数学用語の誤用というのは、気になるタチです。たとえば、競馬で言う「スピードの絶対値が違う」。言わんとすることはわからなくもありません。しかし、それならば「絶対的にスピードが違う」と言えばいい。なんで、定義のある言葉をわざわざ誤用するの?
絶対値は、実数であればその正負の符号を取った値だし、ベクトルであれば大きさ(長さ)のこと(ほかにも、絶対値を定義されるものはあるが割愛)。前述の台詞を見聞きするたびに、僕は、「おいおい、じゃあ、競走馬は好き勝手な方向向いて走ってんのやな?」とツッコミ入れたくなります。
最近では、麻雀雑誌などにおける期待値の誤用が気になります。高め三萬で7700点、四萬だと3200点、一萬だと1600点。それぞれの残り枚数は2、3、2。「このとき、期待値は、7700×2+3200×3+1600×2=31600である」
期待値31600点! いいなあ、そんな麻雀、是非とも打ってみたいわ(笑)。国士13面のダブルリーチか、それ?
枚数掛けてどうすんねん! 確率を掛けんか、確率を!
ちなみに、この形、こぼれ出てくるのは、まず一萬(麻雀知ってる人、理由わかるね?)。おっかしいなー、期待値より30000点も低いや〜(笑)。
誤用が気になるのは、バックグラウンドとなるべき知識の欠落が感じられるからです。競馬の絶対値は、まだ許しましょう。馬券を考えずに純粋にレースのみを楽しむことは可能ですから。でもね、麻雀(=ゲーム)の戦術論で数学用語を誤用するというのはいかがなものかと思います。
さて、誤用から離れて、今度は誤解の話。期待値という言葉、どうもこの期待というのがまずいのか、誤解されているフシがときおり見受けられます。
期待値=期待できる値=最低保証
こんな勘違いしている人、いませんか?
期待値ってのは、相加平均です。数ある平均の取りかたの一つです。ゲームの中では、「お行儀のよい」正規分布がよく見られますが、この場合でさえ、期待値は、真ん中の値でしかありません。それより低い値が半分現われるのです。
D100の期待値は、50.5です。じゃあ、「D100で50以上が出たら成功」は、必ず成功ですか?
こう考えれば、期待値=期待できる値と考えるのが、いかにばかばかしいことか、わかりますね。
まして、『T&T(HTT)』のセービング・ロール、『ソード・ワールドRPG』のクリティカル処理のような、無限(上方)ロールの場合、期待値は、最頻値(モード)や中間値(メディアン)より高く出ます。期待値未満ってのが、当たり前なのです。最低保証などとんでもない。
期待値というのは、数多く判定したときの平均です。一つ一つのロールの成功失敗やその程度を考えるときには、何の役にも立ちません。
そしてまた、ダメージ計算など、数量が意味を持つ場合に限って有効な考えかたでもあります。
たとえば、「ダメージ拡大をすべきか、達成値上昇をすべきか」というような、個別戦術の比較には使えます。そういうときには、期待値の大きい戦術を選べばいい。しかし、期待値に期待するのは、根本的に誤りなのです。
結果が期待値未満なんてことを嘆いてはなりません。不運を嘆くときの台詞はこうあるべきです。
「こんな結果、起こる確率は1%以下じゃないか〜!」
たとえば、半荘3回やって、アガリが2回だけだったときとかに……。
注:30C2・(1/4)2・(3/4)28 = 0.0086 流局もあるから、本当は、これより確率高いだろうけどさ(でも、局数のほうも、30より多かったな……)。