天羅万象掛け合い:世紀末東京編 LOG 001

天羅万象掛け合い:単発Aの1998年09月24日から1998年10月22日までのログです。


98年10月22日:16時10分11秒
プレ編完結 / タイガ
 長らく御待たせしました
 ようやくプレストーリーが完結しました。
 さぁ! 思う存分書き込んでください(^^)!!
98年10月22日:16時08分18秒
それぞれの『良心』(後編) / タイガ
 「ま、立ち話もなんやし、お茶でも出したって?」
 後の台詞は、光に向けて言ったものだ。
 「あ、そうですね。もうしわけありません」
 「ありがとう、でもできればお茶よりも冷たい水の方が良いのだけど頼めるかしら?」
 「はーい、わかりました」
 そう言って、冷蔵庫から氷を取り出す。
 落ち着いた所であずまっちが話しはじめる。
 「難しい話しはよぉ分からんけど、神仏っちゅうもんは、心ん中に宿っとるもんやと思うで。
 やから人によって見え方も違うし、一見矛盾したことも起こす。
 けどそれを否定するんは、自分の中の良心を否定することや、ちゅう具合にわいは解釈しとるで」
 「あなたの言うとおりだわ。人が求めている神は人の心の中にあるもの」
 「お待たせしました。なんのお構いも出来ませんがごゆっくり」
 お盆から手際よく、冷茶と羊羹を出す。
 「いいえ、十分以上のおもてなしをしてもらっているわ
  あなたの背を幸運の風が支えますように」
 「いただこう」
 それぞれに冷茶と羊羹が行きわたってからGILTHYはきりだした。
 「遅すぎる?『彼ら』や『私たち』ならばこの大地に残る者はたった一つでも問題ないわ。
 滅ぶも栄えるも彼らの選択であるべきだわ」
 「しかし、我らにも「答えを選ぶ権利」はある。君の一族ならそう答えるだろう」
 「そうね、あなた方の心に宿る 定理と公式により構成される答えを 自らの行動により証明する権利はすべての者にあるわ」
 苦虫をかみつぶしたような声で言う。
 「言わせてもらうが、俺にはあんたのいう『主』がほんとうに百年王国とやらを創るつもりが有るのかどうか疑わしいね。
 極端な話これがほんとに『主の御業』とやらだと、確認できてるのか? ほんとうはその対立者の成した偽りじゃないのか?」
 「この街の惨状は確かに主の御業のみではない。だからこそ、我らは急ぐのだ」
 「何を急ぐ?」
 「この地に、あるべき人の営みを取り戻すこと」
 「まぁまぁ、お茶を飲んで落ち着きや」
 「……そうだな」
 ずずずっと音を立ててお茶をすするあずまっち。
 「あ〜うまい。こういう美味しいお茶を飲めるんも、いくつかの幸運とちょっとした努力のおかげやろ。
  何も難しいことあらへん。それを当たり前やと思うたら、人は幸福を見失ってしまう。
  せやから神仏に感謝する必要はないんかも知れんけど、感謝することはやめん方がええちゅうことや」
 「お茶には感情を沈める効果があるものね。
  本来なら私たちはでてくるべきではないのよ」
 苦笑を浮かべる。
 「人は幸福になりすぎると……本当の不幸を忘れるのは確かね。人は世界に生かされていることを知るべきなのは確かなのだし」
 「んな、真面目に返されると照れくさいやん」
 「私は嘘は嫌いなのよ」
 「あの、ボ……わたし、お茶を煎れるくらいしか出来ないけど、わたしが煎れたお茶をのんでくれる人がいる……
  それだけで、嬉しいんです」
 「小さな幸せをきちんとみつけているのね。羨ましいわ」
 
 「おまえは優しいのだな」
 ふいに零真が言う。
 「そんな事を言われたのは始めてだな。どうしてそう思う?」
 「この地に住んでいたもののことを案じてあんな事を言ったのだろう?」
 「それはどうかな?これからの自分の事しか考えていないのかもしれないぞ。
 死んだものたちと自分とが大して違わないようにしか思えないからな」
 「だが、自分を通じて死んだ者達を見ている、とも言える」
 「…………」
 
 「あ、あれ? なんで涙が出てくるんだろう? あったかくって……、懐かしくって……」
 「どうした?」
 零真が急に泣き出した光にハンカチを渡す。
 「あ、ありがとう、零真さん」
 ハンカチを受け取り、涙を拭きながら。
 「零真さん、やさしいんですね」
 「面と向かっていわれると照れるものだな
  (先ほど人形といったことは訂正させてもらおう……) 」
 「涙は流せるときに流すものよ...涙を忘れてしまったものたちもいるのですから」
 GILTHYがそう言って寂しげに笑う。
 「(だから、『教えた』でしょう。今のありように心を奪われていては真理を見ることは難しいと。
  あなたの導く答えを私は楽しみにしていますよ)」
 心の声で、零真に語り掛ける。
 「ううん、零真さん、やさしいです。なのに、なんでそんなことをするんですか?」
 「優しさが即ち救いとなるとは限らないからよ。目を見開いて今をみなさい。過去にのみとらわれては今はいきぬけないわよ」
 「信じているからだよ。すべては主の、そして生きとし生けるものすべての為になると信じているから」
 「罪は消えることはないのに……」
 独り言のように言うGILTHY。
 「ボクは信じてます。優しさが全てのためになるって」
 「ありがとう」
 微笑を浮かべて、礼を言う零真。
 「2人とも言っとることは違っとらん様な気はするなぁ。『なんも考えん』優しさはそん人のためにならへんし……、
 本当に考えた優しさなら、例えその瞬間は傷つけることになっても、最終的に相手のためになるやろうし」
 
 「ふむ。これなら『柱』は大丈夫だろう」
 一人ごちる零真。
 「ぱ……レイマ。御爺様と話をしたのでしょう。時をみなさい!!」
 慌てるGILTHY。
 「いずれ、時がくればわかることだ。それまで彼らにはわからぬことだろう」
 「それでも、少なくとも今はそのときではないわ。それに……
 一度発してしまった言葉は返ることができないのよ」
 「……柱とは何の事だ?」
 とらちゃんが尋ね、
 「<柱>?……人柱、か?」
 あずまっちが呟く。
 「いずれわかる。否応なくな」
 「今教えるつもりはないか」
 「そういう事だ」
 
 「まぁともかく、反発とかするよか、あんまり気にせんと自分の心の良心に従えばええんや。
  『聖書』や『経典』やかて結局は人の良心の産物なんやし」
 「そうかもしれないが、どうもこういう考え方は気にくわない。全てを『主』や『敵』の仕業にしてしまうような考え方は……
  人の良心と自分の良心が一致するとは限らない。良心が誰かを傷つける事も有るんだから……」
 「それでも、や。良心いうもんは、そん人の持つ心の物差しなんや。良心をないがしろにしたら自分の位置が掴めん様になるで」
 「俺は……俺の良心をないがしろにするつもりはないよ……」
 「ならええやん。相手の良心にまで踏み入る必要はないで」
 「……そうだな。だが、俺は何か恐いんだよ。何か解らないが、どうしようもなく……」
98年10月22日:16時06分40秒
それぞれの『良心』(前編) / タイガ
 「ほう、あれが『柱』か。確かに強い魔力を持っている」
 彼女は唯を見ながら呟いた。
 「……『柱』以外にも、なにかいるな」
 「困りますな。今はまだ手を出していただいては。あれは私が見守りし秘宝。
  彼らの答えを私は未だみていないのですから」
 NIGHTが彼女……零真ににっこりと微笑みながら声を掛ける。
 「ふっ。私の役目は『主が望む答えに柱を導くこと』。殺すような無粋は真似はしない」
 「彼ら自身が導き出した答えであることを祈っておりましょう。唯一神は既に力を持ってはいませぬが」
 
 「四天王は眠りについてしまっている。お父様はいったいこの町の夜に何を望むのかしら……」
 GILTHYは唯たちを眺めながら呟く。
 
 「ただいまぁ〜、あれ?みんななにしてるの?」
 光が帰ってくる。
 「今度は人形か……」
 「そのありようにこだわるようでは。真理を見失うものですよ、若き者よ」
 「何の話をしているんだ?」
 ふいにとらちゃんが、戸惑ったようすでNIGHTと零真の話に割り込む。
 「気にするな。貴様には理解できん話だ」
 「見えてしまっていましたか。 忘れなさい、今はまだあなた方には関わりのないことです」
 「忘れろっつわれて忘れられるなら苦労する人間が大分減るだろうさ。
  『気にするな』で気にせずにすむんでもな」
 「では、解るときが来るまで覚えていることです。
  私にはそれ以上の答えを教えることはできませんから」
 「……しょうがねぇな。
  (この魔都にはこんな奴がどれだけ居るんだろう?そして、どんな役割を求められているんだろう……?)」
 
 「あの……杉森さん、だれとお話してるんですか?」
 と、光が虚空に向けて話し掛けるとらちゃんに不信げな言葉を掛ける。
 「……? 見えないのか?」
 
 「さて、私はこの者達の元へ行く。……貴様が『千年王国』を見た時、どのような顔をするか楽しみだ」
 にやりと笑い、とらちゃんや光のもとに無数の鳥の羽の乱舞とともに姿をあらわす。
 「えっ! 何? なんなの!」
 
 「千年王国を名乗る者を私はたくさんみましたが、ただ一つも真に千年王国たいえませんでした。
  あなたがそれに対する明確な答えを出せるとおっしゃるなら期待してお待ちいたしましょう。
  あなたの答えを」
 取り残されたNIGHTはにっこりと微笑んで一人呟く。
 
 「あなたは……誰?!」
 「初にお目にかかる。我が名は『御樹 零真』。以後よろしく」
 20代半ば、きちんとした身なりの髪の長い女性……、零真が自己紹介をした直後、もう一つの声がする。
 「抜け駆けはよくありませんわ。あなたにもバランスは見えているはずですのに」
 見ると、赤い闇が佇んでいる。
 「ふっ、『バランス』など戯れ言に過ぎん。この世のすべては『主が作り給うたもの』。
  ゆえに、すべては主の望むものとなるのだ」
 「それでも、唯一絶対なる者を名乗る者はその力を今の世紀で失いました。保たれるべきバランスは存在するのよ」
 闇色のドレスの美女で、血の紅のような瞳をしている。
 年は零真と同じ位か。
 「主? これが、この廃虚がその『主』とやらの望む世界への第一歩なのか?」
 とらちゃんが言う。その表情はかたい。
 「選ばれし14万四千人を選ぶという意味においては彼女のいう『主の望みたもうし事』ねこの東京の廃墟は」
 新たに顕れた美女が言い、
 「そう。新たなるものを生み出す為に、古きものを壊す。当然だろう?」
 零真が悠然と言い放つ。
 「個人的には嫌いだな、そういう考え方は。だがおきたもんは仕方ねぇんだろうな」
 言葉の割にはその表情は憤りを隠しきれない。
 「残酷で傲慢な処遇だわ。罪を勝手に決められ冥界へと送られた魂たちはけっして納得しはしないでしょうね」
 「だが、その者達をほうっておけば、この地は際限なく罪に汚されるだろう」
 「そうね、でも干渉は必要最低限であるべきなのよ。いつの時代でも」
 「それでは遅すぎるのだ。すでにこの地は手後れなほど汚れている」
 「短絡的ね」
 苦笑しつつ独白する。
「何故おじいさまはこのような者たちに答えを求めるのかしら」
 
 「その『主』とやらは人格神かい?」
 なぜか、そんな事を尋ねる。
 「わからん。我らには主は偉大すぎるのだ」
 「そうかい。なら、あんたの百年王国とやらは俺には信じられねぇな。
  ま、あんたに取っちゃどうでも良い事だろうさ。俺を排除すれば良いんだからな」
 「私の役目は『裁くもの』ではない。君を排除する必要はまだない」
 
 「おいおい、なんやずいぶん物騒な事話しとるやん」
 苦笑と共に登場するあずまっち。
 「あっ、東さん! いつからここに?」
 「いつからって、ついさっきや
  ところで、知らん顔がいっぱいやけど、誰や?」
 「私は『御樹 零真』。以後お見知りおきを」
 「こらどうも」
 「はじめまして。退魔師さん」
 紅の瞳の美女が挨拶をする。
 「ああ、こらぁどぅも、はじめましてやな
  わいは東藤吉や。よろしゅうな」
 「私はギルティー。遺産管理人をしているわ。 今回はそこの彼女に会いに来たの」
 彼女がギルティーと名乗った時、なぜかその綴りは「GILTHY」なのだとその場の全員が疑いもせずに思いこんだ。
 ……おそらく、それは彼女の根幹に関わる名前なのだろう。
 本来そういった名前は名乗るものではない筈なのだが
98年10月20日:16時54分56秒
人の「行い」 / タイガ
 「御祖父様はみているだけで満足みたいだけど。物語はおもしろくなければいけないと思うのよね。私は……」
 一人の女性がくすくすと笑いながらそんな事を呟く。
 「ましーんどーる発見。これより目標の破壊を開始する……」
 黒い人影が現れ、光に照準を合わせる。
 その両腕から、マシンガンが飛び出し一斉掃射を開始する。
 
 「あ、あのさ……!」
 なにか言いかけたあるわくが人影に気付きとっさに光を抱えて飛びのく。
 「あっ! きゃぁーっ!」
 「ジッッジジジジジ 目標回避運動。
  障害。人間一人。戦闘危険レベルC オペレーションを続行する。
  目標固定……照準会わせ……」
 「ちぃ!」
 舌打ちして式札を用意するあるわく。
 「ジージジジジ。 対象 あざーすぺーすの存在を召還。危険度B+と断定。目標への障害度A優先攻撃を開始する」
 機銃をばらまきながら高速接近。
 「あるわくさんっ! どいてっ!」
 あるわくを庇ってあるわくの前に出る光。
 「だめた!あいつのねらいは君なんだ!」
 かばい会う二人に容赦なく弾丸の雨霰をお見舞いする黒い人影。
 黒い人影は無機質に。そして機械特有の執拗さで攻撃を繰り返す。
 「だったら、なおさらあるわくさんに迷惑かけられないっ! いっくぞー!」
 黒い人影の攻撃を巧みに躱し、白熱した拳を叩き込む。
 「熱伝導系にダメージ活動時間の大幅な短縮を確認……pipipipi チャキン」
 腕から刃が飛び出して叩き込まれた掌に振り下ろされる。
 「あぶない!」
 人影の刃を止めようと刀を出すが、振り下ろした刃は確実に光の腕にあたり、
 光の服の袖が切られ、皮下のクロームスキンが浮き出る。
 「間に合わなかったか!」
 刃を止めようとした刀を翻し、喉のジョイント部から頭部へ突き刺そうとする。
 しかし、ガキッと言う音がして刃は首宛の金属部品に止められてしまう。
 人影は意に介した様子もなく瞳からレーザーを発振する。
 「ボクの大切な人、傷つけたらゆるさないんだからーっ!」
 光が叫び、体から煙を出しながら人間にはありえないほどの速さで人影に攻撃する。
 同時に 黒い人影の腕が接続された刃ごともげ、『赤い血』が肩からほとばしる。
 赤い赤い血。それは命の息吹。それは人の証明。けれどそれは人ではなかったではないか。自分の意志もなく操り人形のように攻撃を繰り返すマシン。それが今光の目の前にいる……。
 「ひどいことを……する……」
 光が限界を超えたスピードで黒い人影の腹へ拳を打ち込む。
 動かなくなった人影を見下ろしながら、高速機動を解除する光。
 「人間を……機械になんて……人のすることじゃない……」
 その人影の正体にショックを受けたあるわくが呆然と呟く。
 「かわいそう……この人達……」
 ぽつりとつぶやき、自分の今の格好に赤面する。高速機動を行ったため、服がぼろぼろになってしまったのだ。
 あんたた……たちは……誰なの……私……いったい……」
 それは声のような雑音のような……。
 「……? ……意志が戻ったのか!?」
 光にジャケットをかけていたあるわくが問いかける。
 「(この人……見覚えがある……でも、おもいだせない、なつかしい、恐い、思い出せない……)
  きゃあああ!」
 思わず悲鳴を上げる光。
 「意志……もどる……なにをいって……ゴッホ」
 そこまで言って吐血する。
 機械部品よりも生体部品の方が多いらしい。
 「君は気にすることはない……」
 そういって手を握ってやるあるわく。
 
 え〜と、実際にはNIGHTの台詞もあったのですが、特になくても大丈夫なのでカットさせていただきました。
 ご了承ください。
98年10月20日:16時19分06秒
光の「夢」 / タイガ
 「鋼の体に優しき心の娘さん。なにに心揺らぐのですか?」
 NIGHTが光に問いかける。
 「えへへへ、実はお料理のレパートリーがつきちゃって。
 (ボク、一体誰なんだろう?、、どこから来たんだろう? ……ボク、みんなの迷惑になってないかな? もしそうだったら……)」
 てれながら言うが、心の底では全く違う事を考えている。
 「料理のれぱーとりーですか。ならば私が一つ手ほどきしてさしあげましょう。
  ……ところで自分自身に疑問を持つことは悪いことではありません。すべてのものには過去があり、それ故に現在が存在するのですから」
 「えっ!なんでそのことを! なんでその事知ってるの!」
 慌てる光に穏やかに答える。
 「昔から多くの人々をみてきておりますれば……みるだけでも多くのことがわかるようになるものです」
 「あなたは、心が読めるんですね……」
 「いいえ、私に『人の心』は見えませぬ。ただ、多くのことを知っているにすぎないのです」
 「ボクが『ボクの心』だと思ってるものも、ボクの体とおんなじで『作られたもの』に過ぎないんだよ! ボクはなんなの!」
 「我思う故に我あり。とももうします。
  たとえはじめは偽りの作られたものであったとしても。
  あなたはもうたった一つしかない心をおもちなのではないですかな?
  その迷う心こそが。あなた自身が心を手にしている証なのでは……ないでしょうか」
 「そっか……迷うことでボクが『本当の人』になれるんだね……でも、ボクがなれるの? 機械の体のボクがなれるの?」
 「さて、私には解りかねます。『答え』を『証明』なされるのはあなた自身でございますから。
  ですがこれだけはいえるのではないでしょうか。
  あなたが人であろうとし続ける限り、あなたには『本当の人』になれる可能性があると」
 「そうだね、ボクの口癖だもんね。ボクが実行しなくちゃダメだよね
  『夢を信じつづける限り、夢は限りなく現実に近づく』ってね」
 「あなたも自分自身の答えを得られたようですね。まだ、迷いはございますかな?」
 「……それに、ぼくたちは光ちゃんを『人』だと思ってるよ。それじゃだめかい?」
 NIGHTの質問に半ば重なるように声がする。
 タイミングを計っていたのに偶然重なってしまったのだろう。
 「ううん。それでいいよ!みんながボクのことそう思ってくれるなら、それだけでボク、うれしいよ!だけどね……」
 おもわず、涙目になる光。
 「だけど、なに?」
 「ちゃんとボクのこと女の子扱いしてよね!まったく、レディーに対する態度がなってないよっ!」
 笑いながら言う。
 「無敵の式神使いあるわく殿も女性(にょしょう)の前ではただの少年にもどりますな」
 くすくすと笑いながらNIGHTがからかう。
 「ボク、まだ迷ってる。でもね、きっとこの迷いが何かをくれるような気がする……」
 満面の笑みをうかべて、さっきのNIGHTに答える。
 「『一つ』の『答え』をいただきました。故にいつか、困ったことがあれば私をお呼びください。少しでよければ力をお貸しいたしましょう。
  惑いの中に新たなる答えがあることを私は信じております」
 満足そうに頷く。
98年10月20日:15時49分45秒
あるわくの『光』 / タイガ
 「あなたにしてはずいぶんと迷っておられるようですね……」
 NIGHTはあるわくに話し掛けた。
 「迷うも何も、『道が見えない』んだよ」
 「以前『我々』におっしゃっていたように。自ら道を決め歩いていきなさればいい。あなたにはその権利が……存在するのですから。式神使いあるわく殿」
 「それで、誰かを傷つけても?」
 「それでは、問いましょう。あなたの持つ公式はすべての人間を傷つけない答えを導くことができるのですか? あれほどの悪魔を殺してきたあなたがそれを『私』に問うのですか?」
 にこりともしないがおだやかな表情で問い返す。
 「……そうなんだ。……ぼくは『誰かが傷つくことで自分が傷つくこと』を恐れてるだけなんだ」
 「それは正確な『答え』とは違いますね。あなたは『自分の大切なものが傷つくこと』をひいては『自分自身が傷つくことを』おそれているのです。ですが。それは人として当然の答えの一つなのでしょう」
 「そうだね。……ぼくの目的は妹を助けること。ぼくに与えられた役割は裁くもの。……でも、ぼくのやりたいこととは違うんだ」
 「あなたは我々に『自ら選択する』事を宣言成されました。ならば自らの心に正直に耳を傾けるべきなのです。違いますか?それが心という公式から答えを導き出すための計算というものなのでしょう」
 「そう……だね」
 「あなたが求めるあなた自身にしか見つけることのできない答えを見つけ出されたようですね。それでも、まだ迷いはありますかな?」
 「いや、もう大丈夫。『与えられた道』じゃなく、『自分自身の道』を歩いていくよ」
 「ならば、かつての『約束』通り。『私』はあなたの『答え』を見守りましょう。式神使いあるわく殿」
 「夢を信じつづける限り夢は限りなく現実に近づくんだよ。何時か、何時かきっとわかるよ!!」
 不意に声が割り込んでくる。
 光だった。
 「夢は常に若者の味方ですな。時は人を裏切らない。人が時を裏切るのです。 こんにちわ。約束されざる娘さん」
 「大丈夫。ぼくには『光』が見えてるから。さあ、いこうか」
 光の手を取る。
 「えっ?それどういう意味のなの?」
 「さぁ?」
 にっこりと光に笑いかける。
98年10月14日:17時58分48秒
「あだ名」 / タイガ
 え〜と、「何故杉森大牙が『とらちゃん』とよばれるか?」
 と言う説明が無いとこの先ずっと「大牙」と書かねばならないので書いたものです。
 これは今までのと異なり、ほぼ完全な僕の創作となります。
 
 殺が去った後、ようやく気がついたあずまっちが大牙に話し掛けた。
 「あんさん、『人虎』やったんやな」
 「人虎?」
 「せや、さっき虎に変身したやろ? 
  動物に変身できるのは『獣人』呼ばれるんや。
  で、虎に変身するんやから、『人虎』」
 「虎……なのか?」
 思わず自分の手を見る、もっとも変身を解いた今ではただの人間の掌だが。
 「なんや知らなかったんか?」
 「ああ、自分にこんな力があるなんて気付いたのは最近だし、
  変身中は鏡なんて見てる暇無いからな」
 「ほか。まぁ、知ってもどうってこと……」
 言いかけて口篭もる。
 「なんだ?」
 「虎に変身できるんやから『とらちゃん』やな」
 そういってにやっと笑う。
 「と、とらちゃん?」
 「そや。あだ名は持ってたほうがええで。
  世の中には名前を知ってれば呪いをかけられる化生もおるそうやさかい」
 「そんなもんか? いやしかし『とらちゃん』は……」
 「とらちゃん、あるわくは?」
 「唯ぃ〜」
 世にも情けない表情で呼びかけるが無視されてしまう。
 どうも、唯の中では既に「杉森大牙=とらちゃん」と言うのが確定されてしまったらしい。
 見上げる表情から彼女が真剣だと言う事がありありと解る。
 からかってるのではなく、彼が化生に呪われたりしないよう気づかってるのだ。
 そう思いでもしないと、やりきれない。
 杉森大牙……とらちゃんは心の底からそう思い、ありがたくそのあだ名を受ける事にした。
 ただし、ため息と共に、だが。
 「わかったよ」
 何がわかったのかは言葉にしない。
 「邪魔したな。この埋め合わせはこの次にでも」
 そうあずまっちに言って、あるわくを探すべく先に言っている唯を追いかける。
98年10月12日:16時21分03秒
「開戦」 / タイガ
「東さん、杉森さん、唯ちゃんのこと頼みます!」
 光が影人の一人に飛び掛かる。
 「そりゃぁぁぁっ!」
 右手の手のひらが赤熱して影人を殴りとばす!
 「ヒィィィィィィィィィィィィィィィ」
 
 「……キキキキキ……キキキキキ……」
 「……そう。なにをすればいいかわからない……わたしとおんなじね……」
 そんな中、唯は影人の一人としゃがんで話し込んでいる。
 と、徐々にその影人は小さくなっていく。
 「任しとけぇっ……ってあんまり要らないような気もするが」
 光の言葉に応えるが、唯が影人と話しているのを見てそう呟く。
 「ちぃ、あれを躱すかい。きっついなぁ。殺はあんさんに任すわ」
 あずまっちは自分の攻撃が聞かないと見るや、殺を大牙に任せて影人に向かう。
 「わかった。唯の事は頼んだぞ」
 「任せとけや」
 「うおぉぉっ!!」
 叫び獣人化する大牙。
 「いくぞ、殺っ!!」
 
 「……キィィィィ!!」
 影から実体化した影人が唯を襲う。
 「かぁっ!」
 印を組んで唯に襲い掛かろうとした影人に一撃を加える。
 「成仏しぃ」
 「……こんどは、もっとたのしいことができたらいいね……」
 薄れていく影人に最後の声をかける。
 「ひかる……さん、だいじょうぶですか……?」
 激戦の中、光は唯への攻撃を身を呈してかばい、肩が切られたのだ。
 「どうってことないって!楓ちゃん!」
 笑顔を浮かべ、グッドサインを見せる。
 「光、無理はすな。無理されてもみんな嬉しゅうないで」
 「東さん、ボク、むりなんかしてないよ!」
 
 光とあずまっち、それから唯の奮戦にもかかわらず、影人は一向に減る気配が無い。
 「……そういえば、まだお名前を聞いていませんでしたね」
 「そうだな
 にやりと笑う。
 「おれは、杉森大牙。覚えておけ、いつか、お前を殺すものの名を!」
 「……『死』は、今の私にはもっとも縁遠いものです」
 ポツリと呟く。
 「いったろう?『いつか』ってな。いまじゃねぇ。今は撃退するだけだ!」
 そういって、冷気を吹きかける。しかし、
 「楽しみにしています」
 殺はこともなげに、右手から火炎を撃ち出して、冷気を打ち消す。
 「みんな……つぎはもっと……いいひとにあえたらいいね……ちがえしのひかり……」
 「ヒィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ」
 唯を中心に光の弾が広がり、殺を覗く全ての影人が悲鳴を上げつつ消滅する。
 「唯ちゃーん!」
 「あんがとさん」
 「…………」
 微笑を浮かべ崩れ落ちようそうになる。
 「っと。この娘も無理しよってからに 」
 倒れる唯を支えてぼやくように言う。
 「ゆいちゃん!ゆいちゃん!」
 唯の肩を揺さ振る光。
 「……すみません……だいじょうぶです。わたし、けっこうしぶといですから……」
 疲れた様子で二人に応える唯。
 「そんだけ言えるなら大丈夫やな」
 「よかった……」
 そういって笑うあずまっちと涙目になって無事を喜ぶ光。
 「……あのまほう、けっこうつかれるんです……ごめんなさい、わたし、ちょっとねますね……」
 そう言って瞳を閉じる。
 眠ったのだ。
 
 「(単体では打ち消されるか……、ならば)」
 思いっきり息を吸いこみ、広範囲に冷気を吹きかける。
 「っく!」
 右に飛んで避けたが左腕が凍り付く。
 「まだまだっ!」
 急激に冷やされて白く染まった空気の影から冷気を纏わせて拳で殺を一撃する。
 「があ!」
 まともに殴り飛ばされ、近くの瓦礫に叩き付けられる。そのままピクリとも動かない。
 「やったか……?(あっけなさずぎるが……)」
 警戒しつつ近寄ってみる。
 「……東さん……杉森さん……」
 光が唯を抱きかかえながら二人に声を掛ける。その目は殺を見ている。
 「なんだ?」
 警戒しつつ返事をする大牙。
 「これで……よかったんですか?」
 「他に手段が見つからない。どんな生き物も、こうやって生きている。自分だけ例外になるにはそれこそ神にでも……いや、それ以上にならなければ……いけないんだ」
 「そんな……」
 今にも泣きそうな目で呟く。
 「どんなに悲しんでも、どれほどこばんでも、それが『今』の現実だ」
 殺は気絶しているが、傷が物凄いスピードで治っていく。
 「しゃあない。後は任せるで。はぁっ!」
 光の言葉が聞こえなかったのか、できうる限りの気弾を殺に放ち気絶するあずまっち。
 しかし、闇の盾が出て来て気弾を受けて消滅する。
 「……今日のところは、退きます……」
 ゆっくりと立ち上がる殺。その背中に翼が生える。
 「では、また……」
 最後にニヤリと笑って飛び立つ。
98年10月12日:16時13分51秒
「殺再び」 / タイガ
 「……こんにちは……」
 あずまっちと光に、声をかける唯。
 「こんにちわ!なにやってるんですか?」
 「よう」
 右手を上げて挨拶を返すあずまっち。
 「あるわく、きませんでした?」
 「ん?見んかったけど。あいつがどないしたん?」
 「いえ……いつのまにかいなくなったので……」
 と、大牙がひょっこり現われ、唯に声をかける。
 「あ、こんなとこに居たのか、だめじゃないか、かってに出歩いちゃ。
  いつ奴が来るのか解らないのに……」
 「ん?あんちゃん、誰?」
 あずまっちが問いかける。
 「……俺は杉森大牙……そっちこそ誰だ?」
 警戒しつつたずねる。
 「わいは東藤吉。拝み屋や。この娘とはちょっとした知合いやねん」
 「あの、杉森さん、なんの御用ですか?」
 「何のようって……当然唯を探しに来たんだけど……」
 「唯ちゃん、知り合いの人なの?」
 「…………」
 だが、唯は無言で廃虚の片隅にわだかまる闇の一つが色濃くなっていくのを見つめている。
 「んっ? 誰や、そこにおんのは?」
 「な、なんだ!?」
 「だれっ!」
 ……次々と現れるあやしの影!
 「くる」
 「……キキキキキ……キキキキキ……キキキキキ……」
 闇からわかれた人型の影がそんな声を上げながら近づいてくる。
 「ったく、カインの奴が現れてから物騒になるばかりやなぁ」
 苦笑混じりに呟く。
 「そうなんですか?東さん。ボク、なんにもしらないんですけど」
 「……キキキキキ……キキキキキ……」
 ぼやく間にも影人は次々と数を増やす。
 「……なに?……このこたち……かんじょうが、ない……」
 「……キキキキキ……キキキキキ……」
 ゆっくりと包囲をせばめてくる。
 「こんにちわ。みなさんはどこからこられたんですか?」
 「腕前はどの程度? わいは……そうやな、1対1で戦う限りこいつらに負ける気はせぇへんけど」
 光がボケをかます間に、あずまっちが大牙に訊ねる。
 「俺も、負ける気はしない……、だが、どんな能力が有るのか分からない以上、油断は禁物だよな」
 「せやな。ま、とりあえずそっちは任すわ」
 「……だれ? こんなことするの……」
 唯が後ろを振り向き、誰にとも無く尋ねる。
 「どうしたんですか?皆さん?そんなに恐い顔しちゃって?」
 何も解ってない光が皆に尋ねる。
 「せやぁ!」
 指先から気弾を放つ。
 「……ヒィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ」
 気弾を受けた影人がおぞましい泣き声を上げながら消えていく。
 「……っ!」
 悲鳴に思わず耳をふさぐ唯。
 「!!東さん、何をしたんですかっ!」
 光があずまっちに非難めいた声をかける。
 「ほう、なかなかの力の持主のようですね……」
 感心したような声と共に、殺が暗闇から顕れる。
 「…………。
  (あなたたちは……なにがいいたいの?……こわがらないで、わたしにおしえて……)」
 「……キキキキキ……キキキキキ……」
 しかし、唯に感じるのはぽっかりと空いた空虚な『穴』だけ。
 「……そう……あなたたちも……なのね……。
  このまちは、わたしとおなじ「ひと」たちがたくさんいるのね」
 その胸をよぎる想いは喜びか、悲しみか……。
 
 「止めた。身ぃ、守るためやしゃあないやん」
 光の詰問にこたえて、殺に向き直るあずまっち。
 「はじめましてやな。カインの知合いかなんかか?」
 「(とにかく襲いかかってくる奴等を止めてや。この子ら守ってやらなあかんやん)」
 殺の言葉に応えつつ、小声で大牙に言う。
 「(分かった。任せろ。……後方警戒は頼むぞ、楓とそのこの守りもな)」
 やはり小声でこたえる。
 「これは失礼、貴方とは初対面でしたね。私は殺と申します。以後、お見知りおきを」
 「そいつぁ〜どうも。で、何の用や? 物騒なお供を連れて
  名前は……聞いとったやろ。改めて言うほどでもないわな」
 「(後方ってどこやねん)」
 「(もちろん、俺の向いてない方向だよ。ほかにあるか?)」
 「そちらにいる少女を当方に引き渡して頂きたいのです」
 唯を指していう。
 その言葉を聞いてあずまっちの後ろに隠れる唯。
 それに気付いて、大牙は少し寂しそうにしていたが、もちろん誰も気にしない。
 「あの、なんで唯ちゃんを?」
 光が尋ねる。
 「詳しいことは存じません。この世界をあるべき姿に戻すためと聞き及んでおります」
 「それでも、唯ちゃん嫌がってるよ!」
 「(そりゃ、広過ぎるでわい一人じゃあ無理やん。しゃあない。護法でも呼んだる)」
 「(誰も全部やれとは言ってない、こっちもやれるだけのカバーはする。……護法って何だ?)」
 「あほぬかせぇ(苦笑)。んなことできるわけないやん。少なくともこの娘が自分で行きたい言わん限りな」
 「(今呼んだる)」
 殺と問答をする一方で大牙と相談していたあずまっちが不意に声を張り上げる。
 「……護法召来!」
 阿吽像の姿をした2体の護法が現れる。
 「そういう他人の都合を考えんやり方は嫌われるで」
 「私もそれは承知しております。ですが、どうしても彼女の力が必要なのです」
 「話しは平行線やな。しゃあない。いっくでぇぇぇぇ!!!」
 気を練り大きな気弾を作ると、殺に投げかける。
 「でやぁ〜〜〜〜〜〜!!!!」
 「……困りましたね……」
 とっさに横に飛びのきからくも躱す。
 「散れ!」
 殺が命令し、影人達が散開する。
98年10月08日:17時04分52秒
組織設定登録 / tomy
世紀末東京編用の謎の組織を登録します。真の目的や組織の構成員などは全然決めていませんので、自由に活用してください。

“財団”
オーパーツ(永続式)の奪取を行なっている組織です。オーパーツは高度な結界(物によっては特級結界)の焦点になりえるため、結果として結界を破壊しています。集めたオーパーツをどうするつもりなのかは不明です。

“商会”
式札、オーパーツ、人体強化(サムライや蟲)を取り扱っている組織です。まだ実験段階らしく、攻撃的で危険の高いものを何も知らない人々に売って(彼らの言い分だと貸し出して)います。何カ月か“商会”の者が監視し、その後“回収”します。“回収”には二通りあり、殺して機密を保持した上で奪うか、“商会”の一員にするかです。
98年10月08日:12時37分25秒
NPC登録(その3) / tomy
『緑の守護者』綾月 綺砂(あやつき きさ)
能力値 体力:5、敏速:7、知覚:7、知力:5、心力:8、共感:7
技能 回避<初級>、射撃戦闘<上級>、白兵戦闘<初級>、運動<中級>
   隠身<初級>、観察<初級>、騎乗<中級>、耐性<初級>、追跡<初級>
   神通力(ディは使えない)<中級>、応急手当<初級>、結界術<中級>
因縁 感情:人の未来への絶望(上級)、恋愛:自然への愛情(中級)
業:47/108、宿業:50/80
武装 弓矢(武器修正+3、射程100m、射率2)、ナイフ(武器修正+2)
特別な神通力:《恵み》
(解説:神通力によって動植物の声が聞こえる為、自然を犠牲にして文明を発達させていながらそれを意識にも昇らせない人の未来に絶望した10代後半の乙女です。人の滅びに自然を巻き込ませないため行動します。
 鬼ベースです。)

『冥龍会若頭』影山 荊吾(かげやま けいご)
能力値 体力:7、敏速:7、知覚:8、知力:7、心力:6、共感:3
技能 回避<中級>、格闘戦闘<中級>、射撃戦闘<上級>、白兵戦闘<初級>
   観察<中級>、耐性<中級>、話術<初級>、作法<初級>
因縁 感情:弱さへの憎しみ(中級)、目的:金と権力を手に入れる(中級)
業:80/108、宿業:30/60
武装 サブマシンガン(武器修正+3、射程30m、射率15、弾数30)
(解説:今時珍しい、成り上がりを目指す暴力団員です。力も金も権力もなければ、何をされても仕方ないという信念のもとに緋崎などに使われて悪事を働いています。
 人ベースです。)
98年10月06日:10時29分30秒
インターミッション「お買い物」 / タイガ
 光とあずまっちの二人は、市を歩いていた。
 「あ、あれなんかいいな」
 青いワンピースを指差す。
 「あん、あれ女の子用ちゃうん?
  となりのTシャツとスボンにしとき」
 「だって、僕に似合いそうなんだもん。
  それに値段のわりにしっかりしてるから、こっちのほうが絶対特だよ」
 そう言って朗らかに笑う。
 「そら似合うかも知れんけどなぁ。今日買うのは汚してもええ普段着やで
  そういうのは、自分で小遣い貯めて買ってや」
 「はい、わかりました」
 素直に頷く。
 「ほなTシャツとGパン多めに買っとくで。サイズはええんか?」
 女性用のSサイズで少し大きいぐらいか。
 「ちっと大きめの方がええやろ。成長期やしな」
 「はい、そうですね」
 「んじゃあ、帰るで」
 「あー、ちょっとまってくださーい!」
 早めに会計を済ませ、先に行こうとするあずまっちを慌てて追いかける。
 「早ぅしぃ〜」
98年10月05日:14時10分04秒
「出会い」 / タイガ

 
 「おんや?こんなとこで何しとんのや、坊主?」
 あずまっちが満身創痍で倒れている『少年』に訊ねる。
 冷たい雨にぬれていたからか、小刻みに体が震えている。
 「ん……、ひどい火傷やないか!あかん……とりあえず怪我に効く符を貼ったるさかい、病院に連れてったるまで耐えや」
 癒しの力を込めた符をせりりんに貼り、そのまま『まっとうではない』医者の元にかつぎ込む。
 「あ、ありがとう、ございます」
 息も絶え絶えの様子で礼を言う。
 「無理に喋るんやない。そのまま安静にしとったほうがええで。
 わいは通りがかりのもんで、名前は東藤吉(あずまとうきち)。周りのもんからは“あずまっち”って呼ばれとるわ」
 「僕は、瀬里澤 光……」
 「ほか。光くん言うんか。ところで、家族か誰か連絡せんでええか?」
 「家族は、わかんないんです。いま、どうしてるのか、どこにいるのか……」
 「そか。まあ東京がこうなってしもてから散りぢりになって家族に会えん様になった奴等もようけおるしな。とりあえず怪我が治るまでゆっくりしとき」
 そういって安心させるように微笑む。
 と、扉を開けて医者らしき男が入ってきた。
 「ん、何だ急患ってのはそこの子供かい?
  こりゃ、子供の火いたずら、ってわけじゃないみたいだな」
 そういって煙を噴き出す。
 「治療代は、アンタもちかい?」
 「わぁっとるわい。それぐらい払ったるわい」
 苦笑しながら言う。
 「わかった!もらうもんさえもらえば、ワシに直せん怪我などない!」
 「あ、ありがとうございます……」
 あずまっちの言葉に涙目になって礼を言う光。
 「気にすなって。困った時はお互い様や」
 「それじゃ、さっそくオペ始めるから、アンタは出てってくれ」
 そういってあずまっちを追い出す。
 「あいよ。んじゃ後はまかせるわ」
 
 「おーい!、ちょっと来てくれ」
 「なんやぁ?」
 まだ数分しかたってない。
 「あの子、どこで拾ったんだ?」
 「はぁ?近くの路地やけど」
 「ほら、見てくれ」
 「ん?」
 ベッドには火傷がすっかり治っている光が横たわっていた。
 「すいぶん手際がええやん」
 ボケるあずまっち。
 「骨もかなりの数、折れてたんだが、見てる間に直った」
 「ちゅうことは治療代をはらわんでもええっちゅうことか」
 再びボケる。
 「アンタ、とんでもないもん、拾ったみたいだな……」
 ため息でもつきそうな調子で言う。
 「今の東京、とんでもなくないと生きてゆけんわ。せやろ?」
 にやりと笑って答える。
 「お互いに、ね」
 笑い返すヤミ医者。
 「まあそういうこっちゃ。気にしてもしゃあないしな。ま、とにかくうちにはベッドなんてないし、坊主は預けるわ。んじゃな」
 
98年10月05日:14時08分39秒
「脱走」 / タイガ
 この書き込みは天羅一行掲示板にて行なわれたキャラチャをもとにしております。
 
 「こんな力があるから……」
 「な、なにをする実験体No.433」
 『実験体』の予想だにしなかった行動にうろたえる科学者らしき男。
 「光よ!」
 実験体……光……は男の疑問に行動で答えた。
 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……………」
 長い悲鳴を上げながら光の中に消えていく。
 「……どうして僕を、そっとしといてくれないの……?」
 「ビービービー」
 警報音が鳴り響く。
 「実験体No.433が暴走!完全体No.64及びNo.274はNo.433を済みやかに抹消せよ!」
 「やめてよ!僕は戦いたくなんかない!」
 思わず叫び、その場から逃げ出す。
 
 「はぁはぁはぁ……」
 「見つけたぜぇ。No.433」
 声が光を凍り付かせる。
 「君は……誰?」
 「俺様は完全体No.274だ。お前を切り刻みに来たのさ。けぇっ!」
 およそ信じがたい速さで切りかかる。
 「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
 肩から血飛沫を上げる光。
 「おらおらどした?ちっとは抵抗してくれないと面白くねぇんだがなぁ」
 アーミーナイフに付いた血のりをなめる。
 「僕は、僕は君を傷つけたくない!傷つけたくないんだぁ!」
 その体から閃光が放たれる。
 「どぉっと。けっけっけっ、この程度かよ。」
 閃光と先ほどの高加速によるダメージで全身から血を流しながらも平然としているNo.274。
 しかし、その閃光はなおも彼の体を侵食していく。
 「ひゃっはっはっはっ。全然痛かねぇぜ。ひゃはっははっ。ははははは………」
 彼は笑いながら消滅していった。
 「ごめん……ごめんね……こうするしかなかった……」
 消えていくNo.274に、涙を浮かべて謝る光。
 と、
 「抹消する」
 背後から声がする。
 「誰?」
 振り向いて誰何する光。
 しかし、彼……No.64……は無表情に蹴りを叩き込む。
 「うわぁ!」
 光の体が宙高く蹴り上げられる。
 そのからだが落下を始める前に転移し、叩き落とそうとする。
 「よぉ、オレに喧嘩うってくるたぁじょうとうじゃねえか」
 にやりと笑う。
 その目には今までの気弱そうな瞳と打って変わってどこか破壊的なものを含んでいる。
 「消去する」
 一切の感情を交えずに言うNO.64。
 その右手がぼんやり光を放ちだす。
 徐々に光が強くなり、やがて右手が高熱を発する。
 大気がプラズマと化して、灼熱の拳を光に叩き込もうとする。
 「それじゃ、オレもそろそろはじめっか、うぉぉぉぉぉぉぉ」
 光の背中に4まいの「黒い光」の翼があらわれる。
 「こんどはこっちからいくぜぇ!!」
 両手の指の先から、十本のレーザーが伸び、NO.64を襲う。
 レーザーを障壁で弾き、そのまま光に抱きつくNO.64。
 「オレは男に興味はないぜ!、コラ、はなれろ!」
 「絶対命令。実験体No.433の消去」
 光に抱きついたまま全身から超高熱を発する。
 自身の体からもぶすぶすと焦げるような嫌な匂いがしはじめ……、そしてそのまま燃え尽きる。
 「け、ただの脅しかい、たいしたことがなかっ……」
 強がりを言うが、見るも無残に黒焦げになっている。
 そのまま音を立てて倒れる光。
 いつのまにか雨が降り出していた……。
 「本研究所は消去される。職員は済みやかに退避されたし。繰り返す、職員は済みやかに退避されたし」
 静かに降り注ぐ雨の中、警告がなされ……、
 ……そして研究所は光に包まれた。
98年10月04日:19時59分37秒
NPC登録(その2) / tomy
(その1)の続きです。

『シリアル・キラー』佐藤
能力値 体力:9、敏速:7(12)、知覚:5、知力:4、心力:6、共感:1
技能 格闘戦闘<中級>、白兵戦闘<中級>、運動<中級>、隠身<中級>
   早業<中級>、耐性<中級>、蟲術<中級>、結界術<初級>
因縁 感情:殺人快楽症(上級)、感情:獲物との“鬼ごっこ”が好き(初級)
業:94/108、宿業:40/60
武装 ナイフ(武器修正+2)
蟲 伊丹蟲、九官蟲2、再生蟲3(再生ポイント15)、甲蟲1、鋼化結線虫5
☆活力29(伊丹蟲+甲蟲)
(解説:とにかくヤバくてイッちゃった奴です。初期の敵にでもどうぞ。
 一応、人ベースです(爆))

『東京再開発公団総裁』緋崎 勝志(ひざき かつし)
能力値 体力:5、敏速:5、知覚:5、知力:9、心力:7、共感:4
技能 回避<初級>、格闘戦闘<初級>、白兵戦闘<中級>、観察<中級>
   耐性<初級>意志力<中級>、話術<中級>、偽造<中級>、作法<中級>
   事情通<上級>、帝王学<上級>
因縁 感情:権力への執着(上級)
業:89/108、宿業:35/70
武装 日本刀(武器修正+4)
(解説:権力欲にとりつかれたオジサンです。自分では結界を作れませんが、結界能力を持つ者達を従えて結界再生後の東京を牛耳ろうと、いくつかの能力者研究機関などに金を送っています。また、結界再生のポイントとなりそうな場所を掌握するために暴力団などを影で操っています。その一方で東京の難民に食糧などの支給を行ない、支持を集めることにも余念がありません。
 当然人ベースです(笑))
98年10月04日:06時50分40秒
結界術暫定ルール「結界の作用」 / タイガ
 え〜と、先の書き込みの「結界術ルール暫定版」は「結界術暫定ルール『結界の作成・破壊』」で、
 「結界術暫定ルール『結界の作用』」は「結界術暫定ルール『結界の形態』」です。
 そう読み替えてくださいm(__)m
 
 ◆ 結界の作用。
 一つの結界は以下の内から一つの作用を持ちます。
 また、基本的に範囲内にあるもの全てに効果が有ります が、特定の一勢力に限定してもかまいません
 複数の結界が同一地点にある場合、それぞれの作用が働きます。
 ただし、同一の「作用」をもつ場合、重複はせず最内部の結界のみが機能します。
 
 ◆強化結界
 結界力に等しいボーナスを与える結界。
 全ての判定に有効
 (負傷ボーナスと同等に扱うが累積可)
 
 ◆阻害結界
 出入りするものに結界力×成功度のダメージを与える結界。
 ただし、基本的に<結界術>でしかこのダメージに抵抗できません。
 
 ◆加速結界
 結界内の時間の流れを加速する結界
 係数はその結界をつくるための消費霊力に等しくなります。
 
 ◆減速結界
 結界内の時間の流れを遅くする結界。
 係数はその結界をつくるための消費霊力の逆数に等しくなります。
 
 ◆防御結界
 結界の出入りを困難にします。
 成功数を難易度として対抗判定をし、成功しないと出入りが出来ません。
 結界内外への攻撃でも同じく判定が必要です。
 唯一、防御行動の際瞬間的にはれる結界ですが、その場合一度ダメージを受けると消滅します。
98年10月04日:06時46分25秒
結界術暫定ルール「結界の作用」 / タイガ
 ◆結界の形態
 結界は全て以下のいずれかに分類されます。
 
 ◆単結界
 
 結界術の基本となる焦点が一つの結界です。
 焦点が無くなれば消滅します。
 無級では半径【心力】mですが、級が一段階上がる事に半径が10倍になります。
    
 ◆重結界
 
 焦点が複数あり壊れにくい結界です。
 その全てが無くなるまで消滅しないし、大きさも変化しません。
 大きさは単結界を基準とし面積を焦点の数だけ増やします。
 (焦点が二個で二倍、三個で三倍……)
 
 ◆広結界
 
 焦点が複数あり非常に巨大な結界です。
 一つでも焦点が破壊されると崩壊し、残った焦点を中心とする単結界になります。
 この時、一つの焦点を持つ重結界が残った焦点の数だけ形成されます。
 大きさは単結界を基準とし、半径が焦点の数だけ増えます。
 (焦点の数が二個で二倍、三個で三倍……)
 
 ◆異次元結界
 
 焦点が一つ、もしくは複数あり亜空間にはられた結界です。
 焦点は亜空間の結界内と通常空間の結界外の両方にあります。
 予め決められたコマンドを唱えるなどの条件を満たしたものを出入りさせます。
 出る時と入る時で条件を変える事も出来ます。
 これにより、トラップの性質を持つ異次元結界も造れます。
 これは同時に単結界・重結界・広結界のいずれかの性質を持ちます。
 結界の破壊についてはそれぞれの結界を参照しますが、更に崩壊した時、
 結界にあったものは結界の成功数を難易度に対抗判定をし、失敗すると亜空間の彼方に消え去ってしまいます。
 成功した場合、通常空間に戻ってこれます。死者の念は 亜空間に放たれるので、例外的にダメージを受けません。
98年10月04日:06時43分49秒
結界術ルール暫定版 / タイガ
 本当ならとっととプレ編を進めなきゃいけないんですけど(^^;)
 誰とも話せないんでここに載せてしまいます。
 (Karmaさんごめんね)
 
 ○ 結界術
 ◆ 結界術とは?
  
 死者の念に方向性を与える事により結界をはる技能です。
 これによりPC(および、一部のNPC)は強大な力を持ち得ます。
 
 ◆ 結界の作成。
 
 結界をはるには「焦点」を作成します。
 一ラウンドかけて集中し、規定の霊力を消費する事で結界が発生します。
 基本的に一人の術者は一つの結界につき一つだけ焦点を設定できます。
 術者が複数居れば人数分までの焦点を持つ結界がはれます。
 一つの焦点で複数の結界を貼っても構いません。
 また、一人の術者が複数の結界を貼っても構いません。
 消費霊力は無級で1、初級で2、中級で4、上級で8、特級で16になります。
 
 ◆結界の破壊
 
 結界は焦点が無ければその存在を維持できません。
 従って、
 1. 焦点を結界の外に出す。
 2. 焦点を物理的に破壊する。
 3. 焦点を<結界術>により、通常の物体に戻す。
 の三つの方法で結界を消す事が出来ます。
 
 結界を破壊すると、それまでの方向性を失った死者の念が暴走し、
 事故や災害の形で暴走した力が顕れます。
 この時如何なる形の災難であっても、死者の念で強化されるため、
 結界力(*)×成功度に等しい強度のダメージを受けます。
 (これは【心力】<意志力>などによって軽減する事が出来ます)
 
 
 (*)結界力 無級で1、初級で2、中級で3、上級で4、特級で5となります。
98年10月03日:21時36分52秒
NPC登録(その1) / tomy
世紀末東京編用の誰でも動かして良いNPCを登録します。ネタ作りに利用して下さい。
注)こいつらは基本的には仲間にならん奴等なので、多少強めに設定しています。

『能力者狩人』剣 和臣(つるぎ まさおみ)
能力値 体力:7、敏速:7、知覚:7、知力:4、心力:7、共感:3
技能 格闘戦闘<中級>白兵戦闘<上級>、観察<初級>
   耐性<初級>、意志力<中級>、忍術<中級>、応急手当<初級>
   神通力<初級>、事情通<初級>、結界術<無級>
因縁 目的:能力者を狩る(中級)、その他:俺は人間だ(中級)
業:81/108、宿業:30/60
武装 霊刀(式刀)魔狩(武器修正+5)
  (式能力:毒生成能力4、憑依能力1、打撃能力6
   持続時間:【心力】ラウンド 消費霊力:4)
(解説:自分が能力者であることを認めず、能力者を狩ることでそれを証明しようとする孤独な人物です。そのため、神通力は極力使うことを避けます。
 半鬼ベースに作ってみました。)

『ピーターパン』ケン(本名不明)
能力値 体力:3、敏速:9、知覚:7、知力:5、心力:10、共感:3
技能 回避<中級>、格闘戦闘<初級>、運動<中級>、隠身<初級>
   観察<中級>、早業<中級>、意志力<中級>、神通力<特級>
   結界術<初級>
因縁 感情:大人への反発(上級)、目的:子供だけの国を作る(中級)
業:59/108、宿業:50/100
武装 石ころ(武器修正+1)
特別な神通力:《恵み》、《障壁》、《疾風》、《時間》
(解説:神通力によって心の声が聞こえるがゆえに、“心の汚れた”大人達に反発し、大人になることを拒否する少年です。逆に、心の清らかな、言い変えると単純な、子供には大人になって欲しくないので、自分の結界の中に誘います。
 鬼ベースに作ってみました。)
98年09月29日:15時40分42秒
「襲撃」後編 / タイガ

 
 闇から現れた女……殺……は、自然体のまま、あるわくを見ている。
 「なぜ、彼女を追いかける?」
 あるわくが訊ねる。
 「この世界をあるべき姿にするために……」
 「あるべき? 僕らにとっては「今」があるべき世界なんだ!」
 あるわくが言い、
 「やっぱり奴の仲間かぁ!」
 大牙が何も考えずに突進する。
 女はにやりと笑って左半身に構える。
 と、少女と話していた唯が何か気付いたように大牙に叫び、それにつられて少女も大牙を見る。
 「……だめ!!」
 「えっ? うわっ!」
 その声に思わず振り向いた所をあるわくの体当たりを受けて倒れる。
 唯が慌てて呪を唱え、それに続いて殺も呪を唱える。
 殺の後ろに引いた右手に雷球が生れ、それを叩き付けるように掌打を打ち出す。
 「がっ!うわあぁ!」
 大牙の身代わりに雷球を受けるあるわく。
 「ふっ、仲間思いですね」
 「……!脇田、大丈夫か!?」
 「大丈夫。こんな雷球たいしたことない」
 「てんめぇ!ざけやがって!!」
 激昂した大牙の体に「力」が収束して虎の獣人と化す。
 「ほう、獣人ですか……」
 「おねがい、せいれいたち……あのひとをとめて……」
 唯の呪がようやく終わり、虚空から現れた光の縄が殺を絡め捕る。
 「うっ、これは!?」
 「…………」
 殺の影が急に色濃くなる。
 「させるかぁっ!!」
 叫び、殺に攻撃を仕掛ける大牙。
 「だめっ!そのひとにぶつりこうげきはききませんっ!!」
 「なっ!?」
 だが、勢いのついた一撃は止まらない。
 と、影が広がり質量を持つとともに大牙の攻撃を防ぐ。
 「なんだこりゃ?」
 影は殺を包み込んで光の縄を消滅させる。
 「一瞬を……狙う……」
 影を見つめてあるわくが呟く。
 「今だ!」
 ゆっくりとほどける影から見える殺を突き刺す。
 「……今の一撃、申し分ない」
 刀に刺されたまま微笑む。
 「なっ……」
 思わず絶句するあるわく。
 「だが、おしかったですね……」
 左手であるわくの腕を掴み、右の掌打を胸に叩き込む。
 「かふっ……」
 吐血する。肋骨が折れたのだ。
 「……!!」
 唯が慌ててあるわくに駆け寄る。
 「(くそ、ほんとに大丈夫なのか、脇田。
  ……それにしても、あいつ何であれで平気なんだ?
  ……だがこれはきくだろ)」
 息を吸いこみ、冷気と共に吹き出す。
 「ちぃっ! ナウマク・サンマンダバザラダン・カン、不動明王火炎呪!」
 大牙の放つ冷気を火炎で打ち消す。
 「でも……まだ!」
 あるわくが、右手で銃を抜いて至近距離で全弾叩き込む!
 「ぐう!?……今のは、少し効きましたね」
 全弾命中したが、よろけただけだ。
 「くそ……まだか……」
 口から血を流しながら呟く。
 「あなた方の力では、私を殺すことはできません」
 服の破れ目から覗く傷がみるみるうちに塞がっていく。
 「やってみなけりゃわかんねぇだろっ!」
 大牙が怒鳴る。
 「……いやしの、しずく」
 大牙が殺と対峙する間に、唯があるわくを治癒する。
 「今度はこちらから行きます」
 口の中で小さく呪を唱え、
 「体気凍結呪!」
 青白い光弾が大牙の方に飛んでいく
 「ぐっ(……?あまり冷たくない!?)」
 毛皮は凍り付いたものの、すぐに霜が落ちる
 「た、大した事ないなあんたも。今度はこっちから行くぜ、虎爪撃!」
 しかし、殺はニヤリと笑い、防御さえしようとしない。
 と、大牙の体が動かなくなる。
 「……!?体、が…うご……かな………い?」
 体気凍結呪とは、体の中に流れる気を凍り付かせることで相手の動きを封じる呪文だ。
 その際に、余ったエネルギーが外へ流れだし、相手を凍らせるので、大牙はそれですべてだと思いこんでいたのだ。
 「貴方の体を流れる気を凍らせました。しばらくすれば、元に戻ります」
 「と、全ての傷が完治したあるわくが目を覚ます。
 放心状態のあるわくを庇うように唯が前に出る。
 強烈な光を伴い、あるわくの周りから「なにか」が実体化しだす。
 「(ぐっ、くそ。この〜、ちっくしょ〜昨日っからこんなんばっかだ。呪われんてんのか?
  しばらく?その間に全部終わってんだろ。冗談じゃねぇ。冗談じゃ……ねぇぞ!)」
 懸命に努力してるが動けない。
 「……なんだ、あれは……?」
 あるわくのまわりの「それ」は天使の姿を取り出す。
 「天使……だと……?」
 体が震えだす。その震えを必死に止めようとしている。
 「……まっしろい……はねが……」
 唯が呟く。
 時を同じくして、大牙の体内を以前とは違った気……怒気の変化したもの……がめぐり出す。
 「汝ら争う事勿れ。汝ら同じ導きに従う「蒼き騎手」なれば」
 天使がその場の全員に告げる。
 「……同じ導きに従う?どういうことだ?」
 大牙が思わず呟く。
 ただ、まだ体の自由が効かないのでそれが精一杯なようだ。
 「ぐう……あ……くっ……」
 一方殺は天使の光を浴びながら相変わらず震えを押さえようとしているが、どちらかというと何かに必死に耐えているようだ。
 「……ずっとまえにみたきがする……まっしろい……じゅうにまいのはね……」
 「すべては主の御心のままに」
 優しい光があふれ、殺も含む全員の傷を癒した。
 大牙も完全に自由を取り戻す。
 「……ククククク……ククククク……。
  ……その『蒼き騎手』とやらが為すのは『死』か?『滅亡』か?」
 闇が色濃くなり、蝙蝠が集まりはじめる。
 だが、天使はそれに答えることなく消え、あるわくが倒れる。
 「(主?そんなものほんとに居るのか?そもそもそいつは、……どんな奴なんだ……?)」
 「……ククククククククク……」
 蝙蝠が集いて、中からカインの姿が現われる。
 「がああああああああっ!」
 突然、殺の背中が膨れ上がり、服を破って4枚の漆黒の翼が現れる。
 「少々手荒なことをしたようだな」
 少し咎めるように殺に言う。
 「クククククク・・・まあ、そう硬いこと言うなよ。こいつだってずいぶん手加減してたんだぜ?」
 ゆらりと立ち上がり、カインに言う。
 「それに、この服見りゃあ奴等が殺にどんな事したか分かるだろ?」
 「……わかってはいるがな。だが、ある意味それは自業自得ではないのか?」
 「まあいい……今はいったん退け……」
 あらわれた時と同様に消える。
 「フッ……相変わらずつれないねぇ。たまには誉めてやったらどうだい?」
 そういいながらも闇の中に消えていく。
 
 本来はこの後も続き、戦闘がある予定でしたが、事情により中断したのでここで退却した事にしました。
 ご了承ください。
98年09月29日:15時36分09秒
「襲撃」前編 / タイガ
 以下は、一行掲示板で行なわれたキャラチャを編集したものです。
 
  大牙はとある廃虚に二人を案内した。
 「ここが俺の家だ。ちと汚いがこの辺じゃましなほうなんだぜ、まあゆっくりしてくれよ」
 「ここが……君の家か」
 「……ひとのおうちって、はじめて……」
 「自己紹介がまだだったな。俺は『杉森 大牙(たいが)』だ」
 「あ、ぼくは脇田 有志(わきた ありし)」
 「……わたしは……ゆい……」
 唯が名乗った直後、誰かの気配がした。
 「……!?誰だ!!」
 「……?」
 大牙が誰何の声を上げるが、唯はに気付かないようだ。
 「まって……何か視線を感じる……」
 あるわくがそう言って気配を探り出す。
 「敵意は感じない。……けど」
 「……探しましたよ」
 闇の中からゆっくりと近づいて来るミラーシェイドをかけた一人の女。
 「……誰だ? 脇田達の知り合いか?」
 「知らない。先刻の視線はこいつじゃなかった」
 「にゃあん☆」
 唐突に元気の良い猫のような声がする。
 帽子をかぶった少女だ。
 「ん?……この子、なのか?」
 「にゃん?」
 「我が主の名により、その少女を迎えに来ました」
 そんなあるわく達の会話など気にも留めずに、話し掛ける。
 「(なんだ、こいつ?ネコフリークか?……いや、人間の匂いよりネコの匂いの方が強い……?)」
 猫のような雰囲気のある少女に気を取られていたが、影から現れた女の言葉に我に返り問いただす。
 「主って、だれのことだ?まさか……!?」
 しかし、女は薄く笑うだけでそれには応えず、
 「彼女を大人しく渡して下さるなら、争う必要はありません」
 ただ、要求をする。
 「ただ渡せっていわれて渡すやつぁいねぇよ」
 「さがってて」
 新たにあらわれた少女に言い、女に一歩一歩近づくあるわく。
 その横に大牙も並ぶ。
 「にゃん☆……」
 鳴声で応えて唯の方に下がる少女。
 唯は無言で少女の手を握る。
 「……?」
 唯を見る少女。
 唯がにっこりと微笑み、少女も微笑み返す。
 「あなた……どこからきたの……?」
 「ん〜 」
 どう答えようか少し考えて、
 「ずっとむこうからだにゃん☆」
 と、向こうを指さす。
 「そう……ずっとむこう……」
 「そうなんだにゃん☆」
98年09月25日:16時52分33秒
「覚醒」後編 / タイガ
 「……貴様はこの世界で何を見た?『式神使い』よ」
 あるわくに問いかける。
 「……どうするつもりだ?」
 「……貴様はこの世界で何を見たのだ?『愚かな駒』よ」
 「……ぼくは……『世界の為に彼女を犠牲にする』なんて出来ない」
 「……ククククククク……」
 おかしそうに笑うカイン
 「でも、彼女がそれを望むのならそれも仕方のないことだと思う……」
 (なんだあいつ、あんな奴に連れて行かせたら、どうなるか解ったもんじゃないぞ)
 大牙はあるわくの言葉に憤りを覚えた。
 「……貴様の『導き手』が何を教えたかが良くわかったよ……」
 「だから……もう少し時間がほしい……彼女が、ぼくが真実を知る為の時間が……」
 「……すでに運命の輪は回されているのだ……すでにな」
 雷球が、発生する。
 「……はじけよ……」
 雷球が崩壊し無数の稲妻があるわくを襲う。
 あるわくが剣を抜いて身構え、唯があるわくを庇おうとする。
 考え込んでいたためか大牙はただ見ているしか出来ない。
 雷球は、唯を避け、あるわくに命中する。
 「……奴のねらいはぼくだ……彼女を連れて、逃げて……」
 倒れそうになりながら、大牙に頼む。
 「お、おう!まかしとけ」
 そんなやり取りのあいまに、カインの影から蟲の大群がぞろぞろと顕れる。
 「チィチィチィチィチィ……」
 ぞろぞろと唯や大牙の方に向かっていく。
 「式神よ! 一歩もあいつらを近寄らせるな!」
 できる限りの式神を呼び出し、命令するあるわく。
 「まさか……この蟲達は……」
 唯がわずかに顔色を変える。
 「な、なんだこいつら?」
 ひるむ大牙。
 その間も蟲達は休む事無く、近づいてくる。
 式神も努力しているが、多勢に無勢、さほど効果が無い。
 しかも。
 「……在りし日は時の彼方に……斜陽の光とともに……」
 カインの詠唱によって、何体かの式神が、式札に戻ってしまう。
 「てりゃぁぁぁぁぁ!」
 叫び、カインに切りかかるあるわく。
 「…………」
 虚空より顕れた鉤爪があるわくの剣を受け止める!
 「やっぱりだめか!」
 鈎爪とつばぜり合いしながら叫ぶ。
 
 「は、早く、逃げられなくなっちまう!」
 思わず叫ぶ大牙。
 「大丈夫、ですよ」
 振り向いてにっこり微笑む。
 「えっ?(……可愛い……ってそんな事言ってる場合か)
  何が大丈夫なんだ? すぐそこまで……。
  (そうだ、なにか力があるって言ってたな)」
 「このこたちはおびえているだけ」
 そう言って、一番近くに来ていた蟲をなでる。
 「!?」
 蟲達が一瞬ぴたりと止まり、ゆっくりと唯の周りに集まる。
 「どう、なってるんだ……?」
 「……ふむ……」
 「……戻れ。おびえさせないように」
 あるわくが式神を呼び戻す。
 「さあ、みんな……もうこわくないから……おいで……」
 蟲達が様々な動物達の姿をとったかと思うと、光の玉となって唯と大牙を包む。
 「わぁ!?」
 光の玉に包まれ、思わず驚きの声を上げる大牙。
 と、虚空よりもう一つ鉤爪が顕れ、唯を捕まえようと伸びる。
 「しまっ・・・・!」
 一瞬反応の遅れたあるわくが叫ぶ。
 「あぶねぇっ!!」
 
 ガシュッ。
 
 いやな音と共に、鮮血が飛び散る。
 ざっくりと、大牙を引き裂く。
 どう見ても致命傷だ。
 
 光の玉が消え、りるりるはカインに向き直る。その瞳は金色に光っていた。
 「……受けなさい、『破魔の聖光』!!」
 「…………!」
 光を受けた瞬間四散しコウモリの群が天に舞いちる。
 「……また会おうぞ、『鍵なる命』よ……」
 「きえた……? ……おい! 大丈夫か!」
 「……だいじょうぶ?」
 唯とあるわくが慌てて、大牙に声をかける。
 「ぐぶっ……げふ
  (思ったより……きつ………かった…………な)」
 
 『遠い昔、我らは彼ら人と、彼ら獣の仲立ちだった。思い出せ、人と共に生きた日々を。獣として生 きた日々を。思い出せ汝が使命を……』
 
 「……いま、なおしてあげる……」
 すっ、と手をかざす。
 「まにあわな……えっ!」
 そこに光が集まり、大牙の傷が癒えていく。
 「(なんだ……、あったかいな。こんな温もりがいつも傍にあったらもっと楽しく生きてけるかな)
  ……あれ?」
 目を覚ます。
 しばらくぼうっとしていたが、ふいに我に返る。
 「……やつは!!? 」
 「……きえちゃいましたよ」
 にっこりと微笑む。
 唯に膝枕されているのに気付き慌てておきあがる。
 「そ、そうか好き勝手やってさっさと消えたのかあいつ。ゆるせんな〜」
 「急いでこの場を離れよう。……いつ奴が戻ってくるかわからないし」
 「そうですね……たてますか?」
 小さな手を差し伸べてたずねる。
 「そだな、早く離れよう」
 本当は一人でも立てたが、なんとなく唯の手を取って立ち上がる。
 
 そして、朝焼けの光の中、3人の姿が消えていく……。
98年09月25日:16時50分59秒
「覚醒」前編 / タイガ
 廃虚の隅の方で『彼』……「杉森大牙」と言う名前だ……は眠っていた。
 青年と少年の狭間と言った年頃か。
 ふと、彼は気配を感じて目を覚ました。
 物陰に潜み、顔を覗かせると、三人の人間がいた。
 少女と青年、そして
 (…………)
 人に会うのは何年ぶりだろうか。
 (…………?)
 なんだか長い間眠っていたような気がする。
 ……そんな筈はないのだが。
 (……可愛い子だな……、あんな彼女が欲しいなぁ……。
  何話してんだろ……。あの二人、なんかやばそうだなぁ)
 彼はそんな事を思いながら、ゆっくりと、その三人の方に歩み寄っていった。
 
 
 「私は世界をあるべきに戻そうとしているだけだよ、『新しき娘』よ」
 男が言い、
 「あるべき……姿……この『世界』を?」
 少女が怪訝そうにたずねる。
 「そうだとも。そのためには『枷』を取り外す必要があるのだ」
 「……何? その『枷』って……」
 「傲慢で愚かな『神』が世界を隔てるために作ったものだ。
  ……それを取り外すためにそなたが必要なのだよ、『鍵なる命』よ」
 「おまえはおまえの「善」で行動している。そういう事か」
 不意に、青年が口を挟む。
 (『鍵なる命』? 必要ってどういう事だ?)
 大牙はきき耳を立てながら、思った。
 少女……唯は、その男、カインの眼を真っ直ぐ見据えて、
 「……わたしには、そんなちからなんかありません……」
 と告げる。
 「……本当にそうおもうのか?娘よ」
 その瞳を見詰め返し、たずねる。
 唯は黙って頷く。
 カインが無言で右手を振ると、怨嗟の声を上げながら怨霊の群が顕れる。
 「……!!」
 ばっ、と振り向く唯。
 「……そなたには聞こえぬのか?苦しみの声の中に聞こえる歓喜を、無明の闇より光の世界に出る事 のできた喜びの声が?」
 (な、なんだあれは?)
 それは大牙の眼にはただ禍々しく、危険なものにしか思えなかった。
 「きこえます」
 「……それだけで十分なのだよ、『新たなる娘』よ。それを聞くことすらできない者がほとんどなの だから」
 「……でも、あのひとたちからは、かなしみしかつたわってきません・・・いたい、くるしい、だれ かたすけて、って……」
 「なに言ってるんだよ、『憎い、憎い、殺してやる』としか聞こえねぇぞ」
 いても立ってもいられなくなった少年は、そう言いながら唯と怨霊たちの間に立ちふさがった。
 青年……あるわくが、剣に手をかける、しかし、殺気はない。
 「……そうせぬために為す必要があるのだよ、娘よ」
 カインは不意に割り込んできた少年などさほど気にとめた様子も無く、唯に話し掛ける。
 その声と共に、怨霊たちは消えていく……。成仏したのだろうか?
 「……何か用かね? 『眠れるもの』よ」
 ついで、大牙に目を向ける。
 「(あれ、終わりか……? なんか間抜けだな〜。なにしにでてきたんだ、おれ……?)
  え? 何が『眠れるもの』だよ、起きてるじゃないか」
 意味を大きく取り違えて応える。
 「……用が無いなら立ち去ってもらおう『眠れるもの』よ。そなたには用が無い」
 「用ならあるさ。その子が危なそうだったんで助けに来たんだよ。
  なんか、勝手にかたがついて間の抜けた感じになったけどな。
  帰れってんなら帰ってやっても良いけど、ほっといてもその子がやばくないって
  保証したら、帰ってやらぁ」
 「…………。それが私にとって何の意味があるのかね?」
 「俺には意味があらぁ。なんかあったらあとで夢見が悪いだろ」
 「……ならば言ってやろう。『問題はない』他に何か必要かね?」
 「誰にとって問題ないのか主語を言ってないぞ」
 「……君はそれすら理解できないのかね?」
 失望したようにたずねる。
 「『俺にとって問題ない』って言う事だとは思うが、実は『私にとって問題ない』とか言う落ちにな ったら
  目も当てられねぇじゃんか」
 「……やれやれ……時間の無駄だったか……」
 肩を竦める。
 「な、なんだよその態度は……」
 さすがに傷つけられたような表情を浮かべる。
 「それで、どうするかね?『新しき娘』よ」
 大牙を無視して唯にたずねる。
 「……わたしは……いけません……」
 あるわくを見て、
 「わたしには……たいせつなひとがいますから……」
 「……ふむ……」
 あるわくの方を見るカイン。
 (何だぁ、あいつの彼女なのか〜。なっさけねぇ……。あんまり助けようとかしてないみたい
  だから期待してたのに……)
 大牙は、打ちひしがれているが、だれも見向きもしない。
 
 後編に続く。
98年09月24日:21時24分16秒
「歌う少女」 / みだれかわ枕
「Hallelujah,hallelujah……」
 娘は歌いつづけていた。
 身にまとう黒のコートは、元々黒かったわけではない。
 はじめは、白かった。
 
 メシア(救世主)を探す少女。
 
 白のコートは、この街にいるうちに、黒くなってしまった。
 今や、黒よりも黒く、何よりも黒い。
 一体になるように、長く伸びた髪。
 顔だちは、東洋系。だが、日本人だろうか。よくわからない。
「Hallelujah,hallelujah……!」
 歩きながら、娘は歌いつづける。
 道行くものは、反応しない。
 無視を決め込んでいるものもいる。
 かまっている暇など、余裕などないものもいる。
 娘の存在に気付いていないものもいる。
「Hallelujah,hallelujah……!」
 娘は歌いつづける。
 
 果たして、メシアなど、存在しうるのだろうか?
 この、黒き街で!
 
「Hallelujah,hallelujah!」
 彼女の名は『リィ』。とりあえず、そう呼ばれる。
 だが、彼女に声をかけるときには、皆、たいてい、
「おい」
 とだけ言った。娘にとっても周囲のものにとっても、名前なぞ、どうでもよかったのだ。
 
 歌い終わり、リィは見上げた。
――『ソラ』、か……
 視界が、にじむ。あるのかよくわからない、空。
 神はこの世におわすのか!
 
「メシアは……どこ? どこなの?」
 
 リィはつぶやく。
 
 
 ってな感じで、全然ワケ分からないですが、取り敢えずキャラクターだけ宣言しておきます。
98年09月24日:14時13分36秒
世紀末東京編「始まり」 / タイガ
 え〜、以下の文章は一行天羅掲示板にて行なわれたなりきりチャットを、僕が独断で編集したものです。
 何か、不満がある場合は、DMなりで「何処がどう不満でどうすれば良くなるか」を教えて下されば次回からその点に注意して編集します。
 (「何処が不満か」だけでもかまいませんが、ご期待に添えるかどうかは保証しかねます)
 
 
 とある廃虚の一角に、少女と青年が所在なげに佇んでいる。
 青年……、仲間内では「あずまっち」と呼ばれている……が少女に話し掛けた。
 「ほらほら、そんなブッチョウ面やったら、せっかくの美人がだいなしやで。にこぅっとわろうてみ?」
 「……『笑う』……?わらうってなに?」
 仲間内で「唯」と呼ばれている少女が尋ねる。
 「なんや、笑うっちゅう言葉知らへんのか。せや、とっときのオモロイ話したるさかい。聞いてみ。きっと笑えるわ。
  ある時な、わい雨の中ごっつ汚れとった犬に出おうてん」
 唯は黙って聞いている。
 微かに不穏な気配がするが、気付かないのか、あずまっちは話を続けている。
 「灰色っちゅうか、茶色っちゅうか、うす汚れとってなぁ。首輪つけとったから多分飼い犬や戸思うんやけど、雨の中しょんぼり、雨宿りもせずにつっ立っとってなぁ。わい、可哀想になってうちまで連れてってん」
 と、脇田有志……「あるわく」と呼ばれている……が、やってくる。
 「……ふう。ここもひどいもんだな。
  ……だれだ!」
 不穏な気配に誰何の声をかける。
 「ククククククククク…………」
 笑いながら、揺らめく影が現れる。
 唯はなおも、不穏な気配に気付きながらも、あずまっちの話を聞いている。
 「……来たれや、屍人ども…………」
 揺らめく影が声を発し、命に応じて幾人もの屍人が立ち上がる。
 「くっ!」
 あるわくは慌てて、呪符を用意する。
 「いうても、そのまんまうちにあげたら部屋が汚れるさかいに、裏口から風呂場に入れて洗ったることにしたんや。まず頭にお湯をかけたったんやけど、汚れが落ちると元の毛色が戻ってきた」
 不穏な気配に気付きながらも、なおも話を続けるあずまっち。
 「…………灰は肉に、塵は骨に…………」
 屍人が組み合わさっていく。
 「(あるわく)
 「………………集いてなすは屍肉の巨人…」
 全長5,6メートルに及ぶ、屍肉のゴーレムが出来上がる。
 「……汚れが落ちた頭の毛は白かったんやけど、えらい嫌がってなぁ。全身の汚れを落すんにだいぶ苦労したわ。さて、ここで問題や。こいつの尻尾の毛はどないな色やったと思う? 」
 未だ話しつづけていたあずまっちが問いかける。
 「……行きや……」
 ゴーレムがゆっくりと歩き出す。
 「……」
 解らなかったらしく、わずかに疑問の表情を浮かべる唯。
 「今、ええとこなんやから邪魔せんでくれる?」
 そういって、何気ない様子で、でっかい気弾をゴーレムの方に投げる。
 「…………」
 ゴーレムはそれに対して、怨霊のブレスを吐き出し、気弾を消す。
 「…………」
 邪魔物が無くなったとみたのか、ゆっくりとした緩慢な動作で唯を捕まえようとする。
 「いまだ!」
 呪符を投げつけるあるわく。しかし、ゴーレムはすぐに再生し、意に介した様子もなく、唯に近づく。
 唯は自分に近づいてくるゴーレムをただ、じーっと見ている。
 「させるかぁ!」
 あるわくは叫び、抜き払った剣で切り付ける。
 「無駄だ無駄だ、式神使いよ。その他の式神では我の巨人は滅ぼせぬ」
 「それでも…それでもやるしかないんだぁ!」
 あずまっちがゴーレムの拳をさんこしょで受け止め、叫ぶ。
 「かぁ〜っ、こんなかぁい〜娘を捕まえようとするなんて、お前のオーナーはきっと変質者か何かやな。嫌やわぁ〜」
 ちと、的外れなような気もするが、冗談で緊張をほぐしているのだろうか?
 一方、唯はゴーレムを見て呟く。
 「……そう……苦しいんだね」
 あるわくの式神がゴーレムに向けて炎を吹き出す。
 「こいつぅ!さがれ!」
 そういって、炎に焼かれるゴーレムに体当たりをしかける。
 しかし、ゴーレムはそれでも唯に近づこうしていた。
 唯は『彼ら』がやって来るのを待っているかのように、ただ、彼らを見つめている。
 「ん?こいつの言うとることわかるんか?やったら、おとなしゅうしてくれるようたのんでくれへん?」
 ゴーレムに押され、苦しげに額に汗を浮かべていたあずまっちがその様子に気付き、声をかける。
 唯は無言でゴーレムに近づいた。
 「きちゃだめだ!」あるわくが制止し、
 「…きばってや」あずまっちが、ゴーレムを包む炎に焼かれながらも唯を見守る。
 「…………闇よりいでて泣き叫ぶものよ……」
 揺らめく影が怨霊を操り、あるわくに襲い掛からせる。
 「うわああああぁぁぁぁぁ!」
 吹き飛ばされるあるわく。同時に、術者が気絶したため、式神が符に戻る。
 揺らめく影はそれを確かめると、
 「…………風よりいでて引き裂く獣よ……」
 風獣を呼び出しあずまっちに襲い掛からせる。
 「ん”っ、やってくれるやん。こっちも本気出さんとあかんらしいな。護法招来! 」
 風獣に切り裂かれながらも、護法を呼び出すあずまっち。
 「はぁっ、護法剣!」あずまっちは剣となった護法で風獣を切り裂く。
 「…………風獣では話にならぬか……いかがしたものかのぉ…」
 唯はあるわくの制止など無かったかのように、なおもゴーレムに歩み寄る。
 ゴーレムは歩み寄ってくる唯に手を伸ばし、捕まえようとする。
 「…いいよ…おいで…」
 ゴーレムに微笑みかける。
 「………………」
 ゴーレムは燃えながらも、唯を捕まえる。
 熱くないのか、唯の顔色は変わらない。 
 「…………水は天より恵みてあらゆる火を消し去らん…………」
 大量の水が顕れ炎を消す。
 「ん……」水にうたれ、あるわくも目を覚ます。
 「…さあ、わたしの中で休みなさい…。もう、誰も貴方達を苦しめたりはしないから…」
 ゴーレムは光の玉となり、唯に吸い込まれる。
 「……ほほう、我が『呪』を破るとはな…やはり見込み通りか……。
  やはり必要じゃな…………」
 「……君は……一体……?」
 あるわくが困惑したように唯に尋ねる。
  
 「はぁ、エラい娘やなぁ。ところでなんかわいらに用なんか?変質者の親分さん」
 「貴様ごときに用はないのだ、若き下法師よ。
  …………夜よりいでし漆黒の翼よ……水よりいでし青鱗の蛇よ……」
 『呪』を唱えて、異形のものたちを呼び出す。
 「言うてくれるやん。まあわいに用があるなんて言われたら気持ち悪うてさぶいぼ出てしまうけどな」
 軽口をたたき、異形の存在に目をむける。
 「はぁ、それにしても次から次へとメンドくさいやっちゃ」
 
 「…我が用があるのはそこの『新たに転生せし娘』だけなのだからな……」
 「なんや、勝手なこと言うとるなぁ。転生っちゅうのは人生を新たにやり直すことやで、前世なんぞのために今世が縛られるのは本末転倒や。わいはそう教えてもろたで」
 「そなたにはまだわからぬ事よ」
 可笑しそうに笑いながら、あずまっちの言葉に答える。
 「…これ以上、そのひと達を苦しめないで…。皆、暴れることをいやがっているのに……」
 唯が、そう嘆願する。
 「すべて必要な行為なのだよ……『黄金の夜明け』をなすためにな……」
 「貴方は…誰?……」
 「我の名はカイン、三界の枷を取り払うもののひとりなり」
 「三界の……枷……」
 「なんや聞いたことあるで、その名前。自分が死ねんもんやから人類全てが死ねん様にしようっちゅう事か?」
 
 「だめだ……力を……あの子を守れる力を! 」
 あるわくが吐き出すように呟く。
 と、そのとき。
 パシッと、式札の一枚が微かな音をさせる。
 「え?」
 あたりを光が包み、天使が舞い下りる。
 「これは……」
 しばし、呆然としていたが、すぐに自分の成すべきことに気付く。
 
 「おまえの御託なんてどうでもいい。……あの人の言う通りだ。貴様にあの子の「今」は渡さない! 」
 あるわくは厳然と言い放った。
 「どうするつもりだ?そこにいる偽善者の力でも借りるのかね?」
 無言で浄化の炎を放つセラフ。しかし、
 「…………いでしは翼、我をまもりて盾となる……」
 黒い翼が顕われ、炎を防ぐ。
 「われは剣、汝が『正義』を示すものなり」
 セラフは浄化の炎を放ったあと、あるわくの剣に宿る。
 「……愚かなものよ、自分が駒である事も知らずにいるとはな」
 そんなあるわくの様を見て呟く。
 「いうなぁ!」
 「ヴァイン」
 憤るあるわくの足を地中から発生した蔦が剣ごとからめとろうとする。
 「やらせるか!」
 剣で蔦を切り裂くが、蔦は次々と現れる。
 「くそう!つたが邪魔で近づけない!」
 「落ち着きや、この世に誰からも利用されへん奴なんておらへん。
 神様にだって利用されるなら利用されるでそれでええんや。
 重要なんは自分の意志で納得して行動するかどうかなんや」
 「それでも!ぼくは、ぼくはぁ!」
 必死に蔦をきり、カインに近づこうとするあるわく。
 しかし、きるよりも増える方が早い。
 
 一方、唯は周りの怪物達に目をむけていた。
 「…そう……帰りたいのね……分かった」
 「ちょっ、ちょい待ち。何しようっちゅうんや?」
 あずまっちが止めようとするが、気にせず
 「……みんな…在るべき場所へお帰り……『さとかえし』……」
 「ふぅ、なんや、あいつらと一緒に魔界へ行く言い出すんやないかと冷や冷やしたわ」
 「やはり、『架け橋』となるのに相応しいな」
 カインとあずまっちがそれぞれの感想をもらす。
 「おぬしは世界に何を求める?『架け橋たる娘よ』」
 カインが問いかける。
 「……私は……。……私は……」
 「…………何を求めるのだ?」
 口篭もる唯を問い詰めるカイン。
 「待ちぃや。そんな事を選ばせるのに猶予をくれたってもええんと違う?」
 「……では猶予をくれてやろう……」
 霧が立ち込め、姿を消す。
 
 さとかえし(里返し)は「範囲内に居るもの全員を産まれた世界に送り返す魔法」です。
 範囲内に居る限り、人間にも効いているのですが、「この世」に産まれている限り、「この世に返される」ので何の意味も有りません。
 また、あくまで「産まれた世界」なので例えば外国人に使っても、生まれ故郷に飛ばされるような事は有りません。
天羅万象掛け合い:芸能編ログ / TRPG.NETホームページ / Web管理者連絡先