千字シナリオ:竜の帰還
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- 作者名
- トモス・アキナス
- タイトル
- 竜の帰還
- タイプ
- ファンタジー系 神話・心理ドラマ
- 主題
- 生への欲望
序
戦乱の続くある大陸で、竜達が病を患い、ほぼ絶滅の状態にあることは余り知られてはいない。
大陸の全歴史を編纂し続けているという風変わりな僧院からの使者と、PCたちは偶然宿屋で出会い、調査への同行を依頼される。彼は歴史家で、40年の生涯の殆どを僧院に過ごした僧侶で、癒える事のない骨の痛みに刻々苦しむ病人でもある。
調査はある地下の泉に竜を訪ね、竜の病について聞き出すこと。泉はこの大陸で最初の竜が生まれた所であり、いつか最後の竜が還っていく所でもあると言う。彼はPC達の目には旅をするには余りに脆弱な病人に映る。
真相
僧侶は「最初の竜」の仮の姿であり、「最後の竜」でもある。この竜の魂は大陸の全ての竜の魂とつながっており、幾百もの竜達の病苦と死を日々感じとってきた。
病の原因は竜の欲望がついえたこと。空を駆け、黄金の上に眠り、百獣の上に君臨し、万年を生きること、に疲れたこと。欲望を追求し栄華を極めたことには意味がなかった。そもそも何も起こらなければよかった。無常を感じた竜達は自らの存在を支える魔力を失い、無へと還って行く。
泉のある洞窟に近づくにつれ彼は色を失い、記憶と言葉を失い、やがて竜の身体に戻るとそれは滅びの予兆に満ちており、輝いていたはずの鱗は色あせ、翼は枯枝の様に折れ、身体は蛇のそれへと変容しつつある。最後に泉のほとりで白い大蛇と化し、竜は自らの尾を自ら飲み込みつつ、泉へと滑り落ち、暗い底へ吸い込まれていく。水面が静まるとPC達はあたかも何も起きなかったような錯覚を覚える。
イベント
- 僧侶は事ある毎にPC達の人生の目標やその意味を尋ねる。歴史を長く見すぎ
て生の意味を見失った、彼は口にするかも知れない。この世界も初めから何
もなければそれでよかったような気がする、とも。
- 戦場となった村々で、命が無意味に失われているのを見る。
- 戦乱とは縁のない平和な生を営む妖精の里に迷い込み、日々に満ち足りて生
き、何も達成せずやがて消えて行く命を見る。
- PCは僧院を訪れて事の真相を告げてくれるように最後に依頼される。
- 竜の病がその時期に起きた原因を更に考えるのもよい。
- 小さな王冠が残される。それを戴く者は、夢で、栄華に満ちた竜の生を送る。
目醒めるとそれは地上から失われた種族についての懐かしい思い出だと感じ
られる。
- 僧侶に対し人生の意味を強硬に主張するPCがいれば、最後に呪いがかかる。
呪われたPCは自らの人生に充実した意味を感じられない限りやがて生きる欲
望を失う。充実感を持って生きるならば害はない。場合によってはいつか、
泉からまた新しい竜が生まれてくることになる。
- 僧侶は励ましやいたわりや批判などには反応しない非人間的な性格の持ち主
だが彼がPC達の言動を通してこの世界の存続に意味がないと感じた場合、大
陸全土に呪いがかかるかも知れない。
- 何らかの形でPCがこうした可能性に気づき、彼の悩みに巻き込まれることが
ドラマの進行上望ましい。そうでなければ手短なエピソードとして扱うこと。
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