数少ない。多くの英雄崇拝において、その宇宙観は内界、すなわち『四方王』に囲まれた既知世界で十分だからだ。 しかし、天文的要素を教義の中に含み、『繍羅を去った天人』との関わりがあった天使信仰や、『精霊諸侯』から得られる力には飽き足らぬ魔術師などはこの世界の構造について様々に研究を深めた。 また、『最初の魔術師・ウルッサム』は四方王大戦時に内界の全ての道を歩み、外界の知識を獲得するために星幽界に身を投じそれを弟子に語った。その有様は今は既に荒唐無稽な御伽話の形に変化しているが吟遊詩人たちの間では有名である。 そうした伝承の中で最も整理されているのが、時と運命の神アーケルインシェの教導書に記された『界経』である。 『界経』には四方王大戦以前の宇宙のあり方についても述べられているが、ここでは四方王大戦以降、ウルッサムの弟子達が『精霊諸侯』に任じられてからの宇宙について述べる。 内界の構造我々が目にするこの世界(主物質界:Prime Material Plane)は様々な要素から成り立っている。その要素を温・寒、乾・湿で分け、地水火風の四大元素を知ることとなる。結論から言えば主物質界は四大元素他いくつかの要素の重ねあわされた世界である。 図に示す。 元素界(Elemental Plane)
内界は例えるならば多色刷りの版画のようなものである。元素としての四大、その四大から形成された純粋な世界としての元素界、そして影の世界(Shadow Plane)が重ね合わされ主物質界を成している。 この階層としての世界は、主物質界とほぼ同じ地勢をしている。しかし、場所により四大の要素の濃淡はある。 例えば、高い山の頂上では地と風の元素界が『濃い』のである。火の元素界から人里を見たとすれば、それぞれの人の体に燃える炎(命)、暖炉やかまどの煮炊きの火がはっきり見えるがそれ以外はぼうっとした霧のような炎の要素が散乱しているように見え、そして川の流れは全く火の要素のない真っ暗な(比喩表現)流れと見えるだろう。 多色刷りの版画が色を重ねなければ何が書いてあるか判読しがたいように、内界における元素界は全体としてみれば隙間だらけのいびつな世界と見える。 しかし、この元素界をそれぞれの元素方向に『深く』進むことでより要素の濃い真の元素界にたどり着くことが出来る。内界の元素界、正式には「元素諸侯領(Elemental Prince Layer)」は元素世界と主物質界の境界であり、『魔術師・ウルッサム』の高弟たちが転生した精霊王が治める領土なのである。 精霊界(Spirit World)これらの元素が重ね合わせられた、ある意味混ざり物のない世界が『精霊界』である。『精霊界』を先ほどの版画の例えで例えるならば、それは紙に印刷される前の『世界』である。紙に刷られなければ『世界』を見ることは出来ない。しかし、どんなよい紙を使っても紙には紙の色、きめといったものがあり、その『世界』とは異なるものとなって出来上がるのである。 つまり、ここでいう刷られた『世界』が主物質界であり、刷られることのない、色褪せることも、その風合いを変えることも無いそのままの『世界』が『精霊界』である。 『精霊界』では「目に映る色はより鮮やかに、耳に届く音はより明らかに、周りを捉える感覚は薄絹一枚を剥ぎ取られたように鋭く」なる。そして、多くの精霊(Fey、Elemental、Spirit)がそこに住まう。 山は厳しく高く、海は激しく広く、そして今は既に打ち倒された『星界樹』の根株をそこに見ることが出来る。 影幻界(Shadow Plane)『影幻界』は主物質界に対する陰画である。そこは白と黒の支配する世界であり、わずかに色を見ることが出来るがそれもくすんだ物となっている。主物質界の文字通り影でありそのありようは変わりやすく、そして危険な場所となっている。それはここが、四方王に力を与える『恐怖』とは異なる『不安』により歪められてしまっている世界であるからだ。妖精界(Fearie Plane)『妖精界』はこれまで挙げた世界とは異なり、主物質界の中に作り出された、それでもなお独立した世界である。しかし、多くの人間が異界として馴染み深いのもこの世界である。現に一般の人間が最もよく訪れるのがこの『妖精界』であるからだ。その有り様は吟遊詩人たちが子供に語って聞かせる御伽噺に詳しい。魔王界・英雄界(Fiendish Domain・Heroic Domain)これまでの世界が主物質界を構成する世界であるならば、これから述べる世界は主物質界の上に構成された世界である。すなわち、人がいることで作り出された世界。つまり、『魔王界』と『英雄界』である。これらの世界も主物質界に重なる形で形成される。しかし、これまでの要素による世界とは異なり、この二つの界は重なるというよりも、主物質界の延長にあるのである。 人はどれだけ高い山に上っても、深いよどみに潜ってもそれだけでは風の元素界、水の元素界に至ることは出来ない。しかし、『魔王界』、『英雄界』には主物質界から尋常の手段で行くことが出来るのである。 『魔王界』は既知世界の東西南北の奥にその本拠を置き、既知世界を緩やかに侵蝕している。従って、既知世界から北へ北へずっと進むとやがて主物質界と『魔王界』の一つ『北風の向う側』が入り混じる領域を経て気がつくと『北風の向う側』にたどり着くことが出来るといわれている。 つまり、主物質界は緩やかに『魔王界』に連結している。ただし、その入り混じりかたははっきりとわかっておらず、常に揺らいでいる。ただし、既知世界がこれまで『魔王界』の侵蝕により幾度となく滅んでいることは事実であり、その証拠が既知世界の外縁に残るいつの時代の物かも知れぬ遺跡である。 『魔王界』が既知世界の外縁部に確率的に交じり合って存在しているのに対し、『英雄界』は既知世界において『英雄』として神性の能力を得た英雄達が自分の信奉者を守るため、自らの目的のために作り上げた世界であり、そこは基本的には風の吹き方から、花の香りまでが『英雄』の意によって定められ、作られた世界である。 四方王大戦直後の第二次結集(けっじゅう)時、英雄達を導いた『魔術師ウルッサム』は既にその姿を消しており、残された英雄達(その中には四大精霊に転生したウルッサムの高弟も含む)はこれから続くいつ明けるとも知れない『夜』に備えるため、神性を獲得したものはその為の道を後進に伝え、そして自分達の作った領土を連絡することを決定した。 そのとき、ウルッサムとともに、長く行方をくらませていた「道行人」のルースという英雄が帰還し、いまだ誰も開かれていなかった道を拓き、主物質界に重なる形で存在する、ほぼ手付かずの世界の存在を報告した。 多くの英雄はその手付かずの世界に赴きそしてその世界に自らの神性としての領土を作った。考えられないことだが、この世界は主物質界とほぼ同様の地勢・生態を持ちながら一切の神性が存在していなかった。従って英雄達は自由に自分の領土を作成することが出来た。この世界が『英雄界』である。 なお、この手付かずの世界を見つけ出したルースは再び旅立ち、そしていまだ帰ってきていない。 『英雄界』は既知世界の無数の英雄達の領土が存在している。 精気界(Etherial Plane)上記の内界を連結するのが『精気界』である。精気界は元素とは別に主物質界を構成する要素であるとされ、実際にその一部は主物質界の階層構造の一部を成している。精気界を訪れたものは曇りガラスを透かすようにして主物質界を覗き見ることが出来ること、主物質界で山があるところには同じように精気からなる「山」があることを証言している。 精気とは何か。それについてはいまだ確定した定義が成されていない。不思議の技の使い手はそれがある事を知り、それをどのように使うのかを知っているが、それぞれに語ることは統一されているとは言い難い。 『界経』においても、この点に関しては多重の意味に解釈できる、一種あいまいな表現を用いるにとどまっている。 「精気界において精気は全てに満たされ、有る所にも無いところにも満ち満ちてある」 訪れたものはそこを、うっすらと色のついた霧状の精気に満たされた場所であり、それ以上に何も見出せないと語る。確かにそこには何かが満ち満ちているが、それが何なのか、それが何を表すのかいまだに答えはない。 死者の霊が精気によって仮の体を構成し、半透明の姿で現れるとき、それは精気界に存在していると伝えられる。 不思議の技の使い手は時折この精気界に入り、敵をやり過ごしたり、旅をしたりする。 精気界について一つだけ確実に言えることがあるとしたら『有る所にも無いところにも満ち満ちてある』その性質により、内界のほとんどの階層に接触しそこに至ることが可能ということである。 しかし、精気界が『重なり合っている』世界は主物質界のみであるらしく、主物質界以外の界においては精気界への連絡、連結が主物質界と同じようには行かないと伝えられている。 戻る |