天羅万象掛け合い:遁走編 001

天羅万象掛け合い所:PLAY7の2002年01月07日より2002年04月23日までのログです。


2002年04月23日:18時18分45秒
そして遁走劇は幕を開けることとなる。 / みだれかわ枕
 で。
 
 
『カニ大砲』の発射のとき、お蘭は気絶寸前だった。
 式に、霊力を取られすぎていたのである。そこに『カニ大砲』の至近距離での発射。
 華奢なお蘭には、もはや限界だった。
 
 
 きゅごぉぅんっ!
 
 
 で。
 
 
「まってよ〜、お蘭ちゃん〜」
「待てと言われて待つわけないでしょ、ヴァカじゃないのっ!?」
 傍目には、お蘭と桃香は、仲がよいように見えただろう。実際、二人は一緒にいることが多かった。
 そのころすでにお蘭は陰陽師としての修行をはじめていたし、桃香はヨロイ乗りとして大事に大事に育てられていた。
 方向性の違いこそあれ、二人は世間からかけ離れた環境で生きていたし、お互いが『同類』なのだと感じあっていた。
 だが、それは仲がよいかとか、友情の絆で結ばれていたかとかいうのとは、全く別の話である。
 そりゃもう、ひどいものだった。
 そのころすでにお蘭は計算高い娘だったし、桃香は能天気な娘だった。
 つまり、二人の関係とは、一方的にお蘭が搾取する、そういう関係だったのである。
 
 そのころの『甘美な思い出』がお蘭の脳裏を次々と通り過ぎていく
――ああ、走馬燈ってヤツね、人生の。
 その走馬燈はくるくると回り続け、やがて、ゆっくりと、止まった。
 最後に見えたのは――
 
「桃香ッ! この戦、勝ったら……あたしたちは自由よッ!」
「……え? 桃香たち、自由じゃないの? 今もお菓子食べ放題だよ〜?」
「だあああっ! あんたは全ッ然、判ってないのねッ!」
 
 
「畜生……結局あたしたちは……好きなように使われて……終わり……なの……?」
 巨大な式が霞のように消え去り、お蘭は崩れるようにして、その場に倒れた。
 
 
 陰陽師お蘭、風前の灯火。
2002年04月04日:01時05分16秒
展開 / 月夢
 砂塵、砂塵、砂塵……、一瞬の暴風雨が過ぎ去る。
(これだからヨロイとはやり合いたくないんだ)
 舌打ち、戦場で出会いたくない存在というのは多々ある、対個人という観点であればヨロイよりも危険な存在もある、だが無差別広範囲というやっかいな特性においてはヨロイが群を抜く。間違えてもヨロイの正面には立つべきではないし、影を見たらとっとと逃げ出すのが生き延びる秘訣だ。
「それを何でこんな少数で迎え撃たなきゃいけないんだ」
 しかも連携もなにもあったもんではない。
「どうしろっていうんだ…」
 逃げるにしても真っ正直に走れば逃げられるとは限らない、どちらにしろ愚痴るよりもなによりも状況を変化させないことには始まらない。
(かといってヨロイ相手に切れる手札なんて手持ちにはないぞ)
 物理的な能力も、愛や勇気なんぞというものも、ましてや友情にいたっては論外。
(他力本願だがあいつらがどの程度のことやってくれるかだな)
 隠れていた物陰から状況を確認するためにちらっと顔を出す。
「………は?」
 ひきつる。
「だから、どーしろっていうんだ」
 ここしばらく急激に増えたような気がする答えの返ってこない問いをつぶやく。
「人生底ってなかなか見えないもんだな……」
 何かを悟る千里、二十九歳の一日だった。
2002年03月15日:00時12分21秒
守れ、未来の身代金! / 李
 仕返しにお尻を蹴っ飛ばされ、”おっさん”呼ばわりされた。
 「俺はまだ20だ!」
 大声で言ってみたが、この音響では聞こえぬかも知れぬ。
 洞窟が崩壊する。
 住み慣れた場所が壊れていく様を見ると、心にむなしさがこみ上げてきた。
 手元の小娘は桶をかぶらされているし。
 
 滝に出ると、状況が変わっていた。
 ヨロイ・・・戦略機動兵器名前は”大蟹”か”鉄蟹”か?
 あまりにまんまだったら、美意識というものが欠如してる気がする。
 そのはさみが、千里の方を向いた・・・。
 なぜ、奴のなのだろう?
 手元にいるコレは、偽者なのか?
 いや、それはともかく。
 逃げるべきだろうな、この状態からは。
 
 「散れ!」
 
 ちょうど良い声もかかったことだし。
 とりあえず、安全そうな遮蔽物のあるあたりに放り投げる。
 じたばたしながら、桶を取って、ヨロイのほうを見てにやりと笑う。
 ・・・なにかぶつぶつつぶやいていたかと思うと、
 いきなり仁王立ちになって、腰に手を当てて、こう叫んだのだ。
 
「どーせ中に乗ってるのはおてんこ娘よッ! 貫影ッ、やぁ〜っておしまいッ!」
 
 だから、なぜそこでいきなり目立つのだ、おまえは。
 
 ヨロイに目をやれば、ヨロイ狩りの若造が、じりじりと間合いをつめ、そして、蟹の手から蟹螯砲が発射された。
 
 まずい!
 このままでは、小娘の丸焼き、3分間調理教室が開かれてしまう!
 えぇぇえい、どうしてこう・・!
 
 「バカばかりなんだ!」
 
 刀を抜き、気合と共に降り注ぐ光を切り払う。
 周りで爆発が起こり、小さな破片が飛んでくるが、直撃されるよりましだ。
 
 爆発が収まる。
 お蘭は!?
 
 「お蘭、無事か!」
 
 目の端にうごめく巨大なものに注意を払いながら、まずは一番大事なものに目を向ける・・・。
2002年03月09日:00時08分29秒
今度こそ / Djinny
 貫彰は起き上がって鉄蟹に向き直った。
「なんにしろ、この隙に……」
 取り付いて一撃をお見舞いしてやる。
 ちらりと上を見やる。白い物体が視界の半分をふさいでいる。

 貫彰は幾つか思い違いをしていた。

 そのうちの一つは重大かもしれない。
 鉄蟹の持つ「カニ大砲」は、周囲にまんべんなく被害を与えるものだった。それは貫彰も知っていたが、その情報にはいくらか誤りが含まれていた。至近距離の目標には効果がないと傭兵仲間の噂で聞きかじっていたのだった。
 実際には、本体にいくら近づいても、その被害を逃れることは出来ない。一撃を与えることはやぶさかでないにしても、貫彰自身もただでは済むはずがない。
 しかし、当の本人は、それを未だ知らなかった。
 もっとも、知ったところで行動に変化はなかったかもしれない。彼がヨロイ狩りをしている理由は、金や功名のためだけではなかった。ヨロイへの、子供のように盲目的で、老人のように屈折した憎悪が渦を巻いていたからだ。

 彼は駆け出そうとして、ちらりとまた上を見た。白いものが動き始めていた。

 もう一つの思い違いは、致命的なものだった。
 式が感情を持つことは、普通、ない。
 そこまでは貫彰も知っていた。怒っているように見えた、というのは、雲に人の顔が浮き出て見えるようなもので、本人もそれ以上の感想を持ったわけではない。敢えて言えば式が放つ殺気のような物を感じ取ったとでも言えようか。
 だが、式は、主人の命令を忠実に実行しようとするものだった。

 お蘭の作った式は、お蘭が作ったときから、命令の変更を受けていなかった。

 二足歩行、一対の手を持った、人間型の式を打つ。そこそこの筋力と敏捷さを持っておれば、水汲みには使える。ついでに貫影をごちんと殴ることが出来れば、気分もすっきりするだろう。

 ……具体的に式が命令として受け取ったのは、その最後の部分だった。貫彰の姿は、お蘭が打つときに具体的に思い描いていたから、式はちゃんと認識していた。
 式は別段怒りを抱いていたわけではない。
 命令に忠実に、貫彰に殴りかかっていただけだった。さきほどの一撃は、式の拳が振り下ろされたものだった。
 そして、式はまだ目的を果たしていなかった。さっきは避けられてしまったからだ。

 駆け出そうとしたとき、やにわに空が暗くなった。……と思ったときには、またも何かが彼の頭の上に「降って」きていた。
「でぇぇぇぇっ!」
 貫彰はまたも、ぎりぎりでそれを避けた。
「お、お前、カニを怒ってるんじゃなかったのかよ!」
 豪胆な者なら呵呵大笑して、騙された、と言うところかも知れない。生憎貫彰にはそういう余裕はなかった。
「くっ、くそぉ、この偏平足野郎!」
 その途端、咆哮を上げた式の拳が彼に殺到し、彼は全力で走り出した。とても、ヨロイをどうこうするどころの話ではない。
 走りながら、彼は後ろを振り向いて、鉄蟹をちらりと見遣った。
「畜生! これで勝ったと思うなよ!」

 それは典型的な悪役の台詞だったが、そんなことを気にする余裕すら書き手にはなかったのも事実である。
 


2002年03月05日:16時30分21秒
モビーディック / Djinny
「どーせ中に乗ってるのはおてんこ娘よッ! 貫影ッ、やぁ〜っておしまいッ!」
 お蘭が後ろで大声を張り上げた。
 要らぬ言葉だとは思ったが、貫彰は一応決まり文句で返事をした。
 そのまま、大きな動作で、大刀の柄についた赤色の丸い釦を押し込む。柄尻が開いて、子豚の根付が飛び出し、派手な音を立ててすぐに引っ込んだ。珠機構の安全装置が解除されたことの知らせだった。
 これで、大刀はその真価を発揮するようになる。引き金を引けば珠が爆発する仕組みだ。
 
 ───言われなくたって、やってやるさ。
 
 貫彰は、早くも起き上がりかけている鉄蟹へと、足を速めた。掩体を取るようなことはしない。どうせもう、ヨロイの視覚で見つかっているのだ。隠れても仕方がなかった。
 
 小走りに駆け寄りつつ、彼は相手のヨロイのことを思い出していた。元々味方のヨロイだったから、武装などは調べてある。ヨロイ狩りとしては必要な知識だった。
 
 ───鉄蟹の武装は……確か……
 
 特殊な炸裂弾だ、と思った瞬間だった。急に空が曇ったような気がした。
「……あ?」
 視界が何かにさえぎられた。
「え……?」
 
 ヴオオオオオオォォォォォオオオオオ〜〜〜〜〜〜ン
 
 巨大な何かが、貫彰めがけて振り下ろされた、ような気がした。わけもわからず、ぎりぎりでそれをかわした直後、今度は甲高い爆音と共に視界が真っ白になった。
 
 ───カニ大砲かっ!
 
 鉄蟹の武装は、牢人仲間ではそう呼ばれていた。味方まで巻き込むので迂闊に使えない、かと言って敵の中に乗り込んでいくには、乗り手がちょっと……と、揶揄されていたはずだが、食らってしまえば笑い事ではない。
 
 咄嗟に身を伏せ、少しでも爆風をやり過ごそうとした。が、うまくいかない。伏せようとした体が足を掬われ、ついで手ひどく地面に叩きつけられた。そこに、飛ばされてきた石やら土やらがぶつかる。
 
 あちこち傷は負っているだろうが、身体はどうやら動く。
「畜生っ」
 貫彰は悪態をついて立ち上がりかけた。
 カニ大砲の次の発射までに、本体にとりついてしまえば……

「なんだ?……あ」

 そこには、恐ろしく太った人間のような恰好をした、巨大な青白い「何か」があった。
 
 貫彰は、一瞬の空白のあとで、「何か」の正体に気が付いた。
 それは、お蘭の打った式だった。
 
 本来、式が感情をもつようなことはないはずだ。だが、その式は、ひどく怒っているように見えた。自分にいきなり剣突ケンツクけんつくを食らわせたカニに、心底怒っているようだった。
 
 
 
 というわけで、ギャグものとしてはおもしろそうなので、例の式を再登場させてみました。
 まー、お蘭も全霊力は使ってないでしょうし、カニ鉄砲食らって生きてるほどタフで(強くて)ええのか、とかおもわんでもないですが……。
 というわけで、不都合っぽかったら、タツノコのやられメカ的に、都合よさげでしたら強敵っぽく「なんとか」してくださると嬉しいです……
2002年03月04日:22時49分51秒
蟹の光線 / tomy
「あ〜ん、逃げないでよ〜」
 桃香は鉄蟹の鋏で目の前の機人を掴まえようとする。だが、千里は広げた鋏の届かない距離まで逃げ、物陰に隠れてしまう。
 
「はぅ〜、追いかけないと。と、とりあえず立ち上がってと」
 鉄蟹は仰向けの状態から、8本の手足を使って器用に起きあがる。
 
「ううっ、どこどこぉ?」 とりあえず、霊導夢を作動させると、人間大の反応は5つもある。近づいてくる反応は1つ。…機人ではない。そして残りのうち…。
「お、お蘭ちゃん?」
 思わず叫ぶ桃香。
(なんでこんな所にお蘭ちゃんが居るの? もしかして、また桃香を苛めるために、ここに罠を張ってたの? それとも、落ち武者狩りにやられて美味しく料理される途中だったとか? それとも…)
 思わぬ人物の出現に頭の中が真っ白になる桃香。
 
「どーせ中に乗ってるのはおてんこ娘よッ! 貫影ッ、やぁ〜っておしまいッ!」
 お蘭のその言葉によって、桃香はようやく近づいてくる何者かのことを思い出す。
 
「わわっ、た、戦う気なのっ!? どどど、どうしよっ?」
 鉄蟹は蟹螯腕以外にろくな装備が付いていない。それに目の前の男を倒しても、千里とかいう機人を逃がしてしまったら、“叔父様”に怒られてしまう。と、そこまで複雑な事を考えられる様な頭のない桃香だったが、機人を逃がさない手段は、蟹螯砲しか思いつかなかった。
「でも…、お蘭ちゃん…」
 蟹螯砲を使えば、彼女を巻き込んでしまうのは確実だろう。桃香は、お蘭と過ごした日々の事を思い出した。
 
 お蘭によって、着物の中に蛙を入れられ、泣きじゃくった事。
 彼女が作った正体不明の『薬』の実験台にされた事。
 全身墨染めにされて、魚拓ならぬ『人拓』を取られた事。
 
「…いくよっ、蟹螯砲っ!」
 …どうやら桃香とお蘭の間に友情はなかったらしい。
 そして、鉄蟹を中心にして巨大な光の爆発が辺りを包んだ。
 
 tomy:とりあえず、一発蟹螯砲を発射してみました。
 周囲100mに13点の爆発物ダメージが発射されます(^^;
2002年02月27日:23時45分56秒
一度言ってみたかった / みだれかわ枕
「な、なによこれっ! ちょっとどけなさいよッてばさっ!」
 貫影に桶をかぶせられたお蘭は、じたばたともがいた。
 もがいたが、
「散れ!」
 放り出されて、べしゃっと尻餅をついた。
「な、なんなのよ、いったいもーっ……って?」
 桶をどうにか頭から外すと、目の前に、ひっくり返った蟹がいた。
 その蟹には、随分と見覚えがある。
 鉄蟹。六足歩行の、ヨロイである。主兵装は大きなハサミ。見たまますぎて、お蘭はあまり、このヨロイが好きではなかった。
「ふぅん……追っ手、ね」
 お蘭はニヤリと笑った。
 このヨロイの乗り手のことは、知っている。朴訥な娘(自分よりも年上だが)だ。おそらくは、自分自身ではよく状況が判っていないのに、うまく言いくるめられて、ここまで自分を追ってきたのだろう。だが、単独行動らしいから、実際にはあまり期待されていないと推測することが出来る。
 彼女の『飼い主』は早々に敵国へと寝返っていた。頭は良いのだろうが、美しさを理解できない凡人だと、心の中で軽蔑していた。最後にあったときに尻を撫でられたことを思い出して、お蘭はちょっと鳥肌が立った。
――それにしても、あたしを探すのに(期待していないとはいえ)ヨロイを投入するとは、どーゆーこと?
 お蘭は冷静に自分の価値を考え直した。
――美の化身たる天才美少女陰陽師のあたしに、たかが蟹一匹?
 安く見られた、とお蘭は思った。
 だから、お蘭は、辺りを見回して―貫影がじりじりと間合いを詰めている―またニヤリと笑い。
 それから、仁王立ちになって、腰に手を当てて、こう叫んだのだ。
 
「どーせ中に乗ってるのはおてんこ娘よッ! 貫影ッ、やぁ〜っておしまいッ!」
 
――一度こう言ってみたかったのよねぇ
 
 
 陰陽師お蘭、風前の灯火(でも他人任せ)
2002年02月26日:00時33分11秒
呆然 / 月夢
(馬鹿だ……馬鹿がいる………)
 身も蓋もない感想を抱いて元洞窟を見る。
 ただでさえ身を隠しているこの状況下で、わざわざ、目立つように、自分の隠れ家を失う馬鹿が、
(ここにいる)
 もはやなにをどうつっこんでいいのやら、
(まあ、落ち着け、おちつくんだ)
 なにやら色々騒いでいる声が微妙に神経すり減らすがとにかく落ち着こうと心がける。
(まずよく考えろ、細かないきさつを今更聞いてどうする、たぶんきっと絶対俺の理解の範疇外だ、だから過去は忘れろ、というかこいつらごと忘れるのが一番だが、いや、そうじゃない)
 落ち着くのは意外に苦労するようである。
(まず冷静になるんだ、こういう場合はどうする?というか普通なるか?こういうことに、というか状況ほんとに理解しているか?………いやだから話を蒸し返すな)
 だいぶ動揺してるようである。一つ深呼吸。
(よし、いいか、事故だ、不測な事故が起こり、隠れ家をやむを得ず出なく成らなくてはいけなくなった、そうだ、そう言うことだ、その場合の対処としては、とにかく人目に付く前に速やかに撤収だ)
 何となく自分をだましつつ一つ結論をつけると、とにかくその結論を告げようとする瞬間、後ろから先ほどの音と負けず劣らずの音が響き渡る。
(またか!?)
 どうやら物事全ては3人が悪いと思ってるようであるが、当然そちらは別である。
 とっさに振り返ったその先には仰向けになった蟹が転がっている。
「類か?友か?」
 誰のとは言わないがとっさに思い浮かんだ言葉が口をつく。
「これ以上馬鹿を増やさないでくれ」
 そんなずれた感想を抱いていたが、蟹のはさみが自分を向いたときはっと我に返る。
(敵!)
 迎えに来た味方という可能性もないわけではないが、人生経験上都合のいいことはまず起こらないと言うのが千里の持論である。
「散れ!」
 振り返らずに叫ぶと、手近な遮蔽物に向かって走る。ヨロイ相手に1対1で喧嘩売るほど馬鹿ではない、砲の餌食にならないように散開して、小回りの利かないところで囲むのが、この場合は定石だろう。
(正面切ってヨロイにつっこむ馬鹿は……いやがった!)
 舌打ち、ヨロイ狩りという人種がいることを失念していた。
(どうする?)
 第一目標はどうやら自分となれば、その間をくぐって初太刀を叩き込むことは可能かもしれない、八連斬甲刀の一撃が入ればかなり有利に事は運べる。
(が、それもこれも俺があれをかわせなきゃ意味がない)
 人のために犠牲になろうなどという精神はとっくの昔に質草に出した、あのはさみがどう動くかわからないが、それをぎりぎりまで引きつけて見極める気はない。
(ちょうど良い機会だ、他の面子の腕も見せてもらうさ)
 まず生き延びること、なによりもそれが千里の哲学だ。
(使い捨ての駒の命なんざ気にかけてくれる連中がいるわけじゃねえ、自分の命ぐらい自分で守るさ)
2002年02月25日:10時46分09秒
ぴきぃぃん / Djinny
 なにげない貫彰の言葉尻に、どういうわけかムキになって打たれた式は、あまりにも大きかった。
 
 彼等の目の前では巨大なヒトガタ(のようなもの)が、なにやらこの世のものとも思えないような咆哮を上げつつ立ち上がろうとしていた。
 当然、洞窟の(天然ものだから、当然あまり頑丈ではない)天井があるのだが、馬鹿力で突き破ろうとしていた。
 悪いことにそれは成功しつつあった。
 「彼」にとっては望むべき事態なのだろうが、下の者はたまったものではない。
 
 訳がわからずにぽかんとしていた貫彰は、とりあえず(同じように呆然としている)お蘭を庇って洞窟から出ようと、彼女に手を伸ばしかけた。
 
 が、それは意外にも空を掴んだ。脱兎の速さで駆け込んできた男(飛燕という名前だった)が、横合いからひょいとお蘭を抱え上げ、肩に担いでしまったからだ。
 飛燕はそのまま、同じ挙動で、実に手際よく貫彰の腰の辺りを蹴飛ばした。
 「ぼさっと立ってんな!さっさと逃げろ!」
 一瞬、なにやら訳のわからない焦燥感のようなものが心をよぎった。尻を蹴飛ばされたことは不思議になんとも思わなかったが、手を伸ばしかけたときにこちらにちらっと視線を向けたお蘭が、目の前で浚われたことに違和感があった。
 しかし、貫彰はすぐに頷いた。飛燕のやりようはともあれ、飛燕の言うとおりだった。ぽかんとしている暇はない。
 飛燕は怒り心頭といいたげに、言い訳があれば聞いてやる、と言ったが、貫彰は答える前に、担がれたお蘭の頭に手桶を被せて───これでまあ、頭に石が落ちてきても直撃しないで済むだろう───入り口を指した。
 「とりあえずここを出るほうが先、なんだろ? おっさん!」
 後は、お返しとばかりに飛燕の腰を蹴り、置いていた大刀を背中に背負いなおすと、彼に続いて洞窟を出た。なにか飛燕が怒鳴っていたが無視することにする。
 
 洞窟は地響きを上げて、どうやら本格的に崩壊し始めていた。
 わずかな距離を無限の長さに感じつつ、最後は転がるようにして逃げ出し、滝を潜って、とりあえず安全そうなところまで、足を取られつつ必死に走った。
 
 やっと一息ついたところで、彼はとんでもない(彼にとっては)グロテスクなものが眼下の谷底に這いつくばっているのを見つけた。
 それは、蟹の形を模した、巨大なヨロイだった。
 
 「鉄蟹……か」
 確か、寝返って「向こう側」についた領主の持ち物だったはずだ。
 数日間の、なにやら妙な生活のせいで鈍っていたヨロイへの悪意と敵意が、むらむらと湧き上がってくる。
 しかもあれは敵方だ。壊しても文句は出まい。
 
 貫彰は足元を確かめてから背中の大刀を抜き、素早く珠の装填数と安全装置を確認すると、ヨロイの方ににじり寄るように近づき始めた。
2002年02月17日:14時35分23秒
鋼の蟹 / tomy
 ガシャガシャ
 
 二本の巨大な鋏と6本の脚を持つ、蟹とも蠍ともつかない独特の形状をしたヨロイが、山中を走る。蟹にしては前に進んでいるし、蠍にしては針のある尻尾がない。
 
「ふえ〜ん。ここ何処〜?」
 ヨロイから少女のものとおぼしき声が響く。索敵盤と霊導夢があるにもかかわらず、迷子になってしまったらしい。
 
「このままじゃあ叔父上様の命を果たすどころか、帰る事もできないかも。…ううっ、やっぱり桃香には無理だったんだ。いっつも、年下のお蘭ちゃんには馬鹿にされるし、妹の菊乃には叱られるし、字は下手くそだし、ドジだし、唯一誇れる鉄蟹(てっかい)にももうすぐ乗れなくなって、きっとそのままお払い箱なんだ」
 
 ガラッ…
 
 そんな風に桃香が自分の世界に浸り込んでいたその時、鉄蟹とよばれるヨロイの足下の地面が崩れた。
 
「ふえええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ…」
 
 ガラガラガラガラ…ドッシャーン
 山肌を転げ落ちていた鉄蟹は、大木にぶつかり仰向けになりながらようやく止まった。
「目が、目が回るよぉ…、あれ?」
 ようやく自分の世界から帰ってきた桃香は、霊導夢に反応がある事に気が付く。そしてその方向には、草むらでこちらの様子をうかがっている機人の姿が見えた。
 
「見ぃつけた♪」
 鉄蟹は仰向けのまま、その鋏を千里の方に向けた。
 
 ヨロイ乗り 桃香
 
 tomy:つーわけで、ちょっくら皆さんのライバル(?)を入れさせてもらいます。
 お蘭たちの国を裏切った、“叔父上様(詳細は未定)”の配下のヨロイ鉄蟹とヨロイ乗り桃香です。因縁は「感情:叔父上様への忠誠」と「感情:ヨロイへの愛情」です。お蘭とは裏切る前の知り合いで、よく頭の鈍さを指摘されていたと言う設定です。もしかしたら鉄蟹の制作に、お蘭も参加してたりするかもしれません(爆) 今回は何故か千里を捜していた模様。
 なお、声は小西寛子をイメージして書きました。
2002年02月17日:02時56分06秒
崩れる、僕らの秘密基地! / 李
遊歴 飛燕の一人称
 
 困ったことになった。
 
 まぁ、正直に言わせてもらえばあの娘を手に入れたのだから、
 目的の半分は達成されてるといってもよい。
 が、おまけの存在が厄介だ。
 まぁ、機人・・・確か千里と名乗った・・のほうはよい、いずれきな臭くなれば消えるだろう。
 だが、若い方・・・貫影だったか?・・・はよく分からない。
 どうも、自分と同じか、もしくはそれ以上の家の出ではないだろうか?
 だとすれば、あれはお蘭となにか関係があるかもしれない。
 同じ陣営の可能性も捨てきれないし。
 
 儲けるのは自分ひとりだけでいい。
 それには後の奴は邪魔だ。
 
 では・・・どうする?
 
 お蘭のいるほうから、巨大な物音が聞こえる。
 ”商品”が傷ついたら、それはそれで問題だ!
 
 三人称
 
 飛燕は、刀(これも彼の商売道具である)を手にとると物音のするほうに走っていった。
 そこには・・・式がいた。
 経緯は飛燕にはわからないが、お蘭が作り出したらしいということは分かる。
 ”やはり、縛るくらいはやっておいた方がいいかもしれない”
 心の中で、考えながらまずは、相変わらずお蘭を拾って肩に担ぎ、
 次に
 「ぼさっと立ってんな!さっさと逃げろ!」
 といって、貫影の尻を蹴飛ばした。
 
 式が実体化していく。
 中まで全て破壊が及ぶということはないのだろうが、
 式のいるあたりから、洞窟が崩壊していくのは分かる。
 
 「・・・・言い訳があるなら、聞いてやるぞ。ガキども。」
 氷点下もかくやと思える声を発して、事の原因を二人に問うた。
2002年02月14日:23時49分49秒
素。 / みだれかわ枕
 お蘭は、ちょっと考えた。
 この男たちには、それぞれ思惑があることだろう。
 だが、それを利用することは出来ないか?
 こんな洞窟まで連れてきて、それでも、襲うでもなく、犯すでもなく。
 どちらかというと、かくまうかのようなそぶりすら、見える。
 何か思惑がなければ、こういう処遇はすまい。
 好きなだけいたぶって、殺して、それでおしまい。
 
#余談だが、いたぶって殺して、そのあとまたいたぶるという吐き気のするような楽しみ方が
#世の中にあることを、『このときはまだ』お蘭は知らなかった。
 
 そうしないところに、付け入る隙があるとお蘭は考えた。
 そこで。
 お蘭は、至極勝手に振る舞うことにした。
 やれ腹が減った、水浴びをしたい、肩をもめ……
 その度にたしなめられて、ふくれっ面をする。
 そういうことを繰り返して、数回の夜を、どうにか無事に過ごしただろうか。
 
 
 さすがに一番年若いらしい男(ヨロイ狩りのように見える)がお蘭のワガママぶりに、切れた。
 お蘭にしてみれば、この一番若い男が、一番ワガママが言いやすかった。自分とさほど歳も変わらないし、どうやら元の育ちがいいらしく、やけに素直なところがある。こう言うのが、一番からかって面白い。
「ほら、さっさと汲んできてよ」
 先ほど、お蘭は、その若い男――貫影に、手水を汲んでこいと言ったのだ。
 汲んできて欲しい、ではない。
 その言葉に、さすがに貫影、切れたのだ。今までよく耐えたとも言える。
「だいたい、なんで毎回毎回俺がお前の手水を汲んでこなきゃいけないんだ!」
「このか弱くて儚い美少女陰陽師のあたしが、自分で水汲みなんてできるはずないじゃない」
 まあ、たしかに。水汲みという重労働が、お蘭に出来るようには見えなかった。
 とはいえそれならそれで、言い方というものがある。
 なので、貫影は、言い返した。
 それも、かなり痛烈に。
「じゃあ、式にやらせればいいだろ? 陰陽師なんだし。それとも、そのくらいの式も作れないのか?」
 
「うぐっ」
 
 お蘭は言葉に詰まった。
 たしかに、その通り。
 式を使役すればよい。
 よいのだが……
 実はお蘭、水汲みに使えるような、汎用性のある式を打つのが、苦手だった。
 式を打つには、その式の姿形を、具(つぶさ)に脳裏に描く必要がある。姿の認識に曖昧なところがあれば、その式は具象しない。
 どうもお蘭は、そういう部分が、上手くない。爆裂式のように、刹那の存在のものであればいいが、安定性を旨とする式は、どこか曖昧さが残るものになってしまうのだ。
 しかし。
 
「いっ、いいわよ。見て腰ぬかすンじゃないわよッ!」
 
 お蘭は、式を打った。
 負けず嫌いなのである。
 
 二足歩行、一対の手を持った、人間型の式を打つ。そこそこの筋力と敏捷さを持っておれば、水汲みには使える。ついでに貫影をごちんと殴ることが出来れば、気分もすっきりするだろう。
 まあ、そこまではよかった。
 だが、そのあとがいけない。
 大きさの認識が、甘かったのである。
 
 
 でかすぎた。
 
 
 陰陽師 お蘭、風前の灯火(洞がくずれるってば)
2002年02月13日:23時31分10秒
口は災いの / Djinny
 先輩が呟いている頃。
 既に洞窟の中では、後輩たちが言い合いを始めていた。
「俺は、小間使いじゃねえっ!」
 貫影は吠えた。手には、水を汲んで来いと押し付けられた手桶を持っている。
 彼本人としては、傭兵稼業に身を落としてからは、大抵のプライドは捨てたつもりだった。足軽まがいに隊伍を組んで戦ったこともあったし、人の使い走りもやらされたこともあった。彼はそれに耐えてきた。全ては強くなるためだと自分にいいきかせてきたからだ。
 もっとも、実際にはそのストレスをバネにして体と技を鍛え、ヨロイを憎むことでアイデンティティを維持してきたのだから、その忍耐はある意味で非常に暗い情熱の賜物だったとも言える。
 ともあれ、自分では忍耐強いと思っていた貫影だったのが、目的と直結しないことには、その忍耐も働かなかった。
 「だいたい、なんで毎回毎回俺がお前の手水を汲んでこなきゃいけないんだ!」
 貫影は顔を赤くして怒鳴った。
 手水桶を押し付けたお蘭のほうは、済ました顔だった。
 「このか弱くて儚い美少女陰陽師のあたしが、自分で水汲みなんてできるはずないじゃない」
 確かに、女の手には少々重い荷物には違いなかった。そのうえ、足場もよくない。井戸から汲んでくるようなわけにはいかなかった。
 もっとも貫影には貫彰の言い分があった。
 「じゃあ、式にやらせればいいだろ? 陰陽師なんだし。それとも、そのくらいの式も作れないのか?」
 後ろに何気なく付け足した一言が、貫彰に大きな災いを呼ぶことになるのだが、この時点では彼は勿論そんなことに気づきもしなかった。
2002年02月06日:00時14分03秒
場面転換 / 月夢
「まいたか?」
 伊達や酔狂で機人化してるわけではない、早々見落とす事もないとは思うが、
「・・・・油断はできねぇか」
 その目のいいはずの機人がいくらも戦場で倒れている現実を知っている、奇襲を受けたり、見落とし たり、目が良くなることと実際にそれを使いこなせることは別だ。
「手柄ほしさに隊を離れた三下連中どもなら見落とすとも思えねえが・・・・・あのちんまいのの価値次第 ってとこか」
 戦は負けた、だがそれはあくまでも一つの戦場での結果にすぎない、全体から見ればまだ決着はつ いておらず、国も落ちていない、戦争がこのままどう転ぶかはわからないが、少なくともまだ続いてい る。
 そのなかで敗軍の軍師を追うために兵を裂くかどうか、
「戦が続いてる、落ち武者狩りみたいに兵を散らすことはない、傭兵たちも戦が続いてるなら勝手に抜 け出せないだろうし、もしやるなら少数精鋭・・・かほっとかれるかどっちかだろうな」
 つまりは軍師を排除する必要があるかどうか。
「あのちんまいの見てる限りいらん心配な気がするが」
 失礼な評価を下すと、なかで騒いでるような若もの3人のいる方をうんざりした目で見る。
「追われようが追われまいが、ここにいると面倒なことに巻き込まれる気がするな、とっとと逃げるべきだろうなあ」
 しみじみと呟く、人生の先輩だった。
2002年02月01日:20時59分33秒
願え、獲らぬ狸の皮算用! / 李
「あたしは、才田白雲斎の娘、蘭。あなたは?」
 暴れて、暴言を吐いていた娘が急におとなしくなった上に、名乗りをあげた。
 察するに、今の自分の状態を把握したのだろう。
 噂に間違いがなければ、やはりこの娘、相当のしたたかさを持ってると考えたほうがよい・・・。
 
 「おう、やはりそうだったか!」
 この娘は金になる。
 このでかい刀も金になるから、しばらくは遊んで暮らせるに違いない。
 いや、贅沢しなければ一生、遊んで暮らせるかもしれない・・。
 「俺の名前は、飛燕。なに心配するな。才田白雲斎様の娘さんだろ?
 悪いようにはしねぇよ。」
 俺自身にとってな、心の中でそっと付け加える。
 
 快足飛ばしてしゃべりながら、全然呼吸が乱れてない。
 性格はともかく、身体能力は高そうだ。
 格好は、泥にまみれているが服装は、傭兵のそれでもないし、何のために戦場にいたのかも怪しい服装ではある。
 見たところ、武家のようにも見え、単なる遊び人にも見える・・・。
 背後から、先ほど気絶していた男がおっかけてきているようだ。
 まぁ、それはほっといて、問題は敗残兵狩りである。
 おいしい得物を獲られてはたまらない・・・。
 とりあえず、この付近で最近根城にしている洞窟にでも連れて行くか・・・。
 本物かどうか確かめないといけないしな。
 それに、泥も落さねばこの娘の相手も食指が動かぬだろう・・・。
 
 「おい、後ろの奴、敗残兵狩りにつかまりたくなかったら、しっかりついてこいよぉ!」
 そして、ますます走る速度を速めた。
2002年02月01日:20時28分57秒
走れ走れ / Djinny
 ぐいと喉元を引かれる感覚があって、貫影は意識を取り戻した。
 苛め抜いて体を大きくしたとはいえ、その割に体重のある方ではないのだが、流石にそういう体勢になると息が苦しい。
「なっ! や、やめろ!」
 わけもわからず、じたばたと手足をばたつかせると、急に引っ張る力が失せた。
「え……」
 仰向きに倒れる上半身をとっさに支え、その勢いでぐるっと体を入れ替える。
 起き上がりざまに状況を確認した。……刀がない。向こうに、さっきの娘が武士らしい男に抱え上げられていて、目の前にはさっきのサムライがいた。
「何のつもりだ!」
 自分の状況も飲み込めず、貫影は目の前の恩人を怒鳴りつけた。
 恩人は呆れ顔で彼をまじまじと眺めたが、すぐに、遠ざかっていく武士の方を指差して見せた。
「お前の大事なモノが持ってかれちまうぞ。ぐずぐずしているなら、走ったほうがいい」
 そういいながら、男は、自分も武士を追って走り出した。
「え……?」
 貫影は、それで漸く、武士がもう一方の手に持っているものに気づいた。
 貫影は無言で駆け出した。体が痛んだが、そんなことには構っていられない。たちまち、力を抜いた風に走っている男を追い抜いた。
 あそこで爆発に巻き込まれてなければ。チッ、あんなガキの陰陽師、軍師の役もつとめられないくせに式だけは残してやがって……

───まてよ。


 足をゆるめ、振り返る。男は相変わらず、どこか急がずに走っていた。貫影は男に並び、走りながら大声で聞いた。
「あんた……なんで俺なんかを助けたんだ?」
 男は迷惑そうに言った。
「あいつの提案でな」
「あいつ? あんたら、あの軍師のガキの護衛か何かだったのか?」
 貫影の言葉に、男は何か言おうとして……溜息をつき、おそらく最初に言おうとしたのとは別なことを言った。
「無駄なことを考える時間があったらとりあえず走れ。あいつの足は速そうだぞ」
 貫影は無言で頷き、前を向いた。とにかく、今は走って追いつくことが先決のようだ。
2002年01月31日:00時25分54秒
昏い出会いの始まりは。 / みだれかわ枕
「はーっ、はーっ……」
 お蘭の吐息は、絶え絶えだった。
 かろうじて式は発動したものの、どうやら外してしまったらしい。
 もはや、自分には霊力が残っていない。
 足をくじいたので、走ることもままならない。
 あとはもう、ここにいる男たちに、いろいろされるだけだ。
 そう思うと、涙が出てきた。
 そもそもこの戦、勝てる戦だった。
 自分が立てた策の通り、一旦前線を後退させていれば、間違いなく勝てたのに。
 あの下品な男たちのせいで、自分は泥まみれになって。
 とにかく、涙が出てきた。
 
 だが、感傷に浸る暇はなかった。
 
 自分を抱えた男が、猛然と走り出したからである。
「ま、待てこらッ!」
 じたばたするが、力が強すぎて、ふりほどけない。
 それどころか、裾が捲れて、尻まで露わになったのに気がついて、手で押さえるのが精一杯。
「こらッ、放しなさいよッ! 放せってばっ! こらーっ!」
 騒ぎ立てるが、放してもらえるはずがない。
 そして、お蘭もようやく気がついた。というか、思い出した。
 ここは、まだ戦場だ。
 多分、さっきの自分の式を見て、誰かが寄ってくるだろう。
 その誰かは、はたして味方だろうか?
 そんなはずはない。味方はあらかた、死ぬか逃げるか裏切るか、している。
 だとすれば。
 お蘭は父の教えを懸命に思いかえした。
 利用できるものは、極限まで利用しろ。
 
「あたしは、才田白雲斎の娘、蘭。あなたは?」
 
 自分の素性を素直に言ったのは、かなりの賭けだった。
 
 
 陰陽師お蘭、風前の灯火。
2002年01月29日:01時07分58秒
荷物 / 月夢
 言いたいことを言うと最後に登場した男が走り出す。軍師と八連斬甲刀、金目のものをしっかり抱えたあたりは見事というしかない。
「おい!」
 慌てて呼びかけるが、当然返事は返ってこない、聞こえてないのか、聞こえてない振りなのかわからないが全力でかけていく。
「野郎を抱える趣味はねえぞ」
 とことん正直な事を呟くと、泥まみれで倒れている若い男・・・・なんだか助けがいのなさそうな相手を見る。
「勝手に自爆してほったらかされてたらざまないな」
 やれやれという感じでため息をつくと、何とも複雑な表情で倒れている相手を見る。いまいち状況は把握できないが、わかるのはあの少女を助けようとつっこんできたことと、あの少女がなにかを知らなかったんだろうと言うこと。
(馬鹿だな・・・)
 知っていてもこの状況下でつっこむのは得策とは言えない、意図していなかったにしろ先ほど千里がやったように人質に取られて終わる、ましてや見知らぬ少女のために、しかも刀を止めるなんて、
「ただの馬鹿だな」
 そう判断できるぐらいに年を食い、現実を知ったからこそ複雑な表情で倒れてる相手を見る。
「この場で助かっても長くないだろうな、こういうやつは」
 襟首を掴むと半分引きずるようにして駆け出す、宣言通り抱えて運ぶ気はないようである。
「それもこいつの運次第だ、そこまで俺が気にするこっちゃない。この場で捨てて後でどうこう言われるより、あのちんまいののせいなんだから押しつけてとんずらさしてもらうとしよう」
 
 
 
 ということで引きずって退場モード、あとはお嬢しめの台詞をくださいませ(笑)。
2002年01月26日:22時41分41秒
逃げろ、明日の勝利のために! / 李
遊歴 飛燕の一人称
 その時、何が起こったのか?
 それを把握できた人間は、傍から見ていた機人だけだっただろう。
 俺の刀は、空を切って、地面に激突。
 それと同時に、爆音が聞こえ、目の前が真っ暗になった・・・。
 
 気を失ったわけではない。
 泥が飛び散って顔にかかったのだ。ついでに服にも。
 少しの間、刀を振り下ろしていた姿のまま、固まっていたのだと思う。
 俺は、ゆっくりと・・・刀を引き上げ、刀の汚れを懐紙でふき取り、刀をさやに収めた。
 チン!涼やかな金属音が耳に入ってきた。
 
 三人称
 泥の中に間抜けが3匹。
 一人は、でかい刀をぬいたまま泥の中で横たわり、
 一人は、泥にまみれて座り込み、肩で息をし、
 一人は、まるで何事もなかったかのように平静に刀を納める。
 普段はそこそこ絵にはなる図ではあるのだろう、だが泥まみれの状態では間抜けを通り過ぎて、馬鹿っぽくすらある。
 
 そばの機人が逡巡の後、三人に声をかける。
 男が言わないでも、こちらに向かって足音だの、話し声だのが向かってくるなら、逃げざるを得ないだろう。
 
 泥まみれの男は少し考えた末に(泥で表情はよく分からないが)
 「じゃ、おまえ。こいつ持て。」
 いきなり命令口調で、そばに横たわっている男を指差す。
 「俺は、この娘を拾う。逆でもいいぞ、一応選択はさせてやる。
 時間がなさそうだがな。」
 すばやい動きででかい刀を背中に背負い、泥まみれの少女を抱き上げる。
 
 「とりあえず、逃げるぞ。こっちから来るのが味方だというなら止めないが、
 違うんだろう?」
 少女の反応を気にも止めず、一目散に走りだした。
2002年01月24日:00時33分55秒
危険感知 / 月夢
 どんっ、腹の底に響くような鈍い音、遠ざかろうとしていた足を思わず止める。振り向く先の光景に唖然とする。
「こいつら・・・」
 馬鹿か?口に出すまでもなく言葉があきれて消える。状況をどこまで把握しているのか、どれだけやばいのかがわかっているのか、剛胆なのか無知なのか、それともそのほかの何かなのか、全部ひっくるめたものか、とにかく言えることはこんな騒ぎを起こしたら命取りになりかねないと言うこと。
(戦のただ中ならともかく、終わった後にでかい音立てて見逃してくれるなんて思ってるのか?)
 ほとんど意識せずに測死眼を起動させて、舌打ちする。
「ちっ・・」
 人影、味方の可能性は限りなく薄い、元味方なら可能性はあるが。
(やれるか?・・・・・無意味だな)
 手柄争いとなれば味方にまず連絡などと殊勝なことはしていないだろう、だがこの近くに他に誰もいないというのは考えられない、余計なことに時間を食って人が集まるより先にとっとと逃げるのが吉。
(俺には関係ないしな・・こいつらの問題だ)
 ざっと見た感じ三人とも仲間という感じはしないが、だからといって面倒見てやる必要性はない、
(・・・・ないはずだ、戦は負けた、こいつはもう戦じゃねぇ、一方的な狩りだ、なら俺の仕事は終わってる)
 とにかく自分に言い聞かせて決める。
(ま、一言忠告してやれば、感謝はされても恨まれる筋はないはずだ)
 相変わらず言い訳がましく決めると、どんどん薄汚れていく陰陽師に声をかける。
「おい、そこのちんまいの、お前が本物の軍師かどうか知らないが今ので完全に注目集めたぞ」
 それから倒れているのと、新しくやってきたの、奇しくも似たような登場の仕方をした二人を交互に見て、
「こいつらのどっちがお前の部下か護衛か愛人かしらんが、連れて逃げてもらうんだな、そっちの寝てるやつは起こすんならとっとと起こした方がいいぞ、ほっとけば二度と目覚めなくなる。 曲がりなりにもなんだかよくわからんが助けようと意図してたような節も見えないことはないだろうし、捨てとくと目覚め悪かろう、そっちの起きてる方も似たようなことしてたからそっちが本命でこっちは始末する予定だというならとめんが」
2002年01月23日:00時06分36秒
瞬転 / Djinny
 ───やわらかいな……
 と思う間もなく、貫影の視界はお蘭の式札で阻まれた。 そのまま、殴りつけるような勢いで、ぐいっと力任せに押し付けられる。それでやっと、貫影は我に返った。
 「ちぃっ!」
 札は多分爆裂式かなにか……とにかく剣呑なシロモノだ。とりあえず、のけぞるようにしてそれを避け……
 その刹那、ざばぁっ、という音がして、刀を振り下ろした一人の男が二人の間に割って入った。
 その刀が地面に付くかつかないかのところで、足元の泥沼が盛大に爆発した。
 のけぞっていた貫影の視界は、それがなんなのかを彼が理解する前に曇天に向き、そして、後頭部に衝撃が走ると共に、今度は跳ね上がった泥で埋まり……そして、暗くなっていった。
 
 ───畜生……なんてこった……
 
 失神する前に彼が最後に認識したのは、視界の端でこちらを呆れたように振り返っている、さっきのサムライの姿だった。
2002年01月22日:23時45分10秒
刹那の出来事 / みだれかわ枕
「くたばれッXXXXXX!」
 なんと言ったのか、いまいち聞き取れないくらいに激高した声で、お蘭は式札を突き出した。
 手のひらの『むにゅ♪』とした感触で惚けた表情になっている貫影の額に、思いっきり貼り付ける。
 首の骨を外すつもりとしか思えない勢いである。
 
 その勢いで、お蘭は貫影を仰向けに押し倒した。
 さっきまで貫影の首があったあたりを、すさまじい勢いで刀が通過する。
 式札が、押し倒された貫影の額から、汗やら雨やらで滑った。
 刀が泥沼に衝突。
 お蘭の手(式札を持っている方)が、そのまま複雑な印を結ぶ。
 額から滑った札は……泥沼の中にあった。
 
 きゅごぅんっ!
 
 泥沼が、火山になった。
 少なくとも、その場にいた4人には、そう見えた。
 
 
 陰陽師 お蘭、風前の灯火。
2002年01月15日:20時54分46秒
つかめ、未来の生活費用 / 李
「おらんちゃんさま・・・?」
 かすかな記憶の糸をたどってみるに、才田白雲斎という男の娘が、
 楚々とした美少女兵学に明るく天才的な陰陽師だと聞いたことがある。
 その名前がお蘭だったと思うが・・・?
 じっと見る。
 どこかの田舎料理のように、まさに葉っぱに包まれて蒸し焼き寸前のような少女・・・。
 「・・・人違い・・?いや、同姓同名の別人・・?」
 観察を続けるに、機械の男は無責任に少女をほっぽりだし、
 でかい刀を持ったほうは、口ではいやいや言いながら、体をしっかり抱き寄せている・・・。
 「痴話げんか・・?修羅場???」
 怒らせた婚約者を追ってやってきたヨロイ狩り、だが、娘の方はあえて男の気を引くために、別の男と仲良い様を見せつける・・・。
 それは変だろう、俺
 バカを考えてるうちに、少女が大福帳からなにかをとりだす。
 自分の記憶に間違い(含む少々の聞き違え)がなければ、
 あれは式札というものであろう。
 見れば少女も結構疲弊している。
 だが、ヨロイ狩りのほうが先に気づいたらしい。
 うらやましくも、少女の胸を大胆にもみながら(嘘)・・・間抜け面をさらしていた、大口を空けて。
 
 これで決定、少女はカモで、男は敵だ!っていうか、競争相手だ、ライバルだ!
 冗談ではない、せっかく生活費用が見つかったてぇのに、
 鳶に油揚げさらわれるような真似されてたまるか!
 
 俺は、気がつくと茂みから飛び出し、刀に手を掛けて男の頭を狙って峰打ちかまそうとしていた・・・。
 
 遊歴 飛燕 誤解と思い込みと下心で助太刀参上!
2002年01月15日:12時16分41秒
注意一秒…… / Djinny
 腕の中の柔らかい厄介者が、唐突に殺気をはなった。
 「え?」
 はっとして、いつのまにか胸に抱き寄せる形になっていたお蘭を覗き込む。みだれた彼女の髪が目の前に流れ、焚き染めていた香の匂いがふわりと鼻をくすぐった。
 「あ……」
 そのときになって初めて、彼は自分と彼女の体勢をはっきりと認識した。

 ───こ、これじゃあ、まるで嫌がる女を手篭めにしようとしてるみたいじゃないかっ!


 殺気のことは頭の中から消えうせていた。
 彼はとにかく急いで彼女を離そうとした。慌てた手がなにか柔らかいものを掴んだが、娘がばたばたするので、構わずそのままぐいっと引き離す。
 腕が伸ばせるくらいまで引き離したところで、やっと、彼女の体を見る余裕ができた。
 泥にまみれた金色の髪、色白な顔と青い大きな瞳、そして……
 「あ」
 大口を開けた彼の視線の先には、彼女の胸をしっかりと掴んでいる自分の手があった。
 一瞬動きを止めた彼の目の前に、お蘭が腰の大福帳からはがした式札がスローモーションのように迫ってきた。
2002年01月12日:23時39分54秒
やられる前にやれ。 / みだれかわ枕
 ぽいっ。
 
 あえて擬音で表現するとしたら、そんな感じで、お蘭は投げ渡された。
 反射的に貫影が受け取る。
 極めて無造作に。
 抱きかかえるように。
 
 むにっ♪
 
 またも擬音で表現するなら、そんな感じで、お蘭は抱きかかえられた。
 むにむにしているのは、お蘭の方である。
 凸凹がないとか言われたが、それでも年頃の娘である。それなりの質感は備えているのだ。
 その質感を備えているのは、当然ながら胸とか尻のあたりであって……(腹とか腰とかはあまり質感がない)
 そういうところを触られることになれていないお蘭は、ひどく狼狽した。
「何処触ってんのよッ、このヴァカッ! 助平ッ! 色魔ッ!」
 じたばたと手足を動かして、ふりほどこうとする。
 ところが、そうしようとすればするほど、男の腕に力が入り、ふりほどけなくなる。
 そして、事ここに至って、お蘭は気がついた。
 この男(少年と言っても良い年頃だ)は、敵方のヨロイ狩りなのだ。おそらく自分は姫君と間違えられ、このまま敵の大将のところまで連れて行かれるのだ。そして身体の隅々まで検分され……これ以上は考えたくないッ!
 いくつか大きな間違いはあるものの、お蘭がそのことに気がつくのは、随分先のことである。
 とにかく。
 ヤられる前に、ヤるしかない。
 お蘭は腰の大福帳に手を伸ばし、綴られている札のうち、一枚をひっぺがした。
 あらかじめ仕込んでおいた、爆裂する式である。張り付けた相手を木っ端みじんにする。
 式を発動させられるだけの霊力が残っているかどうか、ギリギリのところだが……
 
 
 陰陽師 お蘭、風前の灯火
2002年01月12日:12時08分14秒
当惑 / Djinny

「うく……いて……」
 うめいて起き上がろうとしかけた耳に、娘の声が飛びこんできた。
「な……に……?」
 名乗ったときの親の名前に、聞き覚えがあった。痛む身体でどうにか立ちあがろうとしながら記憶を呼び覚まそうとする。確か……
「ちくしょう、ヨロイ乗りなんかじゃないっ、こいつは……」
 と、その腕の中に、いきなり暖かくて柔らかいものが押しつけられた。反射的に、彼はそれをしっかりと抱きかかえた。
「え、え?」
 腕の中を見る。手足をばたつかせているさっきの娘が居た。
 事態が飲みこめずに慌てて視線を左右に走らせると、慌てて逃げようとする男の姿があった。
 自分は関係ないから、という意味の内容を大声で言っているようだが、ひどく焦っているのかものすごい早口で、よく聞き取れない。しかも腕の中の娘はなにやらばたばたと暴れている。

 

「ち、違う! 俺だってこいつのことなんか知るもんか!」

 

 彼は焦って叫んだが、男はもう背中を向けていた。

 

「ち、ちょっと待てよ! 違うって!」

 娘が暴れるので腕に力を入れながら、彼は大声を張り上げた。


2002年01月11日:23時56分04秒
逃げ腰(掛け合い0002) / 月夢
「美少女?」
 上から下までじっくり見て、
「ふむ・・・・凹凸がないから確かに少女だな」
 失礼なやつである、が、そんなことはともかく。
「陰陽師?」
 何かが記憶に引っかかる・・・そうあれはいつだ、確か傭兵の誰かが陣幕に覗きに行ったとか何とか、あれは確か・・・
「確か、軍師が来てるとか何とかで・・・『女』『陰陽師』『軍師』とくればぐっとくるような良い女だと相場が決まってるからいったら、なんだか奇妙な格好をしたちんまいのが鎮座ましましていた・・・とか・・・・・お前か!!」
 傭兵の品なぞそんなもの、とそれもともかく。
「ちょっと・・待て・・お前が軍師か・・」
 千里の顔が目に見えて青ざめる、人助けなど趣味ではないが拾ってしまったからには適度なところで放り出してこようとは思っていたが、それはあくまでも大した相手じゃないと思っていたからである。
(よりによって賞金掛かった首だと・・生肉抱えて飢えた野犬の群につっこむようなもんだぞ、冗談じゃねえ)
 何度か出くわしたことのある戦場でのやばい局面と同じ嫌な汗が背を伝うのを感じる、絶対にまずいと本能がささやく、とにかくこの場を一刻も早く立ち去るしかない。
 その前に持ち上げてしまった荷物をどうするか、そこでふと気づく、
(そうか、こいつは護衛か)
 自分に都合の良いかってな解釈をすると先ほどのことなぞ忘れ、倒れてる男に向かって娘を投げ渡す。
「受け取れ!いいか確かに返したぞ、これで俺は無関係だからな」
 そんなことを決めるのは相手の問題だが、それで多少なりとも厄が抜けると思ったのか宣言する。
(とにかく後は一刻も早くここを離れるんだ、少しでも遠くに)
2002年01月11日:01時04分50秒
名乗る。 / みだれかわ枕
 猫のように、首根っこを捕まれたような感触。
 まず最初に思ったのは
(アタシは猫じゃない!)
 次に思ったのは
(とっとと放しなさいよッ!)
 そして最後に
 何か考える前に、振り回された。
「ななな、ななっ!?」
 視界の隅に、なにやら大きな刀を振り回す男が、見えたような。
 視界がぐるりと回り、もう片方の視界の隅に、別の男が見えて。
 そして、あとはもう、視界は泥だらけになった。
 
 ばしゃあッ
 
 八連斬甲刀の男が巻き上げた泥が、すでに泥まみれになっていたお蘭の全身を、さらに厚塗りにする。
 蓮の葉で包んだ鶏肉を泥団子の中に入れて蒸し焼きにする料理が、とある地方にあるのだが、大体あんな感じだったなと、後にお蘭は回想する。
 今はそれどころではない。
 
「な……なにしやがんのよ、この美少女陰陽師、お蘭ちゃんさまに!」
 泥を口から撒き散らしつつ叫んでから、慌てて口を閉じた。
 才田白雲斎の娘が、軍師をしていたというのは、割と有名だったような。
 名乗ってどうする……!?
 
 
 陰陽師 お蘭、風前の灯火。
2002年01月11日:00時31分37秒
狙え、明日の生活資金! / 李
飛燕(鷹城 十郎太) フルスクラッチ=剣士・武芸者・負け犬・遊歴
 
 因縁
 感情・大切なものの死(初級)
 目的・自由の満喫(中級)
 
 堅苦しい武家社会で育ち、幼少の頃から天才と呼び声が高かった。
 操気術の免許皆伝後、婚約者と祝言を挙げて、ばら色の人生を送る予定であったが、
 祝言前夜、流れ者のサムライに目の前で婚約者を陵辱された上、殺される。
 その時、顔に真一文字の傷をそのサムライに入れられた。
 家はそれが原因でなくなり負け犬人生を送る
 昔の名前を隠し、飛燕と名乗り、
 自分の無力さを痛感しつつも、気ままな人生というものも悪くないと感じており、
 今は自由を謳歌しているが・・・?
 
 戦は終わったらしい。  
 まぁ、どちらが勝とうが知ったことじゃないのだが、
 人間生きるにゃ金がいる。
 ここは手ごろな獲物でも見つけて、お金に換えることにしよう(爽)
  
 幸いな事に近くでなにか荒事が起きてるらしい。
 早速行ってみよう。
 
 でかい刀を持った男が泥の中に倒れている・・。
 その前には、大福帖を持った美少女・・・を吊り下げた機械を埋め込んだ男・・・。
 
 ・・・どっちが敗軍なのだ?
 そばに近づきつつ、様子を見て、隙あらば不意打ちすることにしよう。
2002年01月10日:23時55分19秒
勇者の如く倒れよ / Djinny
 「……!?」
 走りながら、貫影は目を見張った。彼が振りかざした大刀の先にいる男が、信じられない行動に出たからだ。
 男は、盾にするかのように、無造作な素振りで持ち上げた娘をこちらに差し出していた。
 「……っ!」
 貫影はほぞを噛み、自分の速度と刀の質量で生じた慣性をどうにか制御しようとした。が、動き出してしまった刀を止めることはできない。
 彼は、とっさに最後の手段を使った。
 意識的に泥で足をすべらせ……ぎりぎりのところで、刀もろとも、泥濘の中に倒れこんだのだ。
2002年01月09日:23時51分53秒
盾(掛け合い0002) / 月夢
 振りかえる、勢いよくつっこんでくる男、まず最初に思ったのは、
(八連斬甲刀!)
 次に思ったのは、
(こいつ男つきか!!)
 そして最後に、
(だああ、だから人間似合わないことするもんじゃないんだよ!!!)
 だった。
 そんなことを考えながらも、曲がりなりにも戦場で生きてきた人間、体は自然と危険に反応する。
 相手と自分の距離、相手の得物の間合いを目算で計算し、八連斬甲刀を受け止めるために手にしたものを振り上げる。
(・・・・・・・ん?手にしたもの?)
 
  
 おや?(笑)
2002年01月08日:02時37分29秒
敗走、そして誤解(笑) (掛け合い0002) / djinny
 貫影
 アーキタイプ ヨロイ狩り
 
 因縁
 ヨロイへの憎悪 中級
 強さへの憧れ 初級
 
 15〜6歳に見える。体だけは大人なみだが、物言いやしぐさはかなり子供っぽい。
 数年前に滅んだ付近の領主某の次男だったが、敗戦でヨロイは壊された。
 彼は酷く屈辱的な経験をしたあと、現在は牢人として各地の戦場を転々としている。
 この国に戻ってきたのは久方ぶりだったが……。
 
 
 敗走は、雨が降り出してから壊走に変わった。
 元からあまり士気の高くなかった牢人の隊だが、こうなると足が速い。つい今朝まで隊伍を組んでいたはずが、まさに蜘蛛の子を散らすようにちりぢりになっていた。
 彼らのうちで少なからぬ者は、明日からは向こう側の飯を食べることになるのだろう。
 ちゃっかりした者は、もう、手際よく昨日までの味方の首を持って向こう側に行っているかもしれない。
 
 貫影も、そんなちりぢりになった兵の中のひとりだった。
 彼は、あまり要領よいとは言えない足運びで水溜りを避けながら、不釣合いに大きく見える刀を背負って走っていた。
 刀が大きいのは、彼が小柄だからというわけではない。人間の使う刀ではないからだ。 それは、かつて彼が最も愛していたものの形見のようなものでもあったし、同時に、彼が現在それに対して抱いているわだかまりの象徴のようなものでもあった。
 
 もっとも、今のところ、彼は刀に思いを巡らせている暇はなかった。
 敵が迫っている。どこかに行かなければならない。一緒に戦っていた仲間の何人かのように、相手に寝返るという手もあるのだが、それは彼の矜持が許さなかった。
 「……」
 暫く出鱈目に走った後で、彼は周囲を見回した。いつのまにか、本陣のあったあたりまでやってきていた。
 なすすべもなく壊走したのはこちらも同じだったようだ。死体やけが人が辺りに横たわっているだけで、ほとんど人影はなくなっていた。
 「……あのときと……」
 厭な記憶が蘇ってきた。背中の刀が重くなったような気がする。
 
 
 急に重くなった脚をひきずるようにして暫く歩いていくと、唐突に場違いなものが視界に入ってきた。
 
 年端の行かない娘がひとり、泥に顔を突っ込んでもがいていた。戦場ではあまり見ない、きらびやかな着物を着て、長い髪を振り乱して、ありもしない何かに怒りをぶつけるように喚いている。
 「なんだ?」
 思わず声に出してから……そうか、と思う。あれは、ヨロイ乗りだ。
 戦場に居るはずのない娘。きらびやかな着物。そして、妙にそぐわない物腰……
 「勝手に死ね」
 そうつぶやくと、彼は行き過ぎようとした。
  ───オレには関係ない。ヨロイに乗っている奴なんか。
 そう思っているはずなのに、何故か、数歩走ったところで、自然に足が止まってしまった。
 「……見てやるだけからな、あいつがのた打ち回るところ……」
 自分に言い聞かせるようにひとりごちて、振り向く。
 「……!」
 いつのまにか、牢人らしき男が娘を持ち上げていた。
 娘も手足をばたばたさせているが、男は襟首を掴んで軽々と持ち上げてしまっている。
 
 厭な記憶が、今度は鮮明に蘇った。
 ヨロイのり。破壊されたヨロイ。男たち。そして。
 彼の中で何かがつながった。
 「その子を、はなせぇぇぇぇぇ!」
 どこにそんな元気が残っていたのかわからない。気が付けば、貫影は背負っていた刀を抜き放ち、男と娘に向かって駆け出していた。
 
 
 
 というわけで……
 筆遅くてごめんなさい(^^;;
 だいぶストレートにヨロイ狩りな行動にしてしまいました。次回は頑張ります……
 
2002年01月08日:01時01分06秒
落ち武者(掛け合い0002) / 月夢
 キャラ名:千里
 アーキタイプ:機人(p302)
 
「因縁」
 感情:弱さへの共感:中級
 感情:功名心:初級
 
 29才の機人の男、某国の下級武士だったが、初陣の際に家財をつぎ込んで機人化して戦に臨むが見事敗戦。
 一般兵よりはましだが目立った活躍もなく終わってしまい、当然恩賞もなく、家禄ごと一切合切差し押さえられ、身一つで放り出されて傭兵となる。
 座右の銘は「生きれば人生丸儲け」。このまま人生終わってしまうのかなというくすぶりと、下っ端にはどうしようもないなと言うあきらめとが入り交じったまま、ずるずると傭兵を続けている。
 
 
「負け、だな」
 千里はつぶやく、傭兵暮らしは短くはない、勝ちにも負けにもついたことがある。どこをどう見ても立て直しなぞ効くはずもない、なによりもはっきりしてるのは見知ったことのある傭兵連中がとっくに姿をくらましていることだ。
「まあ、仕方ねーか、こっちの方が実入りはいいと思ったんだがなあ」
 負けてしまえば実入りどころの騒ぎではない、地獄の沙汰も金次第とは言うが、もらえない限り払いようもない。
 金の切れ目が縁の切れ目の傭兵家業、国がない変わりに守る義務もない、ましてや首に名誉のかかる一流どころの傭兵でもないかぎり、逃げようなぞいくらでもある。
「死んじまったらそれまでだしな」
 迷いもなく逃亡を決めてどっちに逃げるか当たりを見渡したとき、場違いなものが目に入る。
「あん?」
 子供・・・じたいは多いとは言えないが決して珍しくはない、様々な事情はあるがヨロイ乗りから、金に困ったのまで戦場でも出会う、がまがりなりにも何らかの武器を持った兵士としてくる。
「大福帳で闘う馬鹿はこんな世の中でもいないだろうなあ」
 そうなれば商人である、が前線ぎりぎりまで武器を運ぶ商人はいるが、戦のまっただ中で商品売りつけるやつはさすがにいないと思われる。
「・・・・・つっても商人の考えることなんざわからねーけどな」
 あまり商人に良い感情は持っていない千里としてはやや皮肉にそう考える。
「と、そんな場合じゃねーな」
 はっと我に返ると、改めて当たりを見渡す、とにもかくにも逃げないことには余計なことを考えている暇もない。
「ま、あの嬢ちゃんもここまできたんなら・・・」
 どうにかするだろうと思ったところで、様子が変なことに気づく。危険なことは百も承知しているだろうに、足首をの当たりを押さえ座り込んだまま動かない、いや、動こうと努力の跡は見られる。
(・・・・・・・・・・・・・・・・やばいよな、いや、こっちもひとのこと面倒見てる場合ぢゃねーし、戦場だぞここは、生きてるやつより死んでるやつのほうが多くても不思議のねーとこだ)
 理由を付けるのは簡単だ、一緒に釜の飯を食った仲間だって捨てても仕方のないところだ、死ぬのを覚悟でみんなやってくるのだから。
「・・・・商人にそんな度胸はないだろうけどよ」
 商人には良い感情を持っていないんだ俺は、毒づきながらも気づくと千里は猫でも掴むかのように少女の襟首を後ろから引っ張り上げていた。
「自殺願望でもない限り前線まで商売にくるんじゃねーよ」
 
 傭兵 千里 
 
2002年01月07日:23時21分17秒
再送信 / みだれかわ枕
 お蘭
 アーキタイプ 陰陽師(データの詳細については天羅万象・零ルールブックp299のサンプルキャラクター・陰陽師を参照のこと)
 
 因縁
 知的探求心の充足 中級
 戦への憎しみ 初級
 
 十代中頃の少女。紅毛長髪、碧眼色白。
 何故この年齢で陰陽術を操れるのかは謎。
 極めて勝ち気な言動が多い。
 
 
 
 そこは、敗走戦の真っ只中であった。
 土砂降りの雨の中、兵たちが逃げまどい、囲まれ、屈辱的な死を与えられていた。
 かろうじて逃げおおせた者もいるが、どちらかと言えば、それは少数に過ぎない。
 その、少数に入るかどうかの瀬戸際の人物が、ここにいた。
 
「わぷっ!?」
 思いっきり転んで、少女は水たまりに顔から突っ込んだ。
 もともとは水田だったからであろう、その水たまりは随分とぬかるんでおり、少女はむせながらどうにか這い出した。
「げはっ、ぶほっ……」
 たちまち、涙顔になる。すでに泥まみれなので、いっそ泣いてしまった方がきれいになるかも知れない。
「くそおっ! 才田白雲斉が娘、このあたしが、なんでこんな目に遭わなきゃなんないのよおっ!」
 その白雲斎の娘は、少々……かなり……いや、はっきり言って、場違いな姿をしていた。太股があらわになるような振り袖(変な言葉だが、そうとしか表現できない)、腰からぶら下げた大福帳(本当は呪符を綴ったものなのだが、何故か表紙に大福帳と書いてある)。酔狂な商人の娘といった方が、よさそうな姿だ。
「それもこれも、あのヴァカたちのせいだわ!」
 あのバカたち、とは、つい三刻前まで本陣でのほほんとしていた武将たちのことである。まあ、もうすでに素ッ首かっ斬られている者たちのことである。今更愚痴っても、どうしようもない。
 実はこの娘、その本陣にて軍資の役を仰せつかっていた。つまり、この娘の首をそれなりのところへ持って帰ると、殿様からお褒めにあずかることが出来るのである。
 とはいえ、娘も他人の立身出世のために自分の首を差し出すつもりはないので、こうやって逃げているのだ。先ほどまで大きな鳥のような姿をした式に乗っていたのだが、サムライのぶん投げた丸太が直撃して落とされてしまった。
「ううっ……とにかく、どーにか」
 どうにか逃げよう。
 としたとき、足首に鈍い痛みを感じた。
「いっ!?」
 捻挫である。
 
 
 陰陽師 お蘭、風前の灯火。
2002年01月07日:23時12分59秒
再送信0002 / みだれかわ枕
 お蘭
 アーキタイプ 陰陽師(データの詳細については天羅万象・零ルールブックp299のサンプルキャラクター・陰陽師を参照のこと)
 
 因縁
 知的探求心の充足 中級
 戦への憎しみ 初級
 
 十代中頃の少女。紅毛長髪、碧眼色白。
 何故この年齢で陰陽術を操れるのかは謎。
 極めて勝ち気な言動が多い。
 
 
 
 そこは、敗走戦の真っ只中であった。
 土砂降りの雨の中、兵たちが逃げまどい、囲まれ、屈辱的な死を与えられていた。
 かろうじて逃げおおせた者もいるが、どちらかと言えば、それは少数に過ぎない。
 その、少数に入るかどうかの瀬戸際の人物が、ここにいた。
 
「わぷっ!?」
 思いっきり転んで、少女は水たまりに顔から突っ込んだ。
 もともとは水田だったからであろう、その水たまりは随分とぬかるんでおり、少女はむせながらどうにか這い出した。
「げはっ、ぶほっ……」
 たちまち、涙顔になる。すでに泥まみれなので、いっそ泣いてしまった方がきれいになるかも知れない。
「くそおっ! 才田白雲斉が娘、このあたしが、なんでこんな目に遭わなきゃなんないのよおっ!」
 その白雲斎の娘は、少々……かなり……いや、はっきり言って、場違いな姿をしていた。太股があらわになるような振り袖(変な言葉だが、そうとしか表現できない)、腰からぶら下げた大福帳(本当は呪符を綴ったものなのだが、何故か表紙に大福帳と書いてある)。酔狂な商人の娘といった方が、よさそうな姿だ。
「それもこれも、あのヴァカたちのせいだわ!」
 あのバカたち、とは、つい三刻前まで本陣でのほほんとしていた武将たちのことである。まあ、もうすでに素ッ首かっ斬られている者たちのことである。今更愚痴っても、どうしようもない。
 実はこの娘、その本陣にて軍資の役を仰せつかっていた。つまり、この娘の首をそれなりのところへ持って帰ると、殿様からお褒めにあずかることが出来るのである。
 とはいえ、娘も他人の立身出世のために自分の首を差し出すつもりはないので、こうやって逃げているのだ。先ほどまで大きな鳥のような姿をした式に乗っていたのだが、サムライのぶん投げた丸太が直撃して落とされてしまった。
「ううっ……とにかく、どーにか」
 どうにか逃げよう。
 としたとき、足首に鈍い痛みを感じた。
「いっ!?」
 捻挫である。
 
 
 陰陽師 お蘭、風前の灯火。

(sf:途中で切れてるほうを重複削除)


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